イニングは進んで5回表。新越谷も洛山も打ち合いを続けており、スコアも13対11となっています。
「大豪月が投げていないとはいえ、あの洛山を相手にここまで食らい付くとはな……」
「黛さんの投げる球の球速が新越谷にとっては丁度打ちやすいのでしょう。それに新越谷もここまで勝ち抜いてきた強豪ですから」
「そうだな。古豪と呼ばれた新越谷はもういない。この場にいる今の新越谷は紛れもない強豪だ」
そのような話を神童さんとしていると、洛山側に動きがありました。
「いよいよですね」
「ああ。大豪月が投げる。新越谷は追加点を取るのがかなり難しくなったぞ」
「不可能……とは言わないんですね」
「世の中に絶対はないからな。それに新越谷には本気ではないとはいえ、大豪月からホームランを打った雷轟がいる……。雷轟の前でランナーを貯める事が今の新越谷には必要だろう」
あの球速に食らい付いた雷轟さんは確かに大豪月さんの本気を打つ事も難しくはないでしょう。
(それにまだ新越谷には朱里さんがいますから……)
朱里さんは和奈さん程のパワーも、いずみさんや亮子さんのようなミートもないですが、打つ時は打ちますからね。
ズバンッ!
『ストライク!』
「トルネード投法……。本気だな」
「私達との練習試合と、以前新越谷と行った合同試合ではオーバースローでした。その時はまだ全てを出していなかったのですね」
「府大会でも大豪月はオーバースローだったよ。トルネード投法は主に全国の準々決勝以降にしか使用しない」
「丁度今が準々決勝ですが、それは関係なさそうですね」
「ああ。元々新越谷と戦う時点でトルネードで行く事は確定していただろう。それ程に大豪月は新越谷を評価している」
ズバンッ!
『ストライク!バッターアウト!!』
大豪月さんのストレートに手も足も出ずに3球三振……。あれ程の球速はプロの世界でも中々見られませんからね。いきなり打て……と言われても難しいでしょう。ですが……。
ガッ……!
『ファール!』
次は朱里さんの打順。何かしらが起きても不思議ではありません。
コンッ!
次の2球目で朱里さんは無事にセーフティバントを決め、ワンアウト一塁になりました。
「大豪月の球に着いてこられるのは新越谷で雷轟だけだと思っていたが……」
「朱里さんはバッティングも一流ですからね。川越シニア以外の場所で野球をやっていたら間違いなく4番を打てるレベルでしょう。今回はバントでしたが、次の打席ではヒット以上の成果を出せるかも知れません」
和奈さんでも、いずみさんや亮子さんでも、朱里さんのような対応力はないでしょう。本職が投手だからこそ出来るのかも知れませんね。
「新越谷が洛山に勝つには後続が大豪月の球を打てるかどうかにかかっているな」
「そうですね。たった2点のリードではあっという間に洛山にひっくり返されます。……ですが当てる事さえ出来ればきっと突破口を掴めるでしょう」
「その心は?」
「バットに当てればきっと何かが起こります。特に洛山の守備力においては……!」
その後朱里さんが洛山のミスを誘ってチャンスを広げる等の芸当も見られましたが、後続の打線が続きませんでした。やはり簡単にはいかなさそうですね。
「大豪月が藤田に投げたのはSFFか。私達の試合でも10球投げたかわからないが、まさかこんなに早い段階で見られるとはな」
「そんなに珍しいのですか?」
あれ程の球速の持ち主ならば、ストレート1本でも勝てそうではありますが……。
「大豪月は基本的にストレートしか投げないからな。本人曰く認めた相手にしか変化球は投げないそうだ」
「……それをこの場面で投げるという事は、藤田さんを、新越谷を認めた……と?」
「恐らくそうだろうな」
春で練習試合を行った時はストレート1本でしたね。その時は練習試合というのもあるでしょうが、単純に当時の白糸台の打線に対して大豪月さんが変化球を投げるのに値しない……と思っていた可能性も捨て切れません。
「大豪月さんが投げる変化球はSFFだけですか?」
「私が知っている限りだと他には高速スライダーと高速シンカーも投げるぞ。まぁあいつ自身が新しい変化球を身に付けているかも知れないから、それが全てとは言えないが……」
「そうですか……。新越谷は大豪月さんの変化球を打てると思いますか?」
「さぁな……。大豪月の投げる変化球はストレートと遜色ない球速だが、幸いストレートよりも若干遅い。速度の違いに気付く事が出来たのなら、もしかすると……って感じだろう」
大豪月さんの変化球投球割合はもしも洛山が勝ち上がって来た時の参考にしておきたいですね。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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