9回裏。ツーアウト一塁。恐らくこの打席が最後になるだろう。打席に立つのは埼玉選抜の4番打者……雷轟遥。
(雷轟と風薙さん……。私が埼玉選抜の選手だから、同じ埼玉選抜である雷轟を応援してる……けど、風薙さんがいなかったら、風薙さんの助言がなかったら今の私はここにはいなかった……)
こんな複雑な気分で、この姉妹の対決を見守らないといけないんだね……。
(あれ?また群馬選抜の内野陣と上杉さんがマウンドに駆け寄ってる……?)
風薙さんに何か起こってるんだろうか?特に上杉さんとウィラードさんが心配そうにしてるし……。
「いよいよだね……!」
「う、うん……。この遥ちゃんと風薙さんの勝負で全てが決まる……!」
「泣いても笑っても、この打席が最後の打席となるでしょう。埼玉選抜か群馬選抜か……。この打席で明らかになります」
「今までの事があったから、埼玉選抜には頑張ってほしいね~!」
「私も同じ気持ちだよ……!」
「…………」
「瑞希ちゃん?」
「瑞希ってばまた上を向いてボーっとしてる。さっきまで会話に参加してたと思ったら……」
「…………」
(瑞希ちゃん……空を見てるのかな?何があるのか気になるけど、今はこの打席を見るのに集中しなきゃ……!)
「…………」
「「彼方先輩!!」」
「……大丈夫、大丈夫だよ」
「でも……!」
「真深ちゃん、ユイちゃん、こんな私に着いて来てくれてありがとう……」
「そんな……!お礼なんていりませんよ!私達は……彼方先輩の力になれればと思って……!」
「ユイの言う通りです。私もユイも、彼方先輩がいなければ、こうして野球を続けていたのかもわかりません……」
「……私は良い後輩を持ったよ」
「風薙……」
「志乃ちゃんも、私の球を捕り続けてくれてありがとう……」
「……私は、この試合を最後に野球を辞めようと思ってる。これは私が遠前高校野球部に入部した時からずっとそうだった」
「志乃先輩……」
「今の風薙が色々抱えているのはわかってる……。でも妹との最後になるだろう対決……風薙の持てる力を出し切って、今の自分を越えてほしい。心の闇に負けるな、風薙……!」
「うん……!」
『!?』
(彼方先輩の眼が……!)
(戻った訳ではないけれど、瞳に炎が宿ってる……そんな雰囲気を感じるわ)
「皆、私のわがままに着いて来てくれてありがとう。遥を抑えて、群馬選抜に優勝旗を持って帰るよ」
内野陣と上杉さんが元のポジションに戻り、今度こそ2人の対決を……!?
(風薙さんの眼が……変わった!?)
元に戻った訳じゃないと思う。今でも二宮と同じように眼に光が宿っていないから……。しかし今の風薙さんは闘志に溢れている。それは恐らく雷轟を打ち取る事に全力を注いでいるから……。
(負けちゃ駄目だよ雷轟。風薙さんを救い出せるのは雷轟しかいないんだから……!)
「お姉ちゃん……!」
「遥……。まさかここまで私に向かってくるとは思わなかったよ。でもそれもこれで終わり……。私はここで遥を打ち取って、更なる高みへと行く……!」
「……私だって、私だってお姉ちゃんに置いて行かれたくない!もう……離れ離れは嫌だよ!」
雷轟を、妹を捨ててまで、自分には野球しかないと誰をも寄せ付けない雰囲気を醸す風薙さん。
そんな風薙さんを追い掛けて、今の風薙さんを元に戻し、昔のような仲良し姉妹として過ごしたい雷轟。
2人の想いが交差する……最後の勝負が始まる……!
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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