今回の話は多分チエルのキャラエピ見て見た方がいいかも。
「ちぇるーん! いつもぼっちで灰色の学校生活を送ってる夜くんのために、なんと可憐な超絶美少女ちえるんは学校まで迎えに来てあげたのでした!」
「初っ端から死ぬほどうるせえ奴出てきた……」
「なんか言った?」
「いえなんでも。……てかお前年上に当たり強くない? 敬う気持ちとか無いの?」
「いやだっていとこだし。家族みたいなもんだし。なんならご飯いつも作ってくれるから……家政婦的な?」
「はい決めました。もう絶対飯作ってやんねえ」
「ちょ、ストーップ! 悪かったってば!」
生意気穀潰し外面だけ女──もとい、いとこである風間ちえる。
青春に理想を抱いて日々奔走しており、いとこのようなぞんざいに扱っても問題ない相手にはとことん当たりが強い。
「てか、いつも話してる夜の友達は? 一目見ておきたかったんだけど」
「黒江? アイツはもうバイトに行っちまったけど」
「……え、クロエ? あの子そんな名前なの?」
「黒江花子って名前だけど」
「んー……? なんかその子、同じ高校の先輩で同じ部活だったような気がするんだけど。由仁先輩も一緒で。気のせいかなぁ?」
「いや気のせいだろ。そもそも高校違うし。真行寺先輩も違うし」
「……ま、確かに。由仁先輩待たせてるしはよ行くよ」
「お前もう少しゆとりってやつをだな……」
とまあ、不平を言ったところでちえるが受け入れてくれるはずもなく。
腕を引きずられ、ちえる行きつけのカフェへと向かう。
道中何人か同じ高校の奴らと会って、微妙な顔をされながらすれ違い微妙な顔をしながらやり過ごした。どうもちえると俺が一緒にいることが気に入らないらしい。
アイツらとは別に友人でも何でもないから、会ったからといって話しかけられるようなことはないんだけど、それはそれとしてこれからも陰湿な嫌がらせは続いていくのだろう。
でも、腐っても金持ちで良識を持ちかつそっち方面に疎い坊ちゃん達だ。当然今までいじめなんて受けたことはないんだろう、俺が受ける嫌がらせも至極陳腐なものが多い。
例えば、シャーペンがいつの間にか無くなってたりとか。大事にならず、俺が先生に言うのも憚られるちっさいことだ。だからもう完全に慣れてしまった。
そういう意味では、この坊ちゃん達はある意味賢いと言えるのかもしれない。
「さっきのって夜の友達? 美形が多かったね」
「いや、別に。お前の嫌いなタイプだったろ」
「うん、ああいう男は嫌い。まあちえる女子校だからあんなのとは関わんないんだけど」
「……けど、この前合コンしたとか言ってなかったか?」
「あー……。美衣子先輩に頼まれてね。ま、あれは先輩に会えたし災い転じて福となすって感じかな?」
「彼氏のこと? 最近会ってくれないっていう」
「そうそれ! ってか、この前聞いたら付き合ってるなんて思わなかったって言ってて! ひどくね!? なんかこの学校にも女子トモいるらしいし!」
「ちょま、落ち着こう。……この学校?」
「あ、うん。風の噂だけどね? 確か、士条? とかなんとか」
「…………はぁぁ!?!」
──────さよなら、初恋。
じゃないが。俺のいとこの彼氏が、俺のいとこをキープしつつ俺が憧れてた人と二股してたってことなのか? 複雑な関係にも程があるだろ。
明日の黒江との会話のタネが一つ出来たと思えばラッキーではある。
「……あ、もしかして夜の好きな人だった?」
「……まあ、多分似たような感じ。今は違うけど」
「え、ちょい待ち。この前のバレンタインってその士条さんからじゃないよね? クロエちゃんからだよね?」
「そうだけど?」
「……で、もしかして夜そのクロエちゃんに士条先輩が〜とか言ってた?」
「一年の頃から割と毎日言ってたかな」
「……うわ。さすがに無いわ。引くわ。それは無いでしょ」
「はっ?」
「いや、別にいいよ。いずれ天誅が下るから」
少し不機嫌になったちえるに何も言えなくなり、それからはカフェまで無言で2人歩いた。
なんとなく怒ってる理由はわかる。確かに友達にしては黒江と俺の距離は近い。そういった女友達に好きな人どうこうの話をするのはちえる的にはタブーだと受け取ったんだろう。
でも、これに関してはちえるは全く関わりのない人間な訳で。自分の青春のことばかり追い求めてるようで、実はこういうお節介な面も垣間見えるあたりコイツの難儀な性格が窺える。
「あ、真行寺先輩。こんにちは」
「風間くん! 昨日以来だね」
「そうですね。今日は付き合わせちゃってすみません」
「いやいや。勉強だったら私も役に立てるかなって思って! 一宿一飯……じゃないけど一飯の恩があるから」
カフェ。
ちえるの行きつけにしては意外と言えるほどお洒落な雰囲気で、真行寺先輩の落ち着いた様子とよく調和している。
彼女と知り合ったのは昨日、俺が黒江家から帰った後だった。
家に帰って、まあちえるが当然のように居座ってたのはもう敢えてツッコまないとして、その横にちょこんと彼女も居座っていたのだ。
うちの親の了承を得ているならともかく、親の不在でかつちえるの持つ合鍵で2人は入ったようで、つまりは半ば不法侵入とも言える状態。俺と目を合わせると大分バツの悪い表情をしていた。
いやまあ、俺か俺の家族の同意も無しに他人を家に連れ込むちえるもどうかと思うけど。まあちえるがそういった安易な行動をしないとわかっていただけに、俺も真行寺先輩を信頼することができたわけなんだけどね。
で、そんなちえる達を横目に俺は晩飯を作らなきゃならん訳で。どうせちえるの分も作るんだし、せっかくだからと真行寺先輩の分も作ったという訳だ。
「すごい美味しかったよ、昨日の晩ごはん。いつから自炊してるの?」
「……あー。まあ10年前くらいですかね。うち親があんまり家にいないんで」
「あ、昨日もそういうことだったんだ……。いや、気分悪くしちゃったらごめんね」
「え、いや。全然良いってか、気分害する要素無いってか……」
──昨日から薄々感じてはいた。けど、周囲の女子があまりにアレなもんで幻覚みたいなもんだと思ってた。
でも、ここで確信に変わった。この先輩、人が良すぎる。
雰囲気もすごく落ちついてるし、醸すオーラも純正緑色って感じ。横のピンクと黄色に包まれた眩しすぎるヤツとは正反対だ。
正直に言うと、なんでちえると仲が良いのか理解できない。高校も違うってのに。
「……ちえる、お前真行寺先輩とどこで知り合ったの?」
「あ、ゲームだよ。アストルムってやつ。知らないの?」
「アストルム?」
「VRMMO。……そういやアンタってゲームに疎かったね」
「サーセンね……。要はアバターに人格を投影して仮想世界で遊ぶ、みたいな奴か」
「んー……。概ね正解。ま、そこで知り合ったってワケ」
最近は友人の形もいろいろと変化しているんだなあ、と思うなど。まあゲームには疎いからプレイはしないだろうけど。
第一今から高三──受験勉強が始まるってのにおちおちゲームなんてしてられない──あれ?
「あの、真行寺先輩。えっと、受験とか大丈夫なんですか? アストルムに時間取られて、みたいな」
「あー……はは。自慢することでもないんだけど、もう志望校の合格点は中学の頃に超えちゃったんだ。今は大学の勉強してて、息抜きにアストルムって感じ」
「…………は?」
思わず頓狂な声が出た。
本物の天才というのを目の前にして戦慄したのだ。
俺も中学の頃は周りに頭いいなどと持て囃されたものだ。それなりに勉学の才能を持ってる、なんて思ってた時期もあった。今でも才能が無いとは思ってない。
それでも、〝本物〟はレベルが違うことを今改めて認識した。
横からちえるがツンツンと脇腹を突く。
「……由仁先輩に勝負、とかやめとけよ? アンタ負けず嫌いなんだし負ける試合は最初からすんなって話」
「そんなに俺も馬鹿じゃねえってば……」
その時、何かを思い出したように真行寺先輩が口を開いた。
「そういえば風間くんって理系だったりする? 私文系だから、理科はあんまりわからなくて……」
「あ、いや大丈夫です。俺も文系ですから」
「あぁ良かった。なんで文系にしたの?」
「……友達が文系だったってのが一番大きな理由なんですが、まあ人文学とか好きなもんで」
「わかるよ!! 人文学は人類の叡智だよねぇ。対して理系の学者というのは頭は固いわもののあはれも全く解さないというか、あの柔軟性の無さには話していて辟易する。日本人ならもっとゆとりを持って人生を生きるべきだと思うのだよ。全くああいう奴らが日本古来の文化を消していくのだと思うと夜も眠────」
「…………ちょ、わかりました! ストップ!」
──今心なしか、真行寺先輩にいつもと違う人格を感じたのは気のせいだろうか。
トイレに行くと一言残して、少し熱の入ってしまった彼女をちえるに押し付け席を離れた。ちえるは大学に行かないようだから、こういった話は滅法興味ないのだろうけど。
しかし、こう落ち着いて店内を見回すと本当にお洒落な雰囲気だ。コーヒーの匂いと薄暗い照明が客に〝自分だけの空間〟というのを上手く味わわせている。多分学生が勉強しに来るようなとこじゃないんだろうけど、それはそれ。
裏を返せば勉強にうってつけの空間でもあるとも言えるから、最大限活用させてもらおう。
……ふと、黒江のことが頭によぎった。
黒江は多分、これを見ると〝カッコいいじゃん〟とか言うんだろう。相変わらずあのクソ悪い目つきで、口元だけ笑みを浮かべてて、低いトーンの言葉だけど声は妙に浮ついてて────。
アイツ今何してんだろうな。たしか服屋の店員とか言ってたっけ。ファッションセンスも抜群だしいいとこに勤めたもんだと思う。
高一の、まだ中学生気分を抜けられなかった俺にいろいろとブランドやコーディネートを教えてくれたのも黒江だった。
その次の日、俺が自分で服を見繕って黒江に見せに行くと、これもまた〝カッコいいじゃん〟っつって褒めてくれたのもアイツだったか。服を褒められるなんて初めてだったから、やたらと嬉しかった記憶がある。
────うわ。
なんか無性に、アイツに会いたいな。
ちょいとキャラ紹介のためだけの話みたいになっちゃいましたね。続きはできるだけ早く書きます。