新越谷と梁幽館の試合は中盤戦に入って4回表。この回の先頭打者は……。
「朱里からか~。前のイニングでのピッチングで完全に流れを持ってったから、向こうとしては朱里を塁に出したくないだろうね」
「それは朱里さん自身もわかっている事でしょう。だから朱里さんからすれば、ここは必ず出塁したい場面です」
打者としての朱里ちゃんは出塁を意識する事が多いんだよね。特に先頭だと……
コンッ。
朱里ちゃんは初球からセーフティバント。これには敵どころか味方も驚いていた。
「今のバントは上手いね~!」
「ですが向こうの対応も早いですね」
サードの対応がかなり早く、捕ってから投げる動作も無駄がなかった。
『セーフ!』
朱里ちゃんのヘッドスライディングの甲斐あって、判定はセーフ。新越谷からしたらこのランナーは大切にしたいところだよね。
ガッ……!
次の打者が打球を打ち上げて、レフトフライ。ほとんど定位置で捕球体勢に入って……。
『アウト!』
アウトとなる。しかしアウトコールの瞬間、朱里ちゃんが走り始めた。
「朱里ちゃんが走った!」
「良いスタートと走塁ですね。これならタッチアップは成功と見ても良いでしょう」
『セーフ!』
タッチアップは無事に成功。ほとんど奇襲みたいなものだから、上手く不意を突いたね。
「浅いフライからのタッチアップに反応が遅れたお陰でセーフになりましたか……。まぁ尤も朱里さんが僅かな隙を見逃すとは思えませんね」
「確かにね~。でもアタシ等でようやくその動機に気付くレベルなんだし、朱里を知らない人は引っ掛かっても無理ないっしょ?」
朱里ちゃんって僅かな隙すら見逃さない敏感な人間だから、レフトの捕球後の緩みの隙に走り始めたんだよね。目敏い……。
「それが朱里さんの狙いでしょうね。意外と狡猾なところがあります」
(いやー、それは瑞希の影響を受けたんじゃないかな~?)
「……何か?」
「なんでもないっ☆」
多分瑞希ちゃんの影響を受けたんだろうね。私もそういう部分は見習うようにしてるし……。
カンッ!
次の打者は初球から当てるも、ショートゴロ。打球が深かったから、進塁打で朱里ちゃんも三塁に進めたね。
「ああっ!ヨミさんと朱里さんで練習したのに、どん詰まりでした!」
打席では打ち損じた嘆きの声が聞こえた。今打ったのは大村さん……だったかな?スイングに勢いを感じたよ。
「あれでどん詰まりなんだ……。まるで和奈みたいなパワーヒッターを見ている気分だよ」
「強ち間違ってはいないのではないですか?大村さんは中学の剣道大会で全国優勝を果たしています。野球に関しては素人でも、剣道で鍛えられた体幹とリストはかなりのものですよ」
「剣道かぁ……。道理で力強いスイングを感じる訳だよ」
それにしても個人戦で全国優勝かぁ……。前の試合でもホームランを打ってたし、それ相応の実力は身に付けてるって事だよね。
ズバンッ!
『ストライク!バッターアウト!!』
次の打者が三振に倒れてチェンジになったものの、新越谷の流れは継続。そしてこの流れを作っているのは間違いなく朱里ちゃんだよね……。
「流石朱里さんですね。流れの掴み方を理解しています」
「あのリリーフから流れが新越谷にあるままだしね。やっぱ敵になると厄介だね~」
「……でもそんな朱里ちゃんと勝負する為に私達は散り散りになったもんね」
私も瑞希ちゃんもいずみちゃんも……。朱里ちゃんとの勝負を心待ちにしてるんだよ?
「そうだね~。この埼玉だと梁幽館に友理さんとはづきと……」
「あとは椿峰に1人、咲桜に1人……。誰かが新越谷を崩すか、それとも新越谷が全国に勝ち上がるか……。何れにせよ私達が新越谷と対戦するのは全国の舞台か練習試合だけですからね」
先に対戦するか、後に対戦するかの違いだけど、全国の方が臨場感があるんだよね。願わくば新越谷とは全国で対戦したいね。
「まぁアタシは一足先に新越谷と戦ったけどね♪」
「いずみちゃん、羨ましい……」
まぁそれはそれとして、一足先に新越谷と試合をしたいずみちゃんは羨ましいんだよ……。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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