ハイスクールD×D 漢女な部長はとてもすごいです 作:へびひこ
「『女王』も墜ちたか……そろそろ僕たち前座は幕かな。さて、君は強いね。フェニックスの『騎士』さん。名前ぐらい聞いてもいいかい?」
「ライザー・フェニックス様の『騎士』カーラマイン。貴様に強いと言われても皮肉にしか聞こえん」
木場が笑う。朗らかに。
「そう言わないでくれ、君も強いさ。こんなに遊べたのだからね。本当に楽しかったよ君とのチャンバラごっこは」
「貴様……この期に及んで愚弄するか。どこまで我らの誇りを踏みにじれば気が済む。このクズが!」
木場は少し笑みを変えた。困ったように。
「僕たち仲間同士の模擬戦はほとんど『殺し合い』に近いからね。本当に楽しかったんだよ。剣を打合せて戦うのがね。でもあの『死合』を知ってしまうとこうした尋常な一騎打ちが遊びにしか思えなくなってしまったんだ」
侮辱するつもりはないんだよ? 挑発する気はあったけどと言い訳する。
「だからせめて最後は僕の切り札を見せよう。ここまで戦ってくれた君へのささやかな礼儀だ」
「ふん、まだ奥の手があったか……食えん男だ」
木場が唇の端を吊り上げるように嗤った。
「さあ、対フェニックス用の切り札を見せようじゃないか……『
「禁手化だと!?」
凄まじいエネルギーが木場の元に収束してその手に漆黒と純白の刀身を持つ両刃の長剣が握られる。白い刃と黒い刃を持つ不可思議な気配を放つ剣。
その気配に『騎士』カーラマインが驚愕の叫びを上げた。
「なんだそれは!? 魔剣、いや聖剣なのか!? いや、悪魔がなぜ聖剣を握れる!?」
そんな悲鳴じみた声を心地よさそうに聞き流して木場が歌うように口ずさむ。
「不完全ながら聖剣使いの因子を持ち、失敗作として廃棄処分を受け、リアス・グレモリーによって悪魔として新たな生を与えられた」
純白と漆黒。聖と魔の気配を放つ剣から凄まじい力が漏れ始め、それは次第に白と黒の渦となって周囲に凄まじい威圧感を与える。
「故に僕はこの身に聖と魔の因子を持つもの。生まれ持って宿した神器は『
木場が笑顔を貼り付けたまま聖魔剣を振り上げる。
「さあ、僕の聖魔剣よ! 初めての敵だ。存分に喰らい尽くすがいい!」
「う、撃たせるかぁ!」
すでに木場の頭上で凄まじいエネルギーをまき散らす白と黒の渦。撃たせれば確実に敗北すると直感したカーラマインは突進を選ぶ。
猪突であっても撃たせる前に斬れば良いと。
だが木場の方が速い。
「刮目せよ! 聖と魔の力を。白と黒が生み出す混沌を! 仰ぎ見て頭を垂れるがいい!『
振り下ろされた聖魔剣から放たれた聖と魔のエネルギーは互いに相乗し、まるで原初の混沌を主張するような凄まじいエネルギーをもって蹂躙した。
その一撃は『騎士』を飲み込んだだけでは飽き足らず。戦場を突っ切って結界にぶち当たり、この異空間すら震動させる。
『……ライザー・フェニックス様の『騎士』一名。戦闘不能』
アナウンスの声すら若干緊張が感じられた。
木場はすっきりとしたいつもの爽やかスマイルに戻ると呟く。
「試し撃ちにはちょうど良かったね。この一撃ならフェニックスだって倒せる。まぁ、あっちのフェニックスはイッセーくんが倒すみたいだし、ライザーの方は部長が相手をするのだろうから、もう出番はないか」
残念残念……そう呟きながら歩き出す。
木場、やれるなら最初からやれよ。遊ぶなよ。おまえが遊んでいるから俺一人でがんばることになったんだぞ?
戦いのあとに聞いた話だが彼女、レイヴェル・フェニックスは最初兄を軽蔑していたそうだ。
生まれ持った種族特性の不死性と炎を使ってレーティングゲームで好成績をあげたが、それはフェニックス家の悪魔としてはできて当然のレベルだ。
その上、眷属を年若く見目のいい女性ばかりそろえてそのほとんどすべてに手を出していた。例外は実の妹であった彼女だけ。
しかも彼女を眷属に加えたのも実力を評価したのではなく『ハーレムに実の妹を入れるのもなかなかいい』という彼女には理解しがたい理由。
だから彼女はなにもしなかった。最低限命じられたことをこなすだけでそれ以上のことをしなかった。
すべてが変わったのはそんな兄とリアス・グレモリーの婚約。
すでに奇人変人と評判の女性だった。兄も最初は喜んだ。グレモリー家は現魔王を輩出した名家だ。その次期当主の婿に選ばれる。名誉なことではある。
心を踊らせて対面に望んだ兄は彼女を一目見て落胆し、嫌悪した。その場でリアス・グレモリーを『女とはとても思えない醜い怪物』と罵倒して戦いを挑み、勝ったら婚約話はなしだと宣言した。
自信があったのだろう。フェニックスの不死性は絶対的な優位であり、龍すら傷つけるフェニックスの炎は最強だと信じていた。
しかし兄はリアス・グレモリーに手も足も出ずに敗北した。
そして数日自室に引きこもった。
いい加減心配になって様子を見に行ったレイヴェルさんに彼女の兄は宣言した。
「俺はリアス・グレモリーに勝つ」と。
その瞬間から、ただのハーレムの主だったライザー・フェニックスが眷属の『王』になって眷属をまとめた。
一致団結して修行し、力を高め、彼女たちの知る最強を打ち負かす夢を共に抱いた。
その姿は眷属と共に歩み、同じ目的に向かって邁進する『王』であった。
「……もう私一人だけですか。いまさら私一人で戦局を変えられるなどとうぬぼれてはいませんが、それでも我が『王』が『共に戦おう』と命じられたのです」
俺を見るフェニックスのお嬢さんの目はどこまでも静かでいっさいの怯えも迷いもない瞳だった。
「私はレイヴェル・フェニックス。フェニックス家の娘。ライザー・フェニックスの妹にして『僧侶』です。あなたは?」
小柄な少女の名乗りに俺は素直に答えた。なにかそうしなければならないという雰囲気を感じた。
「俺は兵藤一誠。リアス・グレモリーの『兵士』だ。そして知っているようだけど『赤龍帝の籠手』を持つ『赤龍帝』でもある」
左腕の赤い籠手を見せつけるように目の前にかざす。
彼女はどこか満足げに微笑んだ。
「では兵藤様。私と一戦戦ってくださいな。力惜しみなどせずに、全力で!」
言葉と同時。
彼女の周囲から真紅の炎が沸き立ち俺に津波のように襲いかかった。
「フェニックスの炎は龍の鱗さえ燃やす。赤龍帝といえども直撃すれば……」
「まぁ、くらえば確かに痛いだろうな」
「な!?」
まったく無傷で立つ俺にレイヴェルと名乗ったフェニックスの少女が目を見張る。
そして再び今度は炎の弾丸を数発撃ってくる。
俺はそれを魔力で作り上げた盾で防御する。
「……私がプライドを捨てて不意打ちのような真似までして……しかも完全に防ぎきるとは、これでは立つ瀬がありませんわ」
「これは『
俺が『崩壊の掌』と同時期に編み出した技。
当時の俺に使えた数少ない戦いのための技。実質これと『崩壊の掌』しか最初の修行では戦いの技は身につけられなかった。
どちらも対最強漢女用の技だ。『崩壊の掌』が防御無視の矛なら、こちらは俺にできる限りの最強の盾。
ただの魔力の盾じゃない。そんなもので部長の一撃は止められない。
だから俺はとあるロボットアニメのシールドの技術をイメージしてこれを作り上げた。
『龍鱗の盾』の最大の特徴は硬さじゃない。表面にコーティングされるように存在する『相手の攻撃の方向性を拡散させることで威力を軽減する』という魔力だ。
「本当にイッセーは器用ね。ここまで器用に魔力を操るには相当な才能か、強固なイメージが必要なのだけど。イッセーは技巧派、テクニックタイプにもなれそうね」
部長もそう褒めてくれた技だ。
もっともドライグに言わせれば俺はテクニックタイプには向かないそうだが。
『相棒はテクニックタイプには向かん。そいつらは数々の技を使いこなし、状況に応じて戦術を組み立てる頭が必要だ。相棒はそこまで器用に多種多様の技を極めるのは無理だ。それに言ってはなんだが頭で戦うタイプでもない。むしろ限られた技を極めることで最強の武器や防具とし、俺を使って敵を圧倒するパワータイプの方がより最強に近づけるだろうよ』
もっともだ。
俺がそんな大量の技を身につけるのに、いったい何年部長の修行を受ければいいのか。
それにやはり俺は頭が良いとは言えない。頭を使って敵を追い詰めていくような戦い方は無理だろう。
フェニックスのお嬢様はどこか乾いた笑いをあげた。
「ふふふっ……私の渾身の炎を涼しい顔で防ぎきる。貴方ならばもしかしたらお兄様とも戦えたかもしれませんわね」
「そのつもりもあったんだけどな」
実際俺はライザーさんに挑みたかった。けれどそれは無理だろうと木場が教えてくれた。
「これは元々部長の戦いなんだ。きっと部長は自分の手で決着をつけると思うよ」
俺たちにできるのはその露払いだけだと。
ふとレイヴェルさんが好戦的な笑みで口元を吊り上げた。
「そんな貴方を倒せば、多少なりともお兄様への援護になる。負けていった他のみんなへ顔向けもできる。私はあなたを倒しますわ。何度貴方に倒されようともこのフェニックスの血を受け継ぐ身体は敗北することはない。それを卑怯というならば存分に責めなさい。甘んじて受けましょう。けれど私はどんな手を使ってでも貴方を倒す」
「俺が他人を卑怯とか言えないらしいから、たぶん責めないと思うぞ?」
むしろあとで謝る羽目になりそうだ。
が、遠慮などしない。
なにしろ相手は不死身に近い再生能力を持つチートボディの持ち主だ。勝とうと思ったら手段を選ぶなんて悠長なことを言っていられないよな?
「貴方の自慢の『龍鱗の盾』とやらがどこまで耐えるか、試してみましょう」
レイヴェルさんが右手を向けてその手に炎を収束させていく。高威力の一点突破で『龍鱗の盾』を貫く気かな? 残念! それはすでにアーシアがやってしまったので対処済みだ。
それに撃たせると思うのか?
「え……?」
鈍い爆発音と共に彼女の右腕、その二の腕のあたりが爆発して右腕が地に落ちる。
レイヴェルさんはぽかんと自分の腕を見つめて信じられないという顔をした。即座に炎と共に右腕が再生したのはさすがだ。
「な、なにをしたのですの?」
「ここはもう俺の戦場だ。あんたは俺の『兵隊』の包囲下にいる」
わざわざ説明などしてやらない。
存分に警戒しろ、存分に怯えろ、存分に恐怖し苦痛に泣き叫べ。
フェニックスの再生能力が精神力に依存するたぐいのものだという説明は受けている。魔力が枯渇しても危ないらしい。
ならば削りきればいいのだ。反撃も許さずに徹底的に。
次に彼女の背中が爆発した。
「きゃあああああああああ!!」
うむ、なんかSに目覚めそうな悲鳴だな。綺麗な声で鳴く悲鳴がちょっと耳に心地よい。
……いや断じて俺は変態ではない。そんな変態になったら小猫ちゃんに嫌われるじゃないか。
次に左肩。右足首。左足太もも。
左腕が吹き飛び、右足首から先が消滅し、左足が引き千切られたように地面に転がる。
次々と起こる爆発に彼女は地面に倒れた。両足がなくなればさすがに立っていられないよな。土にまみれながらも彼女の目は闘志を失わない。お嬢様かと思えば意外と根性があるようだ。
「……なるほど。『不可視の爆弾』それが貴方の技ですのね?」
炎を纏って再生し、さしてダメージを感じさせない顔色で彼女は立ち上がった。
「ああ、そうだ。だから言っただろう。もうここは俺の戦場だと」
ここは俺の兵隊たる『武器』が充満する戦場だ。戦力比は数えるのも馬鹿らしい。
俺の魔力操作の腕は『十日間の修行』で飛躍的に向上し『崩壊の掌』はさらに魔進化した。
もう接触する必要などない。防御することはさらに困難になり、防御自体にたいした意味がなくなった。
たとえ防御を試みてもまるで紙に染み渡るように俺の『武器』は浸透する。防御できたとしても体内への侵入を防げるだけだ。至近距離で爆発をくらえばそれなりのダメージになる。
ここはもう俺の支配する戦場だ。
この空間に俺の『武器』がひしめいて俺の命令を待っている。
不死身のフェニックスだろうと関係ない。俺の戦場で削り尽くせば終わる。
「あんたに勝ち目はない」
だから俺はそう断言した。
彼女は動揺しつつ、それでも闘志を燃やして睨み返してきた。
レイヴェル対イッセー対決開始。
本来一話だったものを途中で半分にしたためちょっと中途半端かも。
一万字超えるとは……半分にしたら五千字程度だし。迷った末分割。