Fate/Φ's Order REMNANT SE.RA.PH/ZERO   作:うろまる

6 / 14
BBチャンネル<出張編>

 

 

 

 いつの間にか教会内に現れたBBは、黒塗りのブーツの爪先で床をこつこつと踏み鳴らしながら、眦をいやらしい弓形に曲げて巧たちを見ていた。

 

「あのですねえ、マスターさん。貴方、セラフィックスに少女ゲームをやりに来たんですか? 一人落とすのにどれだけ時間を掛けてるんですか? 興味なんて一つもないって顔してるくせして、意外とやることはやっちゃう主義なんですか? ――ぷっ、やだ。絶望的に似合ってなーいっ!」

「――マスター、アレが」

「ああ。アレが、アレだ」

 

 BBから視線を外さないまま耳元で囁きかけてきたメルトリリスに、巧もまた正面を見ながら小声で答えた。

 二人の視線の先には、よくもまあ呑気に腹を抱えながら、呵々大笑を繰り出しているBBの姿がある。とても自分をこの事態に巻き込んだ張本人とは思いたくない、というのが巧の正直な気持ちだった。あはははははははーっ、と涙さえ浮かぶほどに笑いながら、ネジのぶっ壊れたティントイのように両手を叩き続けている姿を見ると、あんなのに引っ掛かってしまったのかと無性に自分が情けなくなってくるからだ。

 その対照に、メルトリリスはひたすら眉の間のシワを深めていた。そうしていても整った美しい顔立ちは変わらず、むしろ光の位置によって異なる側面を放つ宝石のような印象を抱かせるのだから、美人というものはつくづく得で出来ている。しかし今は置いておく。

 

 ――コイツ。

 

 目の前でバカみたいに笑い続ける女が、どれだけ出鱈目な情報量で自分の存在を構築しているのか、AIであるメルトリリスには否が応でもわかってしまっていた。認めたくはない――ないが、嫌でも認めるしかない。あまりにも、規格外だった。少なくとも、今の自分では絶対に敵わない。こちらとあちらの戦力差の予想など、象と蟻を向かい合わせるだけでは足りなさ過ぎる――戦艦と蚤を並ばせてようやく釣り合いが取れるといった所だろう。

 そしておそらく相手は、自分が互いの間に広がっている格差に気付いたことを、気付いている。気付いた上で、あんな風に隙だらけの姿で笑っている。

 要するに、虚仮にしているのだ。

 貴女を捻り潰すことなんて、笑いながらでも出来ますからと言外に口にしているのだ――死ぬほど腹が立つことに。

 ほとんど初対面なのにも関わらず、メルトリリスは、自分と似てる顔をした女の心境を無意識のうちに理解しつつあった。なぜかはわからない。だが、不愉快極まりないことだけは確かである。

 庇うように巧の前に一歩出る。メルトリリスは振り返らず、小声で続けた。

 

「……下がっていてください。彼女は、やはり危険でした。素性も目的も一切知れませんが、絶対――絶対にロクでもないことを考えているに違いありません」

「だろうな。そういうツラだ」

 

 自分と似ている顔にあからさまな嫌悪を向けられてメルトリリスの微妙な女心が騒いだが、そっと蓋を閉じて無視をした。

 

「あれえ、どうかしました? おふたりさん。私を放って、二人だけでナイショ、ナイショ、内緒話ですか? うふ、酷いですねえ、寂しいですねえ。私も混ぜてくださいよぉ」

 

 不意に近づいたBBを威嚇するように、メルトリリスは鋭く尖った己の踵を地面に叩きつけた。甲高い金属音がわんわんと反響する。本当は威嚇などではなく、自分の中にある泥のような恐れを振り払いたかっただけなのかもしれなかった。

 

「──近寄らないでください、わたしたちに。そこから、一歩たりとも」

「……あら、まあ」

 

 睨みつけるメルトリリスにBBは立ち止まると、思いがけない掘り出し物を見つけた時のように目を細めた。そして、くすくすと人差し指を押し当てる。

 

「まあ、まあ。わざわざ警告してくれるなんて、私が見ない間に随分と甘くなりましたねぇ。それに口調も、何だか大人しくなっちゃって……ひょっとして、イメチェンですか? せめてマスターの前では、あーんな自分は見せたくないとかなんとか。

 ハッキリ言いますけど、頭がおかしくなっちゃいました? 廃棄場に放り込まれて、本当にスクラップになってしまったんですか? 貴女ともあろう者が、他人を気にして自分を曲げるだなんて」

「……知っているのですか? 元のわたしを」 

「…………ん、んん?」

 

 メルトリリスの言葉を聞いたBBは、こてん、と首を傾げる。妙に様になっているのがさらにムカついて、メルトリリスは語気を強めながら言った。

 

「知っているのなら、教えなさい。わたしが一体何者で、何故記憶を失ってしまったのか」

「え、えっ……ちょ、ちょっと待ってください! えっ、ええ……? あの、貴女って、メルトリリスですよ――ね?」

 

 先ほどの余裕はどこへほっぽり出したのやら、BBは表情に本気の焦りを浮かべながら問い掛ける。しかしメルトリリスは応じず、自分でも訳の分からない激昂に駆られながら叫んだ。

 

「質問しているのはこちらですっ! 貴女は何者ですかっ。記憶を失う前のわたしと、どういう関係だったんですかっ!」

「──――まさか、まさか。記憶が……無いんです……?」

「だから、そう言ったじゃないですかっ!」

 

 呆然と呟かれた言葉にメルトリリスがそう返すと、BBは少しふらつき、それからもの凄くデカいため息を吐いた。それはもうデカかった。世界中から苦労やら苦悩やらをかき集めて来たんじゃないかと思うぐらいデカくて、深くて、重いため息だった。自分が何かやらかしたのかと思って、メルトリリスは困惑の目を巧に向けたが、巧も訳がわからないという表情をしている。

 数秒間が経った。長い長い溜め息をようやく吐き終えたBBは、何を言えば良いのかという迷いを一瞬宿し、やがてぽつぽつと話し出した。

 

「……これにはBBちゃんも驚きました。ええ、まったく、本当に。予想外が過ぎます。そして、これは、あまりにも不公平です。せっかくお膳立てしたゲームが成り立ちません。ですので、貴方達の疑問にお答え致しましょう」

「それは――」

「嘘じゃねぇんだろうな」

 

 騙された前科のある巧は、メルトリリスの声を遮り、BBの発言に露骨に警戒をあらわにする。しかしBBはなぜか一瞬だけ巧にも申し訳なさそうな顔をすると、こくりと頷いた。

 

「安心してください。私は意味のある嘘はつきますが、意味のない嘘はつきません」安心できるか。「――では、まず一つ目の疑問についてですが、」

「ちょっと待て」

「なんです?」

「なんで知ってんだ」

「え? 何をですかあ?」

「とぼけんな。

 ――なんで疑問を知ってんだ、って聞いてんだ。知ってる訳ないだろ、おまえが」

 

 話を遮られ、胡乱な視線を向けてくるBBに、巧は尋ねた。するとBBはなんだそんな事か、という表情をして、

 

「そんなの、見てたからに決まってるじゃないですか」

「見てたって、何処から」

「最初から、最後までですよ。――なんでしたっけ? 『――だったら、俺と契約しろ』でしたっけ? 採点してあげましょうか? はい、0点でーすっ! 乱暴過ぎてちょーカンジわるーいっ!」

 

 そしてBBは、再び腹を抱えて笑い出した。あの状況を見られてしまったのかと激しく赤面するメルトリリスの横で、巧は心は不思議なぐらい凪いでいた。燃え盛るような怒りも、度を越えるといっそ静まり返るのだと初めて知った。そして、思う。

 コイツはここで消しておくべきではないか、と。

 そう思われていることなどつゆ知らず、BBはずっと笑い続けている。メルトリリスは赤い頬を抑えている。巧の拳は震えている。

 臨界点は、もうすぐそこだろう。 

 

 

 

 〇

 

 

 

「……えー、まず一つ目の疑問ですね。この聖杯戦争を引き起こした張本人は一体誰か――ということですが、端的に説明しますと、それは私です」

 

 とうとうキレた巧に本気で怒鳴られて、少ししょんぼりしているように見えるBBは、教師のように誰もいない祭壇に両手を置きながら、開幕とんでもないことを言い放った。長椅子に並んで座って生徒のような有り様で話を聞いていた巧とメルトリリスは、思わず視線を合わせた。つまり、コイツが事件の黒幕なのでは、と。

 そんな二人の思考を感じ取ったのか、BBはたちまち元気を取り戻すと、小悪魔の笑みを浮かべた。

 

「はいっ! お二人の考えているとーり、私が元凶だったりしちゃうのですっ! 元祖・悪落ちヒロインにして、から回りしたまま世界を滅ぼしちゃう……まさしくやっちった系ラスボスヒロイン後輩の鑑と言えるでしょうっ! もお、属性過多なんですから、私ってばっ!」

「頭おかしいんじゃないのか?」

「狂っていますね」

「…………」

 

 冷ややかな集中砲火を受けて、BBは再び沈み込んだ。ふん、と満足そうに鼻を鳴らしているメルトリリスの横顔を見て、巧は少女の素の性格が――今は失われている物が、高飛車に近いそれなのではないかと思った。

 そういうツラをした女には嫌というほど覚えがあって、決まってそいつらはどいつもこいつも示し合わせたように、顎を上げてこちらを見下してくることを巧は知っている。少女のすっと通った鼻梁の角度は、巧の脳裏に過ぎった光景によく似ていた。

 巧が密かに顔をしかめていると、目敏く気づいたメルトリリスが眉を八の字に曲げて、おっかなびっくり聞いてきた。

 

「……どうか、されましたか?」

「……何でもない。少し夢見が悪かっただけだ」

「そうですか……その、勘違いなら本当に申し訳ないんですが、マスターってわたしの顔をよく見てます、よね?」

「かもな。それがどうした」

 

 巧の気の無い返答に、メルトリリスは耳にかかった髪を慌ててかき上げながら、控えめに質問した。

 

「あ、あの。マスターはどう、思いますか?」

「は?」

 

 ひと息のみ込んで、

 

「えっと、その。わたしの印象というか。ほら、第一印象は顔で決まるって俗説とか、あるでしょう? わたしとマスターは一応主従関係なんですし、セラフィックスを脱出するまでは一蓮托生の身なのですから、あまり軋轢は起こしたくないというか……悪い所があれば治しておきたいと言いますか……」

 

 傍目から見ると、少女の言葉のほとんどが支離滅裂な口実もどきで出来ていることは明白だったが、我らが乾巧にそれの指摘を期待するのは間違っているだろう。

 巧はしばらく──と言っても数秒程度だが──考えて、何の気なしに答えた。

 

「まあ、普通に良いんじゃないか」

 

 そこには愛想もクソもなかった。本当に数秒のうちに頭に浮かんできた益体も無い言葉を、大して加工せずそのまま口に出したような調子だった。にも関わらず、メルトリリスは瞳の奥を一瞬煌かせると、こほんこほん、といきなり咳払いし始めた。ちなみに教会の中には埃など一片も浮いていない。

 尻尾がついていれば、おそらく残像が生まれるほど振っていたに違いない。

 暫定的な黒幕であり、陥れた張本人であるBBとなぜか似たような顔をしているのだからと、ネガティブな言葉も少なからず掛けられることも覚悟していた。だが――とメルトリリスは、飛び上がりそうな自分をどうにか抑える。苦労して押し込んで、言った。

 

「そっ――そう、ですか。いえ、別に。別に嬉しいとかそういうわけでは、ありませんが」

「大丈夫か?」

 

 怪訝そうにする巧に対して、メルトリリスは、だいじょうぶですだいじょうぶですだいじょうぶですと壊れたファービーの如く同じ言葉を繰り返し続けている。そんな甘酸っぱい光景を、BBはひたすら苦さを濃くしたコーヒーを飲み下した直後のような顔で睨みつけていた。

 

「人をほっぽり出して、目の前でイチャイチャしないでもらえます? すごく胸糞悪くなるんですが」

「イッ……なにを、バカなことを言っているのですかっ! マスターの前でいいかげんな事をいわないでくださいっ!」

 

 メルトリリスは、ぐっと喉を詰まらせて前のめりになりながら叫んだ。BBは、うるさそうに耳に指を突っ込むと、その隣で話に飽き始めてとうとう明後日の方向を見出した巧に語り掛けた。

 

「――センパイ。貴方のサーヴァントが問題を起こしてるんですけど、こんな時はマスターである貴方が手綱を取らなくちゃいけないんじゃないですか?」

「おまえが悪いだろ。全面的に」

「あのですね――いえ、もお、良いです。このまま問答を続けていても埒が明きませんし、とにかく次に進みましょう。二つ目の疑問ですね。他のマスターですが、ここSE.RA.PHには、すでにサーヴァントしかいませんっ! 何故なら彼ら彼女らは、サーヴァントが召喚された時点でぽっくり逝ってしまったからですっ! 以上っ。はい、次に行きましょう」

「ち、ちょっと待ってください。――では、どうやって? どうやって彼らは現界を果たしているのですか?」

 

 メルトリリスの言葉に、BBは唇を吊り上げた。

 

「それは簡単です。SE.RA.PHの情報密度が狂ってしまっているからですよ――外での一分程度は、ここでは100分にあたります。ですから、消滅するまでのロスタイムは、有り余るほどあるんですよ。流石に霊核その物を破壊されてしまえば、それっきりですが。

 たとえば、今ここでカルデアに連絡を送ろうとしても、そうですね……届くのは、ざっと五十年ほど経ってからでしょうか?」

「……要は、マスターを狙っても、カルデアに助けを求めてもムダだ……って言いたいんだろ」

「さっすがセンパイ! つまらないほど話が早くて助かりますっ!」

「話が長いんだよ、おまえ」

「――それでは、わたしたちは」

 

 呆然とするメルトリリスを見て、ええ、とBBは心地よさそうに頷く。

 

「そうです。三つ目の疑問――海洋油田基地セラフィックスが、どのようにしてSE.RA.PHと化したのか。どのようにすれば脱出できるのか……この疑問にはお答えできません。そもそもそれを知るためにここまで来たのに、ぜーんぶ教えちゃ台無しでしょう? お膳立てした意味が無くなっちゃいます。

 ですが、これだけは断言しておきましょう。その真相を確かめるためには、貴方たちはたった二人だけで、128騎のサーヴァントを相手に生き残らなければいけないのです。誰の助けも救いもなく」

 

 少女の心が、静かな絶望に染まった。

 128騎――それがどれだけ圧倒的な数なのか、わからないメルトリリスではあるまい。

 視界が昏い闇で埋め尽くされ、メルトリリスは深く項垂れた。ただでさえ感覚の鈍い腕が鉛をくっつけられたように重さを増して、ますます自分のそれとは思えなくなる物になる。

 どうすればいいのか。

 別に、自分の性能に自信がないというわけではない。詳細は不明だが、アルターエゴである自分は、サーヴァントとは一線を画す機能を備えている……らしい。

 だが、と思う。あくまでもそれは、希望的観測でしかないのだ。今の自分から記憶と機能は失われ、それを取り戻すための術も霧の中へと紛れ込んでしまったように、まるでわからない。いや、仮に取り戻す方法がわかったとしても、道半ばで力尽きてしまう可能性の方がずっと高いだろう、と思う。

 嫌われたくない。

 それが、メルトリリスの嘘偽りのない本音だった。自分が彼に返せる物は、戦闘技能だけしかないというのに。自分は彼を守り切れるのか、と不安になる。自分は彼の期待に沿えるだろうか、と焦燥に駆られる。まるで刃で切り裂かれていくように、少女の心が自己嫌悪でズタボロになっていく。毒が回る気分とはこういうものだろうか、と鋭く光る爪先を見下ろす。光を反射して物騒に輝くそれが、今のメルトリリスにとってはひどく頼りないハリボテに見えた。

 だが、

 

「――だったら、そうするだけだ」

 

 思わず、顔を上げた。

 隣に座っている彼は、自分のように絶望などせず、ひたすら前を見続けていた。

 その発言を聞いたBBは、面白くなさそうに頬を膨らませた。そして悪戯っぽい笑みを浮かべながら、巧の前まで歩み寄ると、手に持っていた教鞭を男の喉元に突きつけた。

 

「良いんですかぁ? 調子に乗ってそんなコトいっちゃって、途中でモブのようにあっけなく死んじゃっても知りませんよお? 大体、自分が置かれてる状況のマズさは、貴方自身が一番よくわかっているでしょうに」

「置いた本人に言われても説得力ねぇんだよ――それにな、」

 

 言葉を切った巧の頭に、黒く輝く聖剣を携えた騎士が過ぎった。

 燃え尽きない復讐を抱きながら旗を振るう裁定者が過ぎった。

 破滅の光を纏いながら大地を駆ける剣士が過ぎった。

 自らの途方もない愛憎にすべてを捧げた魔女が過ぎった。

 絶対的な破壊をもたらす雷霆を宿す弓兵が過ぎった。

 視界に映るすべてを薙ぎ払わんと紅槍を構える狂戦士が過ぎった。

『人類』を生存させる為に聖槍を抜錨した獅子が過ぎった。

 無数の魔獣を率いて人類への報復を果たそうとした復讐者が過ぎった。

 そして。

 

 

 

 ――――変身しろ。乾巧。貴様の全てを打ち砕き、私は、貴様の夢を否定する。

 

 

 

 譲れない夢を抱き、玉座と共に焼き消えた、かつて獣だった人の王が過ぎった。

 知らず、苦笑する。そして巧は喉元の鞭の先端を払いのけると、BBの顔をまっすぐ睨みつけて、言った。

 

「──勝ち目の無い戦いには、嫌になるほど縁がある」

 

 そうつぶやいた巧の横顔を、メルトリリスは決して手の届かない星を眺めているかのように、ひたすら眩しそうに見つめ続けていた。

 ふうん、とBBは肩を竦めながら下がる。

 

「ま、良いでしょう。その減らず口をどこまで叩けるか見物ですね――って、いけない。思わずザコ敵みたいな台詞を言っちゃいました! 反省反省」

「話は終わりか」

「ええ、あとはどうぞお好きなように。ここでタイムリミットまでの安寧を貪り尽くすのも、外に出て狂ったサーヴァントの皆さんに嬲り殺しにされるのも、センパイたちの自由です。あ、でもお、私としてはぁ、センパイには頑張って私の元に辿り着いてもらいたいなぁ……って」

「理由は」

「だって、そっちの方が面白いじゃないですか? 苦労して私の所に辿り着いて、アッサリ潰されちゃうセンパイの姿って」

 

 言ってろ、と吐き捨てて、巧は立ち上がった。そして扉に向けて歩き出す。惚けていたメルトリリスも遅れて立ち上がると、BBが狙いすましたように声をかけてきた。

 

「自分の機能を取り戻したいですか?」

「……当たり前でしょう」

「でしたらまずは、リソースを集めることをオススメします。貴方はアルターエゴの中でも、特にドレインが得意でしたから」

「……何を、企んでいるんですか?」

「何も。あ、でも、強いて言えば……そうですねえ、複雑怪奇な親心? とか?」

 

 おどけた風に言ってみせるBBに、メルトリリスはそれがからかいの類であることを一瞬で見抜いた。本当に腹の立つ女だと思う。しかし、その眼差しの何処かには、確かに自分に対する不可思議な情を見て取ることができた。

 

「……あの、」

 

 礼を言うべきかどうか、迷い、口を開こうとした瞬間だった。

 扉が、乱暴に蹴り開けられる音がして、

 

 

「――――なんだ。先客がいたんなら、ノックでもするべきだったかい?」

 

 

 撃鉄が高らかに跳ね上がり、

 銃声。

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。