二宮瑞希です。新越谷と咲桜の試合の翌日。私はある情報を入手する為に、埼玉まで足を運んでいます。
「それで明日の先発ですが……」
用事の終わった私は新井さんと通話で明日の決勝戦について話し合いをしています。
『……正気か?正直かなりリスクが高いぞ』
「承知の上です。準決勝までの試合は特に危なげもないのが問題でした……。決勝戦の相手はあの十文字さんのいる日の出高校です。しかしチャンスはここしかないでしょう」
『まぁ確かに準決勝までの相手は白糸台にとって脅威にならなかったのも事実だ……。わかった。その提案を受け入れよう。責任は私が持つ』
「ありがとうございます」
そうして新井さんとの通話を終えました。これで明日の試合のプランが決まりましたね。
「何が……何が駄目だったのかな?私のアドリブが弱かったから?だから変化の勢いが上がった一ノ瀬さんの球を捕れなかったの……?」
「珠姫ちゃん、大丈夫かな……?」
「こればかりは本人次第な気がするけどね……。というか雷轟はもう大丈夫なの?」
「強くならなきゃって想いはあるけど、3日後の決勝戦で借りを返せば良いかなって思ってるんだよね」
白糸台に戻ろうと歩いていると、どこかで聞いた事のある声が聞こえました。
(この声は朱里さんと雷轟さんと山崎さんですか……)
「……そこで何をしているんですか?」
つい声を掛けてしまいました。まぁ追い込まれていそうですし、助け船を出しておきましょうか。
「二宮はどうしてここに?」
「私は今から白糸台へ戻るところです。ここ数日は西東京と埼玉の往復ですね」
主に新越谷の試合観戦と埼玉で拾える情報を集める為ではありますが……。とりあえず朱里さんから事の顛末を聞きました。
「成程……。捕手としての自信と、これまでの経験が崩れる感覚がした……という訳ですね」
「二宮さんは……二宮さんはこういう時にどうすれば良いと思う?」
山崎さんは追い込まれていますね。敵である私にアドバイスを求めるとは……。
「……私はシニア時代に一ノ瀬さんとバッテリーを組んだ事が何度もありますので、山崎さんのような無様な結果にはならないでしょう」
「ぶ、無様……。で、でも初見だったから、不意を突かれたところもあったし、私もまだまだなんだなって思ったよ」
県対抗総力戦では組んだ事のない投手と組む可能性があります。初見だから……という理由は通用しないでしょうね。
「そういえば二宮は一ノ瀬さんの変化球を初見で難なく捕っていたよね?その時の経験を話せば良いんじゃないの?」
「私のですか?」
「き、訊いても良いかな?」
私は初見の相手でも特に苦もなく捕れていますが……。
「私の場合は……投手の様々な情報を収集し、ありとあらゆる可能性を廻らせ、自分にとっての想定外を1つでも減らす事が大切だと思っています」
「…………」
「近い将来、山崎さんと一ノ瀬さんがバッテリーを組む可能性もありますし、多くの事を考えた方が山崎さん為にもなりますよ」
山崎さんはどこか憑き物が落ちたような表情をしていました。どうやら悩みは解決したようですね。
「私の為……。うん、ありがとう二宮さん」
「礼を言われるような事はしていませんよ。山崎さんが、山崎さんなりの解答を見付けただけです」
本当に、私は何もしていません。
「それでも言わせてほしいんだ。二宮さんの言葉で私なりの答えが見付かったから」
「そうですか……。ではもう1つだけ言わせてください。これから先、山崎さんが今日みたいな悩みを抱えたなら、自分が野球を、捕手を始めた切欠を思い返してみてください」
「私が捕手を始めた切欠を……?」
「その思いが活力になる事もありますからね。私も辛い時は似たような事を思いました」
主に幼少期ですね。
「……わかった。私なりに色々考えてみるね!」
「それでは私はこれで失礼します。決勝戦、良い試合を期待していますよ?」
これで山崎さんの方は心配ないでしょう。
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