4回裏で、埼玉選抜が無事に先制点を取りました。
「やったやった!埼玉選抜が先制点を取ったよ!」
「う、うん。この1点はかなり大きよ……!」
「埼玉選抜としては、この1点を死守したいところですね」
(そして風薙さんはこれで本気を出さざるを得なくなったでしょう)
大切なのは、埼玉選抜が本気を出した風薙さんから打てるのか……という部分ですからね。
ズバンッ!
『ストライク!』
「え……?何今の?さっきまで打ててたストレートと変わらないよね?」
「あ、あの空振りってもしかして……?」
風薙さんの投げた球にいずみさんは困惑し、和奈さんは過去を思い返していますね。かくいう私も和奈さんと似た感情です。
ズバンッ!
『ストライク!バッターアウト!!』
やはりバットを貫通したかのような錯覚球でしたか。
「えっ?今のって何なの!?打者は確かに真芯で捉えてた……よね?」
「多分以前私に1球だけ投げてきた……バットをすり抜ける球じゃないかな……」
「和奈さんだけでなく、朱里さんにも投げましたし、私も2球程受けました」
球を受けてみた感想としては、普通のストレートと何ら変わりません。やはり投手と打者にしか分からないような球なんでしょうね。
「ちょちょちょ!ちょっと待って!?和奈の言ってたバットをすり抜けるってナニ!?どういう事!?」
「……?そのままの意味ですよ。打ったと思っていたらバットを貫通していました」
いずみさんの疑問に答えた私ですが、いずみさん自身が余り納得のいっていない様子……。
「可笑しくない!?黛さんの時もおんなじ事言ったけどさ、最早これは超次元野球だよ!イナズマナインだよ!!」
「サッカーではなく野球なので、イナズマナインですか……。いずみさんも中々に上手い事を言いますね」
某サッカーアニメのような魔球が沢山見られていますからね。尤も私が仕入れた情報には、本物の魔球があった訳ですが……。
「み、瑞希ちゃん冷静だね……」
「ええ……?アタシが可笑しいのかな?」
「いちいち大袈裟に反応していてはキリがないですよ。それに5年前のエクスリーグでは魔球が流行っていたくらいです」
恐らく先の試合で似たような現象を目撃しそうではありますが……。
「ま、魔球って……?」
「ボールに炎が宿ったり、大地を震わせたり、水や風を纏わせたり、光や闇を帯びたり、それ等に対抗する為に編み出された魔打法が……」
「魔球ってそういう事!?比喩とかじゃなくて、魔球(物理)なの!?」
「取得したのは主に少年少女……12~14歳くらいのスポーツ選手だそうです。それこそ野球だけでなく、サッカー、アメリカンフットボール等々で……。それに比べれば、風薙さんの投げている球はあくまでも普通の球です。攻略方法もきっとありますよ」
思春期に入りそうな少年少女ばかりというのに、引っ掛かりを覚えますね。静華さんにもう少しその辺りを詳しく訊きたいところです。
「い、一応聞くけど、さっき言ってた5年前の魔球(物理)の攻略法は……?」
「先程言った魔打法しかありませんね。まぁ今現在ではその使い手がいませんので、その心配は必要ないでしょう」
無論急に覚醒する可能性も視野に入れなければなりませんが……。
「……今更こんな事を聞くのもなんだけどさ、瑞希はなんでその情報を知ってるの?」
「5年前の当事者の1人だった静華さんに事のあらましは聞きました。そこから過去の情報を調べて……」
「そ、そういえば静華ちゃんは中学2年の終わり頃にシニアに入ってきたね……」
恐らく静華ではが月に行った……という話が関係していると思われますね。フロイスさんが静華さんを迎えに来た……という話でしたが、フロイスさん自身も何かあるのかな……?
「ええ……。前に静華が忍者だって話を聞いた時は話し半分でスルーしてたけど、今の話を聞くと強ち冗談には思えないなぁ……」
静華さんの身体能力の高さを見れば、ある程度は納得いきそうですけどね。
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