最強のスラッガーを目指して!【本編完結】   作:銅英雄

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全国大会決勝戦!新越谷高校VS清澄高校③

2回表の清澄の攻撃は刀条さんの打順から。

 

(刀条さんは鏑木さんに次いで長打率が高い……。鏑木さんと同じく剣道を続けながら野球をしているハイスペックな人間だ。生半可な球だと打たれるかも……)

 

とはいえマウンドにいる訳でもない私はバッテリーを信じる事しか出来ない訳だけど……。

 

(刀条さん……)

 

私の隣にいる大村さんは神妙な顔をして刀条さんを見ていた。データによれば刀条さんは投手もやっているみたいだから、もしかしたら直接対決もあるかもね。

 

 

カンッ!

 

 

目を離した隙に刀条さんが息吹さんの球を捉える。鏑木さんへの1球以来ムービングファストは投げていないみたいだから、まだ完全に攻略された訳じゃないのが救いだね。

 

持ち球を上手く散らして後続の打者を息吹さんはきっちり3人で抑えてスリーアウト。

 

(ここまで被安打2……。まだ2イニングだけど、決勝戦の舞台でここまでアウトを取れるのは凄いと思う)

 

2回裏は雷轟からの打順だけど……。

 

(優希ちゃん……)

 

(……わかってる)

 

「キャッチャーが立ち上がった!」

 

「敬遠だ!」

 

やはり雷轟には敬遠みたいだね。勝つ為には当然の判断とも言える。

 

(決勝戦まで勝ち進んできたとはいえ、優希はまだまだ素人……。雷轟と勝負させるのは危険過ぎるね)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはり雷轟は歩かされるか……」

 

「まぁ片岡さんの球は速いだけですからね。ストレートに強い雷轟さんと勝負すれば間違いなくホームランを打たれます」

 

「清澄の片岡と新越谷の雷轟……。2人共この春に野球を始めた筈なのに、大きく差を開いているな」

 

「朱里ちゃんが言うには雷轟さんは中学の頃から下積みを続けていたから、その差なのかも……」

 

「多分筋トレの方はもっと前から続けてたんじゃないかな~。それこそ小学生の頃から~」

 

「ウム、借りに筋トレを中学から始めたのなら私のストレートはホームラン等にはならんだろうな。今まで続けていたとして約10年程と見た……」

 

「じ、10年間ずっとって凄いですね……」

 

「気付かない内にそれが趣味になってそう……」

 

「ともあれそんなスラッガーがいると新越谷側も頼もしく思っているだろうな」

 

「………」

 

(1回のトリプルプレーが気になりますね。サードにいた鏑木さんが打球を弾いていなければワンアウトで済んでいましたが、あの動きは……。これも天王寺さんの仕込みでしょうか?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カンッ!

 

 

藤原先輩が三遊間に良い当たりを放つ。外野の守備位置を見る限り抜けると長打コースで雷轟がホームに還れそうだ。

 

『アウト!』

 

「なっ!?」

 

サードの鏑木さんがあの打球に追い付きアウトとなった。二塁近くまで走っていた雷轟は戻れずにダブルプレー。

 

(上手い……。今のプレーは三森3姉妹に匹敵するかも……!)

 

「助かったじぇ!」

 

「気にしないで。どんどん打たせていこう!」

 

(ふっふっふっ……。流れはこっちにきている。このまま主導権を握らせてもらう!)

 

このままだと主導権が向こうに行きかねない。先制点が取れればかなり大きいんだけど……。

 

 

カンッ!

 

 

6番の川崎さんがストレートを捉えて左中間まで飛ばす。これも長打コース……。しかも川崎さんの足なら三塁まで行けそう。

 

「よっしゃ。このまま三塁まで突っ走ってやる!」

 

「………!」

 

(えっ……?)

 

『アウト!』

 

「嘘……。あの当たりも捕られるの!?」

 

川崎さんの打球はセンターにいる刀条さんが捕球した……んだけど……。

 

(守備位置が可笑しい……。レフトは定位置にいたのに、刀条さんはフェンスギリギリから川崎さんの打球を捕りに行った……。さっきの鏑木さんもそうだ。藤原先輩がまるで三遊間にあの当たりを打つ事を予測していたかの如く打球に反応した……)

 

1回のトリプルプレーと言い、さっきの守備と言い、まぐれとは思えなくなってきた……。

 

(シンヤも楓もナイスプレーだ。この打球勘を今までやってきた試合を通してこの決勝戦に間に合わせた甲斐があるってものだよ。シード校と当たった2回戦や準決勝でも出来過ぎなくらいにこの2人は打撃面でも、守備面でも結果を出してきたからな。最早プロでも充分に通用するぞ!)

 

この試合は互いの守備力が大きく影響しそうだ……。頼むからエラーだけは勘弁してよ?誰とは言わないけど!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……今のプレーで確信しました。1回裏のトリプルプレーも狙ってやっていますね」

 

「嘘っ!?あのサードライナーの取り損ないが!?」

 

「……にわかには信じられないが、確かにあのサードとセンターの動きは清澄の中でも頭1つ抜けているな」

 

「あの2人はバッティングも良い感じですね~。強豪校に入ってもレギュラーを取れるレベルです~」

 

「間違いなく洛山には無理な守備だな!」

 

「胸を張って言える発言じゃないだろう……」

 

「しかしこうなると新越谷が劣勢ですね」

 

「川口がここから清澄の打線を上手く抑えられるかにかかっている」

 

「加えて雷轟さんは歩かされている……」

 

(県大会の決勝戦では武田さんが上手く決めましたが、この試合を決めるのは新越谷にせよ、清澄にせよ、誰になるのか見物ですね……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、シンヤも楓も良かったよ!理想以上のプレーだった」

 

「そう言ってくれると嬉しいです」

 

「私達は天王寺先輩に鍛えられて今があるんですから、気にしないでください!」

 

「良い後輩も持って私は幸せだなー。誰とは言わないが、見習えよ!」

 

「何故こっちを見るんだじぇ……」

 

「ま、まぁまぁ……」

 

「……それにしても咲先輩はこの試合も打率5割丁度に調整するんですか?」

 

「うん……とは言ってももう癖みたいなものなんだ。治そうとしたら悪化しそうな気がしちゃって……」

 

「それなら無理はしなくても良いぞ。打とうとする時は咲の好きにしたら良い。リトルでもそうしてたんだろう?」

 

「うん……」

 

(確か咲と朱里はリトル時代に対峙した事があったな……。咲のリトル時代を調べて、朱里が投げる時に打率5割の帳尻を合わせてもらうかな……?)




遥「2回終了。私はまた歩かされたよ!」

朱里「息を吐くように自虐するね」

遥「私が決勝戦で打てないとわかったらショックが大きくて……」

朱里「まぁそれに関してはドンマイとしか言いようがないね」

金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?

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