風薙さんから教わった球を実戦で使えるようになっているか……その確認を兼ねて、風薙さんと1打席勝負を行う事に……。
「彼方が教えてる球ってのは多分『あれ』の事だよね?元になってる変化球はいくつ投げられる?」
「え、えっと……」
私の球を受けてくれるフロイスさんに私が『あれ』の媒体となっている変化球を複数伝えた。
「へぇ……。そこまで数多く投げられるんだ」
「い、一応練習では上手くいっています」
「それなら大丈夫だよ。本番も練習のように投げれば、絶対に上手くいく」
練習は本番のように、本番は練習のようにの理論か……。まぁ私もそれを信じて投げるしかないね。
「2人共準備は出来てるー!?」
「彼方が読んでるし、私は戻るよ。私のミットに思い切り投げてね」
フロイスさんがウィンクをして、私から18・44メートル離れた位置でミットを構える。
(まずはストレート。『あれ』を投げるにはストレートそのものを相手打者にわかってもらわないと始まらないからね)
そう思ってストレートを投げたんだけど……。
カキーン!!
(嘘!?大きい当たりを打たれた!?)
アメリカのシニアで活躍している風薙さんに私の球が通じるとは思っていなかった。でもこんな飛ばしてくるなんて思いもしなかったよ。風薙さん投手だし……。
「う~ん。タイミングが少しずれちゃったかなぁ……」
「相変わらず飛ばすね。気持ち良いくらいに」
「まぁこれくらいならね。そうじゃなきゃシニアで中軸を任せられないよ」
どうやら風薙さんはアメリカのシニアでエースを務めながら、クリーンアップを打ってるみたいだ。あとでフロイスさんから聞いた話によると、風薙さんは時々外野も守ってるらしいし、打撃練習も野手として任せられるから、ここまでやってるものなのかな?
「でも朱里ちゃんの本番はここからでしょ?見せてみてよ。『あれ』の媒体となってる変化球を……」
「……っ!?」
な、なに……!?いつもの風薙さんからは決して感じる事のないこの冷たい気配は……?
(底抜けに明るい風薙さんとは正反対の冷たく暗い圧……。もしかして風薙さんって二面性のある人なの!?)
と、とにかく投げなきゃ!フロイスさんのミットを見て……!
(ここから投げるのはストレートに見せた変化球……!まずはSFFから!)
ズバンッ!
『ストライク!』
「……これはSFFだね?傍目ではわかりにくい良い球だよ」
(バレてる!?)
いくらストレートに見せた変化球が風薙さんから教わった球だからといって、ここまで簡単にわかるものなの!?
「さぁ、ドンドン投げてよ。朱里ちゃんの全力を私に見せてみて……!」
(風薙さんの放つ圧で吐きそう……)
(何度感じても慣れるものじゃないね……)
それからも私は体力のある限り、風薙さんに投げ続けた……。
で、30球くらい投げ続けて……。
「…………」
「あらら、朱里ちゃんがグッタリしてるよ」
「あ、朱里ちゃん大丈夫!?」
「な、なんとか……」
可笑しい……。たった30球くらいしか投げてないのに、この様だ。私ってこんなにスタミナがなかったっけ?
「威圧感打者と対峙すると、体力が通常よりも多く持っていかれるからね。これを機会に覚えておいた方が良いかもね」
「そ、そうですね……」
それを差し引いても、このままじゃ不味い……。
(まぁ彼方の放つ威圧感は常人が放つそれとは比べ物にならないんだけど……)
「ゆっくり休んでてね朱里ちゃん!」
「はい……」
(……わざわざそれを指摘する必要もないかな)
披露がヤバいけど、とりあえずストレートに見せた変化球は完璧に投げられるようになった……と思う。
(あとは私の体力のなさを逆手に取れるように手を打っておいた方が良いかな……?)
現状1つだけ思い付いてるけど、その辺りは二宮とかとも相談しておこう……。
それから1週間……。なんとかストレートに見せた変化球こと偽ストレート(私命名)は完成した。
「それじゃあ私達はアメリカに戻るね!」
「はい。色々とありがとうございました」
「朱里ちゃんの躍進を期待してるよ。いつか私とも勝負してね」
「フロイスさんもありがとうございます」
風薙さんとフロイスさんがアメリカに帰国するので、私と二宮で空港まで見送りに来た。
「朱里さんが大変お世話になりました」
「ううん、気にしないで!私がお節介を焼いただけだし……」
「まぁ彼方にも思うところがあったんだと思うよ?それと君は二宮瑞希ちゃん……だっけ?」
「そうですが……」
フロイスさんが二宮をじっと見る。風薙さんには以前紹介したけど、フロイスさんとは初対面なんだよね……。
「成程成程。朱里ちゃんの相方なだけあるね。君はきっと物凄い捕手になるよ」
「はぁ……。ありがとうございます?」
二宮はフロイスさんの言葉に疑問を抱いているけど、多分それは間違いじゃないと思う。リトル時代も二宮に救われた投手は私含めても多数いるからね。
「そろそろ飛行機の時間だから行くね?」
風薙さんは飛行機に乗りに行ったけど、フロイスさんは微動だにしない。
「フロイスさんは行かなくても良いんですか?」
「ああ、私は自家用ジェット機で迎えが来るから、まだ数時間は日本にいるよ」
じ、自家用ジェット機って……。もしかしてとんでもないお金持ちなの?
「フロイス家は世界的にも有名な名家ですからね。両親はもちろんの事、リリ・フロイスさん本人も年間に株価で数億円は稼いでいるらしいですよ」
な、なんか二宮がとんでもない事をしれっと……。野球以外の情報も集めてるの?
「最近の収支はややマイナスだけどね」
フロイスさんが苦笑いしながら言ってるけど、それでも私達からすれば偉大な人なんだよね……。なんで野球やってるのか凄い気になるよ……。
「朱里さん、これからどうしますか?」
「そ、そうだね……」
二宮に指摘されてハッとなった私はとりあえず体を休める為に、落ち着いて座れる場所へ向かった。
その後フロイスさんが帰るギリギリまで、フロイスさんからアメリカでの野球生活について色々と聞いた。学べる事は多かったけど、なんか釈然としないなぁ……。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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