ハイスクールD×D 漢女な部長はとてもすごいです   作:へびひこ

18 / 21
第十八話 赤龍帝・兵藤一誠。

「ここはすでに俺の戦場。俺の兵が満ちた。俺の掌握した領域。もはや俺に負けはないよ。たとえフェニックスが相手でもだ」

 

 俺の言葉にも彼女は不敵に微笑んで見せた。瞳に闘志を隠す事なく、自らの勝利すら信じていると感じられる姿だ。

 

 正直なんでそこまで自信があるのかよくわからない。あるいは俺の想像以上にフェニックスの不死性は強いのか?

 

「ええ、理解しましたわ。貴方の『不可視の爆弾』のからくりも。どうせ交戦前に周囲にばらまいたのでしょう? 『見えない』という特性を持った魔力爆弾。確かにこのままでは脅威でしょう。けれどならばすべて吹き飛ばせばいい!」

 

 彼女が周囲に凄まじい炎をぶちまけた。

 俺は『龍鱗の盾』で問題なく防ぐ。残念。それもアーシアがすでにやって見せた攻略法だ。当然対処法がある。

 

「地雷処理をするなら爆破してしまえばいいでしょう?」

 

 アーシアはそう笑った。

 まったくその通りだ。そうすれば俺の『武器』は無力化される。

 

 俺が以前のままならば。

 

「これで貴方の『不可視の爆弾』も……きゃあああっ!!」

 

 右手が消し飛び、左手が消し飛び、両腕が肘から消し飛び、肩が爆発してちぎれ飛ぶ。

 脚が端から削るように消し飛ばされていき、彼女はダルマのように地面に転がった。

 

 すぐに再生したが。微妙に炎の勢いが弱くなった気がする。

 

「不正解だ。それでは意味がない」

 

 俺はあえて傲慢に。出来の悪い教え子を叱る教師のように見下した。

 彼女は悔しげに顔を歪める。その目に若干屈辱の色がよぎった。見下されたのが気に障ったかな。プライド高そうだし。

 

 彼女の行為はある意味正解なんだけど。足りないんだよ。それでは。

 

 周囲を爆弾に囲まれたなら薙ぎ払えばいい。物理的な爆弾ではなく魔力で造られた爆弾だ。そういう性質を持たせていなければ誘爆もしない。

 

 おまけに俺の爆弾は一つ一つに込められた魔力は特殊ではあっても強力ではない。彼女ほどの魔力の持ち主なら一掃できるだろう。

 

 けれどすべて燃やし尽くされたのなら、すぐに次を設置すればいいだけだろ?

 俺は設置速度、設置範囲、設置数をひたすら鍛えた。もはやそれは攻略法にならない。

 

 俺の周囲すべてが俺の技の効果範囲内。俺はどこにでも、いつでもそこに『武器』を造り出して潜ませられる。それこそ膨大な数をだ。

 

 それを次々と一掃してもえんえん続くイタチごっこで疲弊するだけだ。

 しかも見えない爆弾を警戒して広範囲をある程度の魔力で吹き飛ばさないといけない相手と違って、俺はその気になればたった数個の爆弾を爆破させることで包囲されていると錯覚させることもできる。

 

 その方法で振り回され消耗を強いられた朱乃さんが『凶悪』と表現するほどだ。

 

「はぁはぁ……なんですの? 私の炎では排除できなかった? それとも即座に新しい『不可視の爆弾』を設置した?」

 

 後者が大正解。ちなみにとっても省エネな技なのでそれこそ何度だって校庭中を『武器』で埋め尽くせます。俺の魔力も上がったしね。わざわざ教えないけど。

 

「この技単体は『爆弾創造(ボム・クリエイト)』と呼ばれている。そしてその真価は圧倒的物量で敵を駆逐する不可視の爆弾による絶対包囲『爆弾の支配する戦場(ボム・ルーラー・フィールド)』だ。無限とは言わないけど圧倒的物量で配置される地雷原の中にいるようなものだぜ? 俺としては降伏を勧めるね」

「ふ、ふざけたことを……この私が、フェニックスの娘が他の仲間が必死で戦ったというのに降伏などできるわけがありませんわ!」

 

 あ、そう。

 なら仕方がないよな? だって不死身のフェニックスなんだから。

 徹底的に削り尽くす(・・・・・・・・・)しか方法がないもんな?

 

 ちなみに遠距離の設置もできれば遠隔操作も余裕です。

 さすがにすべての爆弾を自由自在に操るような真似はまだできない。けれど『移動』『待機』『突撃』程度の簡易な命令ぐらいならできる。

 

 なのでちまちま先端から削り落としていくような攻撃もできれば……。

 

「一度跡形もなく吹き飛べ。そして考え直せ。あんたじゃ俺に勝てない」

 

 校庭にある約半分。レイヴェルさんの近くにあった百以上の『爆弾』が一斉に彼女に取り憑き侵食していく。『崩壊の掌』の特徴を残している『爆弾創造』は体内に浸食して内部破壊をおこすことで真の破壊力を発揮する。外側から普通に爆弾として使ってもかなりのダメージが与えられるけど。

 

 この様子だと彼女は『爆弾創造』を防ぐことはできないらしい。感知すら出来ているかも怪しい。

 

「ブレイク」

 

 悲鳴すらあげられずにフェニックスの娘は体内に浸食した『爆弾創造』で粉々に吹き飛んだ。人体がばらばらに散らばる光景ってあまり見て楽しいものじゃない。

 

 これは勝ったかなと思ったが意外としぶとい。再び炎を上げて復活する。若干炎が弱くなった気もするが……これは本当になぶり殺しにしないと無理かな?

 

「降伏する気は?」

「……何度も言わせないでくださいな。私が降伏などありえません」

 

 俺もこんな可愛い女の子をいたぶるのはちょっと気が引けるんだけどなぁ。

 まぁ別に彼女に鬼畜外道の卑怯者と責められてもかまわないけど。でも小猫ちゃんにそう思われるのはいやだし。

 

 仕方がないから小猫ちゃんから聞いた『女の子に絶対的な精神的ダメージを与える方法』でも試すか。

 

「いいですか、相手がフェニックスだから提案しました。間違っても私や普通の女性に使っては駄目です。もしやったら軽蔑します」

 

 そう釘を刺される凶悪さだ。もしかしたら降伏してくれるかもしれない。

 

 たぶん恨まれるだろうなぁ……まぁ、小猫ちゃん以外の女に嫌われようと軽蔑されようとどうでもいい気がする。おまけにレーティングゲームとはいえ戦闘だしな。倒すために全力を尽くすのは間違っていない。うん。

 

 数が少なければ制御も楽だ。

 俺は手足を操るよりも容易く『爆弾』を操り、三つほど彼女の身体に埋め込む。

 ぴくりとレイヴェルさんが身体を震わせた。そしてなにかを確信したような視線を俺に向ける。

 

「ようやくわかりましたわ。貴方の不可視の爆弾は触れれば爆発するのではなく。触れれば体内に侵入して爆発するたぐいのものなのですね。しかも防御はひどく困難。非常に集中していてようやく違和感をかすかに感じる程度では防ぎようがない……」

「正解。それでどこに『爆弾』を設置したと思う?」

「これは……腹部? 心臓ですか? 残念ですが心臓や脳を吹き飛ばされてもフェニックスは死にませんわ」

「不正解。正解はもう少し下の方だ」

 

 レイヴェルさんが怪訝な顔をする。普通に考えれば致命傷を与えられる心臓を無視していったいどこを狙ったというのか。理解出来ないらしい。

 

「設置した『爆弾』は三つ。左右の卵巣と子宮だ」

「なっ!?」

 

 とたんレイヴェルさんの顔色が真っ青になった。

 やっぱり小猫ちゃんが言うだけあって女の子には効果覿面らしい。男なら股間のブツを狙われるようなモノらしいからなぁ。

 

「フェニックスだから再生するだろうけど……もしかしたら子供が産めなくなるかもしれないな?」

 

 レイヴェルさんは下腹部を押さえたまま答えない。どうやらなんとか魔力で防御しようとがんばっている様子だ。

 

「ブレイク」

「う、うぐっ!!」

 

 卵巣が一つ吹き飛んだ。

 胎児のように地面の上で丸くなって彼女は苦痛に耐えていた。

 

「ブレイク」

「あ、あぁああああ!!」

 

 もう一つの卵巣も吹き飛んだ。先ほど吹き飛ばした片方はもう回復しているのかな?

 身体が痙攣し、目からは涙が溢れ、額には汗がにじんでいる。

 

「ブレイク」

「ぎゃああ、あああああああああああああああああ!!」

 

 子宮が内側から破裂したのだろう。

 もはや音域から外れた悲鳴がレイヴェルさんの口からほとばしった……いかん、なんか背筋にぞくっときた。口を半開きにして苦痛にあえぎ、見開いた大きな瞳から涙がこぼれ落ちる……その瞳は苦痛と屈辱と恐怖に染まり先ほどまでの勇敢な闘志は欠片もない。

 

 なんかもっと苛めたくなるなぁ……。

 苛虐心をさらに刺激される。今の彼女はまるで怯えて震える小動物だ。

 

 もっと苛めたい。もっといい声で鳴かせたい。苦痛に歪み羞恥に染まる顔が見たい。そのこぼれ落ちる涙がまるで俺の胸を高鳴らせる天上の雫のようだ。

 

 これは新たな世界が開いちゃったか? いや、まだだ! まだ俺は堕ちん!

 

 小猫ちゃんの泣き顔を妄想して冷静になる。そうだよ。俺は小猫ちゃんに日だまりのような幸福さで笑って欲しいんだ。苛めて泣かせたいわけじゃない。

 

 でもそれとこれとは別。とりあえず再度降伏勧告。

 もうとっとと降伏してくれよ。このままだとまた変態に……それもグレードアップしたド変態に堕ちそうなんだよ。

 

「降伏する? それとももう一度試すか?」

「あ……あ、あなたは悪鬼のたぐいですか? 女性にこんな事をして男として恥を感じないのですか!」

 

 確かにちょっと罪悪感は感じるけど。別に恥とは思わないな。

 部長との訓練ではこんなのより切実に生きたいと涙を流して願う地獄を身近に感じるぞ?

 

 そもそもあんたは負傷しても再生するし。せいぜい苦痛程度しか与えられないのだから遠慮する必要も感じない。

 

 それに引きこもり女装少年を即座に部屋から叩きだした小猫ちゃんの助言だしな。きっと効果があると信じられる。

 

 おまけにゲームが終わればフェニックスの再生能力で怪我も残らない親切さだ。小猫ちゃんは優しいなぁ。わざわざ普通の女性には使うなと忠告してくれた。確かに普通の女性だったらこれ以上ない残酷な行為かもしれない。

 

 これはフェニックスの女性専用の精神攻撃だな。どうせ治るけど苦痛と恐怖と屈辱をたっぷり心の奥底に塗りつけてやれる。

 

「君はフェニックスだから、どうせ再生するだろう? 友達に教わってね。女の子なんだけど。これが一番女の子の心を折るのに最適だってさ」

「そいつは鬼畜外道のたぐいですわ! ……ご友人はもっと選ぶべきだと思いますわよ」

 

 勢いよく飛び出した罵声と俺を気遣うような視線。

 俺の中で何かのスイッチが切り替わった。こうカチンと。

 

「いや、いい子なんだよ……おまえなんぞよりよっぽどな。比べものにもならないさ。天に輝く月と路上の小石を比べるなんて馬鹿らしいと思わないか?」

 

 俺の声にレイヴェルさんの顔が一層青白くなって震えだした。

 

 どうした? 俺は普通の、当たり前のことを言っているだけだぞ? 小猫ちゃんは最高だ。あんないい子はいない。世界の常識だと布教してもいいくらいだ。

 

「ああ、そうだった。降伏はしないんだったな。じゃあ、がんばって耐えろよ? 『鬼畜外道』な輩に負けたくないだろう?」

 

 俺は平坦な声でそう宣告した。

 俺ってこんな声も出せるんだな。イッセーくんはびっくりしたよ? 感情のない声ってこんな感じかね。

 

 

 何度繰り返したか。

 

 卵巣、卵管、子宮、腸、胃、肺。何度も何度も執拗に致命傷にならない箇所を小さく最大限の苦痛を与えるように破壊する。

 

 もっと勉強しておけば良かったな。そうすればどうやればもっと苦痛を与え恐怖を魂に叩き込めるかわかっただろうに。

 

 どうせ破壊しても再生する。何度でも壊し放題だ。

 反撃する余裕などこいつにはない。そんな余裕は与えない。そんな気力すら残してやる気はない。

 

 ただなぶり者にするように次々と体内を爆破する。ときどき思いだしたように手足を吹き飛ばしてそのツラを土にまみれさせる。

 

 血尿を漏らし、血に染まった糞便を垂れ流し、血と汚物を小さな口から吐き出す。

 校庭に彼女の悲鳴が響き続ける。やがて声すらかすれて、悲鳴すら力ない弱々しいものになっていく。そして涙を流して彼女が哀願するようになってきた。

 

 しばらくは無視して続けていたが、どうやら本気で命乞いをしている雰囲気になってきたので追撃の手を止めた。

 

「もう……やめて……お願い……もう……」

 

 地面には彼女が口から吐き出した汚物や血液、股間や尻から溢れ出したモノでひどい惨状だった。そんな汚物まみれの地面に倒れ伏す彼女の姿は初対面のお嬢様然とした美しさなど欠片もない。見るに堪えない光景っていうのはこういうのを言うのかね?

 

 彼女の再生の時に発生する炎ももはや消えかけのたき火のような有様だ。

 小猫ちゃんを侮辱したのだ。このぐらいは当然の報復だろう。罪悪感はまったくない。

 

 纏っていた高価そうなドレスももはやぼろ切れと大差ない。あちこち破けているので半裸状態に近い。

 

 けれど欲情などしないし、憐憫の情もない。

 

 こいつは小猫ちゃんに罵声を浴びせるに等しいことをした。衆人環視の中で全裸にひん剥いて磔にし、そのまま開きにするぐらいはされて当然だ。

 

 その時の俺を見ていた木場があとで『まさに悪魔って感じの笑顔だったよ』と微妙な顔で言ったな。

 小猫ちゃんまで『まさに悪役。正義のヒロインをなぶり者にする悪の大幹部の貫禄がありました』などと言うし。

 

 ……そこまでひどいか? 俺は?

 

 

「いやなら降伏すればいいだろ。ルールでは出来るって聞いたぞ」

「………………」

「なら続けるか……そろそろ限界っぽいし、今度こそ本気で子供が産めない身体になるか? 貴族の娘で子供が産めないって言うと俺の国の昔の話だとずいぶん肩身の狭い生き方をするらしいな」

 

 実際貴族階級が栄えていた頃、嫁いでいながら子供を産めない女性など離縁されても文句が言えなかったと聞いたことがある。

 

 悪魔社会についてはまだ詳しくないが、貴族が幅をきかせているのならその価値観も人間の貴族に近いだろう。

 

 ましてや純血悪魔が戦争で減り『悪魔の駒』で種族維持のために転生悪魔を増やしている状況らしい。

 

 そんな状況なら純血の女性悪魔にもっとも期待されるのは純血の男性悪魔と結婚して純潔悪魔の子孫を残すことだと容易に想像がつく。部長の婚約だってそういう話だろう?

 

 その中で純血でありながら子供を産めなくなった女性悪魔がどういう扱いを受けるか? 俺は知らないが少なくとも無事子供が産める女性悪魔ほど恵まれた生き方はできないだろう。

 

 俺が責められる可能性? これはレーティングゲームで大怪我したり死んだとしても相手に責任など求めないと聞いている。しかも相手は不死を誇るフェニックス。その戦意をくじく作戦のなにが悪い。

 

 そんなに大事なお姫さまならこんな場所に出さずにお屋敷で優雅にお茶会でもさせていろよ。

 

 

 彼女の顔色はもはや死人のような有様だった。綺麗にセットされていた金髪はぐしゃぐしゃの泥まみれ、涙を流し続けた目は充血し、口元は汚物と血で汚して可愛らしい顔が台無しだ。

 

「……せめて慈悲を。このようななぶり殺しにされるのは我慢なりません。せめて最後に一撃の勝負を挑ませてください。その余裕から見ておそらく貴方はまだ本気ではないのでしょう?」

 

 拷問もどきのなぶり殺しにされるより、華々しく散りたいと主張する。

 

「それはいいけど。今の状態で俺と撃ち合えるのか?」

 

 無理だろうと思える。今の彼女に俺の全力を叩き込んだら本気で死にそうだ。

 ほとんど半死人状態。とっくに戦闘不能判定がされて退場していてもおかしくない。

 

「慈悲をかけていただけるなら、これを使います。『フェニックスの涙』です。これを使えば私は全快する。全力の一撃勝負ができる。それで負けるのならばたとえ再生能力が残っていようとも素直に負けを認めます」

 

 ボロボロの衣服の胸元から大事そうに小瓶を取り出す。よく俺の攻撃で壊れなかったな。なにか防御用の魔力で守られていたのだろうか?

 

 たしかフェニックス家が売っている強力な回復薬だったか? 俺も修行でうっかり『あら、これは死にそうね』と部長がやりすぎたときに何度かお世話になったらしいなぁ……うっかりで殺されかけてきたのか、その事実を思い出すと涙がこみあげてきそうだな。

 

 一撃勝負か……正直このまま削りきった方が楽だ。彼女はたぶんもう持たない。

 

 だからこそプライドの高そうな彼女が『慈悲を』と口にした。ただ回復しただけなら俺がそのまま拷問まがいの方法で再び削り尽くすと踏んだのだろう。

 

 もしそうなら実に正しい推測だ。こっそり回復などしても削り尽くせばいいと気にもとめなかったと思う。

 

 俺にさしてメリットはない。勝利だけを望むならこのまま踏みつぶして踏みにじればフェニックスの炎も消えるだろう。

 

 けれど気持ちはわかる。とてもよくわかる。

 

 実力もろくに発揮出来ずに一方的になぶり殺されて負けるのでは納得できないのだろう。俺も圧倒的強者に手も足も出ずに粉砕される無念は知っている。あれは正直何度泣いたことか。

 

「わかった。それとごめん。ちょっと頭に血が上ってやりすぎた」

 

 ちょっとどころじゃなくやりすぎたか? 途中からちょっと楽しかったような気も……心地よい悲鳴が徐々に弱くなり、途切れ途切れになり、しまいにはうめくような音を口からただ漏らす様など……いや、俺は違うぞ! まだ堕ちてない! 俺はド変態じゃない!

 

「いいえ、貴方が豹変したのは私があの言葉を吐いたとき、貴方はご友人を侮辱されたと怒ったのでしょう。愚かにも赤龍帝の逆鱗に触れた私にも問題があります。先ほどの暴言は謝罪させてください。確かにフェニックスの女に対してはこれ以上ない攻撃でしたわ……今でももしかしたら自分は子供が産めない身体になってしまったのではと考えるだけで身体が震えます」

 

 あ、やっぱり女の子としてはそれは怖いんだ? ……実は遠回しに俺って非難されている? 後できちんと謝りに行くべきか?

 

 彼女が小瓶の液体を飲み干すと力が彼女の身体にみなぎった。瞳に再び闘志が宿る。倒れ伏していた彼女がゆっくり起き上がって俺と向き合った。

 

「どうか貴方の全力をお願いします。私もあとのことなど考えずに全力を出すつもりです」

 

 ただの一撃に賭けると宣言する。

 

 全力か。

 

 もしかして部長の気が変わるかもしれないから切り札は残したかったけど。彼女のお願いならある程度は聞いてあげたい。なにせこれ以上ないほど痛めつけたし……。

 

「おまけにそんな目をされるとなぁ……」

 

 あんなまっすぐに恨みも憎悪も嫌悪もなく、ただ純粋に闘うべき敵として闘志を燃やされると。応じたくなってしまう。

 

 あ、なんか罪悪感がじりじりと胸を焼く。

 ちゃんとあとで謝ろう。さすがにあれはやりすぎた。

 

 それにしても彼女は俺の予想以上に性根の座ったいい子なのかもしれない。

 なんとなく彼女との一撃勝負が楽しみになってきた。

 

 俺は渋々ではなく、むしろ喜ばしい敵を見つけた気分で相棒に声をかける。

 

 彼女がそう望んでいる。敗北するのならばきちんと戦って散りたいと。

 ならば俺はそれに最大限応えよう。俺の全力をもって。

 

「ドライグ。やるぞ」

『妹の方では不足な気もするが、それでも間違いなく上級悪魔クラスだ。回復もしている。初披露には手頃な相手かもしれんな』

 

 俺は少し息を整えた。初めてではないが、どうもこれは妙に緊張する。ドライグには使い慣れていないせいと急激に強くなったため意識が実力に追いついていないせいだと笑われた。

 

赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)よ。我が身に宿る勇壮たる龍よ」

 

 本来はこんな呪文はいらないらしい。木場もアーシアも呪文など唱えない。けれど俺は余裕があるのならば唱えたい。これは俺の覚悟だから。

 

 赤龍帝として、ドライグを宿すものとして、こいつと一緒に生き抜く決意だから。

 

「我が身、我が魂と共に歩もう。我らの前に敵はなく、我らはすべてを打ち砕く!」

 

禁手化(バランス・ブレイク)!』

 

 

 最初の禁手化の時の決意。

 自分の力だけではなくドライグとも力を合わせて生き抜こう。強くなろうと誓った……地獄のような修行で生死の境をさまよいながら。

 

 木場も似たように禁手に目覚めた。

 あいつの場合は天国にいる仲間から『立て! 立つんだ祐斗!』『祐斗! 君の力はこんなものじゃない!』と声援が聞こえたらしい……それ地味にそっち側に逝きかけていたんじゃないのか?

 

『十日間の修行』で俺たちは禁手に目覚めた。アーシアは悪魔になってからも祈り続けていたらいつの間にか出来るようになっていたらしい。

 

 部長に言わせれば『毎日のように苦行に身をさらせば禁手に目覚めてもおかしくないでしょう』と呆れていた。部長的にはアーシアの神への祈りは『苦行』扱いらしい。アーシアは『いいえ、主の試練です』と訂正していたが。

 

 

「これが『赤龍帝の籠手』の禁手亜種『真なる赤龍帝の勇者(トゥルー・ブーステッド・ギア・ブレイブ)』だ!!」

 

 俺の身体を一瞬で赤い全身鎧が覆う。

 素肌を晒している場所などないというほどの全身を包む装甲。身体からわき上がる圧倒的力。全身を彩る赤と、黄金の縁取りのアクセント。手の甲などに配置された力強く輝く宝玉。

 

 この姿を見たアーシアが目を輝かせて『ジャパニメーションの変身ヒーローみたいですね! 異星人と戦ったりするんですか!?』と大興奮だった。日本のアニメが好きだったのか、アーシアは?

 

「……まさかこの目で赤龍帝の禁手を見られるなんて……光栄ですわ。私も全力をもって挑みましょう」

 

 勝ち目がないなどわかっているだろうに。それでも闘志を衰えさせる事なく。臆するところなどまるでなく俺に挑むレイヴェルさん。

 

 

 切り札である『禁手化』した俺は朱乃さんとアーシアの二人すらあしらう。部長とだってある程度戦える……結局部長には負けるけどな。

 

 はっきり言って禁手化した俺は最上級悪魔レベルだ。部長がそう保証した。その中でも上位のレベルだと。ドライグも『魔王レベルでない限り負けはない。それも相棒が力をつければいずれ超えることすら可能だろう』と自信満々に言い放った。

 

 実はこの禁手亜種。通常の禁手である『赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)』と今のところはあまり違いがないらしい。おそらく特殊な能力を身につけているはずだとドライグは主張する『禁手の亜種とはそういうものだ』と。

 

 だが今のところわかっているのは『龍鱗の盾』と同様の効果をこの鎧が持っているという一点だけ、あとは普通の禁手とたいして変わらない。

 

 おそらくまだ俺が使いこなせていないのだろうと部長とドライグは結論づけた。

 

 はやく完全にこの禁手を使いこなせるようになりたい。そうすればドライグの力をもっと上手く使ってやれるだろう。俺ももっと強くなるだろう。部長の役にも立つし、小猫ちゃん一人ぐらいなら守れるはずだ。

 

 

 レイヴェルさんの勝ち目などもはやないに等しい。転生したばかりの頃の俺が彼女に挑むようなものだ。実力が違いすぎる。

 それでも彼女は臆さない。ただ前を見て俺に挑もうとする。

 

「では一撃勝負といこうか」

「はい、全力で挑みますわ」

 

 お互い一息で距離を開ける。これから放つのは互いの大技だ。至近距離で撃つようなモノじゃない。

 

「フェニックスよ! すべてを燃やし尽くして突き進みなさい!」

赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)よ。共にこの戦場に猛り、雄叫びを上げろ!」

 

 お互いの力が限界まで高まる。

 そして互いに自分の最高の技を叫んだ。

 

栄光と飛ぶ不死鳥(グローリー・チャージ・フェニックス)!!」

龍帝の咆吼(ブレイブドラゴン・ブレス)!!」

 

 彼女の全身から炎が湧き起こり、それは伝説のフェニックスをかたどって羽ばたいた。

 

 凄まじい熱量をもって突撃するフェニックス。

 俺の両手から撃ちだされた猛り狂う龍の一撃。

 

 凄まじ魔力が収束された炎の鳥を、俺の放った強力な魔力砲撃が迎え撃つ。俺とドライグの誇り高き咆吼は互いに相乗し、混ざり合い、さらに威力を高めて突き進む。その威力は木場の『聖魔煌めく混沌』にすら負けない。

 

 一瞬の拮抗。ほんの一瞬。瞬きする間もない刹那の拮抗。

 

 フェニックスの偉容が『龍帝の咆吼』のエネルギーに飲み込まれて消えていく。そしてその先にいるレイヴェルさんがまるで愛しい人でも出迎えるように無防備に両手を広げて微笑んでいた。

 

「ああ……これほどの強敵に挑んだのであれば、フェニックスの娘として誉れでしょう……お兄様、ごめんなさい。がんばって……」

 

 途方もないエネルギーが彼女を飲み込み、貫き、蹂躙し、粉砕して突進する。

 レーティングゲーム会場の結界にぶちあたったのか、先ほどの木場よりもさらにひどい地震のような震動が襲った。

 

「………………ライザー・フェニックス様の『僧侶』一名。戦闘不能」

 

 もはや言葉もないと言わんばかりに呆れた口調のアナウンスが流れる。

 

「勝ったぜ?」

「……それを使ったなら勝って当然でしょう?」

 

 そう皮肉っぽく言いながらも嬉しそうに小猫ちゃんが近寄ってくる。

 俺たちの手がパンと合わせられた。

 

 何気ないふれあいがすごく嬉しい。

 ああ、俺はやっぱりこの戦いが終わったならば。フェニックスを打倒しえた俺ならば……。

 

「僕たちの戦いはこれで終わりかな……次はいよいよ『王』の出陣だろう」

 

 近寄ってきた木場がそう言いながらも禁手を解除しないままに微笑む。どこか物騒な笑みだ。

 

 コイツ絶対機会があればライザーさんに向かってあの技をぶっ放すつもりだ……。

 さんざん遊んだだろうに、まだ欲求不満なのか?

 

 

 

 

「レイヴェルでさえ勝てなかったか……だがこれで条件は整った。眷属をすべて失った俺に眷属の活躍を存分に目撃した貴様。プライドの高い貴様なら必ず自らの手で勝利を完全なものとしようと欲するだろう。できれば貴様の眷属を倒し、こちらが有利の形で挑みたかったが……だが、この状況ならば俺の挑戦を受けざるを得ないはずだ。今こそ挑ませてもらうぞ。リアス・グレモリー!」

 

 新校舎の屋上から炎を纏ったライザーさんが飛び立ち。

 

「完勝か……なかなかに見事であった。これでは我が不甲斐ない戦いなどできぬな」

 

 旧校舎の屋上から迎え撃つように我らが『王』リアス・グレモリーが飛び立つ。

 

 

 今回のレーティングゲーム。そのメインカードがついにぶつかり合うのを俺たちは見上げた。その視線の先には最強と信じる『王』がいる。

 

 俺たちの先頭を突き進み、俺たちを導き、俺たちに力を与えた『王』が。

 




いろいろ書き足していたら五千字程度だったはずが一万字突破。前話と分割した意味がない。

たぶん捏造設定。
・フェニックスの再生能力には限界がある。削り尽くせれば倒せる。
・フェニックスの涙は完全回復アイテム。飲めば魔力も気力も体力も元通りさ。

一つ目はそうでもなければフェニックス最強すぎるでしょう?

魔王並みの火力を持つ悪魔なんてどれぐらいいるのって話。精神攻撃が悪魔の攻撃手段として普通なら別だけど。

実際原作ライザーでさえ優秀な成績を上げていたらしいからまずフェニックスを普通の悪魔が倒す方法はないって設定なんだろうなぁ。

苦痛をもって精神を削って倒すというのは、ありだと思うけど。原作イッセーは聖なる力を使ってようやくだったから……やっぱり原作ではまずありえないんだろう。


二つ目は調べた結果どうやら傷を治すだけの薬らしいと判明。
完全回復アイテムだと勘違いしていたため物語が破綻しかかる。

「進路そのまま、突き進め!」

突進を選択。もう修正不可能だし。

やっぱり原作小説未読だと難しい。とりあえず完結までがんばるけど。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。