ノーアウト一塁・二塁で4番の雷轟さん……。この打席が恐らく最後のチャンスでしょう。
「ふぅ……」
当の雷轟さん本人は目を瞑って深呼吸をしていました。今の状態に多少なりとも緊張しているのでしょうか?
「雷轟、調子はどう?」
「凄く充実してるよ!チャンスの場面で回ってくるし、黛さんも勝負してくれるし、何より真深ちゃんとバンガードちゃんが私に託してくれた事が嬉しいんだ!」
しかしそれ以上に嬉しそうに、楽しそうにしています。託された想いはかなり大きいですが、彼女は堂々としています。こういう人間が将来プロの世界で結果を残すのでしょうね。
「じゃあ行ってくるね!」
「遥ちゃん、ファイト~!」
「勝ち越し点を得るホームランを期待してるわ」
「うんっ!!」
雷轟さんは剃刀カーブを攻略する為に右打席へ立ちました。通常なら歩かせる場面ですが、これは合宿の一貫……。特別練習メニューの成果を発揮させる為に、必ず勝負するでしょう。
(ここで雷轟ちゃんか~。この空気を読まない采配なら歩かせるんだけど、これは目的のある試合だからね~)
(その目的は、各々が合宿で頑張った成果をあげる事……。どちらのチームもそれは惜しみ無く発揮された。あとは……)
「…………!」
(雷轟さんの、覇竹のスイングがどこまでの完成度か……という事)
(剃刀カーブは覇竹向けじゃないから、余り投げるつもりはなかったけど、雷轟ちゃん達クリーンアップの3人は大体剃刀カーブを目当てにしてるっぽかったんだよね~)
(それだけに、先程の上杉さんのセーフティバントは、予想外でした……)
(まぁ今は雷轟ちゃんとの勝負に集中だね~。全球剃刀カーブで来ちゃってよ~)
(はい……)
この試合の命運を分ける試合……。恐らく徹底して剃刀カーブで雷轟さんを相手取る事になりそうです。
ズバンッ!
『ストライク!』
かなりの球数を投げている筈ですが、球のキレが増しましたね。この試合1番です。
ズバンッ!
『ストライク!』
2球目もストライク……。3球勝負で決めるつもりですね。
「お、追い込まれちゃった……」
「遥ちゃん、大丈夫かな……?」
ベンチでは雷轟さんを心配する声が……。スイングの気配すらないので仕方がありません。
「……大丈夫だよ」
「朱里ちゃん?」
「今の私達に出来るのは雷轟を信じる事だけ……。それなら心配するよりも、期待しておいた方が良いんじゃない?」
朱里さんの言う通りですね。雷轟さんに全てを委ねられている状況なら、心配というマイナス感情よりも、期待というプラス感情の方がお得です。
「……そうだね。遥ちゃんならきっとやってくれるよ!」
「うん……!」
ベンチ周りでもそれが伝わった為、雷轟さんの打席に視線が集中します。
(どう転ぶか……。見せてもらいますよ?)
(2球共、見逃しましたね……)
(バンガードちゃんと同じやり方を取りそうだね~。それなら全力の剃刀カーブを投げようか~)
(はい……!)
「…………」
雷轟さんの狙いはバンガードさんと同じように、変化の直前でしょうが、それでは決定打になりません。
(バンガードちゃんはあの剃刀カーブに対して、2段目の変化直前で打ってきた……。でも私はそれじゃあ足りない。私が狙うのは……!)
だとすると変化の軌道を読む為に変化先を予測して叩くか、変化直後が狙いでしょうか?
(この……2段目の変化直後を叩く!)
カキーン!!
『打った!!』
雷轟さんの狙いは2段変化目の直後でした。結構難しいと思いますが、雷轟さんのセンスならきっと良い結果となるでしょう。
(成程ね~。これが雷轟ちゃんなりの覇竹って訳か~)
(清本さんが得た覇竹とは、また違うスイングでしたが、勢いはまさに覇竹そのもの……。会得、おめでとうございます)
打球は球場を大きく越えたホームラン。体勢を大きく崩しながら打てたのも、雷轟さんのパワーありきでしょう。何にせよ逆転に成功しました。
「ナイバッチ~!!」
「ありがとう!」
雷轟さんはベンチで手荒い祝福を受けていました。
「特別練習メニューの成果が出たようね」
「うんっ!いつもよりかなり速くスイングが出来た気がする。球の見極めもギリギリまで出来そうだよ!」
「ナイスswingデース!」
スラッガー3人は特にベンチからの祝福が大きいです。
(しかし喜んでばかりもいられませんね)
問題はこの裏のイニングにもありますから……。
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