伝令からは一ノ瀬さんの交代を伝えられた。そして代わりにマウンドへ上がったのは……。
「皆、おまたせ!」
武田さんだった。後ろにはプロテクターとレガースを装着した山崎さんもいる。
「自分は一ノ瀬さんと同様、自分の持てる力を全て出し切ったつもりです。……山崎さん、あとはお願いします」
「うん……。私が志木さんの、ヨミちゃんが一ノ瀬さんの想いを引き継ぐよ!」
まぁ一ノ瀬さんは一足先にベンチに帰って行ったけどね……。
(武田さんの特訓の成果がこの大舞台で発揮される……。群馬選抜の強力な打線を抑えられるのか……)
「……武田さん、これを」
志木さんが武田さんに渡したのは、泥にまみれたボールだった。
「これは……?」
「それと一ノ瀬さんから伝言を預かっています。『この球には私達埼玉選抜の魂が隠っているから、それを充分に心して投げろ……』だそうです」
「一ノ瀬さん……」
志木さんが言った一ノ瀬さんからの伝言は一ノ瀬さんらしからぬものだった。まぁ本人が直接言わないのが、一ノ瀬さんらしいと言えばそうなのかも……。
「……志木さん、一ノ瀬さんに伝えておいて。『その想い、しかと受け取りました!』って!!」
「……わかりました。伝えておきます」
そう言って志木さんはベンチに戻って行った。一ノ瀬さんと志木さんはこの県対抗総力戦で生まれた、県対抗総力戦でしか誕生する事のないバッテリーだったけど、案外名バッテリーだったのかもね。
『埼玉選抜、ここで投手交代です!』
「投手交代……」
「限界まで投げてたから、仕方ないのかもね。それを打った真深も流石だけど」
「一ノ瀬さんはきっと……私が苦手としているシンカーで勝負を掛けてくると思ったのよ。だから私はそれに対応しただけ……」
「それが普通は出来ないんだけどね……。でも投手交代か……。次はどんな投手が出て来るんだろう?」
(一ノ瀬さんがベンチに帰って行ったところを見ると、多分早川さんじゃない。一体誰が……?)
『投手は一ノ瀬選手に代わって、武田詠深選手!』
「ヨミ!?」
「彼女は……確か真深の従姉妹だったわよね?地獄の合同合宿にも参加していた……」
「え、ええ……」
(ヨミが出て来る事を全く予想してなかった訳じゃない。埼玉県大会の映像でヨミのピッチングを見た時は対戦を楽しみにしていたくらいだもの。でもまさかこんな大舞台でヨミとの対戦が実現するなんて……!)
「……この試合、まだまだ楽しくなりそうね」
バッテリーが武田さんと山崎さんに代わって、試合再開。ツーアウトランナーなしで、打席に立つのは5番の風薙さんだ……。
(先発の一ノ瀬さんはかなり高いレベルの変化球を投げていた。次に出る投手はどんな球を……?)
「いくよタマちゃん……!」
「来て、ヨミちゃん……!」
注目の1球目……。
(投げた……投げたの?)
ズバンッ!
『ストライク!』
(まるで消える魔球……)
た、多分武田さんが投げたのはあの魔球なんだと思う。その球威とキレは県大会の……いや、沖縄選抜との試合で投げた時の比じゃない。
(どんどんいくよ。ヨミちゃん!)
(うんっ!)
それからの武田さんは風薙さんに対してカットボール、チェンジUP、ツーシームと球種の限りを尽くして、全力で抑えに行った。
ズバンッ!
『ストライク!バッターアウト!!』
(この子……!)
ここに……最強クラスの投手が1人、誕生した瞬間だった。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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