上空が気になる状況ではありますが、今は朱里さんの打席に集中しましょう。
「朱里……!」
「朱里ちゃん……!」
状況としては、9回裏のツーアウトランナーなし。朱里がアウトになれば、群馬選抜が優勝してしまいます。
カンッ!
「えっ……」
「当てた。当てたよ!」
ガシャンッ!
『ファール!』
朱里さんが放った打球は、バックネット方向に当たってファール。タイミング完璧でしたね。
「でもなんで急に当てられたんだろ……?」
いずみさんがバットに当たった事に疑問を持っているようです。まぁ傍目から見ると、バットを貫通しているようにしか見えませんからね。疑問を持っていても致し方ない事でしょう。
「7回裏で雷轟さんがバントした事を覚えていますか?」
「あー。なんでバントなんだろって思ってたけど……。もしかしてその行為そのものに意味があるの?」
「私の推測になりますが、あのバントで確かに風薙さんの球を当てる事に成功していますよね?」
「た、確かに……。でも……それってそういう事なのかな?」
和奈さんも気付き始めていますね。それならあとは答え合わせだけです。
「それ以降の打者……特にこのイニングの中村さんと亮子さんは何かタイミングを計っているように感じられました」
「確かに空振りにしては振り遅れが過ぎたよね。亮子も希もミート力に長けてる打者だから、なんか変だなって思ってたんだけど……。まさかそんな意図があるとはね〜」
ここでいずみさんも気付いたようですね。
「つまり私の推測としては、打者視点で見えている球が残像の類で、実体はその残像よりも前に進んでいる……という事ですね」
「なんか瑞希の推測訊いてもよくわかんないんだけど……。どっちにしろとんでもない球だよね?」
「でも実体が残像よりも前にいるって、実際はどれくらい前にいるのかわかるのかな……?」
和奈さんの疑問も尤もですね。私の肉眼だと、推測の域を出ません。実際に打席に立たないと、完璧な解答には辿り着かないでしょう。
ガッ……!
「って、朱里打ち上げちゃったよ!?」
2球目はサードへと力なく飛んでいます。
『ファール!』
「あ、あっぶな……」
「肝が冷えたね……」
「次の1球で決まりますね」
埼玉選抜の運命が掛かった3球目。
「朱里!臆しては駄目よ!迷わず振りなさい!!」
この声……。朱里さんの母親である茜さんの声ですね。隣には六道さんもいます。
カンッ!
母親の声援を受けてか、朱里さんが遂に打球を前に飛ばしました。
『な、なんと早川選手が当てた打球がサード方向の地面に減り込んでいます!』
「えっ!?」
「打球が地面に減り込むって、どういう状況!?」
原理は不明ですが、朱里さんは全力疾走で一塁ベースに向かっています。
ズザザッ!
そして渾身のヘッドスライディング。際どい判定ですが……?
『セ、セーフ!』
判定はセーフ。内野安打ですね。
『早川選手、執念の内野安打で次に繋げました!!』
「つ、繋いだ……!」
「遥ちゃんの打順が回ってきたよ!」
いよいよ最終局面ですね。試合のボルテージが最大まで高まっています。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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