カンッ!
新宮寺さんのホームランで動揺しているのか、5番の鍋墨さんにもヒットを打たれます。このまま試合を壊してしまうような展開にはなりませんよね……?
「タイムお願いします!」
ここで宮永さんがタイムを掛けます。
「これまでは夢乃の思う通りにやらせてみたが、これ以上は難しそうだと判断した……か?」
「真意はわかりかねますが、その可能性はあるでしょうね」
捕手としての宮永さんはかなり未知数なので、どういうリードを取るかはまだ判断し難いですね。
(まぁまだ1回ですし、結論に至るのは早計でしょう)
考えている内に、タイムが終わりました。こちらは6番の斎藤さんが打席に立ちます。
「…………」
「…………!」
ズバンッ!
『ストライク!』
斎藤さんに対して、先程までとは比べ物にならないストレートが放たれました。
「えっ……?」
「い、いきなり良い球を投げるようになったな……」
「しかもそれだけではありません。僅かながらに、螺旋回転が掛かっています」
「まさかジャイロボールか……?」
「まだジャイロボールと呼ぶにはお粗末ですが、ストレートのキレが格段に上がったのも事実です」
夢乃さんは新越谷の川口さんと同様に、コピーが得意な投手になりますね。尤も夢乃さん本人は半分無自覚な部分もありますが……。
ガッ……!
『ファール!』
2球目は詰まらせてファール。今の球に螺旋回転は掛かっていませんが、球のキレは上がっています。侮れませんね。
カンッ!
しかし斎藤さんも負けじと打ってきます。打球はセカンド正面のライナーですか……。
「…………!」
今の鏑木さんの表情は……。
「……!不味い!鍋墨!いそいで進塁しろ!」
「……っ!」
新井さんの掛け声よりほんの少し早く鍋墨さんは動きましたが……。
ポロッ!
鏑木さんが打球を落とし、素早くベースカバーに入ったショートへと送球。
『アウト!』
そしてショートの刀条さんがファーストへ送球し……。
『アウト!』
併殺となりました。今のは清澄がよくやっている動きの1つですね。
「す、すみません……」
「併殺になったのはこの際仕方がない。問題なのは、斎藤が打ったライナーを向こうに利用された事だ」
「利用……ですか?」
「ああ。清澄高校はランナーが溜まったら、簡単なライナーやフライをわざと弾いて強引に併殺を取りに行くんだ」
「じゃ、じゃあそれを読んでランナーは動く必要があるって事ですか?」
新宮寺さんが対策を尋ねますが、事はそう簡単ではないでしょう。
「そう簡単な事でもないと思うよ」
「そうだね。清澄側はその動きを逆手に、普通に打球を処理する可能性があるからね……」
鍋墨さんが訂正し、渡邉さんが説明しました。この2人は状況をよく見ていますね。1年生の中心になるのは、恐らくこの2人となる事でしょう。
「今渡邉が言ったように、対策は決して簡単じゃない。ひとまずセンターラインに打球を飛ばさない容認注意して打て!」
『はいっ!!』
清澄の守備に関しては、これである程度対策が出来るでしょう。
(問題は夢乃さんのコピーですが……)
色々見てきた天王寺さんが残したデータを参考に、色々と仕込まれている可能性が高いですね。まぁ見てからの対応で間に合うでしょう。
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