ハイスクールD×D 漢女な部長はとてもすごいです 作:へびひこ
駒王学園旧校舎。
旧校舎と言えば木造の今にも崩れ落ちそうなぼろっちい建物を連想しそうだが結構綺麗だったりする。そこに俺の所属することになった『オカルト研究部』の本拠地である部室があった。
そんな部屋につい先日悪魔に転生した俺、兵藤一誠がいる。
他にもこの部屋には俺を悪魔にした漢女を筆頭に四人の悪魔がいる。悪魔達の視線を受けるのは正直居心地が悪いと感じるのは俺の感性がまだ人間だからだろうか。
他人の無遠慮な視線など慣れっこな悪い意味で有名人な俺だが、これは居心地が悪い。正直虎の住処に放り込まれた気分だ。
「だいじょうぶ。取って食いはしないから怯えなくていいわ。あなたはもう私たちの仲間なのだから」
そう漢女がなだめるような声を出す。
相変わらず綺麗な髪ですね。腰まで伸びた綺麗な赤い髪がすごく似合ってません。むしろ短く刈り上げて逆立てたりした方が似合うんじゃないっすか?
というか優しく声をかけているつもりなんでしょうが背筋に寒気が走ったんすけど。
もっと普通にしゃべれ、まるでオカマみたいだぞと指摘する勇気は俺にはなかった。悪魔になってもやはり怖いものは怖いんだな。悪魔になったからといっていきなり超人じみた力や度胸は身につかないらしい。
そうです。すでに俺は人間じゃありません。悪魔です。
いくら緊急事態とはいえ、この漢女は本人になんの断りもなく俺を悪魔にしやがったのだ。いや俺もあの時は生きたいと願ったかもしれない。死にかけていたのだから。
が、悪魔になりたいと願った覚えは欠片もない。しかしそのあたりの苦情は見事にスルーされた。『他に方法がなかった』そうだが、いまいち信用できない。悪魔ならこうぱーっと魔法使って怪我とか治せるんじゃないか? そう言ったら『そういう魔法もあるわね』と言ったきりその話題はスルーされた。
部屋一杯によくわからない呪文や魔方陣が飾られている。いかにもオカルトにかぶれた同好の士が根城にしていますと強烈に主張している部屋だ。
一般人なら日本人的な愛想笑いを浮かべながら即座に脱出するレベルのうさんくささを誇る。ある意味一般人よけの結界とも言えるかもしれない。
それにしてもいったい誰の趣味だよ。これは? まさかこの漢女の趣味か?
もう少し自分たちのいる部屋の環境を良くしようと思わなかったのだろうか? それとも悪魔的には居心地がいいのか? 新人悪魔にはいまいち理解出来ない。
俺は漢女との目覚めという地獄体験を乗り切った後。放課後ここに呼び出されてあらかたの事情の説明を受けたところだ。
「ようこそオカルト研究部へ。私たちはあなたを歓迎するわ」
そう満面の笑みで歓迎の意を表現するオカルト研究部部長の漢女リアス・グレモリー。
厳つい顔に笑顔を浮かべると猛獣が笑ったような威圧感がある。同席している面子の中で一年の女子が微妙に震えているのが視界に入った。
……無理もない。俺もちびりそうだよ。
彼女はグレモリー眷属の『王』でつまりは俺のご主人様であるらしい。そして俺はそんな彼女の眷属、言い替えれば部下、はっきり言うなら下僕だ。
命令には基本的に絶対服従、反逆や逃亡は重罪。
本当に王様とその下僕な立場だ。俺はこれから一生この王様に仕えて命令に従い、忠実な部下として生きていかなければならないらしい。
……ホントになんで普通に美女とかではないのだろう。
お約束的にここは美女美少女と運命的な出会いをして仲良くなるべきだろう? 現実が俺に厳しいのは今に始まったことではないけど。これはひどくないだろうか? 改めて言う、俺の運命よ仕事しろ。頼むから。
制服を内側から突き破りそうな筋肉がイヤでも今朝の光景を思い起こさせてこみ上げるモノを我慢するのに必死になる。
ここには初対面の女子もいるので初っぱな『ゲロ男』のレッテルを貼られるのは俺的に許容できない。必死で耐えたさ。
胸の前で組まれた腕は太く逞しく、その拳は容易に俺の頭を粉砕しそうだ。ミニスカートから伸びた筋肉に覆われた太い足は黒いストッキングに包まれている。それが死ぬほど似合っていない。
というか女子の制服をこの漢女が着ることをなぜ学校は黙認しているのだろう。
俺の持ち込むエロ本やエロDVDなどよりもよほど風紀を乱しているとは感じないのだろうか?
そう思ったのだがどうやらこの駒王は目の前の漢女の実家の領地らしい。しかも管理はこの漢女に任されている。この街の裏の支配者なら違和感溢れる女子制服姿を許可させることなど楽勝だっただろう。
権力すごい。こんな理不尽をまかり通らせるなんてどんだけだよ。
実家は冥界の大貴族で公爵様。しかも次期当主だそうだ。マジすごい。きっと札束で人をひっぱたくこともこの漢女なら実現できるのだろうな。むしろ睨みつけるだけで大抵の人間は命乞いしながら彼女の言いなりになりそうだ。
……実際にやっていないだろうな? 自分の存在を認めさせるためにとか。じゃなきゃ元女子校の、共学になった現在でも圧倒的に男の少ないこの学校で違和感なく生活出来るはずがない。この漢女が。
と思ったら普段は魔力を使って他人に違和感を感じさせない術を使っているらしい。だよなぁ。そうでもなきゃ噂になっているだろうし、同じ学校に通っている俺がまったく知らないわけがないよな。
悪魔ってすごい。こんな漢女でも一般人に紛れ込めるってすごすぎだろう。もしかしてその術習えば俺が女子更衣室に忍び込んでもバレないんじゃないか?
しかも今は最下級で下っ端な転生悪魔の俺でも活躍すれば出世も出来るらしい。領地や爵位をもらったり、自分の下僕を集めてハーレムをつくったりも出来ると。
「うぉおおおお!! 俺はハーレム王になる!」
そのとき俺は思わず魂のおもむくままに叫んでいた。半分ぐらい本気だ。
というか俺はマジでもてない。このままでは一生童貞という可能性もあったのだから、この際悪魔として出世して権力と財力を手に入れモテモテのハーレムを目指す!
……そしてそうなれば半ば独立したようなものらしいからこの漢女と距離もとれる。そこは確認したさ。重要だからな。暗い笑みを隠すのに少し苦労したほどだ。
上級悪魔になれば独自に眷属を持ち半ば独立できる。それでもこの漢女の眷属のままだが下っ端のままこの漢女に使われ続けるより、きっと快適な環境が作れるに違いない。そう信じたい。
ちなみに俺の死んだ原因の一端をなにげにこの漢女はもっていた。
最近領地で堕天使がうろついていたのは知っていたらしい。悪魔と堕天使と天使の三勢力は過去戦争したこともあるほどの敵対関係で、そろそろ調査しようかしらなどとのんきなことを言っているうちに俺はその堕天使に殺された。
で、偶然もっていた悪魔を召喚できるチラシで召喚されたこの漢女は俺の中に
本当に俺を助ける方法はなかったのだろうか? もしかして神器欲しさに俺を悪魔にしたんじゃないだろうな?
疑惑は晴れないがそこを追求してもスルーされるのは目に見えている。なので他の角度を突っつく。
「あんたが気をつけていれば、俺は殺されなかったんじゃ?」
「イッセーは前向きに悪魔として生きればいいでしょう? 出世すればハーレムだって夢じゃないわよ?」
俺の非難を微妙に視線を外しながら聞き流し、そんな誘惑の言葉を口にするが完成度の低いオカマみたいな耳障りな声と流し目のセットでささやいても腹の奥からこみ上げるモノを我慢するのにがんばるだけです。
というか本気で気持ち悪いなこのオカマ! いや漢女。
そして俺の神器を出すために最強と信じるマンガキャラの必殺技を動作つきで叫ぶという羞恥プレイを行い。無事に神器を出せるようになったのだがどうにもぱっとしない神器らしくちょっと漢女ががっかりした顔をした。
「堕天使が危険視して始末するくらいだからよほどのものと思ったのだけど」
神器とは神が人間に与えた力らしい。人間にしか与えなかったため悪魔や堕天使などには基本的に神器は宿らない。生まれたときから宿主と共にあり何かのきっかけで発動するのだという。
そしてその力を手に入れた人間はめざましい活躍をする場合が多いらしい。伝承に残る英雄などは大抵神器保有者だと。
かの有名な三国志最強もそうだったのかなと思いながらちらりと漢女を見る。こいつなら神器などなくても三国志最強をくびり殺せそうだ。
そしてこの神器は『
「強いものが持てばある意味強力な神器ね。単純に実力が倍になるのだから……でも今のあなたの実力を倍にしても正直あまりたいしたことはないわね」
俺はただの高校生で素人レベルの喧嘩さえろくに強いとは言えなかった。
それが転生悪魔になって悪魔の身体能力を得たおかげでかなり強くはなっているらしい。今ならそこらの不良などぶん殴れる程度には。
それでも悪魔の基準で言えば底辺レベル。
一が倍になっても二。確かにあまり変わらない。これで元が千なら神器を使えば二千になる。仮に実力の拮抗している相手と戦っているときに使用すれば一気に抜き去れるのだ。
元が強ければ強力な神器だろうと納得したが現状の俺ではたいして強力とは言えない。
「『
そう漢女に慰められたが、それはあんたの願望じゃないのか? 聞けば普通は駒一つで一人転生できるらしい。
チェスの駒を模した『悪魔の駒』で兵士を八個、つまり兵士すべての駒を使わないと転生できなかった俺はよほどすごい神器を持つのか、あるいは本人に才能があるのか。そのどちらかということらしい。
神器が普通のものなら、後は俺自身に駒八個の価値があると言うことになる。
せっかく拾った下僕が神器も本人もスカだったら眷属の王としての漢女もがっかりだろう。
しかしどうにもこの漢女の態度や言葉に否定的な解釈ばかりする自分に気がつく。やはり出会いが最悪だったせいだな。
これが美女だったら大抵のことには目をつぶり涙を流して忠誠を誓ったと思う。俺ならきっとそうすると信じる。
なぜなら俺はイケメンが敵で女が大好きなエロ魔人だからだ! ついでに言えばオカマもどきの漢女も大っ嫌いだと断言できる。
元からそっちの趣味はなかったが今朝の出来事で奴は敵だと認識できた。イケメンよりもある意味厄介な敵だ。イケメンは女の人気をさらうだけだが漢女は俺の精神をえぐっていく。
この部室にもう一人の敵、イケメンがいるが漢女に対抗するためなら友好的に接してもいい。というか是非にもこの漢女に対する戦力兼同志として仲良くしてくれ、俺一人では相手にもならない。睨みつけられただけで命乞いしてしまいそうだ。
「やぁ、男子が加わってくれるのは嬉しいな。女子ばかりで肩身が狭かったんだ」
心底嬉しそうに木場祐斗が俺を歓迎する。たぶん本心だろう。
女子二人プラス漢女。唯一の男としてはハーレム気分を味わうには漢女の存在感がありすぎて無理だろう。きっと苦労をしたんだろうな。
いつもさわやかな笑顔を振りまいている学園の貴公子、木場祐斗。
同じ二年生だが女子の人気を独占する金髪イケメン野郎。女子はこいつを笑顔がさわやかな貴公子だと騒いでいた。結果校内の女子の人気を一人占めにしていたイケメンに俺たちもてない男達は呪いの言葉を吐いていたものだ。
そんなイケメンの正体は悪魔、しかもこの漢女の下僕だった。その事実を知った今もはや女子の人気を集めるイケメンに対する嫉妬はだいぶ薄れた。むしろ同情すら感じる。
この漢女にずっと付き従っていたのだとすれば、それは俺には想像も出来ない苦行だ。そしてそれは今後の俺にも当てはまるのだから他人事ではない。
なんとなくだがこいつとはいい友人になれそうな気がする。
「本当に……兵藤君には期待しているから、男同士仲良くしよう」
イケメンと視線で会話する日が来るとは思わなかった。お互いの目を見て内心を察し、すっと申し合わせたように漢女に視線をやり、再び視線を合わせて力強く肯く。
無言の同盟関係が成立した瞬間だ。
まさかイケメンとそんな関係になるとは。今後はイケメンは敵と公言するのはやめておこうと思う。同志を敵扱いするのはよくないだろう。
同じ悪魔で悪魔的先輩でもある。これから同じ部活で活動し、同じ主の元で働く仲間だ。
しかもよく観察すればこいつの苦労と努力が透けて見える。
壁際に陣取り、壁に背を預けてキザっぽく立っている。一見格好をつけているようにも見えるが。
だがあそこはどう見てもこの漢女から最大限距離を取った場所にしか思えない。
確かにガチムチ好きでもなければこの漢女の下僕はさぞ辛かっただろう。しかも男は自分一人、この漢女に対する生理的嫌悪感を理解してくれる理解者もいなかったのかもしれない。
それぐらい主であるこの漢女は濃い。いろいろな意味で。
あの厳つい大きな顔面に精一杯可愛らしい表情を浮かべても気持ち悪いだけだ。どうせなら開き直って男らしく振る舞った方がよほど似合うだろう。この学園を支配する番長とか総長とか。そんな感じで。
『このワシが駒王学園に君臨するリアス・グレモリー総長である! 皆男の道に恥じぬよう精進せい!』
うわっ……想像したら似合いすぎていて微妙な気持ちになった。
学ランを着崩して仁王立ちしたら校内の男子全員が教師にもしないような真摯さで一礼してその支配を受け入れるだろう。
これはこれで微妙だ。青春が男くさい不良マンガっぽいものに侵食されそうで。
……気を取り直して次へ行こう。
「……塔城小猫です。よろしくお願いします。兵藤先輩」
みんなのマスコットとして有名な一年生。塔城小猫も悪魔だったようだ。小柄な身体に短めの髪の無口で可愛い系の女子だ。
俺は大きなおっぱい派だから中学生と言われても通用しそうなほどに華奢な体型の塔城小猫にはあまり関心はなかった。
けれど学校での人気はすごいものだ。ロリ枠の人気は実に根強い。ロリ属性の野郎はもちろん同性さえ魅了する。まさに魔性の魅力だろう。
そして間近でじっくりと鑑賞すればおっぱいがなくてもこんなに可愛いなら十分許容できると思える。
「……私に変態的なことをしたら潰しますので気をつけてください」
少し凝視しすぎたかな? 怒らせてしまったらしい。
出来れば仲良くしたいが俺の評判を知っているらしく最初から微妙に距離を置かれている。『変態三人組』としてこの学校で知らぬ者はないほどに有名だったからな。女子からの好感度はほぼ全員ゼロを超越したマイナスだ。
おまけに『ハーレム王宣言』でただでさえ低い好感度がさらに下がったらしい。ぼそっと「最低」と呟いていたのは聞こえていた。
女子から見たら女を囲って喜ぶ男は確かにあまり好印象ではないかもしれない。初っぱなからしくじった気がする。
こうフラグがべきっといった感じだ。序盤の重要な選択肢を見事に間違えたような気がしてならない。
それでも糸口はきっとある。彼女はこの漢女に怯えていた。この漢女を敵とすることできっと俺たちは団結できる……といいなぁ。
とにかくこれから仲良くなれるようにがんばろう。
なにしろこの部活の数少ない癒しだ。この漢女の近くにいるだけでがりがり減っていく精神値が彼女を見ただけで回復する気がする。和む、癒される……これで優しく微笑んでくれたら俺はきっとここでの生活もきっと耐えられる。
というわけで嫌われるよりは仲良くしたい。がんばろう。
「よろしくお願いしますわね。兵藤君」
あとは三年の『学園のお姉さま』姫島朱乃先輩。学園一の美人として有名だ。
彼女も悪魔だったらしい。なにげに学園人気ヒロインの悪魔率が高くないか? 実は隠れた人気を誇る生徒会長とかも悪魔だったりしないだろうな? 真面目で美人でメガネっ娘と言うことで人気があるんだよなあの先輩も。
姫島先輩は内心の読めない笑顔でニコニコと漢女の後ろに控えている。俺に対しても礼儀正しく接してくれているけど、特別好感度が高いって感触はない。あくまで新人眷属として歓迎するって程度だろう。
「眷属を得るのならば上級悪魔にならなくてはいけませんから、兵藤君はがんばらないといけませんわね」
姫島先輩の説明によると現在の俺の身分が下級悪魔。その上に中級悪魔。さらに上が上級悪魔で漢女がここ。そしてさらに上の最強クラス。最上級悪魔というのもいるらしい。そして最強の悪魔から選ばれた四大魔王が頂点に君臨している。
立身出世の道は長そうだ。少なくとも悪魔の名門貴族の跡取りである漢女並みの身分にならないと俺の望み、独立して眷属を持つのは叶えられないらしい。
ホントに可能なのか?
言ってみれば足軽から身を起こして大名になった羽柴秀吉レベルの出世ぶりだろう。あの偉人はその後天下人になっている。俺に立身出世の代名詞男の半分も出来るか怪しい。
しかし半分程度出来なければ大名……じゃない、上級悪魔になって独立は難しいだろう。
「悪魔の寿命は永いから気長にやりなさい。そんなにすぐに出来ることではないわ」
漢女に慰められたがそれは逆に言えばこれから百年とか二百年とか、この漢女の下僕として側に侍ることになるって事か?
「悪魔は実力主義ですから、実力さえつければ兵藤君でも認められますわ」
姫島先輩も慰めるように言ってくれるがその実力をつけるのが大変そうだ。
それにしてもこの人だけは漢女に怯える様子が欠片もない。ある意味すごい。それだけで俺は姫島先輩を尊敬できそうだ。
以上俺を含めた五名がオカルト研究部員でありリアス・グレモリー眷属であるらしい。
あっ、あともう一人いると言っていたっけか。事情で顔を出せないらしい。
なんというか一部の例外を除いて美男美女美少女率の高い集団だ。残る一人も期待せざるを得ないな。主に美女美少女枠で。むしろそれ以外は認めん……いや会えば眷属の仲間として接するけどできれば、ね?
一部の例外? あくまでフツメンの俺と人外っぽい漢女だよ。言わなくても察してくれよ。あの漢女と一括りにしたという事実だけで心理的にダメージが来る。くそう、俺もイケメンに生まれたかった……。
前提条件が変われば交友関係も変わる。
というわけで苦労していそうに見える木場との好感度が比較的高めなイッセーです。
小猫は悪評があることとハーレム発言で好感度低めスタートですが、すぐあがります。なにしろ共通の恐怖に立ち向かう仲間ですから。