最強のスラッガーを目指して!【本編完結】   作:銅英雄

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県大会決勝戦!新越谷高校VS美園学院⑥

「すみません萌さん……。私達が前に出過ぎたばかりに……」

 

「気にしなくても良いわ。少なくとも2点目は事故だもの。1点目も貴女達の守備の裏を突いた良いバントだったしね」

 

(……正直私も川崎さんを甘く見すぎた節がある。それが先程の失点を招いてしまったわ)

 

「まだ試合は終わっていない。攻撃のチャンスはこの回を入れて3回もあるんだから、絶対に勝ち越すぞ!」

 

『おおっ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5回裏。向こうの打順は6番からだけど、園川さんにも回る。

 

(園川さん自身は下位打線でも、打撃もこなす実力者……。武田さんが簡単には打たれないとは思うけど、また雷轟のエラーみたいなのがあったら困るんだよね……)

 

まずは武田さんが6番を三振に抑える。武田さん、今日も調子が良さそうだな……。

 

『7番 ピッチャー 園川さん』

 

園川さんは美園学院の打線でもクリーンアップを打てるレベル。下位打線を打っているのは投球に専念したいからなのかな?でもそれなら9番を打つ筈だし、よくわからないな……。

 

 

カンッ!

 

 

武田さんの強ストレートに合わせて初球打ち。打球はレフト前。ノーアウト一塁になってしまったか……。

 

 

スカッ。

 

 

「あっ!?」

 

……この子やらかしすぎでしょ。あの打球は普通に処理出来るコースなのに、トンネルしちゃったよ。

 

「カバーは任せろ!」

 

雷轟がレフトに起用されるようになってからはセンターの主将がレフト寄りに守っている。これはもしも雷轟がトンネルしてしまった時のカバーをしてもらう為でもある。

 

(カバーが早いわね……。二塁は無理か)

 

打った園川さんは一塁でストップ。頑張れば二塁までいけるけど、それをしなかったのは体力温存も兼ねてだろう。まぁそれはそれとして……。

 

(とりあえず試合が終わったら雷轟の守備について徹底的にミーティングする必要があるね……)

 

藤井先生に頼んで1000本ノックとかどうだろうか……?

 

(な、なんか嫌な予感がするよ……。具体的に言うと学校に戻ったら地獄のノックが待っているようなそんな予感が……)

 

 

カンッ!

 

 

8番打者も初球から合わせてきた。エンドランを打たれてワンアウト一塁、三塁に……。

 

(今のヒットは痛い……。これだとこっちがゲッツーを取らない限り三森朝海に打順が回ってしまう)

 

(点は取られたくない……。ランナーが三塁にいるし、一塁も埋まっているから、ここはゲッツーシフトを敷いていこう)

 

捕手の山崎さんの指示で内野はゲッツーシフト。ワンアウトで一塁と三塁にランナーがいるからこそ出来るシフトだね。

 

武田さんはあの魔球を中心に投げている。カーブ系統の変化球だから、詰まらせてゲッツーを取れるように出来る訳か。

 

『ストライク!バッターアウト!!』

 

3球続けてあの魔球を投げて三振。次の打者は……。

 

『1番 セカンド 三森朝海さん』

 

ツーアウト一塁、三塁で三森朝海……。ここまで武田さんの投球数は80球を越えている。更に三森朝海はカットが上手い打者だ。このピンチを無得点で凌げたら私達の優勝はほぼ決まりなんだけど……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この決勝戦は互いに攻撃面では小技をぶつけあって、守備面では両エースが奮闘している……。良い試合だな」

 

「フン!私はチマチマしてて好かんな!もっと豪快なホームランとかを私は見たいんだよ!!」

 

「それを得意としている新越谷の4番さんは歩かされていますからね~」

 

「確かに……。これって本当に新越谷が勝てるの?」

 

「どうでしょうね。ですが新越谷は選手層が圧倒的に薄いのが痛手になっているのは確かです」

 

「それに次は3姉妹の中でもカットが上手い朝海だもんね」

 

「この場面が武田さんにとって正念場になりそうですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ツーアウト一塁、三塁……。ここは満塁策の方が良いのかな?)

 

でも次の三森朝海は次女の三森夕香程ではないにしても、パワーもあるからもしもがあると厳しい……。ツーアウトだし、打ち取りにいくのが妥当なのかな?

 

(良い場面で回ってきたわね。武田さんからは打ててないし、ここいらで1本いきたい……!)

 

(……ここを凌げば優勝まで一気に近付く。一塁が埋まっているから、二塁フォースアウトにしやすいし、ここは勝負でいこう。でも朱里ちゃんの話だと三森朝海さんはカットが上手い。粘られると厳しいな……)

 

武田さんの1球目はあの魔球。ピンチの場面なのに、上手く外角低めのストライクゾーンに変化させる。

 

『ストライク!』

 

(これはまるで友沢が投げたカーブみたいだね。それでいて変化の仕方はナックルに近い……)

 

武田さんのあの魔球は未だにどんな球か把握出来ていないけど、種類としては縦スライダーに区分しても良さそう。

 

『ストライク!』

 

2球目も外角低めにあの魔球を上手く決める。これはマジで友沢のカーブの再来じゃないかと見ていて思ってしまう。カットが得意な三森朝海が振れてないし。

 

(腕を振り抜いて……投げ抜く!)

 

3球目もあの魔球。コースは先程の2球と同じなので、手が出なければ三振となる。

 

(くっ!私ではこの球は打てないわね。それなら……!)

 

(よし、コースは前の2球と一緒。これでチェ……!?)

 

三森朝海はあの魔球を空振った。しかしバットで山崎さんの視界を遮り……。

 

「振り逃げだ!皆走れ!!」

 

「萌さん、急いで!」

 

(しまった!)

 

三森朝海の振り逃げによって三塁ランナーはホームイン。同点となってしまった……。

 

次の打者と勝負する前に、タイムをかけた。内野陣と芳乃さんと私がマウンドに集まる。

 

「ごめんヨミちゃん。私が落としたせいで……」

 

「気にしない気にしない。まだ同点になっただけだし!」

 

「三森朝海は武田さんのあの魔球を打てないと判断して、バットで山崎さんの視界を遮ったんだ」

 

「……って事はあの振り逃げは狙ってたってのか!?」

 

「そうなるね」

 

これは私が咲桜戦で私が友沢のスクリューに対してやった技だ。私が言える事じゃないけど、小狡いな……。

 

「点を取られてランナーが一塁、二塁になってしまったけど、気にせず後続を抑えていこう!」

 

「勿論!」

 

あとは雷轟がこれ以上エラーしない事を祈る……。




遥「同点になっちゃった!?」

朱里「決勝戦は互いに点を取られたら取り返す……。そんな展開になってるね」

遥「私は決勝戦で勝負してもらえるのかな……?」

朱里「(他の選手にも焦点を当てたいから)多分無理じゃないかな」

遥「そんな!?」

朱里「次回で決勝戦はラストだよ」

遥「優勝するのは果たしてどっちかな!?」

朱里「それが私達だと良いね」

金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?

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