私たちはヒューマギアによって制圧された飛電インテリジェンス本社ビルの前に立っていた。
「天津垓、お前まさかこうなることを見越して…?」
隣に立つ不破諌が私に問いかける。
数ヶ月前のヒューマギア回収・廃棄運動は、結果的に今の惨状を抑えることに役立つ結果となった。
「答える義理は無いな」
私はそう吐き捨て、目の前に佇む敵の本拠地を見据える。
正直、アークの悪意がすでに私の想像を凌駕し始めていることに、薄々感づいていた。
だからこそヒューマギアの危険性を訴え、廃棄を進めることでリスクを抑えようとしてきた。
しかしそれも全て遅すぎたということだ。
今や飛電インテリジェンスのヒューマギア生産プラントはアークに掌握され、次々とヒューマギアが生産されては人類に牙を剥いている。
皮肉にも私が訴えたことがそのまま現実になってしまったといえよう。
「いくぞ」
私は端的に告げる。
「お前に指揮権はない」
刃唯阿が憎まれ口を叩くが、これは恐怖を紛らわせるための虚勢だろう。
「言われなくても、ヒューマギアは俺がぶっ潰す」
不破諌が宣言し、エイムズショットライザーを構える。
私たちもそれに続けて、各々のベルトを装着する。
「「ショットライズ!」」
「パーフェクトライズ!」
私たちは装甲を纏うと、ビルに向けて走り出した。
*
立ちはだかるヒューマギアを倒しながら、私たちは飛電インテリジェンス本社ビルの屋上へと辿り着いた。
どうやら社長室、ひいてはヒューマギア生産プラントに近づけぬように誘導されているらしい。
この終末を止めるには、アークゼロを倒すしかないようだ。
いや、向こうからしても、私たち仮面ライダーを一掃できる今は好機のはずだ。
そう考えるとここに誘導されたことにも納得がいく。
「不破くん、刃くん、来るぞ」
もう彼らの脳に私の命令に従わせるためのチップは無いが、それでも彼らは警戒を強める。
彼らも理解しているのだろう。
ここが最後の戦いになると。
コツコツと、いくつかの足音が聞こえた。
現れたのは予想通り、滅亡迅雷.netの4人。
「さあ、ここで全て終わらせるとしよう」
アークドライバーゼロを装着した迅が宣告する。
「「「「変身」」」」
滅亡迅雷.netの4人が一斉に仮面ライダーの姿に変身した。
それを見た不破と唯阿もそれぞれランペイジバルカン、ライトニングホーネットに変身する。
「最後の戦いといこうか」
私はサウザンドジャッカーを構えてアークゼロに攻撃を仕掛けるが、滅亡迅雷の強固な連携によって阻まれる。
4対3、ただでさえ強力なアークゼロを相手に人数差もあるとなれば、ジリ貧になるのはこちらだ。
「私が陽動をかける!」
不利な状況を見越してか、唯阿が叫び、へクスベスパを展開する。
しかしそれは全て滅が放った矢によって撃ち落とされてしまった。
合わせて突撃を仕掛けた私と不破も、亡と雷によって攻撃を阻まれ、弾き飛ばされてしまう。
万事休すかと思ったそのとき、自身も突撃を仕掛けていた唯阿がアークゼロにその拳を叩きつける。
「迅!…お前は、ヒューマギアを解放するんじゃなかったのか!?その為に私と手を組んで、自分の正義を遂げると言ったのは嘘だったのか!?」
唯阿のその言葉にアークゼロが一瞬怯む。
しかしアークゼロは唯阿を振り払うと、覚醒しかけた迅の意識を押さえつけるように必殺技を起動する。
「オールエクスティンクション!」
その音声とともにアークゼロが宙高く舞い上がる。
一見すると絶望的な状況だが、これは好機だ。
私は一縷の望みをかけ、対抗して必殺技を起動する。
「サウザンドディストラクション!」
2人の必殺キックが空中で激突する。
しかし、敗れるのは自分だと、はっきり判る。
それほどにアークゼロの力は強大だった。
そもそも私が衛星アークに悪意を学習させたのは、そうしなければヒューマギアが人間と対等になる日は来ないと思ったからだ。
あくまで善意のみで人間に支える存在では、いつまで経っても本当の友人とは呼べない。
12年前の私はそうして大きな過ちを犯した。
それは悪意という名の、私のヒューマギアに、飛電製品に対する善意だった。
しかし、飛電其雄は、それを求めなかった。
今となっては解る。
人の悪意とは、簡単に人そのものを滅亡させる。
それほどに強大なのだ。
だからこそ私は、贖罪せねばならない。
全身に痛みが走る。
サウザンドライバーが弾け飛び、変身が解除される。
私は無様に地面に転がる。
しかし、この一瞬。
唯阿が切り開き、私が作り出したこの一瞬。
必殺技同士がぶつかり合い、空中でアークゼロの動きが止まったこの一瞬こそが勝機。
「やれ…不破諌」
「言われなくても解っている!」
「オール!ランペイジ!」
不破の放った一撃は空中のアークゼロに直撃し、迅の身体からアークドライバーゼロを引き剥がした。
遂にアークゼロを倒した、と思ったのも束の間、今度は雷の身体を乗っ取り、再びアークは変身する。
アークゼロを変
身解除に追い込んだ安堵からか、不破と唯阿は突然の事態への対応に、僅かに精彩を欠いた。
アークゼロから放たれた光弾を前に、私は最期の力を振り絞って2人を突き飛ばすと、その前に立ち塞がった。
この状況でベルトを破壊され戦力にならない私が生き残るより犠牲になるべきということは1000%確定的に明らかだ。
刹那、
私の身体は弾け飛び、ビルの外へと投げ出された。
これで私の罪が償えたとは思わない。
だがしかし、最期に希望を託す為にこの命を使えたのならば。
「…1000%…良い人生だった」
そう呟くとともに、私の意識は暗転した。