黛さんの面妖な球に観客席は大きな盛り上がりを見せています。私としてはもう少し静かに観戦したいところではありますが……。
『な、なんと黛選手、分身魔球を投げてきました!』
『分身……という比喩表現で言うと、現代の魔球とも言われるナックルボールがそれに該当しますが、黛選手が投げたのはブレた球がカーブ方向か、シュート方向に曲がる……まさしく魔球と呼ぶに相応しい球ですね』
予測不可能という意味合いでは、黛さんは魔球の使い手ですね。
(しかし5年前には本当の意味での魔球が飛び交っていました。そして今年のこの時期にも、同じような事が起ころうとしている……)
早急に静華さんに対策を訊かねばなりません。全ては和奈さんを守る為に……。
『カーブとシュートは変化方向が逆ですし、途中までの軌道が同じなら、変化を読むのは難しいんじゃないでしょうか?』
『そうですね……。変化を読むには先程金原選手がやっていたように、投げられてから捕手のミットを確認する事で、変化方向を見定める……というやり方がありますが、非道選手はダブルミットスタイルを用いる事によって、変化を読みにくくさせています』
いずみさんが取っていた手段が現状では尤も有用ですね。雷轟さんのように柔軟な発想があれば、また違ってくるのでしょうが……。
「京都選抜は逃げ切りを仕掛けてきましたね」
「しかもここから更に突き放すチャンスとも来たもんだ……。これは東東京選抜の方も何か手を打たないと、負けに直結しかねない……」
朱里さんはそう言いますが、勝負は既に決しているでしょう。そしてゲームメイクをここまで上手く運んだのは、間違いなく非道さんですね。
そして8回表。
「あっ、東東京選抜も投手を交代するみたいですよ!」
「えっ?このタイミングで?黛さんの交代に合わせたのかしら……」
「とりあえずは京都選抜から流れを奪取する為のものと思われますが……」
恐らく手遅れでしょうね。東東京選抜ではロジャーさんが指揮官をしていそうですが、後手に回ってしまっています。
「どんな球を投げるんだろう……?瑞希先輩は何か知ってますか?」
「……彼女は出身地の香港では敵なしと言われるレベルの投手ですね」
マウンドにいるのは、ライトにいた鐘嵐珠さんですね。出身地の香港では敵なしと有名でした。
『ほ、香港では敵なし!?』
「日本にまで知名度が届いていないのは、彼女が香港でやってきた野球と、日本でやる野球の方向性が違うからだと思われます。現に彼女は最近まで野球部に所属していませんでした」
問題は何故今頃になって、野球部に所属しているか……という点ですね。
「じゃあ今彼女がこの場にいるのは……?」
「野球部に所属していなくても、『日本での野球経験が累計1年以上』という条件が当てはまれば、県対抗総力戦には参加可能です。今では彼女が通う虹ヶ咲学園の野球部に入っています」
(それにしてもまさか『香港最強』とまで呼ばれていた鐘嵐珠のピッチングが見られるとは思いませんでしたね。情報によりますと、風薙さんに匹敵する球を投げる……と聞いていますが……)
ズバンッ!
『ストライク!』
「は、速い……」
(どうやら噂に違わぬ剛球のようですね)
本来は他人事ではないのでしょうが、この試合は既に決しています。この豪速球も観客席で見納めとなるでしょう。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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