ハイスクールD×D 漢女な部長はとてもすごいです   作:へびひこ

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第十九話 王の対決。

「どうやら眷属対決は俺の負けらしい」

 

『王』と向き合ったライザーさんがそう口にする。

 

「なぁ、リアス・グレモリー。俺の目は節穴だったのか? 俺は少なくとも個々の能力で五分、あとは数で圧倒できると踏んだ。だが蓋を開けてみれば圧倒されたのはこちらだ。しかも圧倒的な個人能力で蹂躙された」

「別に貴様の目が曇っていたわけではない。皆この十日間死と隣り合わせの修行を積み力をつけたのだ。十日前の戦力で計ったのが敗因であったな」

 

 ライザーさんは少し無念そうに目をつぶった。

 

「そうか、すべては俺の甘さ故か……レイヴェル、ユーベルーナ、みんな……すまなかった。そしてよくやってくれた。お前達は勇敢に戦った」

「一つ謝罪しなければならないことがある」

 

『王』の発言にライザーさんは目を開いた。しかし心当たりがないのか不思議そうな顔をする。

 

「我が眷属が貴様の妹に無礼をした。あれは女に対する行いではない。いくらなんでもあれは非道だ。あとで我からも叱らねばならないな」

 

 え? 俺『王』の機嫌損ねていたの? さすがにやりすぎだったか!?

 

 しかしライザーさんは特に気にした様子もなかった。

 

「これは非公式とはいえレーティングゲームだ。ゲームでフェニックスを倒そうと考えれば苦痛を与えその精神を疲弊させて再生能力を奪おうとするのは定石だ。別に貴様の眷属は特別非難されることはしていない」

 

 その言葉に俺はほっとする。そうか俺以外にもああいう方法でフェニックスを倒そうとした奴がいたのか。本当に? よく考えるとかなり極悪なことやったけど?

 

「念のため確認を取ったが俺の眷属は全員生きている。重傷者もいたが治療済みだ。もちろんレイヴェルも無事だ……まぁ兄としては多少思うところもあるが、無事ならば特に非難する気はない」

「そう言ってもらえると助かるが、あれは男児たる者の行いではない」

 

 ちらりと『王』の視線が俺を射貫く。

 禁手化し、莫大な力を得ているにもかかわらず身体が硬直した。

 

「そう言うな。あの男はどうやら奥の手を温存したまま勝ちたかったのだろう。だからレイヴェルを降参させたかった。たぶん本来の標的は俺だな。そして俺と戦う実力もある。正直戦ってみたい気持ちもあるが、先ほどの一撃でだいぶ消耗しただろうからまたの機会に取っておくさ」

 

 見抜かれているし。

 確かに『龍帝の咆吼(ブレイブドラゴン・ブレス)』は強力だ。だが魔力がごっそり消費される。これなら『爆弾の支配する戦場(ボム・ルーラー・フィールド)』を連発した方がはるかに負担は少ない。

 

「あれは王になりたいと望む男だ」

「ほう? 転生したてと聞いていたが。案外野心家なのか? いやそれにふさわしい実力はある。おまけに二天龍の片割れ『赤龍帝』ならば上もいつまでも下級悪魔でいさせるはずもない。案外簡単に叶うかもしれんな」

 

『王』は厳かに肯いた。

 

「あれは想像以上の速さで成長した。上級悪魔となるのもそう遠いことではないだろう。故にあの男には王としてのあり方を教えなければならん」

「なるほど。貴様はあの男を王として育て上げたいのか。ただの上級悪魔、ただの眷属の主ではなく」

 

 部長がにやりと笑った。

 

「ライザー・フェニックス。貴様も初めて会ったときに比べればまるで別人。良い『王』になったと見える」

「昔のままと思ってくれるな……世間話もここまででいいだろう。おまえの自慢の眷属たちに『王』同士の戦いがどんなものか見せつけてやろう!」

 

 炎を纏ったフェニックスの『王』

 それを迎え撃つために拳を握る我らが『王』

 

 莫大な力を持つ両者が空中で激突した。

 

「すげえ……」

「ああ、そうだね。我らが『王』に格闘戦で戦えるとは予想外だ」

 

 俺の感嘆の呟きに木場が同意する。

 フェニックスは炎を操る。だからきっと炎を使った戦いになるだろうと思ったが予想外にも二人の緒戦は正面切っての殴り合いだった。

 

 ライザーさんの拳を『王』がはじき、『王』の拳をライザーさんが腕で防御する。

 拳だけではらちが明かないと両者蹴りを交えての本格的な肉弾戦になる。

 

 俺ならどの程度戦えるかと目の前の戦いに目を奪われながらも思わずにいられない。

 

 禁手化した今なら五分に近い戦いができるかもしれない。

 だがしょせんパワー任せの戦いだ。俺の格闘戦の技術は我流のケンカ殺法。禁手という切り札がなければろくに戦いにすらならないだろう。一方的にサンドバックにされて終わる。

 

 二人の戦いはまさに格闘家の戦いだ。力で押しているように見えて隙をつき、隙をつくり、牽制し、相手の目をくらまし、致命の一撃を狙う。

 

 まさにあの漫画の戦いのようだ。

 地球を守る超戦士たちが自分の肉体と『気』というエネルギーをもちいて強敵と戦い続け、仲間と地球を守り続ける。

 

 これを見て胸を熱くしない男はいない。断言できる。

 

 俺は血がたぎって耐えられないほどだ。できれば俺が戦いたかった。こんな戦いを俺もしたかった。

 あんな一方的な蹂躙ではなく。力と力をぶつけ合って勝負したかった。

 

 レイヴェルさんとは最後はお互いの全力勝負をしたが、まだ物足りない。

 面と向かって言えば怒るかもしれないが彼女では足りない。俺が熱く燃えるには力が足りなかった。これを目撃すればそう感じる。感じざるをえない。

 

「ちっ……格闘戦ならさんざん修行した俺が上かと思ったんだがな!」

「よく鍛えたものだ。以前は素人であったというのに、実に見事! 今の貴様はまさにフェニックスの名にふさわしい男だ!」

 

 ライザーさんが口惜しげに悪態をつき、我が『王』が惜しみない賛辞を送る。

 

 両者はまるで呼吸を合わせているように距離を取った。

 

 その時だ。

 ライザーさんが勝機を見いだしたのは。

 

 あとで俺に語ってくれた。

 

「勝つならばここしかないと確信した。奴が全力を出さずに俺の実力を測っている状態。様子見の段階で俺の実力を見極めたと確信した瞬間だ。全力を出すのは、切り札を切るのはこの瞬間しかないと。この機を逃せばきっと全力で潰される。残念なことに俺の実力はまだあいつに及ばない。勝つには奴の油断をつき、予測を上回る力で押し切るしかないとな」

 

 ライザーさんが首に飾られた水晶細工を握りしめた。

 不死鳥の形をした美しい水晶細工。

 

「さあ、俺の愛する眷属たちよ。今こそお前達の真価を見せるときだ! 今こそお前達の戦うときだ! 俺と共にこの戦場で死力を尽くそう。俺と共に歩もう。俺はお前達を愛している。お前達を信じている。どうかこの不甲斐ない俺に、お前達の『王』に力を! 共にあの女に挑もう。我が眷属たちよ!」

 

 祈りだった。

 叫びだった。

 それは戦士の戦いへの咆吼だった。

 

 不死鳥の水晶細工が輝き、ライザーさんの身体に更なる魔力が溢れ出す。

 

 そして水晶細工から十五人の女性たちの幻影が飛び出す。彼女たちはそれぞれ愛おしげにライザーさんに抱きつき、唇を寄せてはとけて消えていく。

 それは俺たちの倒したライザーさんの眷属たちであり、その中にはレイヴェルさんもいた。

 

「神器? いやあれは莫大な魔力を封じたマジックアイテムか?」

「そうさ、俺と俺の眷属たちが一年がかりで創り上げた『切り札』この一年。ただひたすらに魔力を注ぎ込み続けた俺たちの力の結晶」

 

 ライザーさんが莫大な魔力に包まれながら笑う。

 

「俺は貴様に一人で挑むのではない。俺は、俺たちは全員で一丸となって貴様に挑む。リアス・グレモリー。貴様は強い。貴様は実に立派な『王』であるのだろう。だが俺は違う。俺は弱かった。今でもおまえより弱い。そして『王』としても未熟で愚かだった。ただ女をはべらせて喜んでいただけのクズだった!」

 

 両手を広げて宣言する姿は彼の言うような愚かな『王』には見えない。

 俺にはとても眩しく。輝いて見える。

 

 ああ、彼は我が『王』より弱いかもしれない。しかし俺たちに敢然と挑んだ彼女たち、幻影とはいえ自らの『王』にすべてをゆだねるように寄り添った彼女たちを見ればわかる。彼は眷属の心を一つにして見せた。愚かな『王』なら出来るはずがないじゃないか。

 

「だがそんな俺をみんな見限る事なく見守ってくれた。いつか自分たちにふさわしい『王』になると。いまこそ俺はその眷属たちの願いに応えてみせる! 見るが良い。そして感嘆の叫びを上げよ! これがフェニックスの王『業火を纏う不死鳥(ヒート・ソウル・フェニックス)』だ!」

 

 フェニックスの男は、その身を炎の魔人へと変貌させた。

 その身体は灼熱する炎であり、その身からは絶えず黄金の炎が噴き出している。

 

 真紅の肌をした魔人。

 黄金の炎を纏い。その瞳すら黄金に輝いて敵たる我が『王』を睨みすえる。

 

 黄金の炎は鎧となり、翼となる。黄金に彩られた真紅の魔人。

 

「墜ちろ! リアス・グレモリー!」

 

 黄金の弾丸となって炎の魔人が突撃する。その速度はアーシアの投擲剣にすら負けていない。音の壁すら突き破って我が『王』に肉薄し、黄金の炎を宿した拳を叩き込む。

 

「うむ!?」

「これは『戦車』雪蘭(シュエラン)の格闘の技」

 

 先ほどよりもさらに素早く洗練された動きをもって拳を叩き込み蹴りをもって我が『王』を吹き飛ばす。

 

「これは『騎士』シーリスの力」

 

 さらに追撃。渾身の拳の一撃で我が『王』が吹き飛ぶ。正直信じられない光景だ。あの『王』がなすがままに攻撃を受けている。

 

「これは『女王』ユーベルーナと『僧侶』美南風(みはえ)の魔力操作」

 

 百を優に超える黄金の炎が弾丸となって我が『王』に降りそそぐ。

 

「……眷属の力さえ取り込んだか。まったくルールのギリギリをついてくる」

 

 驚いたことに部長のあの定番衣装の女子制服がわずかとはいえ焼け焦げていた。今まで返り血一つ浴びた印象のない我が『王』がだ。

 

 さらによく見れば両腕で防御したのだろう。両腕に火傷まで負っている。

 俺は部長がダメージらしいダメージを負うのを初めて見た。

 

「今回のレーティングゲームでマジックアイテムの使用は禁止されていない。事前に魔力を込めたマジックアイテムを持ち込むことも禁止されていない」

「そのとおりだな……眷属一丸となって我に挑むか、ライザー・フェニックス。貴様は眷属と共に歩む『王』となったのだな」

 

 どこか感慨深げな『王』の言葉にライザーさんは笑った。恥じることなどなにもないと、むしろこれこそ自分の誇りだと胸を張って。

 

「卑怯だと罵るか? 自分の力だけでは女一人に挑めない臆病者と」

「まさか、今の貴様は理想の『王』の姿の一つ。それを侮辱するなどありえぬ」

 

 我が『王』が微笑んだ。本当に嬉しそうに。

 

「貴様は本当に成長したのだな。今の貴様は実に眩しく輝いている。なによりその魂がな。思わず惹かれてしまいそうだ」

「褒め言葉と喜んでおこう……さあ、消し飛べリアス・グレモリー!! これが我が妹が託し、俺の力を合わせたフェニックスの炎! 『栄光不滅たる不死鳥(グローリー・イモータル・フェニックス)』だ!!」

 

 黄金のフェニックスが空を舞う。凄まじいエネルギーと熱量を離れていても肌で感じる。

 レイヴェルさんには悪いが格が違う。これを見てしまうとレイヴェルさんの渾身の一撃がまるで色あせて思える。これなら『龍帝の咆吼(ブレイブドラゴン・ブレス)』とさえ撃ち合っても負けないかもしれない。そう思わせる迫力が心を揺さぶる。

 

「ああ……美しいな」

 

 黄金の不死鳥を見上げて我が『王』はそんな感嘆の声を漏らした。そして少しだけ悲しそうに笑った。

 

「最後まで貴方に拒絶されたままだというのが残念だわ……今の貴方なら婚約者として不足ない。むしろこちらから望みたいほどなのに」

 

 耳を疑った。今まで聞いたような出来の悪いオカマのような声ではない。まるで颯爽たる美女のような涼やかな声。

 

「貴様が眷属と共に歩む『王』ならば、我は眷属の前を突き進み導く『王』である! 故に我は力強くあらねばならない! ライザー・フェニックスよ。認めよう。汝は我にふさわしい好敵手であった!」

 

 再び轟いたのはいつもの『王』の力強い声。

 

「故に我が滅びの力の神髄を見るが良い。すべてを滅ぼす忌むべき力を。すべてを討ち滅ぼす忌避すべき力を!」

 

 我が『王』の周囲に今まで感じたこともないほどの凄まじい魔力が収束される。

 禁手化した俺とアーシア、朱乃さんと木場と小猫ちゃん、さらにギャスパーを加えてもきっと足元にも及ばない。

 

「神々すら我が前にひれ伏せ! 『神々の黄昏(ラグナロク)』!!」

 

 部長の掌が振り下ろされる。

 その瞬間、世界がきしむ音を確かに聞いた。

 

 俺は必死に小猫ちゃんを抱きしめて『龍鱗の盾(ドラゴンスケイル・シールド)』を全方位に全力展開する。他の仲間のことを考える余裕などなかった。これは危険だと本能が叫ぶ。このままでは死ぬと。ならば俺は俺のすべてをもって彼女の盾となる事しかできない。

 

 一瞬だった。

 なにが起きたのか正確なところはまったくわからない。

 記録映像をあとで確認してさえなにが起こったのか理解出来なかった。

 

 黄金のフェニックスが消え去り、真紅の魔人と化したライザーさんが消え去り、駒王学園の校舎が消え去り、俺たちすら消し飛ばしかねないほどの力が襲いかかる。

 

「イッセー先輩……!?」

「だいじょうぶ、だいじょうぶだから……小猫ちゃんは俺が守るから」

 

 俺の禁手『真なる赤龍帝の勇者(トゥルー・ブーステッド・ギア・ブレイブ)』がやかましいくらいに『Boost』と連呼し続ける。その力のすべてを『龍鱗の盾(ドラゴンスケイル・シールド)』に叩き込んで防壁とし続ける。

 

 いったいどれほど耐えたのか。気がつくと俺たちはなにもない荒野のような場所に立っていた。

 すぐそばに木場が座り込んでいた。聖魔剣を杖にして力尽きたようにぐったりとしている。

 

「……ひどいよイッセーくん。すぐそばにいたのに僕は無視かい?」

「おまえも無事だったのか……いや、ごめん。とっさのことで小猫ちゃんしか守れなかった」

「気持ちはわかるし、僕は無事だからいいけどね。あれは禁手がなければちょっと無理だったかな」

 

 咄嗟に『聖魔(コントラディクション・)煌めく混沌(トゥインクル・ケイオス)』を全周囲にぶっ放して防壁代わりにしたらしい。

 

 ……もしかして俺がくらったダメージの何割かはそれじゃないだろうな?

 

「みんなは……」

 

 小猫ちゃんが不安そうに周囲を見渡す。見事になにもない。荒れ果てた大地が剥き出しになっている。この光景からは今までここに模造品とはいえ学校があったとはとても信じられない。

 

 バサッと翼が羽ばたく音がした。

 

「無事でしたか、さすがですわね。私でも死ぬかと思いましたのに」

「無事でよかったです」

「………………あぅ、お部屋帰りたい。もうお外怖い」

 

 朱乃さんとアーシアが降りてくる。ギャスパーはアーシアに背負われてなにやらうなされていた。

 

 二人はどうやら合流していたらしく二人でギャスパーを守りながら防壁を張って防ぎきったらしい。

 

「部長は? ……勝負はどうなった!?」

 

 俺は我が『王』の姿を探す。

 

「なにを慌てることがある。貴様の『王』はそれほど軟弱ではないぞ」

 

 そんな俺の慌てようを笑い飛ばすように空から我が『王』が降りてきた。

 いつものような威風堂々たる王者の風格。その顔に安心感を抱かせる力強い笑みを浮かべて。

 

 それと同時にアナウンスが流れる。

 

『ライザー・フェニックス様。戦闘不能。『王』の敗北により今回のレーティングゲームの勝者はリアス・グレモリー様に決定いたしました』

 

 俺たちは全員歓声をあげた。皆がそれぞれの健闘を『王』の力を絶賛する。

 ……ギャスパーは目を回したままだったが。

 

 俺たちのデビュー戦は見事な完勝で飾られた。

 

 しかしこの荒野。我が『王』の攻撃の余波だけですべて消し飛んだらしい。

 

 余波であれかよ? 直撃したら俺なんて跡形も残らないぞ? ライザーさん生きているのか? まぁフェニックスだし、安全装置とやらもあるらしいからたぶん大丈夫だろうけど。

 




ライザー戦終了。
勇者ライザーの渾身の一撃も覇王リアスを打倒するに至らなかった……。
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