「あ、あっという間にツーアウトになっちゃった……」
「あのバットを貫通するって球の攻略に難航してるんだよ。無理もないって……」
「ですがここでなんとかしないと、埼玉選抜が負けてしまう事もまた事実……。勝負の行方は朱里さん次第ですね」
「朱里が遥に繋げばまだ望みはあるけど……」
「もし朱里ちゃんまでもが打ち取られちゃったら、そのままゲームセット……。頑張ってほしいよ。朱里ちゃんにも、埼玉選抜にも……」
「無論朱里さんがこのまま終わるとも考えにくいですが……?」
「どしたの瑞希?突然空を見上げて……」
「……いえ、なんでもありません」
(空が妙に黒いですね。それも試合に影響されない程度の黒さ……これは静華さんから聞いた5年前の情報とも一致します。そして今の時間帯は奇しくもその時と同じ……。つまりこの試合が終われば……)
とにかく打席に立つ。風薙さんから発せられる威圧感は前打席に立った時よりも大きい……。だからといって諦める訳にもいかない。
「朱里ちゃん!」
(私の後ろで待機している雷轟の為にも、絶対に繋がないとね……!)
「あと3球で終わりだよ……」
風薙さんが振りかぶって投げる。あの3人から聞いた話によると、風薙さんが投げているあの球は今見えているやつが残像で、姿の見えない実体がもっと前に進んでいる……という話。これ野球だよね?
(ゴウさんが15センチ、番堂さんが30センチ、中村さんが50センチ、友沢が80センチまで調べたけど、まだ実体には追い付いていない。それなら……!)
私は1メートル。いけるか……!
カンッ!
「………!」
ガシャンッ!
『ファール!』
「あ、当たった……」
「つ、遂に当てたよ!」
や、やっと当てる事が出来た……。でもこれはまだスタートラインなんだ。なんとしても雷轟に繋げる!
「……流石朱里ちゃんだね。他の打者だと、わかったとしてもきっと打てなかったよ」
「ありがとうございます。でもきっと私じゃなくても、いつか風薙さんの球は攻略していましたよ」
「……そうかもね」
風薙さんが2球目を投げる。見えてる球は残像で、実体はその1メートル手前……!?
(って、ちょっ……!)
ガッ……!
(不味い!打ち上げた!?)
打球はふらふらとサードへと……。
「よしっ!これで終わりよ!!」
サードのウィラードさんがボールに飛び付く。捕らないで!!
『ファール!』
(あ、危なかった……)
というか今ちょっとスピード変えてきたよね?中々意地の悪い事をするよ……。
『埼玉選抜、あわやというところで命拾いです!しかし依然として危険な状況には変わりありません!!』
『ですがタイミングが合ってきています。次の1球でもしかしたら……』
「この1球で終わり……!」
風薙さんが振りかぶる。多分この1球で私の命運が決まる……。
(次はどれくらいの速さなの?わからなくなってきた……)
「朱里!臆しては駄目よ!迷わず振りなさい!!」
えっ?この声は……母さん!?何時から観に来てたの!?隣には六道さんもいるし……。
(でもそうだ……迷っていても仕方ない。来たままに振るしかない!)
「当たれーっ!!」
カンッ!
よし!当たった!打球は……えっ!?
『な、なんと早川選手が当てた打球がサード方向の地面に減り込んでいます!』
何それ!?訳がわからないよ!!
『走れーっ!!』
と、とにかく走るしかない!!
「くっ……!」
「ユイちゃん、ボールをこっちへ!」
「えっ?は、はい!」
サードのウィラードさんから、風薙さんへと中継。そして凄まじい送球がファーストへ……。
(絶対に、絶対に終わらせない……!)
私はヘッドスライデイングで一塁ベースの到達を試みる。
ズザザッ!
『セ、セーフ!』
「や、やった!」
「繋がった!繋がったよ!!」
「まだ希望は生きてる!」
『早川選手、執念の内野安打で次に繋げました!!』
こ、こんな全力疾走したのは久し振りだよ。滅茶苦茶疲れた……。でもこれで……!
「雷轟!あとは任せたよ!!」
「朱里ちゃん……!うんっ!!」
私に出来る事はやった……。あとは我等が4番打者に任せるよ!
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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