新越谷の攻撃は2回表、3回表と無得点で続きます。3回表の梁幽館の攻撃も失点はなしなので、まだ1対1の同点ですが、少し流れが悪いですね……。
「あ~。2回に続いて3回も無得点か……」
「相手は埼玉の4強常連校。そう甘くはないという事ですね」
「こりゃもう一層の事柵越えのホームランを狙っていくしかないね!」
「それが簡単に出来るなら苦労しません」
吉川さんは2番手で新越谷側は吉川さんの対策を念入りにしてるとはいえ、梁幽館の守備陣営がその上を行っていますからね。
「……いや、もしかしてあの子ならそれが出来るんじゃないかな?」
「あの子?」
「……ああ、彼女の事ですね」
「そそ。1回戦からベンチみたいだけど……」
(確かに彼女なら、雷轟遥ならそれを可能にするでしょうが……)
私の予想が正しければ、雷轟さんは完全なダークホースとして見ている筈……。だとしたら出すタイミングを伺っていそうですね。
「……恐らく朱里さんもそのタイミングを見計らっているでしょう」
「まぁ少なくともそれは今じゃなさそうだもんね~」
「ねぇ、あの子って誰?」
そういえば和奈さんはまだ雷轟さんと面識がなかったですね。影森戦の後に朱里さんと会った時は武田さんと川口息吹さんしかいませんでした。
「和奈はまだ会った事がないんだっけ?それならこの試合の終盤をお楽しみにって事で♪」
「ず、随分焦らすね……」
「期待のさせ過ぎは良くないですよ?」
それよりも試合ですね。状況としてはワンアウト二塁・三塁まで進んだところですか……。
「梁幽館はどう出るかな?」
「確実に点を取るならスクイズ、アウトカウントを稼ぎたくないならヒッティングでしょうね。待球で四球を狙うのもありではありますが……」
スクイズ警戒でここは1球外したいところですね。
「ウエスト球!」
「新越谷が読み勝ったね!」
しかし高代さんが強引に当てにいきます。
ガッ……!
打球は打ち上げたのですが、日射しに当てられて捕球が出来ずにボールが落下しました。幸い点は取られていませんが……。
「うわー。これはついてないね……」
「捕れた打球だっただけに、これは不味いかもね……」
ワンアウト満塁のピンチで、4番の中田さん。このままでは押し出しも視野に入れなければならないかも知れませんが……。
「……どうやらピンチを切り抜ける術を選ぶようですね」
「えっ?あっ……」
「朱里ちゃんがマウンドに!?」
なんとライトにいた朱里さんがマウンドに上がりました。武田さんはファーストに、中村さんがライトになります。
「この局面で出て来るって凄い度胸だね~☆」
「ですが新越谷にとっては最適解の一手です。これを見越して朱里さんと武田さんの両方をスタメンに置いたのでしょう」
「しっかしこんなに早く朱里の成長が見られるとはね。梁幽館には感謝だね♪」
「そうですね。朱里さんがシニアからどれだけ成長したのか楽しみです」
ズバンッ!
『ストライク!』
初球は朱里さんがよく投げるストレート(に見せた変化球)……。中田さんは球の正体を探っているのでしょうか?それなら1打席は費やせそうですね。
ズバンッ!
『す、ストライク!』
「え……」
「今のって……ストレートだよね?」
「……そうですね」
今の球はこれまで朱里さんが投げた球とは比べ物にならないレベルで速かったですね。まさか新越谷に入ってから身に付けた球でしょうか?
ズバンッ!
『ストライク!バッターアウト!!』
「…………」
「…………」
「…………」
観客席が騒然としているのに対して、私達は朱里さんのピッチングに言葉を失っています。
「あ、朱里ちゃん、いつの間にあんな球を投げるようになったんだろ……」
「あ、アタシは知らないかな~。瑞希は?」
「……私も知りませんでした。まさかあれほどの球速を身に付けていたとは」
やはり知らないというのが私にとっては1番の恐怖ですね。この試合を観に来た収穫はかなり大きいものになるでしょう。
(あれは間違いなく朱里さんが高校になって得たもの……。球速自体は洛山高校の大豪月さんには遠く及びませんが、恐らくあのストレートにも朱里さん特有の秘密がある筈。あとどれくらいそれを投げるかは知りませんが、分析させてもらいますよ)
更に後続の打者を朱里さんは三振に抑えました。中田さんに投げてきたストレートは1球も投げませんでしたね。もうこれ以上は投げないのでしょうか?
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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