横浜シニアの投手と、一ノ瀬さんの投げ合いは互いに相手を抑えている。点どころか、まだヒット1本すら打てていない。
(流石は全国優勝候補の横浜シニア……。投手陣も完璧に育ってるよ)
優秀な投手陣が豊富にいる中、私達川越シニアの投手陣は今投げている一ノ瀬さん、直前でベンチ入りを成し遂げた橘、男子選手、そして私の4人……。投手陣の4人中3人が女子選手で占めてるのって凄い話だよね。
試合は現在5回裏。横浜シニアの攻撃は……。
「今度はスタンドへ放り込んでやるよ……!」
「や、やれるものならやってみれば……?」
4番……嶋田さんの2打席目だ。
「は、羽矢先輩大丈夫なのかな……?」
「まぁ1打席目に大きな当たりを打たれたからね……」
私の隣に座っている橘が一ノ瀬さんを心配そうに見ている。確かに1打席目の事を考えると、心配するのもわかる。
「羽矢ちゃんなら大丈夫だよ」
「監督……」
「私の見立てが合ってるなら、きっと羽矢ちゃんは飛鳥ちゃんを抑えるよ」
六道監督の見立て……?監督には一ノ瀬さんの何かが見えてるっていうの……?
「その見立てってなんですか?」
「うーん……。まだ私も確証を得てないから曖昧なんだけどね、端的に言うと羽矢ちゃんはこういう状況に強い投手って事だよ」
(まぁ瑞希ちゃんならきっとその正体に気付いているんだろうけどね……)
つまり一ノ瀬さんは強打者に強い投手だって事?そういえば1打席目に打たれた時若干だけど、嶋田さんが差し込まれたようにも見えた……。もしかしてそれが監督の言う一ノ瀬さんが嶋田さんを抑えられるという見立て……?
「この試合の見所再びだね。一ノ瀬さんと嶋田さんの対決……」
(嶋田さんのバッティングについては1打席目で粗方見終えたし、この打席では一ノ瀬さんのピッチングを見させてもらうよ。まぁ私の予想が正しければ、一ノ瀬さんは……)
ズバンッ!
『ボール!』
カウントは1、1。慎重に攻めているバッテリー。そして1打席目とは違って、見送りをする嶋田さん……。
(嶋田さんって積極的に打っていくイメージが強かったから、こうして見送られるとちょっと嫌な予感がするんだよね……)
ズバンッ!
『ストライク!』
よし!嶋田さんを追い込んだ!
(チッ!待球もここまでか……。ストライクゾーンに通りそうな変化球は全部カットしなきゃなんなくなっちまった)
(1打席目よりも面倒だなぁ……。鬱陶しいったらありゃしないよ)
「…………」
(一ノ瀬さんと嶋田さんが睨み合っていますね。夏でもこの2人は対決しているみたいですが、嶋田さんの方は一ノ瀬さんの対策を入念している動きですね。一ノ瀬さんにとって苦手な攻め方をしています。そして一ノ瀬さんの方は……)
「はぁ……」
(……こちらはいつも通りに見えて、どこか違いますね。違和感の正体を探っておきたいところですが、それは試合が終わってからでも問題ないでしょう)
「面倒だから、これで決める……!」
「……!?」
(一ノ瀬の雰囲気が変わりやがった……?)
嶋田さんの待球とカットが続き、次で9球目。
「沈め……!」
「くっ……!?」
ガッ……!
「はぁ……。私の手を煩わせないでよ……」
『アウト!』
嶋田さんはピッチャーフライ。心なしか一ノ瀬さんの変化球の球威が上がったように見えたけど……気のせいかな?
「へぇ~。良いじゃん一ノ瀬さん。想像以上だよ」
(ネガティブな性格だって朱里ちゃんと瑞希ちゃんは言ってたけど、一ノ瀬さんはどうやらネガティブ思考になればなる程に球威が増すようだね。まだその性質に本人は気付いていないみたいだけど、今後一ノ瀬さんのサポーター的存在が現れたら、彼女は大きく化ける……)
「これだから野球は面白いんだよね。予測出来ない成長を目の当たりにしやすい……。これからが楽しみだ♪」
ズバンッ!
『ストライク!バッターアウト!!』
その後も一ノ瀬さんは後続の打者を三振に切って取る。嶋田さん以外は皆三振に仕留めてるんだよね。まぁ一ノ瀬さんの投げる変化球は不規則な曲がりをするし、仕方ない部分もあるか……。あとは私達が点を取れれば、一ノ瀬さんが少しでも楽になるんだけどね……?
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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