二宮瑞希です。決勝戦に向けてのミーティングもそこそこに、夕涼みに来ていると……。
「はぁ。非道さん達に勝利を献上したかったなぁ……」
和奈さんが溜め息を吐きながら、今日の敗北にボヤいていました。和奈さん的には非道さんにはかなりお世話になっていたでしょうから、余計に悔しく思えてしまうのかも知れませんね。
「お疲れ様です。和奈さん」
「瑞希ちゃん……」
スルーするのもどうかと思うので、和奈さんに声を掛けます。和奈さんの様子は元気がないというよりかは、何か腑に落ちないといった感じでした。
お疲れ様。それにしても……。また白糸台には勝てなかったよ」
「まぁ対洛山に対して有効な鋼さんを先発に回しましたからね。それでも私達はかなりギリギリの勝利でしたが……」
これは無論本心です。何かがズレていれば、負けていたのは私達でしょう。
「……鋼さんが私達相手に有効だって、なんで今になって実行したの?」
和奈さんは香菜さんの先発に対して疑問に思っていますね。これまでの洛山戦は新井さんが投げていたので、そこに引っ掛かるのも無理もないでしょう。私が向こうの立場なら、ありとあらゆる理由を考えます。考えうる限り考えます。
「何故今になって……ですか。確かに香菜さんと洛山の相性については当初から気付いていましたが、その結論が今になったのは、獄楽島での合宿のお陰になるでしょうね」
(きっとあの地獄の合宿がなければ、例年通り新井さんが投げていたでしょう。そして打ち合いが始まっていたでしょう)
黛さんもそうならないように、とっておきの何かを投げていたと思います。そうなってくれば、また未来も大きく変わるでしょう。
「あの合宿が……?」
「はい。香菜さんが白糸台の中で1番伸びています。そして地獄の合宿を経て、新井さんに負けないレベルのエース投手として成長しました。正直それがなければ、洛山戦は新井さんが投げていたでしょう」
その試合の結果は打ち合いの末、洛山の辛勝と思っています。
「むしろ今日の試合内容なら新井さん先発だと仮定すると、1点差で私達が負ける計算でした」
「そうなの……?」
和奈さんは意外そうに言ってきますが、追い付きそうな段階で黛さんの新球種に手も足も出ない……という結果が私の中で濃厚です。
「洛山の打線は元より速球に強く、特に上位打線を何度も誤魔化せはしなかったでしょう」
これが新井さんを洛山戦で投げさせなかった大きな理由ですね。ストレート1本の新井さんよりも、3種類のスライダーを中心に豊富な変化球と速いストレートを織り交ぜられる香菜さんの方が、力任せの洛山相手には有用です。
「でも……。決勝戦では私達よりも打線が強力な遠前と試合するんだよね?」
「そうですね。しかし戦う舞台が準決勝と決勝戦ではまるで違うので、新井さんが先発で成り立ちます。むしろ現状況で香菜さんを決勝戦で投げさせる訳にはいきません」
そして新井さん以外に遠前高校の相手は不可能でしょう。
「それに新井さんはこの決勝戦に向けて色々と仕上げています。そう簡単には私達も負けません」
とは言っても、ストレートのノビとキレの向上くらいしかやる事がない訳ですが……。
「そっか……。決勝戦、頑張ってね!」
「なるようにしかなりませんが、無論私なりに全力を尽くします」
和奈さん達の想いも背負って……頑張っていきましょう。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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