最強のスラッガーを目指して!【本編完結】   作:銅英雄

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番外編 二宮瑞希の白糸台生活 秋~春へ38

『ゲームセット!!』

 

スコアボードには2対3の表示がされています。新越谷が勝った……という事実が如実に現れていますね。

 

「最後には新越谷が勝ちましたか……」

 

「……良い勝負だった。本当にどちらが勝っても可笑しくなかったよ」

 

「それでも……自分達がいたチームが勝てなかったのはとても悔しい……!」

 

中田さんの言うようにどちらが勝っても可笑しくはありませんでした。それを新越谷が制した……ただそれだけですね。 

 

「勝つ事があれば、負ける事もあります。実力が拮抗している高校同士の対戦はほんの少しの綻びが敗北に繋がり、今回は新越谷が梁幽館の綻びを見付け、試合に勝つ事が出来ました」

 

僅かな隙を見せれば、その時点で敗因に繋がる……。私達白糸台との試合でも僅かな隙を突かれた訳ですね。 

 

「綻び……とは結局何だったんだ?」

 

「……恐らくですが、終始雷轟さんとの勝負を避けた事でしょう」

 

「だけど雷轟は……」

 

「確かに雷轟さんは全国で1、2を争うスラッガーで、勝負を避けたい気持ちはわかります。ですが勝負を避けられた時に備えて雷轟さんが確実に点が取れるプランを新越谷全体で考え、その結果があの走塁でしょうね。雷轟さんとの勝負を避けると、雷轟さんの走塁に翻弄されてしまいます。今回の影森がそうでしたね。逆に言えば勝負をして雷轟さんを抑える事が出来たなら、新越谷の流れは崩れ、梁幽館の勝利へと一気に近付く事が出来たでしょう」

 

雷轟さんは勝負を避けられた時に備えて対策を講じた結果、身に付けたのがあの走塁だと考えるべきでしょう。静華さんや三森3姉妹とは比べるべくもありませんが、意表を突くには良い形でした。

 

(それでも私達には通用しませんよ……?)

 

「君は……凄いな。常に状況を二手、三手先を見据えている」

 

「確かに……。普通そんな事まで出来ない」

 

「これが私の性分なんですよ。趣味であり、日課であり、日常なんです。こういう風に情報を集め、それを分析し、そこから思考を回らせないと落ち着きません」

 

(本当に、気が付いたら今の私が誕生していただけです。多分『あの時』からずっと……)

 

それは幼少期の記憶……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザザッ……!

 

 

瞼を閉じると、幼少期の記憶が映像のように浮かびました。映っているのは私と和奈さんですね。

 

『かずなちゃん!どうしたの!?』

 

『な、なんでもないよ……』

 

和奈さんが疲弊している様子を私は心配していたのですね。

 

『なんでもなくないよ!かずなちゃんつらそうだもん!』

 

『ほんとうに、なんでもないからっ……!』

 

和奈さんは強がっていましたが、虐めを受けていました。

 

『いっちゃった……。かずなちゃん、ぜったいにだいじょうぶじゃないよね……。しらべ……なきゃ。かずなちゃんにきがいをあたえるこたちにはおしおきしなきゃ……!』

 

和奈さんに虐めを行っていた人達を懲らしめる為に私はその人達のありとあらゆる情報を姉と協力して集めたのでしたね……。

 

 

ザッ!ザザッ……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(そして……そうしている内に今の私が出来上がったのでした)

 

「どうした?何かあったか?」

 

「いきなり目を閉じたから、寝たのかと思った……」

 

過去を振り返っていると、中田さんと陽さんに心配されてしまいました。流石に寝てはいません。

 

(とりあえず関東大会の決勝戦まで勝ち進みましたので、白糸台は恒例脳裡オーダーでいきましょうか)

 

あとはそれを新越谷に伝えるのですが……。静華さん経由で伝えておきましょう。

 

『はい。こちら村雨』

 

「お疲れ様です。二宮です」

 

『おおっ!瑞希殿!どうしたでござるか?』

 

「新越谷野球部の皆さんに伝言をお願いします。関東大会の決勝戦、私達は1年生だけで挑みます。これをどう捉えるかは新越谷の皆さん達次第です……と」

 

『……了解したでござる』

 

静華さんに伝言を任せたところで、私はそろそろ白糸台に戻りましょう。

 

「行くのか?」

 

「試合結果は出ましたからね。その報告もありますし、白糸台に帰ります」

 

「今日は有意義な時間が過ごせた……。ありがとう」

 

「それはお互い様ですよ」

 

中田さんと陽さんと別れを済まし、帰りの電車の中で決勝戦の事を考えましょう。

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