ツーアウト二塁・三塁。ヒット1本でサヨナラ勝ちが狙える局面で回ってきたのは朱里さんです。
「ツーアウト二塁・三塁で朱里さんの打順ですか……」
「夏大会での早川の印象としては難しいコースにも上手く対応出来る打者……という感じだが……」
中田さんからの朱里さんの評価はかなり高いですね。その印象は正しいです。
「その印象で間違ってはいませんよ。ですが……」
「何かあるの?」
「朱里さん自身が試合を左右する打者になるのが初めて……という点が問題になる可能性があるという事です」
何せリトルシニア時代ではこのような局面で朱里さんに回ってくる事はありませんでした。なので朱里さんにとっては初体験になります。
「朱里さんは新越谷の中では足が速い方ですが、ライトに飛ばせば静華さんの送球によってライトゴロになりますし、二遊間の2人は夏大会に出場していた白井さんと高代さんにも負けてない守備力を持ち、吉川さんはゾーン状態……。条件が良くないですね」
「その吉川が踏ん張れるかどうか……か」
「それもあるでしょう。ですので朱里さんに要求されるのはファースト以外の内野手の頭を越す当たりを打つ事……。朱里さんが打てれば新越谷の勝ち、それ以外なら梁幽館の勝ちです」
「随分はっきりと言うな?」
「仮に朱里さんが歩かされるとして、次の川崎さんは朱里さんに比べれば期待値はかなり低いです。過去の成績を見る限りですと川崎さんは広角に飛ばせる打者ではありません。新越谷のベンチ中で他にショートを守れる人がいるのなら、代打として一発のある大村さん、川原さんか、安定した成績を出している照屋さんを出すべきでしょう」
仮にその3人を出したとしても、朱里さんより期待値が低いのには間違いありませんが……。
ズバンッ!
『ストライク!』
「良いコースに決めてきた……」
「あれは手が出せないな」
バッテリーは際どいコースを攻めて、最悪歩かせる判断を取っていますね。正しい判断では。
カンッ!
『ファール!』
これでツーナッシング。3球目……。
ズバンッ!
「決まった……?」
『……ボール!』
「入ってないのか……」
「審判によってはストライク判定を出すコースですね。朱里さんは救われました」
しかしこのような幸運はもうないと見て良いでしょう。今度こそ朱里さんは追い込まれました。
カンッ!
『ファール!』
「次で15球目か……。吉川も早川も本当にギリギリな戦いをしているな」
「実際にどっちが勝っても可笑しくない……」
朱里さんという打者との勝負……という観点で見れば、有利なのはバッテリーの方ですね。一塁が空いていますし、歩かせる判断はありでしょう。
「スリーボールになっていますし、バッテリーは朱里さんを歩かせる選択もありです」
「吉川の性格上、ここは勝負続行だろうな」
「パッと見だと抑えられる可能性の方が高いから、それはあり得る……」
吉川さんの性格をよく知っているようです。それに雷轟さんに比べると朱里さんが安全なのもまた事実……。そう考えると勝負するのも自然ですね。
(確かに雷轟さん程の危険性はなく、読み合い次第では勝てる打者なので、無理にピンチを広げる必要はありません。朱里さんはそれを見越してここまでしている可能性がありますね……)
カンッ!
朱里さんは吉川さんのスライダーを捉え、その打球は鋭いゴロを描きます。
「打球はショート……!」
「抜ければサヨナラ、捕れれば私達梁幽館の勝ち……!」
ショートが追い付きそうな打球。最低でも同点にはしておきたいですね。
「抜けろーっ!!」
朱里さんの声がここまで聞こえました。中々聞かない声量での叫び……。朱里さんの必死さが伝わってきます。その結果は……。
「……抜けましたね。とりあえずは同点です」
「レフトが打球に追い付いた……」
「村雨程じゃなくても強肩だ。クロスプレーには持ち込める筈……!」
中田さんの言う通り、岡田さんと小林さんとのクロスプレーになりました。判定は……。
『……セーフ!セーフ!!』
これで新越谷の勝ちですね。
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