先頭の朱里さんに打たれてしまい、ノーアウト一塁。打席には照屋さんが入ります。
(照屋さんは初心者ではありますが、新越谷の選手の中では打率が高め……。甘く入らないように注意しましょう。初球はこれで来て下さい)
(うんっ!)
鋼さんに出したのは外角へと曲がるスライダー。
(カウントを取りに行く外目のスライダー……!朱里さんの指摘通り!)
カンッ!
(初球から打たれた!?)
(やはり読まれていましたか……)
ほぼ完璧に配球を読まれていますね。朱里さんから伝わっているのでしょう。6年間の付き合いである程度バレてしまうのは仕方がありません。
照屋さんにエンドランを打たれてしまい、ノーアウト一塁・三塁のピンチになります。
(ち、チャンスの場面で回ってくると緊張するわね……)
次は川口さんですか……。
(川口さんは選球眼が鋭いタイプです。カウントを悪くすると歩かせてしまいそうですね……)
この手の打者は基本的に3球勝負で良いでしょう。もちろんカットされない前提です。
ズバンッ!
『ストライク!』
初球は見送りですね。
(次はこれでいきましょうか)
(了解!)
川口さんや中村さんのような左打者に対する配球を投げさせていますが、恐らくこれも……。
(初球は朱里の読み通り……。もしも朱里の言うパターンが本当ならこの次に来るのは……!)
(左打者に食い込むスライダー……!)
カンッ!
『ファール!』
三塁線ギリギリですね。フェアにならなかったのは助かりました。
(ふぅ……。なんとか追い込んだよ)
(配球パターンが読まれているとなると、雷轟さんや朱里さんを相手に使っていたパターンを織り混ぜて投げてみましょう)
(うん……!)
朱里さんや雷轟さんを相手にするなら、ここは斜めに曲がるスライダーで三振を取りに行きます。
またそれ以外の打者が相手なら、ストレートで詰まらせに行きます。
(それぞれの配球を混ぜ、そこから幾通りのパターンを思考……)
その中から導き出される答えは……。
(……中間択になる縦に落ちるスライダーですね)
(わかった……!)
(3球目。パターン通りなら鋼さんの決め球であるスラーブを投げてくる筈……!)
川口さんが想定しているパターンでは斜めに曲がるスライダーかストレートになっている筈……。上手くいけば、これで三振になりますね。
(縦に落ちるスライダー!?)
(裏を突いた……。これで三振だよ!)
「………!」
川口さんが戸惑っているのを見るに、想定したものと違うのは確かでしょう。
(野球はまだまだ素人だけど、私なりに鋼さんの投げる球をデータから予測して、朱里の言う事を『信じないで』次に繋いでみせる!)
カンッ!
(嘘っ!?)
裏の裏を突いた配球だと思いましたが、綺麗に合わせられましたね。
打球は一二塁間を抜け、タイムリーヒットとなってしまいました。
「息吹さん、ナイバッチ」
「ええ。朱里の言う事を信じなくて良かったわ」
「う、うん……。言いたい事はわかるけど、その言い方は私がちょっと傷付くんだよ……」
「えっ?あっ……。ゴメンゴメン!そんなつもりで言ったんじゃないのよ!?」
「わ、わかってるよ……」
(……朱里さんと川口さんの会話からするに朱里さんは自分の想定を川口さん(と照屋さん)に話し、裏を突かれないように半信半疑くらいにしておこう……という算段でしたか)
私もまだまだですね。この試合を通じてそれを痛感しました。
「ごめん……。打たれちゃった……」
「……今のは仕方ないですよ。相手の読みが鋼さんを上回りました」
(朱里さんが何かを吹き込んだとは言え、ピンポイントに縦に落ちるスライダーを捉えられるとは思いませんでした……)
「……どこか甘くなっているのかも知れませんね」
「瑞希ちゃん……?」
「こちらの話です。気にしないでください」
過去に私が和奈さんを虐げていた人達を屠ったあの頃の非常さを忘れてしまっていたようです。切り替えていきましょう。もう甘さは見せません。
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