斬魄刀を極めたらTSしたんだが?   作:MKeepr

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「ハイ、第一回目。藍染対策会議の時間や。司会担当は俺平子真子がお送りするで」

 

 浦原がよい感じで商売の伝手を見つけ平子達がそれを利用して金銭を稼いだりとようやく現世での行動基盤が安定し、各々が虚化をある程度使いこなせるようになった為会議が開かれたのである。

 

「最大問題は崩玉の防衛と完全催眠っスねぇ」

 

 いまだ最終的な藍染の目的が分かっていない。ただ虚化の実験をしていたことから虚と死神の境界を取り払う崩玉は優先的な防衛対象だ。

 

「なんやろな完全催眠ってアレ、俺の逆撫の上位互換かいなって感じやわ」

「戦った経験則なんだが、そこにある物を置換する幻覚なんじゃ無いだろうか。いやそう見せてるだけの可能性も高いが」

「それはありそうやな。わざわざ自分の影武者役用意して俺につけてたわけやから」

「鹿取サンの天挺空羅で私らも異常に気づけたのもあるので、認識外の事をされると精度が落ちるのかもしれませんね」

 

 あの藍染がわざわざ能力の限界を見せているかは疑問符がつく。だがわざわざ足がつきそうな程度に能力を抑える意味はないのでここの全員は藍染の完全催眠は何か媒体が必要という前提で話を進める。

 

「効くかどうかはわかりまセンが、幻術対策の結界は張れマス」

「藍染がその場に居るなら某なら辺り一体吹き飛ばせばなんとかなるのでは?」

「何もないところやったらええけどそうじゃなきゃ佐々乃そんなことできないやろ」

「少なくとも幻覚な訳だからよ、幻覚で騙された上で反撃できるだけの強さになれば良いんだろ」

「完全催眠前に不意打ちでぶん殴るっていうのはどうや?」

「ならば儂の瞬歩でどうじゃ?」

「発動条件わからないんっスよねぇ。事件当時の瀞霊廷でのアリバイ作りからして少なくとも平子サンの卍解の様な一定範囲無差別型では無い筈ですが。でなければあまりにも範囲が広い」

「霊圧で圧倒すれば無理やり破ることも可能と思われますが、詠唱破棄の断空で私の鬼道を防ぐほどです。流石に無謀ですな」

「つまるところまず実力で上回らんと話にならんね」

 

 全員がうんうん唸りながら色々意見を出すが、藍染の完全催眠の性能が高すぎて対処する方法すら迷走している。後大体みんな物理的である。実際鏡花水月の前にまずは藍染自体を倒せる程の強さがなければ話にならないので間違ってはいないが。

 

「まず、『完全催眠は発動条件があり、我々全員がそれを満たしてしまっている』と『長大な範囲内を完全催眠をかけることが可能』の二つに絞りましょう。私としてはせめて前者であって欲しいっスけどね」

「下が普通にあり得るのが恐ろしいな」

 

 如何に高性能な斬魄刀の能力といえど使用するならそれなりの霊力を消費する。後者であれば事件時の位置関係からして瀞霊廷どころか尸魂界東梢全体を覆える程の霊力を常に消費しているという凄まじい事態になるが、推定される強さから見るとありえてしまうのが恐ろしい。

 

「前者に関しては崩玉の隠匿方法と一緒に私の方で対策を練って置きます。後者だった場合や前者であっても皆さんは変わらず戦力の拡充に努めてください」

「それじゃ、虚化組の俺らは浦原らとは別行動のといくとしようや」

「それが良いだろうな」

「別れもまたいずれ出会う布石、悲しみは無いさ」

「ええー! 分かれちゃうの?」

「悲しいことデスが、白サンが居れば百人力デスね」

「しょうがないなもう、任せときなさい!」

 

 ハッチが白をおだてているのを横目に少ししんみりした様子の浦原の顔面にひよ里のパンチが炸裂した。

 

「痛い!」

「なにしんみりしとんねん! 今生の別れちゃうぞ!」

 

 頬を撫でて涙目になる浦原を夜一と鉄裁が苦笑して見ていた。

 

「私達は重霊地を拠点にしようと思っています。その方が研究やら色々と都合がいいっスから」

「俺らは放浪やな。ここいらでも最近怪しまれはじめとるやろ」

 

 最近、外見も変わらぬよそ者の集団ということで周りから怪しまれはじめている。浦原も重霊地に拠点を作ったらここは一切合切綺麗さっぱりさせる予定の様だ。

 そうして会議を終えた後、平子は重大そうな顔で虚化組を集める。浦原、夜一、鉄裁は蚊帳の外で見守っている。

 

「俺らの集団としての名前、決めへんか?」

 

 虚化組の面々が顔を見合わせた

 

「え? 某、藍染ブッ殺隊になったとばかり」

「それは却下だ。現世愚連隊ってのはどうだ?」

薔薇の騎士団(ローズナイト)なんてどうだい?」

「いやそりゃ無いだろ」

「九人の侍」

「十四番隊」

「春画愛好会」

 

 全員が好き放題思いついた名前を言うがどれもしっくりこない様子。

 

「アレや。俺ら虚化しとる訳やし虚側に合わせて、仮面の軍勢(ヴァイザード)なんてどうや?」

「藍染ブッ殺隊からやけに進化したやんけ」

「いいんじゃ無いか? 僕たちを表す美しい名前だ」

「某はそういう感覚に疎いので文句は無いぞ」

「いいデスネ」

 

 意外に良い名前を提案した平子に称賛がもたらされ蚊帳の外をしていた浦原達も「それではこれからは皆サンの事を仮面の軍勢(ヴァイザード)と呼ばせていただきますね」最近被りはじめた不審な帽子を撫でながら微笑んだ。

 分かれた二つの勢力が再びあい見える事間なるのはそれから数十年以上先のことになる。

 その間鹿取は"特訓オカン"というちょっと謎な称号を貰い、仮面の軍勢全員の訓練を担当した。これに一番苦労させられたのは結界を張って存在を隠蔽するハッチであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ、某の自信作だ」

 

 ある日、鹿取が満足げに台所で鍋の蓋を閉じた。玉ねぎを大量に鍋で炒める事から始め現世で培った知識を総動員しスパイスの組み合わせにまで拘った無水カレーが完成したのだ。

 現世では炊飯器という機械が生まれ米のたき具合は気にせずとも万全、現状の鹿取の至高のカレーライスがここに誕生したのである。それを大型の炊飯器と一緒に抱えて倉庫の方へ向かう。

 

「みんなお疲れ様! 飯を作ってきたぞ!」

 

 倉庫の中ではハッチが結界を張った内で鍛錬が行われていた。鹿取の姿に気付いた白がテンションを上げ、拳西やラブはクールダウンをしはじめた。

 

「今日はカレーだぞ。某の自信作だ。お茶を取ってくるから先に食べててくれ」

 

 鹿取が炊飯器と大鍋を置いて倉庫から一旦出ようと扉を開けた瞬間、何かが飛来した。

 全員が一斉に虚化し、ハッチは内側を封じる結界を外部からの防御結界に切り替えさらに鹿取と自身を新たに覆う。襲撃を受けるならば浦原の方という認識はあったがこちらも万一に備えてはいたのだ。

 ガッシャンと大鍋に衝突しはじけたそれが倉庫の床に撒き散らされる。そうしてまるで生きているかのように蠢き、文字を形作っていった。

 

仮面の軍勢の皆様へ。霊圧などの探知を受けない新たな情報交換手段の開発に成功しました。並びに崩玉の隠蔽手段、藍染への対策も目処が立った事を報告させていただきます。映像資料も添付いたしますのでご精査ください。今後ともご贔屓によろしくお願いいたします。浦原商店

 

 大きくなっていた血のようなモノの塊が崩れると、内側から浦原製の映像再生機が姿を表す。

 ハッチの結界に守られる皆が沈黙した。大鍋の蓋が転がり、壁にぶつかってカランと乾いた音を立て倒れた。

 

「か、か、」

 

「「「「「カレーーーーー!!!」」」」」

 

 そこには無惨にも豊潤な香りを倉庫内に満たしながら床にぶちまけられたカレーの姿があった。白は泣いた。鹿取も泣いた。

 その日の仮面の軍勢の食事は白米と梅干しとお茶になったのであった。

 


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