空から雨のように降り注ぐアーツによって形成された剣が密集していた敵の体を切り裂いていく。
「いつ見てもエグいアーツよね」
無造作に積み上げられたコンテナの上に座り込んだノクティスは、隣に立つ同族のループスへと顔を向ける。
「文句があるのなら自分でやればいいだろ」
「いやいや別に文句があるわけじゃないのよ? それに私のアーツはああいう大人数を一気にぶっ放すようなものでもないから羨ましいなと思っただけ」
「アーツなんか使わなくともあの程度の人数、おまえなら簡単に捌けるだろ」
「それはテキサスも同じなんじゃないの?」
テキサスと呼ばれたループスは普段の仏頂面のままノクティスの質問に返答せずにスティック状のチョコ菓子を取り出して口にくわえた。
悲鳴や怒声が聞こえてくる中とは思えないリラックスした状態で話をしている二人。
二人を知らない第三者が見れば目を疑うような光景であるが、二人にとってはこのような現場は日常的なものである。
「無差別に降らせてるようで重傷になるような場所は避けてる、恐ろしいほどに精密な制御ね」
足や腕などを切り裂かれた者たちは痛みにうめき声をあげてうずくまっている。
降り注ぐアーツの剣が止んだ時には五体満足で立っている者は存在せず、討ち漏らしがないことを確認すると肩に吊るしていた無線機を手にした。
「それじゃあ目標を確保して、重傷者がいるようなら医療班に治療させてそれ以外は督察隊に引き渡して」
『了解です姐さん!』
「隊長と呼びなさい、張っ倒すわよ」
『わかってます姐さん!』
「・・・・・・もういいわ、引き渡しが終わり次第各員通常業務に戻りなさい」
簡素に指示を出したノクティスは座っていたコンテナの上に立ち上がると一仕事終えたと伸びをした。
「今日はありがとねテキサス。うちのバカどもはオツムもアーツの扱い方もバカだからあなたのおかげで無駄な始末書を書かずに済んだわ」
「自分の部下に対してその評価はどうなんだ・・・・・・?」
「その辺りはあなたも多少は知ってるでしょ?」
「・・・・・・」
「まぁいいわ、あなたへの報酬はいつも通り口座の方に振り込んどくわね。ついでにこの後一緒に食事でもどう?」
「いや、遠慮する」
笑顔で食事に誘ってくるノクティスに対してテキサスはあっさりと断りの返事をする。
あまりの返事の速さにノクティスも浮かべている笑顔が苦笑気味になる。
「つれないわねぇ」
「頼まれた仕事は完了したんだ、必要以上に馴れ合う必要もないだろ。それに近衛局のおまえとペンギン急便の私があまり親しくするのも問題なんじゃないか?」
「別に私個人的な付き合いだし、何より確かにあなたたちは目立つことを色々やらかすけど、それは私の部隊も同じだからね。まぁでも、私たちが出張るようなことにならないようにあなたたちも気をつけなさいよ」
「善処する」
そう言い残しテキサスはさっさと立ち去ってしまった。
取り残されたノクティスは残念そうに嘆息し、自身の部隊に合流することにしたのだった。
「あれ? そっちの用事はもう終わったの?」
「どうしておまえがここにいるんだ?」
先程の現場から少し離れた場所に止めてあった車まで戻ってきたテキサスは、助手席で寛いでいる同僚の姿に思わずジト目を向けてしまう。
テキサスの記憶が確かなら、助手席で寛いでる同僚は今の時間別の仕事をしていた筈である。
「あ、その目はあたしが仕事サボってここにいると思ってる目だ! 心配しなくてもちゃんと仕事終わらせてから来てるよん♪」
この同僚は仕事中にふざけたり、人をからかうのが好きなど困った部分はあるものの、任された仕事をふざけた理由でサボったりはしないと本人の言葉を信じてテキサスは運転席へと座るのであった。
「そういえばノクティスからデートのお誘いがあったのに断ってよかったの?」
「見てたのか・・・・・・」
覗き見は趣味が悪いぞと睨みつけながら、テキサスは車のエンジンをつけて発進させた。
「ノクティスを見てるとアイツを思い出すから苦手なんだ」
「あぁ〜、なるほどねぇ」
「そういうおまえは随分と仲が良さそうじゃないか、エクシア」
「まぁね〜、ほらノクティスってよくご飯奢ってくれるからさ〜」
このサンクタ餌付けされてやがる。
笑顔でどこどこの店に一緒に行ったと語る同僚にテキサスはなんとも言えない気分になったものの、本人が嬉しそうにしているのであればツッコミを入れるのも無粋かと最終的に放っておくことにした。
そんなテキサスではあるが、エクシアの話を聞き流しているうちに話題の人物でもあるノクティスについて思考を傾けてしまう。
ペンギン急便での仕事の傍、個人的にノクティスから仕事を依頼されることが何度かあったテキサスはノクティスと戦闘を共にしたこともある。
ノクティスは普段から軽い雰囲気を出しているが仕事はちゃんとこなすし、口では色々と言っているが面倒見がいいのか部下たちからも慕われている。
普段は個性的な部下の手綱を握るためかわからないが、自分が最前線に立つのではなく部下たちへ指示を飛ばしていることの方が多い。
しかし、一度戦場に立てばチェンが普段使用いているものと同じ剣で敵を蹂躙する容赦のない姿を見せる。
敵に容赦がないこと事態はテキサスも同様であるため特に思うところはないが、いつもと同じ笑顔を浮かべながら敵を切り裂く姿がどうしてもテキサスの知るとあるループスと重なって見えてしまう。
浮かべている笑顔の種類も知り合いが浮かべているような狂気的なものではなかったが、なぜか面影が重なるノクティスをテキサスは苦手に思っていた。
「まぁなんでもいい、仕事相手としては不満はない」
馴れ合う気はないが拒絶するほど毛嫌いする理由もない。
ギブ&テイクの今の関係で丁度いいと、テキサスはノクティスについてはそれ以上考えずに職場に向けてアクセルを踏み込むのであった。
「それで・・・・・・どうしておまえはここで即席麺を食べているんだ?」
ズルズルと、自分の隣で呑気に麺を啜っているノクティスにチェンは事務仕事を続けながら疑問を口にする。
「いくら手軽ですぐに食べられるからってこんなのばっかり食べてたら体に悪いわよ?」
「私のした質問の答えになってないぞ。あと私の食生活については大きなお世話だし、今おまえが食べてるそれは私のだぞ」
「いいじゃないいっぱいあるんだし」
「だからって・・・・・・・おい待て、その容器をよく見せろ」
ズルズルとやかましいノクティスにイライラしだしたチェンは、一度手を止めて書類から視線をノクティスへ移した瞬間、即席麺の容器のラベルを見てプルプルと震え出した。
「お、おま! これ私が買い置きしてた期間限定品の即席麺じゃないか!?」
「あ、そうなの? 通りでなんだかいつもと味が違うと思ったわ」
「それはもう売ってないレア物なんだぞ!」
あまりの仕事の量に仕事場に泊まることも多いチェンは、普段から自分のデスクの近くにすぐに食べられる食料品をいくつも置いている。
その中でも即席麺は龍門では幅広いジャンルの種類が数多く売られており、近衛局員になった者はお世話になった者はいないと言われるほどに普及されている。
チェン自身すぐに作れる上に味もよく、種類が多いこともあり飽きることのない即席麺は日常的に口にしており、期間限定で販売されるような珍しい商品を買う程度には愛好していた。
「しかももうほとんど残ってないじゃないか!」
まさかここまでチェンが取り乱すと思ってなかったノクティスは、さてどうしようかと思考をフル回転させた。
正直なところたかが即席麺一つだと割り切ってしまうこともできるが、目尻に若干涙まで浮かべている姿を見てしまうと、さすがのノクティスもなんとかしないと後々面倒になりそうだと冷や汗を浮かべた。
「あぁその・・・・・・チェンが楽しみにしてたものだとは知らなかったの。勝手に食べちゃったことは謝るから泣かないで」
「私がそんなことで泣くか!」
めちゃくちゃ涙目になっているじゃないかと指摘する勇気をノクティスは持っていなかった。
「あぁもう今回は私が全面的に悪かったわ。チェンの気が済むように埋め合わせはするから機嫌を直して?」
「・・・・・・・・・・・・本当だな?」
「もちろんよ! 私がチェンに嘘をついたことなんてないでしょ?」
「しょっちゅうイタズラとかでついてるじゃないか・・・・・・」
「うぐっ!? た、確かに普段は嘘が多いかもしれないけど今の言葉は本当よ! チェンの言うことなんでも聞くわ!」
言われる内容のリスクも考えて普段であればそんな約束事は、たとえ口約束であったとしてもしないノクティスではあるが、チェンの取り乱し様が普段とは違うことと常識人であるチェンであればそこまで無理難題を言われることもないだろうという打算もあり、とりあえず機嫌を直してもらうことをノクティスは優先した。
「じゃあ・・・・・・」
告げられた内容に若干面倒くささは感じたものの、なんでも言うことを聞くと言った手前、そこでチェンの願いを断れるほどの勇気もノクティスは持ち合わせていないのであった。
「む? チェン隊長、今日もお弁当なんですか?」
「ああ」
「最近手作りのお弁当を持参されてますが、お忙しい中自炊なさるとはさすがですね」
「・・・・・・・・・・・・まぁな」
なんとかチェンをお向かいできた・・・・・・(潜在5のシルバーアッシュから目逸らし)
アークナイツのピックアップは本当に対象キャラがピックアップされてるのか疑問ですね。