ハイスクールD×D 漢女な部長はとてもすごいです   作:へびひこ

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第十二話 最強漢女の婚約者。

 多少は魔法について学んだ俺でも意味不明な魔方陣やらオカルトグッズの飾られた一般人を拒絶するオーラが充満する部室。

 

 そんなオカルト風味な部室でも最近くつろいでお茶が飲めるようになった。たぶん慣れたのだろう。室内の雰囲気ぐらいではもう俺の精神は揺るがない。もっと怖い最強漢女やなにをしでかすかわからない規格外の元聖女がそばにいるからな。

 

 が、この空気はない。さすがに無理。

 正直胃がきりきり痛む。並んで窓際の壁に整列している木場や小猫ちゃんの顔色も悪い。隣にいるアーシアはちょっと困ったような笑みを浮かべるだけだが。

 

 今日は部長に来客が来るという事で放課後眷属が集まってお客様を出迎える事になった。例の『僧侶』はいいのかと部長に尋ねたのだが「言ったのだけど部屋から出てきてくれないのよ」と諦めたような顔をしていた。

 

 もう一人の『僧侶』は引きこもりなのか。なんというか個性的な眷属が多いですね? 類友ですか?

 

 そして魔方陣から派手な炎の演出つきで現れたイケメンと最初から部室にいてまるで違和感を覚えさせないメイドさん。

 

 イケメンのほうがどうやらお客様らしい。メイドさんは立会人なのだそうだ。

 

 このメイドさんは現魔王サーゼクス・ルシファー様の『女王』で妻らしい。つまり部長の義理の姉だそうだ。こんな美人を嫁にしてメイドさんプレイをしているサーゼクス様が羨ましい。きっとサーゼクス様もイケメンなのだろう。

 

 以前朱乃さんに聞いたら『幼少期のリアスを男にしてそのまま成長させたような容姿端麗な美青年』らしい。

 

 俺にはいまいち想像出来ない。俺は部長の美少女姿をまだ見た事がないからな。一度土下座せんばかりの勢いで『一度でいいから見せてください』と嘆願したが『またの機会に』とあしらわれてしまった。

 

 本当に一度でいいから見たかったのだけどな。魔王様すら虜にする美少女。おおいに興味がある。

 

 そして今回の主役であるイケメン。

 全身から『出来る男』といった落ち着いた雰囲気を発する青年でその実力は俺ごときでは計れない。

 

 今の俺では実力者に上手く実力を隠されたら見抜けない。もっと強くなれば見抜けるようになると言われているが。本当にもう一度ぐらい部長の修行を受けないとダメかもしれん。

 

 神器がなければ間違いなく眷属最弱だし。もっと強くなってドライグの力を借りればアーシアさんとも戦えるかもしれないし。

 

 

 

 

 お客様であるイケメンさんの名前はライザー・フェニックス。名門貴族フェニックス家の三男。しかも部長の婚約者らしい。

 

 ……すげえ。この漢女と婚約したのかよ。このイケメン。

 そのツラと家柄なら女なんて選び放題だろうに。よほど変わった趣味なのか、それとも部長の本質を評価しているのか。ちょっと尊敬できそうだ。

 

 以前は『才能に驕った愚か者』だったと自己紹介がてら笑っていた。しかし部長に徹底的に叩きのめされ惨敗した事を契機に根性を入れ直して努力したらしい。

 

 その結果、現在では悪魔社会でも将来を有望視されるようになり、近い将来最上級悪魔にもなるだろうと噂されるほどになったと少し誇らしげに語っていた。

 

 イケメンで仕事も出来るエリート。なんとも俺の劣等感を刺激する野郎ではある。

 

 しかし俺は妙にこの男が嫌いではない。むしろ声をかけられ手を差しのべられたら共に行こうとすら思えるかもしれない。そのぐらい他人に安心感と信頼をあたえる雰囲気がある男だ。

 

 イケメン嫌いの俺ですらそう思うのだからイケメン好きの女なら喜んでひれ伏すかもしれない。

 

 実際貴族と聞いて身構えてしまったが気さくに自己紹介して、俺たちの名前まで聞いてくれた。

 これにはちょっと驚いた。貴族出身の純血の悪魔は俺たちみたいな転生悪魔を見下しがちだと聞いていたから。

 

「しょせん下級悪魔や転生悪魔と侮ると痛い目を見るものだ。実際俺の眷属のほとんどは下級悪魔程度の実力しかなかったが今では全員中級悪魔以上になっている。おまえたちもぱっと見た印象では最低でも中級悪魔並の実力がある者ばかりだ。中には上級悪魔に届いていそうな者までいる。さすがリアスの眷属だ。これを侮って視界に入れないなど馬鹿のすることだろう?」

 

 そう少しだけ笑って見せた。

 最低でも中級悪魔……俺もか? 俺って神器がなければ眷属最弱なんだけど。

 

 

 

 

 こうして挨拶を交わし世間話をしている段階ではいい雰囲気だったのだが、本題に入るとあっという間に空気が殺伐とし、緊張で俺の胃を締め上げていった。

 

「俺はもう一度おまえに挑むぞ、リアス・グレモリー」

 

 ライザー・フェニックスがそう不敵に宣言すれば我らが部長が少し驚いた顔をする。

 

「あら? まだ痛い目を見たいの? あなたがいくら不死と評判のフェニックスとはいえ下手をすれば死ぬわよ?」

「俺だってあれから強くなった。あの時と同じと思わないことだ」

「あの時はひどすぎたもの、威勢のいいことを言った割にはてんで弱い。あげく涙を流して命乞いするありさま。あれよりマシになった程度で私相手にどうにかなるとでも?」

 

 部長の明らかな挑発発言にライザーさんの表情から笑みが消える。色が抜け落ちたような無表情の中、ただ目だけが強い意志を込めて部長を睨みつける。

 

「存分に俺を侮れ、そして増長しろ。その隙に俺はおまえに勝利する」

「勝利して何を望むの?」

「この婚約の破棄だ。俺は正直おまえの夫として過ごせる自信が無い。おまえの顔を見るだけで吐き気がする。生涯おまえを立てて補佐して生きるなど俺には死を命じられる以上の苦痛でしかない」

 

 ……気持ちはわかるけどさ。それを面と向かって言うのはちょっと無謀だと思うよ。ライザーさん。

 

 案の定雰囲気はさらに悪化した。

 部長は不機嫌そうにライザーさんを一睨みする。

 

「この婚約は私が望んだものではないわ。家同士が決めた婚約よ。それは当然理解しているのよね」

「むろんだ」

「なら、婚約を解消したいと私に言っても意味がないことぐらいわからないの? 言うべき相手は両家の当主でしょう?」

 

 ああ、政略結婚とかそういう感じなのか。

 貴族の家同士の都合で無理矢理漢女と婚約させられたライザーさんはそれに怒って実力で婚約破棄をもぎ取る気なのかな。

 

 でも部長はどう考えているんだろう?

 正直結婚相手として考えれば優良物件に見えるんだけどな。

 

 実家は名門貴族だから家柄よし、ちょっと目つきが鋭いがそれもクールに見えるからルックスもよし、下の者にまで気を使えるぐらいだから性格もたぶん良し、おまけに将来を期待されるエリート。

 

 うん、思わず呪いたくなるほどの『出来る男』だな。

 本当に部長はどう考えているのだろう?

 

「父には話した。俺はグレモリー家の血を残すための種馬にはなりたくないとね。俺はもっと自分の実力で出来るところまでやってみたい。父には『若い』と笑われたけどな……そのためにはこの婚約は正直邪魔だ。リアス個人への感情を置いておいてもな」

「私と結婚してもレーティングゲームへの参加は出来るだろうし、実績を示せば出世も出来るでしょう?」

「それでは俺はライザー・フェニックスではなく、リアス・グレモリーの夫として評価されることになる。俺は常におまえの影に隠れ頭を押さえつけられることになるだろう。おまえにはそれだけの実力があると俺は思っている」

 

 確かに悪魔の貴族、グレモリー家の次期当主である部長の夫になるって事は普通に考えて婿入りだよなぁ。

 

 妻はグレモリーの次期当主。自分は入り婿で常に次期当主であり妻である部長に遠慮しなければならない立場。

 

 部長の外見がどうこうよりも、確かに『出来る男』としてはプライドが傷つくかもしれない。

 

「あなたの自尊心の高さは評価するわ。私には好ましくさえ思える。本当に以前とは別人ね。以前のあなたはグレモリー家の次期当主への婿入りと聞いてまるで自分がグレモリーの当主にでもなれるようなはしゃぎっぷりだったのに」

「……昔のことは言わないでくれ。俺も愚かだったと反省しているんだ」

 

 ちょっとばつが悪そうに部長の回想をさえぎるライザーさん。

 どうやらライザーさんにとって過去話は思い出したくない黒歴史らしい。

 

 そんなにダメな奴だったのか? 今のライザーさんの落ち着いた物腰や他人への穏やかな配慮。いかにも有能で人格の出来ている貴族出身のエリートといった態度からは想像も出来ない。

 

「こちらとしても将来に遺恨を残す婚約話を進めるのは本意ではありません」

 

 今まで黙って様子を見ていたメイドさんが口を開く。

 

「そこで非公式のレーティングゲームで勝敗を決め、その結果をもって事態を決定するという方法はどうかとグレモリー、フェニックス両家から提案がありました。サーゼクス様の了解も得ています」

 

 レーティングゲーム。確か大人の悪魔たちが眷属を率いて勝敗を競い。その結果が評価につながるという一種の実力テストみたいなものだったか。

 

「ライザーと違って私はゲームの経験がないのだけど?」

「そのあたりはハンデとしてお考え下さい。リアス様の実力ならそう問題にならないとグレモリー家とサーゼクス様は認識しております」

 

 困惑したような部長にメイドさんが淡々と告げる。

 

「リアス様の実力はすでに最上級悪魔に並ぶと評価されています。ゲーム未経験であっても無様を晒すことはないだろうと判断されました」

 

 それって部長が高く評価されているって事だよな? 眷属として『王』が高評価なのは素直に嬉しい。

 

 しかし部長は反論した。

 

「私はそうであっても私の眷属たちは違うわ。朱乃でさえレーティングゲームの見学もろくにしたことはないのよ? 実戦経験もはぐれ悪魔討伐くらい。しかも皆下級悪魔クラスの雑魚だった。いきなりレーティングゲームで同格以上の相手と戦えと言われても私の眷属たちには無理よ」

 

「そこはリアス様の実力と采配の振るいようです。勘違いなされないで欲しいのはこれは私が提案しているのではありません。グレモリー、フェニックス両家が提案し、サーゼクス様が了承したことを通達しているに過ぎません」

 

 メイドさんはそんな部長の抗議をあっさり退ける。

 貴族の家同士が話し合い。魔王様が認めたことだから受け入れろと。

 

 けれど確かにいきなり悪魔同士の戦いをしろって言われてもな。

 

 俺ははぐれ悪魔討伐は見学しただけ、堕天使との戦いは……あれはそもそも戦いにすらならないレベルだった。木場や小猫ちゃんはともかく俺は戦意を失った相手にとどめを刺しただけだ。実戦経験という意味なら俺は経験値ゼロに近い。

 

 話の通りなら木場や小猫ちゃんもそう変わらないだろう。はぐれ悪魔もはぐれエクソシストも楽勝モードだったからな。アーシアも彼女はスペックこそすごいが集団戦闘が出来るのかは不明だ。

 

 しかも相手は話を聞く限り『王』は将来最上級悪魔になると有望視されるエリート。その眷属は最低でも中級悪魔クラス。当然上級悪魔クラスの実力者もいると考えるべきだろう。

 

 朱乃さんやアーシアとも戦えるようなレベルの相手がいて、木場や小猫ちゃんと互角に戦える連中もいる。正直俺たちが部長の足を引っ張ることは確定な気がする。

 

最終的には我らが『王』がすべてをなぎ倒しそうだがそれではあまりに俺たちが情けない。

 

 俺が実力不足を嘆いている間にも部長は食い下がる。

 

「私の眷属のうち二人はごく最近転生したばかり、こちらの常識を学んでいる最中の新人よ。その二人を含めても最大で六人しかいない。いえ例の『僧侶』はおそらく不参加を希望するでしょうから実質私の眷属は五人しかいない。それでライザーの眷属と戦えというのは無茶だわ。彼らはすでにレーティングゲームで好成績を収めている経験者で人数も全員そろっていると聞いている。あなたは私の眷属をなぶり殺しにさせたいの? だとしたら私にも考えがあるわよ?」

 

 脅しではないと言いたげに部長の殺気がメイドさんを貫く。メイドさんは元から白い肌を真っ青にして額に汗を浮かべた。

 

「そのようなつもりではありません。報告ではリアス様の眷属は『雷の巫女』を筆頭に神器使いなど優秀な人材がそろっています。けして能力で劣るとは思いません」

「私が問題にしているのは彼らの素質ではなく。現時点での実力と戦闘経験の差よ? あなたがそれを理解しないとは思えない。本当に死にたいの? グレイフィア、私は眷属を守るためなら兄の妻だろうと殺すわよ……ここでただの伝書鳩として命を散らせるか? 魔王の『女王』よ」

 

 やばい、部長が本気になる! というかもう本気になっている!?

 最後はもう『王様モード』が入っていたぞ。本気で魔王様の『女王』だろうが兄の妻だろうがくびり殺しかねない。

 

「わかりました……では、準備期間を設けることで納得していただけないでしょうか?」

「どの程度だ?」

 

『王』は多少の譲歩でお茶を濁すことは許さないとばかりに睨みすえる。

 

「五日もあれば、リアス様なら十分ではっ……!?」

 

 一瞬の早業だった。メイドさんは『王』の片手で首を掴まれ宙につり下げられていた。『王』が力を込めればその首がへし折れるのは想像に難くない。

 

「グレイフィア……あなたには世話になったがこうも侮られてはグレモリーの次期当主として、眷属を守る『王』として示しがつかない。死をもって無礼を償え」

 

 俺たちは身動き一つとれない。必死に抵抗するメイドさんの身体から凄まじい魔力が解放されたが一瞬で『王』に押さえ込まれた。

 

「待て、リアス! 彼女の非礼は詫びる! だから私の妻を、義姉を殺すような真似はやめてくれ!」

 

 みしりといやな音が響いた瞬間。

 床に魔方陣が展開して赤い髪の青年が現れ、悲鳴のような声で『王』にそう嘆願した。

 

 

 

 

 唐突に現れたのは部長の兄サーゼクス・ルシファー様。現魔王のお一人だった。

 

 心配だった魔王様はこっそり様子をうかがっていたらしい。そして案の定怒り狂った妹を抑えるために飛んできたそうだ。

 

 眷属を大事にする妹がこんな一方的な通達をされて怒らないはずがないと睨んでいたらしい。自分一人ならともかく眷属を戦いに巻き込むのだ。怒る可能性は高いと。

 

 だったら最初からこんな条件を突きつけなければいいのにと思ったが、どうもこの条件はグレモリー家とフェニックス家で主導された話で魔王様はあまり口を出していなかったらしい。実際承認はしたが承諾される可能性は低いと思っていたと。

 

「拒否される可能性も、交渉が決裂することも考慮してはいたけど。まさか問答無用でグレイフィアが殺されかかるとは思わなかったよ。さすがに義姉相手ならば穏便に済ませてくれるかと期待したのだけど……私の見込みが甘かったね」

 

 下手な人物を送りこめば本当に殺されかねないので身内であり自分の腹心である『女王』を送り出したらしい。

 

 結局魔王様の仲裁でメイドさんは死なずにすんだ。咳き込みながら床に倒れ伏し、必死に呼吸を整えながら我らが『王』に謝罪していた姿が深く印象に残った。

 

 立場的に魔王様の『女王』であろうともグレモリー家次期当主の部長にはそう強く出られないらしい。あとで朱乃さんから聞いた話では悪魔社会では貴族が力を持っているらしく、その中でも有力貴族であるグレモリー家次期当主の部長はその実力もあって魔王様でさえそう軽く扱えない存在らしい。

 

 おまけに悪魔社会は基本的に実力社会なので強い力を持つものはそれだけで畏敬の対象であり、多少の無茶は押し通せるとか。だから『最強の女王』と呼ばれる程の実力者であるメイドさんは本来かなりの力を振るえるらしい。部長相手には通用しなかったが。

 

 準備期間は十日とされた。部長は不満そうだったが『あまり時間を与えてはフェニックス家から苦情が出る。君はそれだけ恐れられているんだ』と魔王様直々に言い含められて引き下がった。

 

 ライザーさんもその条件を承諾した。むしろ『断れるはずがないでしょう』と苦笑していた。

 

 条件を突きつけた魔王様の『女王』が殺されかけ、魔王様が直々に仲裁に動いたのだ。彼がそれを拒否など出来るはずもない。

 

 ましてやライザーさんはレーティングゲームの経験者で好成績をあげている実力者だそうだ。多少の準備期間も認められないなどと言ったらむしろ侮蔑の対象になるだろうと笑っていた。

 

 そして彼はハンデとして自分の眷属をその場に全員呼びだして部長と俺たちに見せた。

 

「リアスなら見れば相手の戦力くらいわかるだろう。対策も立てられるのではないか?」

 

 むしろ十日の準備期間よりこちらの方が部長の心証を良くしたらしい。じっくりとライザーさんの眷属を一人一人見据えて最後ににやりと笑って見せた。

 

 わざわざ自分の手の内を晒したライザーさんに魔王様がお礼を言っていた。本気で部長が暴れないか心配だったらしい。

 

 

 そして俺たちの『王』の将来をかけたレーティングゲームが決まった。

『王』が勝てば今後フェニックス家は婚約解消を申し出ることが出来ない。負ければライザーさんの希望通りに婚約解消だ。

 

 部長の将来が決まる一戦になる。自然と気が引き締まった。

 

 気がかりなのは部長がこの婚約やライザーさんのことをどう考えているのかがよくわからないことぐらいか。機会があれば聞いてみたい。

 

 

 そういえばあとで聞いたことだが、部長がメイドさんを殺しかかり魔王様がそれを止めて仲裁するという流れはあらかじめ決められていたやらせだったらしい。

 

 ああいう流れになったら勝利を望んで少しでも有利な条件を希望するライザー・フェニックスも譲歩せざるを得ないと魔王様が企んだそうだ。

 

 ……大人って汚いなぁと思った。

 

 

 

 

 その後の十日間は思い出したくもない。

 部長の別荘にまで出かけて修行を受けたのだが、はっきり言って最初に受けた修行がまだマシだったと懐かしく思えるレベルの地獄を見た。

 

「なんだか数ヶ月くらい修行をした気がするね……」

「……生きて帰ってこれて良かったです」

 

 木場の感想には全面同意する。俺は半年ぐらいに感じた。どうも記憶が曖昧ではっきりしないのだが十日だとはとても信じられない。実は部長って時間を操ったり出来るんじゃないのか? 本気でそう疑いたくなる。

 

 小猫ちゃんは生きていることを涙を拭いながら喜んでいた。実際殺す気なのではないかと思ったことは数え切れない。毎日死にかけていたと思う。生きているだけで幸せという言葉が真実だと実感出来る気がする。

 

 おかげではっきり実感出来るほど強くなったけどさ。

 

 今の俺たちなら修行前の(・・・・)朱乃さんやアーシアさんを相手にしても勝てると思う。そう部長も保証してくれた。すでに上級悪魔レベルだと。あとは実績を積めば問題なく上級悪魔になれるだろうと言われて本当に嬉しかった。

 

 部長を『王』と認めたけどやっぱり独立して眷属をもってみたい。

 ただ最強漢女から離れたいというわけではなく。俺がどこまで出来るのか試してみたいのだ。部長の下にいたら俺はきっと肝心な場面で部長を頼ってしまいそうだから。

 

 

 木場と小猫ちゃんと三人でファミレスに繰り出して、ドリンクバーで生還を祝って乾杯した。

 

 アーシア? もちろん呼ばないよ。これは地獄の修行を必死で生き残った者の慰労の場だからな。

 

 あの子、割と平然とした顔で部長の修行を受けていたんだよ……なんでも『神父様の修行よりちょっと厳しい程度だから問題ありません』だそうだ。本当に彼女は人間だったのだろうか? この場に呼んでも雰囲気になじめずに浮くだけだろうから呼ばなかった。

 

 朱乃さんも別の理由で呼んでいない。あの人は……むしろ部長に殺されかかるのを嬉々として喜んでいたんだよなぁ。どうやら忠誠心の高い我らの『女王』はSと見せかけた究極のドMだったらしい。むしろ部長におねだりしていたほどだ。

 

「ああっ! もっと、もっとリアスの愛を私にください! し、死ぬ! 死んじゃいますわ! ああっ、リアスの愛が私を蝕むのがたまらない……」

 

 その姿に俺たちはどん引きだったさ。口調と台詞が色っぽくてエロDVD並だった。でもまったく興奮できない。むしろひたすら気味が悪かった。

 

 小猫ちゃんがゴミを見る目で朱乃さんを見ていたが『ああ、幼い容姿の美少女の蔑みの視線……リアスとはまた違った背徳感ですわ』とむしろ喜んでいた。

 俺や木場の視線は無視された。どうやら朱乃さんのドMセンサーは女性専用らしい。忠誠心高すぎでドMで百合かよ……眷属のまとめ役でもある『女王』が変態だと思うとなんか虚しくなってくる。

 

 ……忘れよう。

 普段はしっかりとしたいい人なんだ。俺への好感度は相変わらず低めだけど。

 

「レーティングゲーム、がんばろう。僕らならきっと大丈夫さ」

「……私たちの手で敵を全滅させてしまいましょう」

 

 木場も小猫ちゃんもやる気十分だ。この修行でだいぶ自信もついたし実力も伸びた。手数もだいぶ増えたので大抵の敵には対応できる。

 

「よし、不死身のフェニックスとやらを俺たちがぶっつぶそうぜ!」

 

 俺の声を合図に三人で乾杯する。

 

 目指すは勝利。それも可能ならば俺たちの手での勝利。

 俺たちは断じて部長におんぶに抱っこの役立たずじゃないと証明してやるさ!

 




すでにどん底に叩き落とされてから這い上がったため綺麗で有能なライザー。
ライザー自身を含むライザー眷属も強化されています。でもグレモリー眷属はさらに強化されるんですけどね。

そして修行シーンはまるまるカット。
原作ではリアスとイッセーの距離が近づく重要なシーンがあるような気がするけど、うちの漢女リアスには関係ないので。
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