『アウト!チェンジ!!』
その後再びチャンスは作れたものの、相手投手に立ち直られてチェンジとなった。
「よーし!この回を抑え切って、フィクション達に勝つよっ!」
「ヨミちゃん、頑張ってね。二宮さんのリードにはしっかりと従うように」
「はーい!」
ベンチでは武田さんと山崎さんが最終確認的なものをしていた。やる気があるのは良い事だ。早いところ勝って、この不気味なチームとはおさらばしたい……。
「武田殿」
「わっ!?びっくりした……。どうしたの村雨さん?」
村雨が武田さんを呼び止めた。一体どうしたんだろうか……?
「朱里殿が最後の打者を抑えた時の事を覚えているでござるか?」
「えっ?う、うん。流星群のような綺麗な球を投げてたよね」
「そんな朱里殿と同等に相手選手は全員魔球の対となる技……魔打法があるのでござるが、相手チームはこれまで1度も魔打法を使っていない……。心しておくでござるよ」
「魔打法……何か対策はないの?」
そういえば魔打法がどうとか言ってたな……。この試合で1度も見る事がなかったから、頭から抜けてたよ。
「対策はただ1つ。魔球で迎え撃つ事でござるが……。武田殿は何か今までになかった力が身体の奥底から湧いてくる……というのはないでござるか?」
「う~ん……。特にないかなぁ?はっ!?ひょっとして向こうに魔打法を使われたら、どうしようもない!?」
「…………」
「無言!?何か言ってよ~!!」
武田さんが村雨の肩を揺さぶるけど、村雨は俯いていて反応がない。
「行きますよ武田さん。ここまで来たら覚悟を決めるしかありません」
キャッチャー防具を着け終えた二宮が武田さんを宥める。二宮は割り切ってるよね。なんか達観してるっていうか……。
「……そうだね。よし!私も覚悟を決めた!魔打法でもなんでも来いっ!!」
どうやら武田さんも覚悟を決めたようだ。まぁ開き直っているようにも見えるけど……。
「よし!よし!3点取れれば、あの子達の勝ちよ!」
「確かにあの3点リードはかなり大きいけど、ブラックホールズはまだ必殺技を使っていない……。ここから逆転して、裏の回を抑えて、そのまま勝利だね」
「なっ!?」
(明美の言うように、ブラックホールズはまだ必殺技を使ってないから、まだ朱里達が不利な状況には変わりない……。前のイニングで朱里が突如覚醒して魔球を投げたように、武田にも覚醒の切欠があれば良いんだが……)
「……世界各地で怪物が蔓延ってるこの状況下でノンビリとお茶会してる私達ってなんなの?」
「気にしたら負けよ真澄。何故か天王寺と明美が穏やかに行こうって言った結果がこうだもの」
9回表。相手のクリーンアップを乗り越えて、6番から始まるこの打順で……。
「…………!」
ゴッ……!
「!?」
突如打席からこれまで感じた事のない圧がベンチにまで届いた。
(まさかこれが村雨の言う……!?)
カキーン!!
刹那、鋭い打球が上空の遥か彼方に飛んでいった。ホームランだ。
カキーン!!
カキーン!!
カキーン!!
カキーン!!
そこから4人の打者がホームランを2本、スリーベースとツーベースを1本ずつ放ち、一気に4点を取られて逆転、更にはノーアウト二塁というピンチが継続されている。
「ヨミちゃん……」
「山崎さん、今の私達に出来るのは武田さんを信じる事だけだよ」
「その通りでござる。あの5連打は致し方のないもの……。割り切るしかないでござるよ」
「そうだけど……」
「それに武田さんの表情を見てみて?」
「ヨミちゃんの……表情?」
連打を浴びて逆転されたというのに、武田さんの顔は笑っていた。この試合を心から楽しんでいる証拠だ。
「こんな状況なのに……笑ってる?」
「逆転されて世界の危機だっていうのに、武田さんは楽しそうに投げてるんだよ」
恐らくそれが武田さんの強さの源……。
ズバンッ!
『ストライク!バッターアウト!!』
5連打の後の3連続三振……。強さのムラがここまでバラついているのも珍しい話だよね。
(とりあえず9イニング相手の攻撃は終わった……)
あとは2点取って、サヨナラ勝ちを狙うだけだ。かなり難しいけど、やるしかないんだ……!
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
-
見たい
-
見たくない