遊戯王 プロフェッショナル・オーディナリー   作:紅緋

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とりあえず早急に前半を。
前回同様、今回はデュエルまでの導入になりますので、デュエルは後半からです。
導入が長くなってすまない…本当にすまない…。


ドライトロンVSイビルツイン①

 〈機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)〉の本社にある地下プラクティスフィールド。

 ここは〈機械仕掛けの神〉に所属しているプロデュエリストが利用できる施設で、その内容は他社とは少々毛色が異なる。

 通常のデュエルモンスターズ専門企業であればデュエル用のデュエルフィールド、体を鍛えるトレーニングルームがある程度。

 しかし何故か〈機械仕掛けの神〉のそこには──

 

「うーん……これだと少し違うなぁ。黒に赤の挿色だとダークヒーロー感が……もう少し赤を暗くして、あとはモールド部分を金色にすれば何とか…」

 

 ──作業部屋があった。

 何の作業部屋だと〈機械仕掛けの神〉のデュエリストに疎い者であれば思うだろうが、慣れている者であればそれを見てすぐに納得する──

 

「よしっいい感じ。あとはホルダーをこのパーツと差し替えて──展開時には積層パネルが3段変形合体するギミックを仕込んで──起動コードはこれで──できたっ! ボクの新しいデュエルディスクっ!」

 

 ──デュエルディスクの『改造』専用の作業部屋だと。

 

 別にプロデュエリストが自身のデュエルディスクに拘りを持つことは珍しい話ではない。

 現にランク9位の橘田龍姫であればデッキホルダー部分が竜の咢を模し、ディスク部分は竜翼に似せたファンタジーなデザイン。

 同じくランク2位の藤島恭子であれば各種パーツが全て白銀色に輝き、最近は【ドライトロン】を模して群青色のラインを追加するなど。

 

 その中で特にデュエルディスクの改造に拘るのが〈機械仕掛けの神〉のプロデュエリスト達だ。

 ある者は展開時にヘリコプターのローターのようにディスク部分を回転させるギミックを施し。

 ある者は早撃ち(クイック・ドロー)の要領で回転式拳銃型ディスクを引き抜き装着変形する機構を。

 またある者はバイクに乗ってフィールド入り、デッキセットと同時にケンタウロスを彷彿とさせる姿へ変形合体するも、敗北時に派手に転倒し腰痛を患うなど様々だ。

 

 だが改造が許されるのはあくまでも外観のみであり、中身を改造しようものなら規定により厳しい罰則が科せられる。

 軽いものでもシーズン参加権はく奪、重いものであればプロ資格を失うことさえあるのだ。

 もっとも、デュエルディスクは起動時に必ずオンライン接続し常に最新情報へアップデートされるのでそう易々と改造できるものでもないが。

 

 閑話休題。

 作業部屋に居る小柄な少年──のような青年。

 年齢の割には童顔で、傍から見れば中学生と見間違われそうな彼も〈機械仕掛けの神〉に所属するプロデュエリスト。

 彼自身、幼い頃から機械族に愛され、機械族を愛してデュエルをしていた影響か、現実の機械にも詳しい。

 養成所時代から控え目──とは程遠い派手な改造を施しては偉大なる大先輩の雷を受けるも、自分もデッキのカードも観客も喜んでいるのなら、とすっかりデュエルディスク改造にもハマってしまった。

 それ故、プロとして念願の〈機械仕掛けの神〉に所属できたとなれば、ここは彼にとっての楽園(エデン)

 イベントや大会のない日は昼夜を問わず訪れ、ディスクの改造に精を出し、たまたま訪れる先輩方とデュエルするだけでも幸せなのだ。

 今も新たに次の仕事用にデザインした累計31個目の改造デュエルディスクをうっとりとした目で眺め、時に頬擦りするなどまるで新しい玩具を手に入れた幼子のよう。

 

「早くコイツを試したいなぁ……ヨシっ! デュエルフィールドに行けば誰か居るかもしれないし、ちょっと行ってみよっ!」

 

 幼子故、行動も早い。

 青年はその小柄な体で自信作の''巨大な''デュエルディスクを抱えて作業部屋を飛び出す。

 その顔は不安など微塵も感じさせない、明るい未来への期待に満ちた、夢見る少年のように眩しいものであった。

 

 

 

 

 

(誰か居るかなぁ…?)

 

 いざデュエルフィールドへ足を運ぶものの、やや内向的な性格によるのか青年は出入口からこっそりと中を伺う。

 既に20:00を過ぎており、一般人であれば既に帰宅してもおかしくはない時間。

 この時間に会社に残っている者がいるとすれば、仕事が終わらずに残業しているか、残業代目当てにグータラ残業しているか、突発的な仕事を上司から無茶振りされその上司は既に夜のお店で享楽的な快楽にその身を委ねている姿を想像し、怨嗟の声を叫びながら残業しているかのいずれか。

 もしくは──

 

「バトルッ!! ≪竜儀巧-メテオニス=DRA≫で特殊召喚された相手モンスター全てに攻撃ッ! ゴルド・ハンドレッド・ブライトネス──5連打(グォレンダァ)!」

 

 ──ひとえに研鑚している者。

 

 青年の瞳に映るは〈機械仕掛けの神〉の現最強デュエリストにして現国内ランク2位を誇る機械竜の使い手、藤島恭子。

 彼女はシミュレーションAIを相手にエースモンスターを出し、相手フィールドの戦線を維持していた機械兵を殲滅。

 多くはなかった相手のライフポイントが瞬く間に削り切られ、数値が0を告げると同時に実体化していたカードが消滅しデュエルが終了した。

 

(あっ、藤島さんだっ!)

 

 その様子を陰から見ていた青年は心なしか昂揚する。

 新人(ルーキー)である青年と、現役最上位(トップランカー)の関係は本来であれば青年にとって雲の上のような存在だ。

 しかし──

 

「……むっ、和戸君か。遅くまでご苦労」

「えっ──あっ、はいっ! お疲れ様ですっ!」

「そんなにかしこまらなくてもいい。君と私の仲だろう?」

「いやいやいやっ! かしこまりますよ! いくらデュエルフィールドで会う機会が多いからって、ボクにとって藤島さんは遥か上にいる人なんですから!」

「ふふっ、そう言ってくれると少し気恥ずかしさがあるな」

 

 ──その雲の上の存在が気軽で気さくに声をかけてくる。

 青年──和戸、と呼ばれた彼は嬉しさと恥ずかしさと困惑の表情を融合させ慌てふためく。

 年不相応な振る舞いだが、童顔であることが幸か不幸か不思議と似合う。

 

 そんな和戸の反応に恭子は苦笑するも、恭子は新人ながら和戸を高く評価しているのでフランクに接している。

 恩師であり先生であり上司でもある古賀曰く『藤島を天才とすれば、和戸は鬼才である』という言葉は〈機械仕掛けの神〉でも有名な話。

 恭子自身も和戸は新人ながらその汎用性・万能性・異常性についてはどこぞの誰か(ポンコツ竜姫)を彷彿とさせ、何故か他人のような気がしない。

 

 まるで弟のようにさえ思うとこがある、と考えていた恭子だったがふと視線を顔から少し下へ移すと違和感を覚えた。

 

 彼の腕に装着──ではなく抱えられている巨大な''それ''はあまりにも存在感が大きい。

 本来のデザインとしては奇怪にして歪。

 漆黒の外観に血のような黒混じりの赤いラインは暴力的だが、何故か好奇心がそそられる。

 一見すると棺桶を彷彿とさせるそれはデッキホルダー部分が露出しているおかげで、かろうじてデュエルディスクであると認識可能。

 

「……その、和戸君。君が持っているそれは──」

「はいっ!! これはさっき作った新しいデュエルディスクです!! 今は箱型(ボックス!)ですが、これが待機状態でして、デッキをセットすると同時に起動するんです!! すると先ずこのクリアパーツが赤く発光して、『standing by』の音声と同時に変形っ!! 積層パネルが左右にスライドしてフレームを展開っ!! 次いで中央板が90°回転して基礎となり、フレームと連結っ!! さらに収納されていたパネルが3段構造で展開されて──」

 

 つい聞いてしまったが最後。

 和戸はキラキラした目で実際にデッキをセットし、起動変形する様子を実演しながら早口で解説していく。

 ウィーン、ガシャン、ブッピガァン! カァオ! ピーピーピーボボボ、ドヒャア! と謎のサウンドエフェクトを発しながら展開されていくデュエルディスクは見ていて浪漫があることは恭子にもある程度理解している。

 

「そしてここっ! 最終的にデュエルディスクが自立待機状態となり、アーム部分の展開を維持したこの状態はさながら勇者を待つ聖剣の如く!!」

「う、うむ…」

 

 しかしそれはあくまでもある程度の理解。

 和戸のデュエルディスクに対する飽くなき情熱に一種のリスペクトさえ抱く恭子だが、流石にここまでやれとは言っていないし頼んでもいない。

 演出としてはありかもしれないが、ここまでデュエルディスクへ熱意を抱いていない恭子としては少々困惑。

 

「最後にっ!! このアーム部分に自分の腕を通せば、デュエルスタンバイっ!!」

 

[デュエル スタンバイ]

 

「ほらこの通り!! ──って、あれ?」

「あっ」

 

 ウッキウキでデュエル開始状態まで進めたところで突然の機械音声。

 2人同時に発する呆けた声。

 2機同時に起動するデュエルディスク。

 

「…………」

「……ふむ」

 

 実演解説をしていたが故の事故。

 シミュレーション直後にデュエルディスクを起動したままだったが故の偶然。

 2人はお互いの顔も見れないまま気まずそうな表情になるが、年長者らしく恭子が一言。

 

「折角だ和戸君。シミュレーション相手では物足りなかったからな、私のデッキのテストプレイに付き合ってもらう」

「──うぇっ!? の、望むところですっ! 全戦全敗していますけど、1回ぐらいは勝ってみせますっ!!」

 

 共にデッキからカードを5枚引くと同時に8000のライフポイントが立体表示。

 既に先攻・後攻も定められており、準備が完了したところでお互いを見据え、同時に口を開く。

 

「「デュエルッ!!」」

 

 今、現代最強の機械と未来最強の機械が激突する──

 

 

 

 

 

─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

 

 

 

 

 

 ──そして決着。

 

「バトルッ! 攻撃力1万となった≪キメラテック・フォートレス・ドラゴン≫で直接攻撃だッ!!」

「ナメんじゃねぇっ!! 俺様はセットしていた罠カード≪パワー・ウォール≫を発ど──」

「ダメージステップ開始時、速攻魔法≪リミッター解除≫発動ッ! これで≪フォートレス≫の攻撃力は2万となるっ!」

「──っ、馬鹿なっ!? 攻撃力2万の≪キメラテック・フォートレス・ドラゴン≫だとぉ!!」

「攻撃力が2万になったことで、君の残りデッキを全て墓地に送っても≪パワー・ウォール≫ではダメージを軽減しきれん! これで終わりだッ! エヴォリューション・レザルト・アーティラリー!!」

「ぐっ──うぉおおおおおおぉぉっ!?」

 

 車輪のような体躯の機械竜≪キメラテック・フォートレス・ドラゴン≫のハイメガレーザーが和戸に直撃。

 加減はされているものの、2万もの攻撃力となった機械竜の咆哮による衝撃は凄まじく、和戸はその場で踏ん張るもあえなく浮遊。

 水平に吹っ飛ばされ、どんがらがっしゃーんと見学用のベンチに突っ込むと同時にデュエル終了のブザー音が鳴る。

 

「しまった……すまない和戸君っ! 大丈夫か!?」

「あいたたた……だ、大丈夫でーすっ」

 

 加減したハズが思いの外カードの実体化の強さを間違えたかと、恭子はすぐに和戸の方へ小走りに駆け寄るも、崩れたベンチの残骸から和戸はひょっこりと顔を出す。

 機械いじりが好きでインドア派と思われがちだが、彼もプロとして体は鍛えているのでこの程度の衝撃では擦り傷すら負わない。

 それどころか自分のデュエルディスクにキズやへこみがないかチェックする余裕まである。

 

「ふむ、確かに怪我はなさそうだな……掴まりたまえ」

「あっ、はい。ありがとうございますっ」

 

 大きな怪我がないようで恭子はホッとその豊満な胸を撫で下ろす。

 同時に尻もちをついている和戸に手を差し出し、その小柄な体をデュエリスト特有の細い豪腕で引っ張り上げて立たせた。

 

「少し力が入り過ぎてしまったようだ、すまない」

「いえいえそんなっ! むしろボクの方こそデュエルしてくれてありがとうございますっ! お陰で自分のデュエルディスクも試せましたし、藤島さん相手にそこそこ(・・・・)できるようになったので自信がつきましたっ!」

「……うむ、それならば何よりだ」

 

 恭子は『どこがそこそこ(・・・・)だ!』と叫びたくなるも、ぐっと抑える。

 先のデュエルは確かに結果を見れば恭子の勝利だが、恭子としては自分で''禁じ手''としていた同門への≪キメラテック・フォートレス・ドラゴン≫まで出させたのだから、多少の自信どころかもっと誇ってくれとさえ思う。

 

「やっぱり藤島さんは強くてカッコ良いし、デュエルしていて楽しかったです! 本当にありがとうございますっ!」

「う、うむ…」

 

 しかし当の本人はデュエル中(・・・・・)の顔とは違い、今はすっかり憧れの人物を目の前にするそれ。

 満足気な表情に水を差すのも悪いと思い、恭子は苦笑いを浮かべる。

 

「あっ、そういえば藤島さんって、明後日の21:00って何か予定ありますか?」

「明後日の21:00? いや予定は入っていないが…」

「そうなんですね。実はボク、明後日に〈ヴァーチャル・ビジョン〉で生配信コラボがあるんですよ。良かったら見学に来て頂けないかなと思いまして」

「ほう、生配信か。面白そうだ、その時間は空いているから是非とも見学に行こう」

「やったっ! コラボの時はカッコ良く決めるので期待して下さいねっ!」

「……うむ、期待している…」

 

 中学生のような青年が瞳をキラキラさせながら話している姿は、さながら『今度大会出るからしっかり見てね!』という知人に自分の雄姿を見せんとする微笑ましいものだ。

 しかし恭子としては先のデュエルから『カッコ良く…?』と和戸に対してクエスチョンマークが3つぐらい頭に乗せるような状態へ。

 だがキラキラに目を輝かせている青年へ変に言葉をかけるのも憚られ、結局は無難に答える。

 

「あー楽しみだなぁ。早く明後日にならないかなぁ」

「…………」

 

 不安など微塵も感じさせない、希望の未来へ大勝利するかのような笑顔を見せる和戸。

 これだけ見れば、まさに養成学校を卒業したての新人デュエリストが新しいことに挑戦する微笑ましい光景だろう。

 

 だがこの時、和戸はおろか、恭子さえあんなことになろうとは思ってもいなかった。

 まさに想定外としか言いようのない、あんなことになろうとは。

 

 

 

 

 

─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

 

 

 

 

 

「むっ、そろそろか」

 

 当日20:30。

 予定されていた開始時間は21:00だが、入場自体は1時間前からできる。

 今日は特に夜まで残る仕事がなかった恭子は、コラボイベント前に自室でデッキ構築とトレーニング、シャワーを済ませてからデスクトップPCの脇に備えられているVR専用ヘッドギアを装着。

 

「〈ヴァーチャル・ビジョン〉へのログインも久方ぶりだな」

 

 懐かしいと口ずさむも、昔は日常的にログインしたそれに慣れた手つきで操作。

 専用ソフトの起動と同時に意識が沈む。

 

 先ず目に映るは光の格子。

 さながら光のネットとも言うべきそれが恭子の視界一面に広がる。

 終わりの見えない壁にゆっくりと指で触れると、接触した部分が湾曲。

 奥へ続くトンネルのように格子は形を変え、恭子は誘われるようにその先へ進む。

 1歩1歩踏みしめるごとに現実の体から、電子世界の写し身(アバター)へと姿が転換。

 白銀の髪は白金に色を変え。

 飾り気のないドレススーツはモノトーンの軍服に。

 背は縮み、艶やかなスタイルはスレンダーなそれ。

 豊満な胸は変わらず。

 さながら≪閃刀姫-レイ≫を模した姿で恭子は仮想電脳空間へと降り立った。

 

 

 

 今彼女が居る場所は初期ログイン地点である中央広場噴水前。

 和戸のイベント会場の場所は現在地から徒歩で数十分程度の近場。

 本来であれば席取りで早急に向かう必要があったが、事前に和戸から指定席のチケットをもらっているので急ぐ必要はない。

 恭子は悠々と会場まで向かおうと足を動かし──

 

「──おっと」

「──ぅあっ!? ごめんなさい!!」

 

 ──その足が止まる。

 〈ヴァーチャル・ビジョン〉共通の初期ログイン地点のためか、時折こうしてログイン直後のプレイヤーとぶつかりかけることもままある。

 恭子は慣れたように衝突寸前で脇に避けようとしたが、当の相手の少女は視界一杯に愛らしさ皆無で凛々しさに極振りした≪閃刀姫-レイ≫の顔をした恭子が現れたものだから、後ずさろうとして足を滑らせてしまう。

 そこを恭子は慣れたようにさっと少女の背中に手を回し転倒を防止。

 自然なイケメンムーブに少女の胸はトゥンク…と、ときめく──

 

「あっ、ありがとうございま──あれ、恭子さん?」

「むっ? 君は……あぁ、月宮(つきみや)の……」

「はいっ! 妹の美夜(みや)です! 降夜(たかや)お兄ちゃんがいつもお世話になってますっ」

 

 ──ようなこともなく、その場でひょいっと恭子の腕から逃れて、天真爛漫そうな笑みを浮かべながら自己紹介。

 えへへ、と朗らかに笑う顔は年相応に眩しい。

 

「こちらこそ、と言っておこうか。こんなところで会うとは奇遇ではあるが……もしや君も同期の和戸君のイベントに?」

「和戸……あぁ、''(ばん)''ちゃんの苗字! そうですっ! 蛮ちゃんと''あやめ''ちゃんのコラボイベントの応援ですっ!」

「んんっ! ……ふむ、ならば目的は同じか。折角だ、このまま一緒に行こうか?」

「喜んでっ! えへへー、恭子さんと一緒だっ」

 

 途中、美夜の和戸に対する''蛮ちゃん''呼びに恭子は吹きかけたが、そこは大人として極めて冷静に咳払いで誤魔化す。

 以前から兄の降夜つながりで少なくはない回数顔を会わせてきた2人は、さながら久しぶりに会った従姉妹のように仲睦まじく歩を進める。

 

「そういえば私、蛮ちゃんとあやめちゃんに誘われて初めて〈ヴァーチャル・ビジョン〉にログインしたんですけど、ここってどんなところなんですか?」

「ふむ、直接的に言えば仮想空間(ヴァーチャル・スペース)だな。実際のデュエルではデュエリストがカードの実体化を行う都合、スタジアムやドーム等の広さがある場所でしかデュエルできないが、ここでは仮想空間だから、場所を気にせずデュエルできる利点がある」

「ほうほう」

「プロデュエリストはもちろん、セミプロやアマチュアのデュエリストが多く居ることが特徴だな」

「へぇーそうなんですねっ」

「また、リアルとは違い容易に自分の写し身たるアバターを変更できるので、一種のコスプレのようなもので楽しむのもありだ」

「あっ、だから恭子さんは≪閃刀姫-レイ≫になってるんですね」

「うむ。まぁ私の場合はリアルの姿だと目立つので、こうして顔以外をカードを模した姿の方が都合が良いんだ」

「なるほどー……うーん、私も≪魔界発現世行きデスガイド≫あたりにすれば良かったかも…」

「次からそうすればいいさ」

 

 適当に雑談しながら目的地へ進む2人。

 同じ方向に進む人も多く居るため、目的はおそらく同じなのだろうと察する恭子。

 期待している後輩にこれだけ多くの人が観戦するというのは先輩として嬉しいところがある。

 しかし同時に不安もあった。

 

(……和戸君、デュエルディスクだけに拘れば良いのだが…)

 

 和戸は平時とデュエル時では性格が大きく異なり、しかもパフォーマンスとしてリアルでのデュエルでもやたらコスプレしたがる、ちょっと困った面がある。

 それが今の自分のような≪閃刀姫-レイ≫や龍姫のアバターの≪ドラゴン・ウィッチ‐ドラゴンの守護者‐≫程度であれば良い。

 

 だが和戸は何故か変な方向に行く。

 ≪督戦官コヴィントン≫や≪古代の機械兵士≫のような人型ならまだわかる。

 何故か≪マシンナーズ・フォートレス≫のような戦車型や、原寸サイズの≪パーフェクト機械王≫といった謎のチョイスをする癖があるのだ。

 

 それをリアルではない、制約が存在しないなど和戸にとってうってつけの場でしかない。

 大人しくすることは不可能に近いと半ば諦めているが、せめて人型であってくれと恭子は静かに願い──

 

「そういえば今日は蛮ちゃんどんな格好だろうなー。リアルだと≪機械王≫はこの前やったし、≪灼銀の機竜≫もやったしなぁ」

「……そうか…」

 

 ──同期にまで悪癖が浸透していることに頭を痛めた。

 

 

 

 

 

─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

 

 

 

 

 

 数十分後、2人は無事会場に到着。

 NPC係員にチケットを見せ、偶然にも隣席だったのでそのまま談笑しながら席へと着く。

 中央最前列という最も間近な場所で観戦できることは素直に喜ばしい。

 恭子は慣れたように会場の規模や周囲を見渡し、美夜は幼子のようなウキウキ気分で落ち着きなく開始を待つ。

 

「そうだ美夜君。和戸君の相手の──あやめ君、と言ったか? 彼女はどんなデュエリストなんだ?」

「あやめちゃんですか? あやめちゃんは私が居る〈グノーシス〉に所属してる子で、とっても真面目で良い子ですよっ! この間も私と16時間耐久デュエルに付き合ってくれましたし、お菓子作りが好きでいつも会う度に自作のクッキーとかマカロンとかアプフェルシュトゥルーデルとか差し入れでくれるんですっ!」

「(アプ…エクストレームトラウリヒドラッヘ?)ほぅ、家庭的で良い子じゃないか」

「そうなんですっ! 16時間耐久デュエルの時なんか泣いて喜んでましたし、お菓子もお店のものと同じくらいおいしいんですよっ!」

 

 うむうむ、と恭子はまだ見ぬ『あやめ』という人物に16時間耐久デュエルができる体力と集中力を有し、少女らしいお菓子作りが趣味というデュエリストにしては珍しい常識人だなと勝手に人物像を作る。

 たまたま彼女らの話を聞いた後ろの席に居る一般人は『泣いて喜んだんじゃなくて、泣いて許しを請ったの間違いじゃ…』と内心思ったが、触らぬ神に祟りなし、とばかりに介入するようなことはせずに静聴。

 大人しくイベント開始まで待つことにした。

 

 

 

 開始まで残り1分を切ったタイミングで会場内の照明が一気に消え、周りが暗闇に包まれる。

 ざわざわと雑談していた声は一瞬にして止み、音すらも出ない静寂に。

 何が起きるのかと美夜はあたふたと周囲を見渡し、対照的にこういう演出に慣れている恭子は(大きな)胸を張ったまま不動。

 

 一拍置いてから、デュエルフィールドの中央を突然スポットライトが照らす。

 そこには1人の少女──デュエリストが居た。

 背中まで届くほどの金色のロングウェーブは毛先に紫色のグラデーションが施され、リアルでは表現できないような点滅発光。

 人当りの良さそうな可愛らしい顔に、口元に僅かに見える八重歯。

 恭子ほどではないにしろ、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいるモデル体型。

 全身を紫と白を基調としたゴシック調の服は、煌びやかさと艶やかさを両立させていた。

 

 本イベントの主役であろう人物はデュエルディスクを付けた左手でマイクを持ち、右腕を天に掲げながらすぅーと息を吸い込み、吐き出すと同時にその声をマイクへぶつける。

 

「みんなぁー!! 今日はアタシのイベントに来てくれてありがとぉー!!」

『わぁあああああぁっ!!』

 

 そして元気いっぱいな挨拶と、それに応えるファンの大歓声で会場が揺れた。

 間近で見るのが初めてだった美夜はビクっと肩を震わせるも、周囲に合わせるように声を張り上げる。

 恭子はというと傍から見れば冷静だが、内心では熱気にあてられてやや気持ちが昂っていた。

 たまには観客側も良いものだ、と口角を上げながらデュエルフィールドに居る人物へ視線を向ける。

 

「お馴染みの人はいつもありがとうっ! 初めての人ははじめましてっ!! 悪魔族系企業〈グノーシス〉に所属している小悪魔ギャル系デュエリスト、アイリスでっす!! よろしくぅ!!」

「……アイリス?」

「あやめちゃんの〈ヴァーチャル・ビジョン〉での名前です」

「あぁ、なるほど」

 

 きゃぴるーん、と擬音がつきそうなウィンクを観客に向けるあやめことアイリス。

 事前に美夜から聞いていた人物像とは大きく異なることに恭子は違和感を抱き始めるも、おそらく和戸と同じようにプライベートと仕事では性格が変わるタイプなのだろうと勝手に自己解決。

 

「今日は予定はゲストの人とデュエルっ!! その後は質疑、じゃなくて質問コーナー! さらに握手会と交流会もあるからお楽しみにっ!」

「……まるでアイドルだな…」

「最近の女の子デュエリストは下積みとしてみんなこんな感じですよ?」

「なにっ? 私と龍姫は全部実力で捻じ伏せてきたぞ」

「それ恭子さんと龍姫さんだけです」

 

 これが時代の流れか、と若干のジェネレーションギャップに恭子はショックを受けるが、その間にもイベントは進行していく。

 

「さぁて今日のゲストは私の同期の男の子! リアルでも〈ヴァーチャル・ビジョン〉でもやたらメカで言葉遣いが物騒で小物っぽいけど、その実力は本物っ!! 機械族系企業〈機械仕掛けの神〉に所属している和戸君こと──」

 

 アイリスが言葉を選んで紹介している最中、突然デュエルフィールド出入口にガコン、と衝突音が響く。

 何だ何だと観客が音の発生源へと目を向けると、そこには完全に閉まっているシャッター。

 その内側からガンガンと叩くような音が響くが、ビクともしない。

 

 本来であればこのタイミングで和戸がスモークと共に入場。

 世紀末感溢れる汚い言葉遣いで悪役(ヒール)らしく登場するのだが、不具合なのか扉が開く気配がない。

 あちゃー、とアイリスは内心で少し焦るも、こういったトラブルは初めてではないので慣れたように観客へ向けて口を開く。

 

「あ、あははー、ちょっとトラブルかも。ごめんねみんな、ちょっと待ってて──」

『その必要はねぇ』

 

 アイリスの言葉の途中、重低音の機械的音声が会場に響いた。

 

 次の瞬間、和戸を遮っていた扉に突如薄紫色の光柱が生える。

 ジジジ、と光柱は扉を超高温で焼き貫いており、そこでやっと光柱が某人型兵器が持つビームなサーベルのようなものだと全員が理解。

 刀身が突き出ているビームサーベルはゆっくりと袈裟切りの軌道で扉を溶断していき、扉には赤白い線が刻まれる。

 斜めに一閃されたかと思えば、即座に逆方向からもう一閃。

 歪な十字傷が扉に刻まれ、やがて扉の自重で下半分がガラガラと音を立てて崩れ落ちる。

 

 残った上半分は人の胴ほどの太さもある機械腕が薙ぎ壊し、破片が飛散。

 ガション、ガション、とあからさまに人ではない足音を不気味に響かせながらデュエルフィールドに向かうそれ(・・)

 その途中、背部のメインブースターから青白い炎が噴射。

 一瞬だけホバー走行のような軌道を見せたかと思えば、その機械脚でフィールドを蹴って飛翔。

 過剰な(オーバー)ブーストで半ば滑空するようにアイリスのいるデュエルフィールドに向かい、彼女と充分な距離があるところでホバリング。

 

「クク、フフフ、ハーハッハッハァッ!! この俺様っ、ブラストっ! 参っ上っ!」

 

 まるでロボットものホビーアニメ主人公機がOPアニメでタイトルロゴと同時にドン! とポージングするように和戸ことブラストが颯爽登場。

 ドォンッ! と後方からは謎の爆発も起こり、アニメなのか特撮なのかハッキリしない演出に観客の一部マニアが難色を示す直後──

 

「テメーブラストぉ! 何やってやがるっ!!」

「アイリスちゃんが怪我したらどうすんだこの野郎っ!!」

「派手な登場すりゃ良いって訳じゃねぇぞっ!!」

「ほぅ、レイレナ○ド社のアリ○ヤですか。デュエルモンスターズをモチーフとしていませんが、良いセンスです」

 

 ──観客から批難と僅かな称賛を浴びせられる。

 ぎゃあぎゃあと騒ぎ立て、中には手持ちのペンライトやらウチワなどを投げつけてくる始末。

 

「あっ、ちょ、やめ──ふぁっ!?」

 

 ブラストはその投擲物を上下前後左右に前部背部肩部ブースター巧みに噴かしてドヒャアドヒャアとクイック回避するも、運悪く投擲物がメインブースターにシュぅうううぅっ!

 黒い噴煙を吐き出し始め、ガガガガと異常音まで発し始める。

 

「バカなっ!? メインブースターがイカれただとっ!? くっ、ダメだ──飛べん…!」

 

 プスプスとコミカルな音を発しつつ、ブラストはゆっくりとデュエルフィールドに着陸。

 『これ大丈夫だよなぁ?』と機械首を90度回してメインブースターを確認し、未だ異音があり若干の不安があるものの現状は問題ないと判断し、赤く発光するバイザーがアイリスを捉える。

 

「待たせたなっ!」

「あ、いえ大丈夫で──よゆーで大丈夫だしぃ!! むしろ派手な登場でテンあげ感パないしっ! ほらほらっ、みんなもマジパない登場してくれたブラストちゃんに拍手拍手ぅ!」

 

 一瞬呆けて素の表情が出そうになったアイリスだが、そこは新人とはいえプロ。

 即座に不測の事態を演出に変えたブラストに感謝すると共に、彼にヘイトが向かわないよう観客へ呼びかけた。

 観客も大半がアイリスのファンではあるので、完全に納得はしていないが、渋々といった感じでまばらな拍手を送る。

 

「わぁー…! 恭子さん恭子さんっ!! 蛮ちゃん凄いですよっ!! カッコ良いですっ!!」

「あぁ、うん……そうだな…」

 

 一方、招待された2人の内同期は素直に感動。

 先輩は後輩のやらかしに頭を抱える。

 せめてデュエルぐらいはまともに進行してくれ、と願いながらフィールドに視線を移す。

 

「クク、一応礼は言っておいてやる。だがデュエルでは一切容赦しねぇぞ?」

「あはは……お手柔らかに。最近デッキちょっと変わったからお披露目したいしね」

「そりゃこっちの台詞だ。俺様も初公開のデッキで、今日は藤島パイセンが来てんだから無様な姿は見せらんねぇ」

「……はっ? 今なんつった。藤島さん? ランク2位の?」

「おぅ、一昨日招待した。ほれ、そこの最前列」

「あっ、ホントだ居る──って、こん馬鹿ぁっ!! 最上位(トップランカー)が来るんだったら、貴賓席とかもっと良いとこ用意したのに何で今言うっ!? 頭のネジ外れてんじゃないの!?」

「ハァー!? 頭のネジ外れてねぇし! むしろちゃんと増し締めしてきっちり止めてるし!」

「そっちじゃないわよっ馬鹿ぁ!!」

 

 しかし、デュエル前から進行が覚束(おぼつか)なくなっていることに恭子はさらに頭を抱える。

 『そうだな、目上の人が来たら良い席用意したくなるだろう。でも私は気にしてないぞ』と心の中でアイリスの気遣いへの感謝と相手に届かない想いを吐露しつつ、やや過熱し始めたやりとりに不安を覚える。

 

「もうアッタマ来たっ! こうなったらボッコボコのスクラップにして廃品回収業者送りにしてあげるんだから!!」

「あぁん? 何怒ってんかわかんねぇが、悪役(その)ポジションは俺様のもんだっ! テメェに渡してたまるか!!」

 

 ヒートアップしていく2人は自然にデュエルディスクを構える。

 アイリスはデコレーションが施された煌びやかかつ可愛らしいデュエルディスクを。

 

 ブラストは先日恭子とデュエルしたアレを左腕に呼び出し装着。

 デッキをセットするとブッピガンっ! というロボットものお馴染みのサウンドエフェクトが鳴り『standing by』の機械音声と共に変形が開始。

 グポォンと敵役ロボットのモノアイ音が鳴ると当時にデュエルディスク全体に走っている赤いクリアパーツが発光。

 箱型だった本体が幾重ものパネルに分割、展開しフレーム部分が露出。

 パタンパタンと積層パネルが通常のデュエルディスクよりも大きく展開していき──

 

「……あれ、何か蛮ちゃん変じゃないですか?」

「むっ、そうだな。上手く言えんが動作がカクついているというか…」

 

 ──途中でその動きが鈍くなる。

 先日恭子とデュエルした時は問題なく起動していたのだが、何故か今は緩慢とした動作だ。

 一体何が、と不安に思っていたところで恭子はハッと気づく。

 

「まさか…! いやだが和戸君であれば…!」

「な、何か知っているんですか恭子さん!?」

「おそらくだが、今和戸君は──」

 

 恭子が神妙な顔つきになり、美夜は無意識の内に固唾を飲む。

 一体ブラスト──和戸に何が起きたのか。

 その現象と同時に恭子の口が開く。

 

「──''処理落ち''している…!」

「…えっ?」

「デュエルディスクのデータ容量があまりにも大きすぎた…! 登場時のビームサーベルやメインブースターよりもあの変形・展開ギミックを搭載し、デュエルディスクの基本データ込みで入っている過剰なデータ量に、和戸君の使っているPCのスペックが耐えられないんだ…!」

「えぇー…」

 

 そんな馬鹿な、と美夜が思うも現にブラストはデュエルディスクはおろか本人の動きさえも遅くなっている。

 ところどころにノイズまで走り、まさに一昔前のゲーム等でよく見られた''処理落ち''現象が発生していた。

 これは大丈夫なのだろうかと、2人が不安に思い始めたその瞬間、ブラストの姿が光の粒子となって消える。

 

 [※通信障害によりブラストさんがログアウトしました]

 

 さらにはご丁寧にデュエルフィールドの中空にメッセージウィンドウまで表示される始末。

 やる気満々だったアイリスは呆気に取られ、観客も困惑したようにあんぐりと大口を開ける。

 美夜はあちゃーと可愛らしく額に手をあて、恭子は度重なる後輩のやらかしに赤面。

 

「あっ──のっ、馬鹿ぁあああああぁぁっ!!」

 

 そして当のデュエル相手であるアイリスは目尻に涙を溜めながら観衆を前に大声で喚く。

 その様子に無理もないだろう、と恭子は同情の念を送る。

 新人プロデュエリストは活躍の場が限られ、しかも自身がメインのイベントなど滅多にない。

 それを自分の所為ではないとはいえ、アクシデントでイベントがオシャカになれば泣き喚きたくもなるものだ。

 

「ひっぐ、あの馬鹿……折角のイベントで…! 久しぶりに会えたのに……」

 

 気づけばアイリスは仮想空間の中とはいえ泣き出す始末。

 同情を超え不憫にさえ思えてきた恭子はハァ、とため息をついてから席を立つ。

 

「あれ、恭子さん?」

「いいか美夜君、覚えておいて欲しい。後輩や部下の失態は──先輩や上司が拭うんだっ!」

 

 隣で声をかけた美夜を横目に、恭子は観客席から跳ぶ。

 仮想空間と言えど3メートル以上の高さから降りるなど、常人であれば正気の沙汰ではない。

 しかし、デュエリストならば話は別だ。

 普段から実体化やらドロー練習、山籠もりに過剰なトレーニングをこなしている彼ら彼女らであれば並のアスリート以上の身体能力を持つ。

 

 恭子は華麗に5点着地で衝撃を緩和させ、左膝を立て右腕を水平に構える。

 ヒーロー的なカッコ良さが溢れるポーズに観客がざわざわと声を上げ始め、その声で気付いたアイリスが恭子の方へ視線を向けた。

 

「突然すまない。和戸く、ブラスト君の失態は私が拭おう。彼の代わりにこの私──藤島恭子が君の相手になろう」

「ふぇ──あっ、えぇっ!?」

「後輩の失態で君の面目を潰したとなれば、それは我が〈機械仕掛けの神〉も良しとしない。いかがだろうか?」

「え、あの…! い、いいんですか!?」

「そのためにここにいる」

 

 並の男性よりも男らしい恭子の発言に一部観客はトゥンク、と胸がときめき、その真摯な対応に感嘆の声が上がる。

 涙で濡らした目元をアイリスはすぐに拭い、普段の愛嬌のある笑顔へ。

 

「ら、ランク2位の藤島さんなら誰も文句は言いませんっ! みんなもそれで良いよね!」

『おぉおおおおおおぉぉっ!!』

 

 アイリスが観客に問いかけた途端、大歓声でそれに応える。

 以前のエキシビションデュエル同様、格安のチケットで最上位(トップランカー)のデュエルを観戦できるのだ。

 断る理由などあるはずがない。

 

「ここでランク2位のデュエルが観れるなんて最高だぜ!」

「あんな小物系中ボス機械野郎なんかより断然良いぜっ!」

「流石ランク2位!! 粋なことしてくれるじゃねぇか!」

 

 観客もこのアクシデントからの交代を是とする声が上がる。

 当人達としては和戸(ブラスト)のデュエルを期待していたのだが、本人がやらかしたので仕方がない。

 

 改めて共にデュエルディスクを構えて起動。

 デッキからカードを5枚引き、準備が完了。

 お互いの顔を見据え、示し合わせたでもなく、声を揃え──

 

「デュエルっ!!」

「デュエルッ!!」

 

 ──デュエルが始まった。




ジェネシス・インパクターズ発売前にデュエル構成はできていたのですが、実際に組んで回すとナンカチガウ感があったので、ちょっと考える時間を…。
もしかしたら全部直すかもしれませんし、別機会でイビルツイン別個で出す形にするか考えます。

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