試合は7回表。新越谷の打順は1番からの好打順。
『ボール!フォアボール!!』
二者続けて出塁。吉川さんにとって厳しい展開になってきたね。
「ありゃりゃ……。梁幽館はそろそろ投手の代え時なんじゃない?」
「事はそう簡単ではないと思いますよいずみさん。梁幽館程の名門校ともなると、セーブを確実に決めるべくリリーフのタイミングはかなり慎重になりますからね」
「で、でも吉川さんピンチだよ?あの状態で中軸を抑えられるかどうか……」
特に4番の中村さんは長打力こそないものの、確実に繋ぐアベレージヒッター。塁が進めば、確実逆転の一打を放つと思うんだよね。
「それも一理ありますね。だから代え時が難しいのです」
瑞希ちゃんは代え時が難しいって言ってたけど……。
「……どうやら投手を代えるようですね」
梁幽館側は投手交代を選択。後がないのかな……?
「まぁ展開厳しいからね~」
「でも誰に代わるんだろ……?」
「候補としてはエースの中田さんのように、決定的な実力を持っている投手でしょう。梁幽館の投手陣を見ると、他の候補は……」
吉川さんと交代でベンチから出て来たのは……。
「あっ、はづきちゃんが出て来た!」
橘はづきちゃん。私達と同じシニア出身で、野球経験はシニアから。朱里ちゃんに憧れて野球を始めた子。センスがあって、シニアでもベンチ入りを果たしてたけど、梁幽館でもはづきちゃんの力は健在みたいだね。
「そういえば1回戦でもはづきはリリーフで投げてたね~」
「その試合の映像を見ましたが、彼女のスクリューはシニアの時よりも進化していました」
そうなんだ。はづきちゃんの投げるスクリューは一朝一夕で投げられる代物じゃないし、打てない打者はてんで打てない球なんだよね。特に左打者は苦戦するイメージだった。
そんなはづきちゃんは3番打者をキャッチャーフライに抑えて、4番の中村さんと対峙する。しかし……。
カキーン!!
「打った!?」
今投げたのだってシニア時代では見た事のない速いスクリューだ。恐らく中村さんのような左打者に対して詰まらせた当たりを狙わせる変化の小さなスクリューなのに、中村さんはそれをいきなり完璧なタイミングで合わせたんだ……。
「うわー。入るかなこれ!?」
打球はそのままライト方向に伸びていき、そのままスタンドへと入った。
「は、入った……」
「逆転した……」
「やりましたね」
逆転スリーランホームラン。これで新越谷が2点リード。更に……。
『ボール!フォアボール!!』
まだ新越谷の追い上げは終わらないと言わんばかりに、朱里ちゃんが四球を選んだ。そして……。
「おっ!」
「来ましたね……」
7番打者に代打として登場した1人の女の子。彼女が出た瞬間、瑞希ちゃんといずみちゃんの目の色が変わった。
「あの子がさっき2人が言ってた?」
「そうそう!あの子打つ時は凄い打つよ~?」
「彼女のバッティングだけなら和奈さん、貴女にも負けませんよ」
「本当に!?どんなバッティングをするんだろ……?」
ズバンッ!
『ストライク!』
2球続けて見逃し。多分2人が言ってた雷轟さんはタイミングを伺ってるんだね。
「見逃しかぁ……」
「あれは打つタイミング……絶好球を待ってるんだよ」
「和奈はわかるんだ?」
「うん。私も似たような経験が何度もあったから……」
「同じスラッガーとしての感覚かも知れませんね」
「そういうものなのかなぁ……」
多分勝負は次の1球……。それを雷轟さんは打ってくる。
カキーン!!
予想通り、雷轟さんははづきちゃんの決め球と思われる大きく曲がるスクリューを捉え、その打球はスコアボードまで飛んでいった……。
「うひゃー、あの体勢でよくあそこまで飛ばすね~」
「それにはづきさんの投げたスクリューは決して悪くありませんでした。むしろ雷轟さんに投げた最後の球は本来右打者には手が届かないスクリューです」
「私も1打席だけだと打てないかも。はづきちゃんがあんなに良い球を投げるなんて。それにそれを打ち抜いた雷轟さん……」
はづきちゃんはスクリューを複数に分けて投げるみたいだし、散らされると尚更打てない……。決め打ちに成功した雷轟さんの打者としてのセンスはかなりのものだ。
「おっ、和奈にもライバル出現?」
「うん……。彼女とは1回話してみたいかも」
雷轟さんは私にとって、良いライバルになると思う。私に足りない何かを彼女は持ってるだろうから……。身長じゃないよ?
『ゲームセット!!』
試合はそのまま新越谷が逃げ切り、7対3で新越谷と梁幽館の熱戦は幕を閉じた……。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
-
見たい
-
見たくない