「斬魄刀との一体化を教えてほしいって?」
「ああ、藍染の野郎を倒す為なら戦力は強ければ強いほど良いだろ?」
夕飯の為、割烹着に三角巾をつけて大鍋で肉じゃがを作る鹿取に拳西が話しかけてきた。
「……それより先ずは基礎訓練じゃないか?」
「いや、藍染の野郎がいつ決起するかわからねぇ以上やるなら早いに越したこたねぇ筈だぜ」
少しの間手を止めて鹿取が考え込んだ。
「それも確かに……だが虚化の制御時間を伸ばす必要もある上に一体化までとなると……いや一体化自体は一発勝負だから時間はかからないが確実に成功させるにはやはり基礎訓練が」
「というか斬魄刀との一体化のやり方はどうなってんだ?」
「ちょっと拳西ーー! 佐々乃の邪魔しないで! ご飯が遅くなるじゃん‼︎」
「うるせえ! 話すくらいで変わらねえよ‼︎」
「だったら佐々乃の料理食べないでよ! 拳西は自分で脇の下でも使ってジャガイモ潰してサラダでも作って食べれば良いじゃん! あたしがその分食べるから!」
「なんだその作り方⁉︎ 食えるか‼︎」
「こらこら喧嘩しては駄目だぞ。白はご飯を早く食べたいなら食器を用意するのを手伝ってくれ」
「ハーイ!」
(母親かな?……)
(お母さんかよ……)
(母君デスネ……)
(オカン二号や……)
座敷におとなしく座っているローズとラブとハッチと平子はそんなことを思った。ちなみにオカン一号は鉄裁である。
「でだ、一体化のやり方はーーー」
「聞くのはやめといた方が良いと思いますよ拳西サン」
拳西に横槍が入った。リサとひよ里、鉄裁と共に浦原が買い出しから帰ってきたのである。リサの挙動が若干怪しいが。
「いやぁこっちで商売始めようと思ったんすがなかなか難しそうですね」
「胡散臭すぎて警戒されとったで」
「おい浦原、やめといた方が良いっていうのはどういうことだ?」
「方法を知っちゃうと無茶でもやるのでって事っす。ただ前提条件だけお話ししますと斬魄刀との一体化は"斬魄刀との完全同調"が最低条件っす。拳西サン、虚化という不確定因子が入った今、あなたはそれができますか? 失敗すれば死神の力を永遠に失うという重大な危険を負ってまで? なればこそ今は基礎の強化にに専念すべきですよ」
「基礎の訓練だったらどこまでもやれるから拳西、食事を終えたら某と立ち合いでもするか? 少し気になる鍛錬法もあるんだ」
「……良いぜ。ハッチ、手伝い頼むぞ」
「分かってマス」
買ってきた物を仕舞っている面子の中に夜一がいないことに気づく。たしか一緒に出て行ったはずなのだがと鹿取は首を傾げた。
「浦原、夜一は?」
「今日は帰らないそうっすよ」
「それじゃ作りすぎになってしまった」
「申し訳ないっす」
「アタシが食べるからヘーキヘーキ!」
「それは名案だ」
和気藹々とする様子の中ひよ里がジトーとリサを見つめリサは忍足で別室に移動しようとしていた。
「リサお前どないしたん?」
気づいた平子が少し驚かせようと無音で肩に手を置くと、びくっと体を跳ねさせたリサのスカートの中からボトボトと本が落ちてくる。
「うおっなんや?」
「いやだめやってみんといて!」
「いやそう言われてみない奴はおらんで」
ハッハッハと笑いながら本を手に取った平子が固まる。本の閉じ方や紙の質は瀞霊廷のものに比べれば悪いそれは凄まじい感じに〇〇が〇〇な感じでうふーんな〇〇だった。つまり
「いや買い出しに行っといて何買うとるねん⁉︎」
「え、ええやろ‼︎ みてみたかったんやから‼︎」
「なんだリサ助平か?」
「ちがうわラブ! 興味津々なだけや!!」
「ほ、ほら某そう言うのは気にしない故に調理が終わったから食事にしよう?」
「やめてや! 変に気を使われると逆に恥ずかしいわ! オカンか⁉︎ 次から揉みにくいやろ!」
「なんでじゃ」
リサの理不尽に鹿取はため息を吐いた。
食事を終えて大満足と言わんばかりに地下空間で腹を膨らませた白を横目にハッチが拳西と鹿取を包むように結界を張る。内在闘争の時のように無秩序に大暴れするわけではないので強度を妥協して広さを確保していた。
立ち合いは一見地味な物だ。二刀を縦横無尽に振り回す鹿取とそれを防ぐ拳西の図である。剣撃の衝突音が凄まじい筈だがハッチの結界のおかげで騒音被害はかなり軽減されていた。
しばらくやっていると交差させた二刀に絡みとられ拳西の斬魄刀が空中に吹っ飛ばされて結界に刺さった。唖然とした様子の拳西に鹿取が歩み寄ってかて動きの講釈を始める。
「拳西のいい所は野性味のある挙動だけどそのせいで無駄も多いから野性味を残しつつ余分な所を削ぎ落としていくといい。どうした?」
「普通に打ち負けるとは思わなかったんだが」
「解放無しの剣術の立ち合いなら一刀より二刀の方が強いからな」
「いやその理屈はおかしいからな?」
「お二人、刀を落としますヨ」
結界を開いて刺さっていた斬魄刀を落下されると拳西が受け取った。
「じゃあ次は虚化の持続練習だ。拳西はいまどれ位だった?」
「一分だ」
これは結構いい数値である。白が一人だけ十五時間程出しっぱなしに出来るので感覚が麻痺しかけるが。
「訓練してて気付いたんだが虚化してから刃禅を組むといい感じになる」
「本当か?」
「考えるに虚化は斬魄刀で言うと対話、同調、具象化、屈服、全部が同時に必要になってるような気がするんだ。某達が出来ているのは屈服のみだから他もやれば成果が出る筈」
「成る程……内なる虚なんかと対話なんて考えたこともなかったな」
拳西が虚化してすぐに刃禅を組んだ。そのまま精神世界に突入したであろう拳西は少しして大汗を吹き出し始めるとうぐ、ぬ、と苦悶の声を上げ始める。既に先程の申告の一分を超え二分をすぎた頃。
「ブハァ⁉︎」
「お帰り拳西」
仮面が割れると同時に疲労困憊となった拳西が大きく息を吸った。
「はい、もう一回、もう一回」
「ちょ、ちょっと待て今内なる虚とぶん殴り合いしてきたばかりで」
「いやいや鍛錬なんだから実戦より厳しいやり方しないと駄目だろう。被って被って」
「わかったよ!!」
拳西がまた虚化し刃禅を始めると鹿取は一人で刀を振り回しなにやら仮想敵との立ち合いをしているようであった。刃禅をする脇でやってるせいではたから見れば見た目がすごく滑稽な感じになっているが二人とも大真面目である。
「ブオッハア!!」
「お帰り拳西。ほらもう一回もう一回」
「嘘だろ!?」
「大丈夫だ。某が二十回まで連続でやっても安全だったのは確認している。拳西がうまくいったならみんなにも提案しようと思っているから頑張ってくれ」
「なんだそれ!?」
「だが拳西、ただ虚化を維持しようと気張ってたよりも多分維持時間の伸びはいい」
立ち上がった拳西の肩を背伸びしながら引っ掴んで無理やり座らせる。最近鹿取に対し割烹着を着た温和な印象が強くなっていた拳西がそうだこいつ元はゴリゴリムキムキ鍛錬バカだったということを思い出した。
そして合計十七回目で動かなくなるまで延々と拳西は虚化刃禅を続けた。
結界が解除されその場で疲労困憊で気絶した拳西にハッチが布団を掛ける。上の寝床に連れてってやれやとツッコミを入れられる平子はここにいない。
「あの、ワタシ必要でした?」
「ありがとうハッチ。いやもしかしたら暴走とかもあるかもしれなかったから。某が止めるにしても周りに大被害が出ては不味かったのでな」
「暴走拳西サンと佐々乃サンの大乱闘はチョット勘弁デスネ」
絵面を想像してハッチは遠い目をした。そうして鼻ちょうちんを作る白を優しく横抱きにした。
「佐々乃サンはこのあとどうするんデス?」
「某も虚化して刃禅する。白もハッチもおやすみ」
鹿取は拳西が寝てる脇で虚化刃禅を始めた。結果その日の拳西は悪夢にうなされる羽目になるのだった。
前話では沢山のご感想ありがとうございました!
がんばります