クロエに恋愛の愚痴をこぼすだけのお話   作:skaira

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リハビリ 短いです


旅行②

「………………」

 

 ──俺は何やってんだ? 

 

 東北、ホテル、一人部屋。

 先程一世一代の告白をして、無事()()()()()()()()

 さて、気になるのは当然「なぜ?」という2文字だろう。

 

 いやいや、黒江も俺のことが好きなんて、そんな自惚れがあった訳じゃあない。さすがに年頃の高校生相手だ。弁えの自覚はある。

 しかし、振られるにしても少し返事を考えてくれると思っていたのだ。

 俺もそれなりに自分の中の〝好き〟を解釈して告白した。決して突発的なものじゃない。

 確かに、結婚しても良いと思うくらいに黒江への〝好き〟は固めてから告白したのだ。

 

「…………は?」

「え、ごめん。無理、え」

 

 ──しかし返事はこれだった。

 全くもって、新幹線は窓の開かない乗り物で良かったと心底思う。もしそうであれば俺はきっと飛び降りていた。そのまま死んで、この脳の中にあるものを全て空っぽにしたかった。

 

 そこからは終始気まずい空気が流れ、東北着。

 まずホテルへのチェックインで、俺は俺の部屋、黒江は黒江とちえるの2人部屋。今俺はベッドに寝転がり、どうやって2人に知られずに家に帰るかを画策している。

 

「あー…………。死にた」

 

 愚痴も増える。おそらく、人生でいちばん辛い瞬間だった。

 温泉も鍋に舌鼓を打つのも全部パーだ。とりあえずは何も考えず一旦寝込もうと思う。他のことは知らん。ただそれでも、叶うならば、もし時間を戻せるならば、

 

「もっと状況を選べたんじゃないか、俺は」

 

『告白をやめていつも通りの日常を過ごせば良かった』なんてことは思わない。黒江への「好き」を言葉にしてしまってから、黒江の顔が頭の中から離れないのだ。今更時を戻して告白をやめたところで、黒江に好きと伝えるのは時間の問題だったのだろうと思う。

 ただ場所が新幹線の中、乗客も周りにいる中、ちえるも隣にいる中、あのシチュエーションは良くなかったかもしれない。もっと夕焼けが見える高台とか、少なくとも誰にも会話が聞こえないような場所でやるべきだったのかもしれない。

 花子(下の名前)で呼んでいいことの喜びが、突発的な告白に繋がってしまった。

 もっと冷静になることはできたはずなのに。

 

 ため息が出る。

 後悔に次ぐ後悔だけが胸に残る。

 これでもう黒江と話せなくなったら? あの笑顔を身近でもう見られなくなったら? 

 黒江の笑顔が好きだ。

 一緒にキッチンに立った時にあいつはよく笑った。玉ねぎが目に沁みたとき、良い具合の辛さのカレーが作れたとき、それを俺たちで共有できたとき、弟たちに食わせたとき、そして「美味しい」と言ってくれたとき。

 目を合わせてお互いにその様子を微笑んだ。

 あの時はうまく言語化できていなかった。俺はたしかに、「こんな時間が一生続けば良い」と思っていた。

 

「……ふふっ」

 

 辛い気持ちは微塵も変わらない。

 それでもフラッシュバックする黒江との思い出が、俺の顔を綻ばせていく。

 振られた今でも黒江には感謝している。俺の真っ黒だったはずの高校生活がこんなにも楽しい日々だったと思い返せるのは、間違いなくあいつが隣にいてくれたからだ。

 

「まあ、欲を言えば付き合いたかったけど」

「好きな人他にいたのかな」

「それか俺って別に特別でもなんでもなかった?」

「黒江が優しいから言われなかっただけで、もしかして迷惑だった?」

 

 ──やめようやめよう。

 黒江はそんなやつじゃねえよ、黒江を信じた俺を信じろ。

 振られた理由はさっぱりわからん。夢だったんじゃねえのかな、とすら思う。

 

「……いや、後の祭りだ」

 

 ピコンピコンと、ちえるからメッセージが届いた。

 大方振られたことの励まし連絡だろう。別に見たくもない。

 寝る。後のことは知らん。

 

 

 

 

 

 ──────

 

 

 

 

 

「いや、OKしないのかよ!!!」

「急過ぎるんだって!!」

「ああもう、夜に今すぐこの部屋来いって言うから!」

 

「……」

「……いや既読つかないんですけど!!」




次回は黒江さんのターン


2024/03/04追記
次話、最終話全て書き終わりました。
ただ心を落ち着かせて推敲する余裕が今無いので、7月までお待ちいただければと思います。
ご迷惑をおかけして申し訳ありません。

2024/03/19追記
なんか新しいストーリー追加されてる(驚愕)
もしかしたらもう少し続くのかも……いやさすがに無いか……番外編とかやるかも…………。
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