最強のスラッガーを目指して!【本編完結】   作:銅英雄

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番外編 二宮瑞希の白糸台生活 2年目夏の都大会⑳

二宮瑞希です。新越谷と梁幽館との激闘は新越谷の勝利で幕を閉じました。

 

「また新越谷には勝てなかったか……」

 

「去年の夏とは違って、今年は対等だった……。それが故に余計に負けたのが悔しく思える」

 

去年の新越谷側は色々と温存した状態でしたからね。言い訳にして良い訳ではありませんが、朱里さんと武田さん、雷轟さんを上手く温存したのが活きた試合でした。

 

(そして今年は多少の条件はちがえど、それでもほぼ対等だった……。強いて言うなら、新越谷側が陽春星さんを隠していた程度でしょう)

 

それでも誤差程度の差しかありませんね。新越谷の総合力も日に日に上がっていっている……という事でしょう。

 

「……私達は梁幽館に顔を出して帰るが、二宮はどうする?」

 

「私は少しこの辺りを彷徨いてから、白糸台へ帰ります」

 

「じゃあまたどこかで……」

 

「どこかでまた、お会いしましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中田さんと陽さんの2人と別れ、私は白糸台へ帰る前の予定を頭の中で考えていると……。

 

「……本当は」

 

(この声は……はづきさん?)

 

はづきさんの声が近くで聞こえたので、その方向に向かうと、朱里さんとはづきさんが何かを話している場面が見えました。

 

(通り道なのですが、ここで正面を横切るのはなんか空気が読めていないようで癪ですね……)

 

盗み聞きの形にはなりますが、ここは2人に見えない所で待機しておきましょう。

 

「本当は……私は登板予定じゃなかったんです。新越谷と試合をする前の試合で私は弥生ちゃんと継投してて、新越谷との試合では和美先輩を完投させるつもりでした……」

 

梁幽館本来の予定では、はづきさんを投げさせるつもりはなかったようです。恐らく友理さんが新越谷の試合中の成長を予期してのはづきさん登坂だったのでしょう。

 

(それでも新越谷には僅かに届きませんでしたが……)

 

「でも実際は違った……。試合前日に和美先輩が新越谷を抑え切れなかったら、私に投げさせるつもりだったみたいなんです。私は直前まで知らなかったのに……」

 

恐らくはづきさんなら遠慮する……と思ったのでしょう。私ならはづきさんを強引に説得します。

 

「それでも今日の和美先輩なら、きっと新越谷の打線を抑えられていたんですよ!私じゃ、新越谷の勢いを止める事は出来なかった……!」

 

「……それは違うんじゃない?」

 

「えっ……?」

 

「吉川さん達は橘になら後続を任せて大丈夫だって判断したから、交代を提案してたんだと思う。橘にギリギリまで言わなかったのは、橘が遠慮してしまうから……」

 

「そ、それは……」

 

朱里さんも全く同じ事を思っていますね。普段懐かれてるだけあって、はづきさんの事を理解しています。

 

「で、でも和美先輩は私よりも凄い投手で……!」

 

「確かに今の吉川さんは凄まじい勢いで成長していってるね。でもそれは橘だって同じだと思うよ」

 

「私も……?」

 

「橘は自覚しやすい方だと思うから言うけど、去年の夏大会が終わった後に猛練習して、その結果が今の橘になってるんじゃないかな?その過程で梁幽館の全部員に頭を下げて色々やってたみたいだしさ」

 

「……っ!」

 

以前に友理さんから訊いた話では、はづきさんが投打様々な場面で役に立ちたいと梁幽館の部員全員に頭を下げて、ありとあらゆる練習方法を訊いて、自分のものに出来そうなものはすかさずに自分の物にしていたそうです。雷轟さんもそうですが、はづきさんの千頭も凄いですね。

 

「……まぁこれ以上は私が言っても仕方ないし、あとは梁幽館で話し合ってね」

 

「ま、待ってください!最後に1つ……良いですか?」

 

「……良いよ。どうしたの?」

 

はづきさんが最後に訊きたいのは、朱里さんが投げたスクリューについてでしょうか?

 

「私に投げた最後の1球……スクリューですよね?今まで投げてこなかったのに……」

 

「そうだね。私もここまで本格的なものを投げるつもりはなかったよ。右肩のリハビリも続けている訳だしね。だから橘に投げたのが特別」

 

「私にだけ……?」

 

「橘は私に対して『せんぱい』って敬称で呼ぶよね。それはなんで?」

 

「そ、それは朱里せんぱいが……私が野球を始める切欠になったから、憧れだから……」

 

「リトル時代のある試合で私が投げているのを見て、橘は野球を始めようとした訳だ?」

 

「そう……ですね。私にとっては雲の上の人だったから……」

 

「でもシニアでは私と一緒のチームだった……」

 

「それは本当に幸運だったと思います。憧れの人と同じチームで野球が出来るって……。まぁ私じゃアンダースローは無理だったんですけどね。私自身も左利きですし……」

 

「話を戻そうか。私があのスクリューを投げたのは……橘が私に憧れていたのと同じように、私も橘はづきという投手をリスペクトしていたんだよ」

 

「朱里……せんぱいが?」

 

はづきさんが早川朱里という投手を尊敬していたように、朱里さんもまた橘はづきという投手に敬意を抱いていた……。あのスクリューはその想いで生み出されたのでしょう。

 

「そう。だからスクリューを投げる時は橘だけにしようって思ってたんだよ。いつ来るかわからない機会だったけど、それは思ったよりも早く来た訳だしね」

 

「まさか……ずっと私に投げる為に……!?」

 

「まぁそんなところ。最後に1つ……」

 

「私に憧れるのは結構。そういう目で見られるのも悪い気はしないしね。でも……私自身、橘とは対等なライバルでありたいんだよ」

 

「…………!」

 

「だからいつまでも『せんぱい』呼びだと対等な気がしないから、それも早い内に卒業してね?」

 

「あり……がとう。ありがとう!朱里!!」

 

「礼を言われるような事は何もしてないけどね。じゃあね橘」

 

朱里さんとはづきさん……。2人が対等な投手のライバルとしてこの場に登場しましたね。

 

(良かったですね。はづきさん……)

 

2人はこれからもより強くなるでしょう。

金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?

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