試合は6回裏まで進んだ。
ズバンッ!
「ナイスボール!」
マウンドでは朱里ちゃんが投球練習。入念に練習を重ねる事で、私達に対抗する術を講じている……。朱里ちゃんは本当にストイックだよね。
(この回は私から……。なんとしてでも、朱里ちゃんから打ってみせる!)
それが4番としての役割だから!
「朱里ちゃんと勝負……!」
朱里ちゃんはいつものようにポーカーフェイス。少しは意識とかしてくれてるのかな……?
(初球はストレート!)
朱里ちゃんが振りかぶって投げる。朱里ちゃんの球を本気で打つには、細かなリリースポイントの差違とかも見なきゃいけない……。
(これは……速い方のストレートだ!)
カキーン!!
『ファール!』
「場外まで飛んで行ったな……」
「味方としては頼もしい限りです」
タイミング完璧だったのに、ファールだなんて……。まだ朱里ちゃんの球を知り切れてないっていうの?
ズバンッ!
『ストライク!』
(しまった!SFF!?朱里ちゃんの速い方のストレートと球速が同じだから思わず釣られてしまったよ……。次はちゃんと見極める……!)
ストレートと同じ球速の変化球なんて、見極めが困難過ぎるよ……。
(でもやらなきゃ……!例え三振したとしても、後続に繋がるように足掻くんだ!)
「今投げたのはSFFか……。早川の持ち球はかなり豊富だな。1打席で打つのは厳しそうだ」
「ですが攻略法もあります」
「攻略法……?」
「まぁそれについては私が打席に入って確かめます。シニア時代と変わっているかどうかを……」
瑞希ちゃんには何かしら心当たりがあるみたい。
(それならあとは瑞希ちゃんに任せる……?いや、それじゃ駄目。私は私で攻略の足掛かりを見付けるんだ!)
『ファール!』
「しかし今のファールで15球目か……。清本も随分と粘るな」
「和奈さんはスラッガーでありながらも、かなり粘り強い打者です。練習試合の時でそれはわかっている筈ですが……」
「まぁ……な。改めてそう思ったんだよ」
瑞希ちゃんを始めとする周りが私を評価してくれている……。それが私の力となってくれるんだ。
(だからきっと朱里ちゃんから打ってみせる!)
次で16球目……。
ガッ……!
(しまった!?打ち上げちゃった……!)
「打ち上げましたね」
「だがフラフラとしながらも打球は伸びて行ってるぞ?あのまま入るんじゃないか?」
失速気味の打球でわかる。あの打球は外野が金網ギリギリのところでグラブに収まる当たりなんだよ……。
『アウト!』
打ち取られちゃった。私もまだまだだよ……。
「惜しかったね和奈」
「完全に詰まらされたよ……」
「朱里さんが最後に投げた球はシニアでも殆んど投げなかったので、意表を突かれましたね」
「朱里せんぱいがあれを投げるのは主に紅白戦で和奈ちゃん相手にだもんね」
最後に朱里ちゃんが投げたツーシーム……。シニアの紅白戦でも私にだけ投げてくる特別な球は、シニア時代のそれよりも更にノビとキレが増してたよ。
「でも2人共ナイスファイトだったよ!」
「ええ、どちらが勝っても可笑しくなかった……。特に速いストレートとSFFは良かったわ」
(朱里が清本さんに投げたのはツーシーム……。他の変化球に比べて決め球に匹敵する球威だったわね。新越谷に入ってからの朱里の成長を私は余り知らない。それは朱里が新越谷に残りたいが為に私達に内緒で練習した成果……と考えるべきかしら)
監督2人の称賛を糧に、私自身の見直しも兼ねてまた頑張ろう。頑張り続ける事が、今の私の野球なんだから……!
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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