スクールアイドルaqoursの護衛任務を任された彼は学園に乗り込み、
密かに彼女達を護衛をしているが、万が一の場合は彼女達の殺害許可も出ている。
桃李は今日もひっそりと彼女達を見定めている......
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5話目です、どうぞ。
今回はゆるゆるで、会話文も多めなので読みやすいと思います。
猫の手でも借りたい!
西條美柑(さいじょうみかん)は心の中で叫んでいた。早朝から起きて学校の授業の間、ずっとパソコンへと向かいかれこれ10時間以上は経っている。緊急の依頼で早急に終わらせる必要があるのだ。
ーーーーーこんなはずじゃなかったんだけどなー。
美柑はパソコンの扱い長けていてその実力は組織でも名前が上がるほどだ。そのスキルを駆使して必要な情報をひたすら送り続けるのが美柑の仕事だが、いまだ目当ての物が見つからないでいた。焦りが走る。もし夜までに終わらなければ大変なのだ。
美柑がここまで切羽詰まるのには理由がある。前提として今回の依頼はさほど難易度が高いわけではない。なので、どんなにかかっても今日中に終わらせられることは分かっている。故にもし見つけることができなければサボっていることとみなされ、西條桃李(さいじょうとうり)からの厳しい鉄拳を受けることとなる。これだけはなんとしてでも避けなければならない。既に昨日、部屋の掃除に全く手をつけなく任務を放棄した為に拳骨を食らっている。
授業中も作業を続けているのはこういう訳だ。因みに怒られる心配はない。愛用しているパソコンは小さいからかどうやら電子辞書に思われたようだ。「調べ物が好きなのね」と教師に言われた時は、一瞬「何を言っているんだこのばあさんは?」と首を傾げた。
「はい、ホームルームはおしまいです。また明日ね」
調べ方を変えてみるかと思った時には既に放課後になってしまった。やばいやばい、やばい! 拳骨を受けた箇所が痒みが湧き、思わず頭を摩った。こんな可愛い美少女に拳骨を食らわせるとか何事か!タンコブでもできて顔の形が変わったらどうしてくれる、このクソ兄貴!
「はぁ」
ため息をついた。やめとこう。そんな事を言っては余計にコブを増やすだけだ。
部活にも入らなかった美柑は直帰するだけだ。所属しても構わない、と桃李から伝えられたが気が進まなかった。
よく疑われやすいが、普段人と話す機会が少なかったからといい話すことに慣れていないわけではない。つまり、所属しない理由が人見知りだからではない。
では何故入らなかったかというと、それはあまり話したくない。
パソコンを閉まい、新品の鞄を肩にかけた。
「みっ、みっ、み......みかんちゃん」
「ん?」
あぁ、知っている顔だ。基本興味ないことには覚えてないが流石に知っている。黒澤ルビィだ。
実は美柑はルビィがお気に入りだったりする。小柄でツインテール姿が可愛らしい。性格もおどおどした人見知りな感じでもし自分が男性だったら絶対に守りたくなる女性の1人に入ると思っている。美柑も小柄であるが、強気で少しやんちゃなところがある。ひょっとしたら女の子らしいルビィに少し憧れも感じているのかもしれない。
「お、屋上...い、一緒に....行こう!....ピギィ!」
「あっちょっと?! ......ちぇ、走って行っちゃったよ」
脱兎の如く去りゆく様子に、何かこちらが悪いことをしたのではないかと思ってしまう。パソコン使いすぎて目つきでもキツかったか。せっかく話せるチャンスだと思ったのに。
「ルビィちゃん、ちょっと人見知り強いだけだから気にしないでね」
「国木田、さん」
国木田花丸だった。彼女も黒澤ルビィと同じで護衛対象の1人であるから覚えている。少し申し訳なさそうにしているのは、まるで妹がやってしまった粗相を代わりに謝る姉を連想させられた。もっともルビィには実の姉がいて、前日に桃李と2人で歩いてたのが目撃されて少し噂になっている。ただお姉さんの方はオマケで、実際の話題のタネは桃李の方だ。「もう彼女作ったんだ、しかも生徒会長」「どういった関係かな」など年頃の女の子達の餌食とされている。
廊下から「ずら丸! 先行ってるわよー!」との声に「今日図書委員があるからだいじょーぶ!」と国木田さんは返答した。国木田さんはどうやら図書委員らしい。
「ルビィちゃんもみんなも大歓迎しているよ、一緒にスクールアイドルやらないかって」
「いやいやいや、ならないって。というか、そのみんなって大半がリーダーさんでしょ」
「あはは、ばれちゃったずら」
美柑が、そのスクールアイドルのリーダーである高海千歌に熱烈な勧誘を受けている。転校初日にいきなり飛びつかれて「奇跡だよ!」って意味が分からない。下手すれば不登校になってしまうのではないかと思うくらいだ。
「でも、マルも最初はスクールアイドル始めようかどうしようか悩んでた時あったから、もし美柑ちゃんが少しでもやりたいって気持ちがあったらマルに教えてね。美柑ちゃんも、ルビィちゃんと一緒で可愛いから絶対人気出るずら」
「うーん、私が可愛いし人気出るのは知ってるんだけどさ」
「じ、自信に満ち溢れてる?!」
「でもね。うーん、まぁ、色々忙しんだよね」
「そうなんだ.....」
練習くらい見学してもいいかな、と考え美柑は急いで頭を振った。駄目だ、桃李がいる。普段運動してないことに呆れとんでもないトレーニングをさせてくるに違いない。絶対吐く。
「忙しいって、今日ずっとやってた『白い板』のこと?」
「うげ、見てた?」
「マルの席、ちょうど美柑ちゃんの斜め後ろだから」
そうだった。ポンポンっと叩く斜め右後ろの机は国木田さんが座っていた席で間違えない。先生はごまかせても生徒はごまかせないようだ。気をつけないと。
そろそろ去り際だろうと美柑は思い廊下の方に体を向けた。早く終わらせないと例のお仕置きが怖い。
と思って、美柑は帰るのをやめた。名案を思いついたのだ。待てよ、と。
猫の手も借りたい今の状況。これは少しでも手伝ってもらえれば.....。
「ねぇ、国木田さん」
「どうしたずら?」
「ちょっと手伝ってもらいたいことあるんだけど、いいかな」
公にしてはいけないモノだが、そうは言っていられない。依頼人も早く欲しがっているのだから、何をしているのか伝わらなければ大丈夫だろう。
どうやら国木田さんは図書館に行かなくてはいけなく、そこであれば大丈夫らしい。美柑は、「大丈夫、本はあまり好きじゃないけどね」と答えて一緒に図書館へと向かうこととなった。
ふふふ、これで仕事は捗る!
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図書館の仕事は返却された本を元に戻すだけで2人で分担してすぐに終わった。後は貸し出しにやってくる生徒を対応するだけだが、放課後に生徒がくるのは珍しいとどこか寂しそうに国木田さんは言った。
「そうなんだ」と私は簡単に相槌をして早速国木田さんに説明をした。カウンターに美柑が持ち込んでいた2台目のノートパソコンを置いて簡単にカーソルを動かすと国木田さんから「おぉ〜」という声が出る。
「未来ずら〜!」
「そ、そうかな」
いや、そうかもしれない。美柑も初めの頃は慣れないパソコンに戸惑い、ローマ字入力をできただけで喜んだ。そこから踏み込んで踏み込み続けて、最終的にはインターネットという知識の海の世界とどの世界とも繋がることのできるその自由さに魅了されて後方支援でパソコン関係に就く事を決めた。あの頃の私と今の国木田さんはきっと同じだ。
「これは集中力のチェックなんだ」
「集中力、チェック?」
「そう。国がね、推奨しているテストがいくつかあってそのテストの一つがこの集中力テストなんだ」
「そうなんだ〜」
そんなわけ。ここで鞄から写真を一枚取り出した。
「ここに人の写真が一枚あります。一応聞いておきたいんだけどこの人見たことないよね?」
「見たこと? うーん」
「......」
「うーん、ないと思う。マル達と同い年くらいの子ずら」
「そうだね。そっか、ありがとう」
気を取りなおして説明を続ける。
「で、どうテストを受けるかというとね、このフォルダをクリックすると写真が沢山あるんだ」
「これ全部写真?」
「そう、これをクリックすると.....ほら! 人の顔が出てきたでしょ?」
「お、おじさんの顔が出てきたずら〜!」
「汚いハゲジジィが出てきたね。けどこんなジジィとこの写真の可愛い女の子とは違うよね?」
「全然違うずら」
「そしたら、このジジィの写真はドラックして.....ゴミ箱に捨てる!」
「ば、バイバイ。ずら?」
「そしたらまた新しい画像を開いて確認していく、これを繰り返すだけ。そしてこの写真の女の子っぽいのが見つかったら教えて、時間測ってあるからそのタイムが国木田さんの成績になるってことよ」
「な、なるほど。なんだか難しそう。マル、ピーシー? ぱ、ぱそこん? 全然触ったことないけど.....」
「大丈夫、やってくるうちに慣れるよ! それにクリックして開いて違ったら捨てるだけだから。あとはショートカットキーでも使ってやるといいかも」
「しょ、しょーとかったー?! つ、強そう!」
「国木田さん本当に面白いね。まぁ教えるね、例えばこことここを押すとーーーー」
教えたのは簡単なショートカットキーであった。これを覚えるとマウスやマウスパットを使う事なく開いた画像を閉じれたり、とにかく何かと便利なのだ。
一通りの説明を終えた後にパソコンを国木田さんに渡すと「ズラぁぁぁあ〜」方言を漏らした。な、なんだ。可愛いぞ。キーボードを打つたびに「ズラっ、ズラっ、ずら!」と言うのがさらに愛おしい。
それでどころではない、美柑。桃李にお仕置きを受けないためにもなんとしてでも今日中にこの写真の女の子を見つけなくては。
耳を澄ませば、屋上から掛け声が聞こえる。ちょうどこの真上なのだろうか。桃李の声が聞こえる。「ワン、ツー、スリー、フォー」ときっとダンスの練習をしているに違いない。その元気な声からは裏でボディガードをやっているとは思えないし、ましてや殺し屋なんて絶対に想像もできない。
「小原さん、今ステップ誤魔化しましたよね? はい、1人でもう一度!」
「What!? ワターシ、ゴマかしてナイーデスヨ?」
「松浦さん 小原さんの練習量三倍増しでいいですよね?」
「うん、バシバシ鍛えてあげて」
「ノォォォォォォン!!!」
桃李が美柑といる時にあんな口調ではない。もっと冷たいのだ。けれども今は明るく少し気弱な感じを演じ切れていて、完全に周りと溶け込めている。流石だ、優秀すぎる。
「......」
果たして私は溶け込めることができるのか。ふと国木田さんを見た。裏の世界にいる私と表の世界にいる国木田さんとでは反するものだ。このひと時だけで、この任務が終わってしまえば彼女達との縁は切れてなくなってしまう。ことによっては彼女達を殺さなければいけないのだ。そう思うと初めから関わっても意味がないのではーーーー
「あの、西條さん」
「え、あ! どうした国木田さん? というか美柑でいいよ」
「本当? じゃあ美柑ちゃんって呼ぶね」
「うん、でどうしたの?」
「画面が真っ暗になっちゃったズラ」
「え」
慌てて画面を見ると、確かに真っ暗である。
「どうして....!!」
すぐに原因を探るがキーボードを押しても一向に動かない。やばいやばい!! なんで動かないの?! 嘘でしょ!! データは消えていないでしょうね!
が、3秒ほどで原因が分かった。
「電源が落ちてる.....」
見ればパソコンの電源ランプが消灯している。これで動く話ではない。車で言えばエンジンをかけていないものだ。
「ごめん、美柑ちゃん。お、オラ、なんか凄いとんでもないことやってしまったんじゃ....!?」
「あっ、う、ううん、大丈夫! なんか勝手に電源が落ちちゃったみたい。ハハハ....」
私の馬鹿! ここは「電源ボタンでも押したんじゃないのこのクソ野郎」でしょうが!
だが、そんなことは言えない。瞳をウルウルさせながら申し訳なさそうにしてくる国木田さんにそんなことは言えるだろうか。いや、言えるわけがない!
「だ、大丈夫! 電源が落ちただけで今までのデータは消えないから!」
「ほ、本当?」
「本当、本当!!」
「ならよかったずら」
国木田さんは微笑む。あぁ、私はこの笑顔のために自分に嘘をついたんだな。守ったぞ、この笑顔。
「このボタンは電源ボタンだから押しちゃうと強制的に落ちちゃうから押さないでね」
「光ってるからつい押しちゃったズラ」
「そ、そうだね! このボタンだけやけに光っているし大きいからイケナイヨネー!」
馬鹿! ここは光ってるから押せばいいもんじゃないだろう馬鹿野郎だろ!
「とにかく、これで問題ないよね? 続きをやってみて」
「分かったズラ!」
しかし.....。
「美柑ちゃん。なんか変なものが!」
「あータスクマネージャーね。これはーーーー」
そして修正して数分後。
「美柑ちゃん、なんか黒い画面が出てきたズラ」
「え?! なんでコンソールなんか開いているの!」
そして30秒後。
「美柑ちゃん、海ずらー」
「えー!!画面が真っ青!」
やばいやばいやばい。もしかして国木田さんは、とんでもない機械オンチじゃない?!
思い始めた頃には手遅れだった。
「美柑ちゃん、画像が全部なくなっちゃったズラ」
画像を全て完全削除、ゴミ箱にも残っていない。さらにパソコンのフリーズ。画面が全く動かない。
修復が不可能な状態になってしまった。
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「ごめんなさいお兄ちゃーん!」
桃李が玄関に現れた瞬間に美柑は綺麗に土下座し、そして媚びた。
「国木田は寺の子だ。そこに因果関係があるわけじゃないが、パソコン等の機械の類に疎いと見るのが妥当だろうな」
桃李は実に呆れたように言った。この冷たく大人びた態度が桃李の本当の姿であり、言い方が刺々しい。
「パソコンフリーズにされちゃった.....」
「当たり前だ、最初から渡すべきじゃない。普段から人に会ったりするのを億劫にしてゲームばかりやっているからだろう」
「うぅ、何故それを....」
「大体分かる、今日のことも。そもそも国木田が機械苦手なのはまず話の受け答えで判断できるはずだ。推測するに、おそらく猫でも借りたい、そのことしか頭になかったんだろう。人の話をよく聞かない美柑にはピッタリだな」
「うぅぅぅ!」
悔しい、ここまで的中されるなんて!
「大体、なんであそこまで自然に溶け込めて話せるわけ? どうせ、今後関わることないのにーーーーー」
「もしかしたら殺しちゃうかもしれないのに」
言い終わって気付いた。しまった。思わず口が滑ってしまった。目の前で靴を脱いでいた桃李が微かに反応したのが分かった。
そのまま桃李が近づいてきた。一瞬、拳骨を覚悟したが、目の前に一枚の写真が現れた。
「国木田と一緒に図書室に行ったと津島に聞いた瞬間に嫌な予感がしたからな、探しておいた」
それは今回、紛れもない探し求めていた女の子の写真とおそらく情報が詰まっている、USBだった。
「ど、どうして?!」
「奴はどうやら東京方面に向かったらしい。監視カメラから東京方面の電車に乗った記録がここにある。後は追跡できるな」
美柑はただただ受け取るしかなかった。表情は隠せたものの、心の中は動揺していたからだ。頼んでおいて用意してくれたことも驚きだが、とにかくありえない。自分でさえ何十時間をかけて探し続けて見つからなかったというのに、それを専門職外の桃李が見つけるなんて! しかも私が国木田さんと放課後に行ったのを見て調べたと言うのなら、一体どのタイミングで調べたと言うのか。だめだ、常識が通用しない。
「それとな」
「な、なに?」
告げるか迷ったのか、少し間が空いた。けれど、やがて桃李が口を開いた。
「生きている世界が違うとは言えーーーー出会ったんだ。表の世界にせよ裏の世界せよ、人の出逢いには必ず終わりが来る。けれど、終わりが来ても記憶の中では生き続けるはずだ。.......自分を殺して高校生に溶け込むことは、仕事の意味でも。普通に話して楽しむのも悪い考え方じゃないと思う」
最後にこう付け加えた。
「例え、結末が最悪だとしてもな」
そのまま桃李は二階へと上がっていく。まだボロボロの部屋であるため荷物を置きに行って戻って来るだろうが。
美柑はそのまま床に座ったまま動けなかった。そして思う。
確かに。
確かに今日は初めて放課後に残って一般の高校生と長く話せた。国木田さんと話せたのは楽しかったかもしれない、なぜならまた話したいと思える自分がいる。あの図書館で方言の「ずら、ずら」言われながらとんでもないトラブルを起こされる。挙げ句の果てにパソコンを壊された思い出は、いつか国木田さんと離れてしまう時が来てしまおうとも笑い話として心の中に残る予感がした。
退屈ではなかった。むしろ楽しかった。
徒然ではない、「ずらずら」だ。
またあの可愛い「ずらー」の声を聞くために話してもいいかもしれない。きっと楽しい。
「......ん、参考にする。・・・・・・ずら」
一般生徒とでもやっていけそうな気がした。
ありがとうございました!
一ヶ月ぶりとなってしましたね。
お待たせしました。お気に入り増えてて嬉しかったです。
ありがとうございます!
次回作も頑張ります!(2020/010/05)
今度は2年生かな。