1回表の台湾代表の攻撃は陽さんの満塁ホームランによる4点で終わっています。
(本来4点差は大きなものになりますが、日本代表の面子を見る限りそうは思えませんね)
監督が茜さんな事もあり、今年の日本代表は過去1番の実力を秘めているのは間違いないでしょう。
「に、二宮さん!ありがとうございました!二宮さんのアドバイスのお陰で台湾打線を抑える事が出来ました!」
十六夜さんが私に礼を言いに来ています。律儀ですね。
「私は変化球投手のあり方の一部を言っただけに過ぎません。それを物にしたのは十六夜さん自身です」
実際に私達の2つ年下としては破格の才能を抱いています。シニア時代の勝負が1度きりなのは勿体なかったです。
「でもまさか本当にホームベース2つ分の幅を使って変化球を投げるなんて思わなかったわ……」
「変化球はストレートと違ってボール球でもバットを振らせる事が可能です。台湾打線は陽春星さんを除いて碌にコースを見極めもせずにバットを振り回していますので、そんな相手に律儀にベース上で勝負をする必要はありません。ホームベース2つ分の幅を使って問題ないです」
(尤もこの戦術もアメリカ代表には通用しないでしょうが……)
総合打力こそはほとんど変わりませんが、アメリカ代表は台湾代表のような隙が一切ありません。十六夜さんは今後の成長次第で登坂機会が出来るでしょう。
「更に先程までの十六夜さんは狭いベース上の、更に狭くなるコースを投げていました……。これは結構難しい事ですので、それを意識し過ぎ、制球力を乱してしまいました。ですがもっと簡単に、ホームベース2つ分の幅を使って内角と外角を狙って投げていれば自然と程良くボール球となります」
「つまり細かいコントロールは必要とせず、気楽に投げれば、瑠花ちゃんのカーブとシンカーを駆使して相手を翻弄出来る……という訳ね?」
「正解です。高橋さん」
他の変化球では変化量的に戦術として成り立たない可能性が高いので、この試合ではカーブとシンカーで頑張ってもらいましょう。
「いや~。瑠花ちゃんのあのピッチングを見ると私達も負けられないね~!」
渡辺さんを中心に、他の投手陣にやる気が見えます。十六夜さんの奮闘は良い影響を与えていますね。
「さて、今度はこちらの攻撃ね。十六夜さんはこれ以上連打を食らわないと思うし、7イニング掛けてじっくりと逆転をめざす事にしましょう」
『はいっ!』
そして私達日本代表の攻撃は……。
カンッ!
1番のいずみさんが外野前に打球を落とし……。
コンッ。
2番の朝海さんのセーフティバントが成功し……。
カンッ!
3番の高橋さんが内野安打を決めました。これでノーアウト満塁です。
「まさかノーアウト満塁という展開が向こうと被るとは思わなかったよ……」
既視感を感じる展開に朱里さんがポツリと呟きました。奇しくも1回の表と同じ展開ですからね。しかし……。
「そうでしょうか?日本特有のスモールベースボールを前の3人は見せてくれました。監督はああ言っていましたが、3人共表の守備で十六夜さんの力になれなかった事を相当悔しく思っているみたいです」
「そしてそれは今打席に入った清本も同じ……か」
そして4番の和奈さん。
カキーン!!
初球から快音を放ち、その打球はスタンドへと吸い込まれていきました。
「早くも同点か……。こうなってくると打ち合いが予測されそうだね」
「そうでもないでしょう。データによりますと郭上鈴さんはスロースターターな投手のようですし、本番はここからになる可能性も充分あります」
ズバンッ!
『ストライク!』
「さ、さっきまでとはストレートの威力が全然違う!?」
和奈さんの満塁ホームランで火が点いたみたいですね。試合展開は文字通り振り出しに戻った訳です。
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