「いやー鹿取サンお久しぶりっス! よろしければ何故平手打ちを受けたのかの説明も欲しいっすけどね!」
「鹿取殿の見事な平手打ちでしたな店長」
「……この間テレビで見た……店長、不倫した……?」
「バッカ
どこかの機動戦士のオヤジにも打たれたことないみたいな姿勢をしている浦原に鹿取は悲痛な面持ちで数枚の写真を差し出した。そこに映されていたのは例の連絡メッセージの脇にぶちまけられたカレー、そして白米を死んだ目で食べるラブと涙目の白の写真だ。
「フンヌッ‼︎」
「痛いッ‼︎」
鉄裁のチョップが浦原の頭頂部を直撃しふくらはぎ半ばまで地面にめり込んだ。ビヨンビヨンと上半身がばねのように揺れる。そしてそれを成した漢の眼鏡の裏からは、一筋の涙が流れていた。
「いけませんぞ。皆様には大変なご無礼。この鉄裁責任を持って代わりの食事を準備する所存」
高速で鉄裁は梯子を駆け上っていった。
「着弾時に衝撃が発生しないよう改良を加えさせていただきマス……策に関しては時期が来れば連絡するっスから、鹿取サン達は変わらず戦力の増強に努めててください」
わかったとうなづく鹿取に雨が近寄ってきた。
「ん? どうした?」
「……どうすればお姉さんみたいにバインってなれますか?」
「……………三食欠かさず食べてしっかり運動をするといい。某はそれくらいしかしていない」
ジン太に引きずられていく雨をなんとも言えない顔で眺めていたがゴホンと咳払いをして鹿取は浦原の方へ向き直る。ちょうど足を地面から引っこ抜いている所であった。
「それで、あの映像はなんだ?」
「ああ、見てくれましたか」
「全部がぼかしが入ってて何も分からなかったんだが? リサがこの間買ってきてたスケベなビデオ以上にぼかしがすごかったぞ」
「いや何みてんスか」
「いや男なのを忘れない為にもリサの奴が見た方がいいって言うのでな」
それ騙されてますよとは浦原は言わなかった。
「とりあえず、皆さんに詳細を見せても楽しいものではなかったので証拠に渡しただけっスよ。"晴れろインフィニティモザイククリア"って動画に叫べばぼかしが消えますから。それと、皆さんに無駄な心労は掛けたくないのでこれからは便りがなければ元気の証とでも思っていてください。緊急があればまたアレ、飛ばすので。……ちなみに、アレをみてどう思いました?」
「? ああ、カレーで頭一杯だったが、この間テレビで見たダイイングメッセージみたいだったな」
「へえ、ちなみにひよ里さんはなんて?」
「"なんで赤単色やねん白で縁取らんかついた場所によっちゃ見えんやろがダボ!"って」
人差し指で目尻を吊り上げてひよ里の真似を鹿取がする様を見て浦原も帽子をさする。
「うーん白で縁取るのは技術的に難しいんスよねぇ」
「まあまだ色々突っ込みたい事はあるんだが、今日は帰るよ。あとうちの奴らに会う時は全員が多分一発殴ってくると思うから気をつけるのがいいぞ」
「それ私死んじゃいますよぉ? 会うに会えないじゃないですか困ったな」
「いつも後出しジャンケンみたいな事するのと食べ物の恨みは恐ろしい、観念してくれ。それではまたいずれ何かあれば」
鹿取が見回した先には謎の縦穴と太い柱で作られた枠みたいなのが鎮座していた。浦原の事だから何かの実験なのだろう。梯子を登っていく鹿取を浦原は扇子を開いて雨が紙吹雪を撒きジン太が大団扇で風を起こし感動の出発と言った感じでそれを見送る。
「……問題ありません。今にアレは表舞台に引き摺り出されます」
扇子で口元を隠し、小さく浦原は呟く。その目線は太い柱の集合体、穿界門に鋭く向けられていた。
鉄裁弁当を受け取った鹿取はついでにお茶でも買っておくかと来た道と違う方へ歩き出した。
「……ん?」
『これからすぐに
(浦原)商店前に集合
P.S.
いまこれを見て
「ダイイングメッセージみたい」
とかありきたりなこ事を
思った人は
ツッコミの才能が
ないです
路地に薄くなっているがそんな事が血文字で書かれていた。実験の為に近所で使ってみたのだと思ったが、鹿取は少ししょんぼりした。
「ただいまー」
「おーすおかえり〜」
「アレ、なんかコンビニ弁当にしちゃやけに豪華だな?」
「先日の詫びにと鉄裁殿が持たせてくれたんだ。飲み物も好きなの持ってってくれ」
「さすがはオカン一号やな。それで、映像のボカシの件はどやった?」
平子が割り箸を割りながら鹿取に問いつつ蓋を開ければ良い香りが鼻腔をくすぐる。唐揚げ弁当だがその香りはコンビニ弁当の比ではなく油断すればよだれを垂らしてしまいそうな代物だ。
「ちゃんと聞いときたぞ。あまり気分いい物じゃ無いらしいが?」
「結局は見ないとあかんやろ。飯でも食いながら見よか」
「行儀悪く無い?」
「いや適当に座って食ってるのに行儀もなんも無いだろローズ」
「君はジャンプ読みながら食事するんじゃ無いよラブ」
そう言いつつひよ里謹製のモニターに映像を映す。ぼかしがひどく何も見えないそれに向け、鹿取が向きなおる。
「晴れろインフィニティモザイククリア!!!」
平子とひよ里と拳西が喉に米や唐揚げを詰まらせラブがコーラをリサがお茶を吹き出しローズが割り箸を割るのに失敗した。ハッチは黙々と結界で吹き出されたお茶から自分を守り白は弁当に夢中であった。
「おお、言ってた通りぼかしが消えたな。ん……」
「ブッハァ!! 何いうとんねん笑かすな‼︎ 窒息するかと思ったわ‼︎」
顔を青くしたひよ理が水で詰まりを解消してキレるも、鹿取が反応しないので蹴りをぶちかまそうとする。
「ノールックで受け止めるなや腹立つわ!!」
ひよ理の蹴りを左手で掴んでそのまま画面を注視しているので。ひよ理もそのまま画面を見る。
映し出されるのはオレンジ髪の青年の軌跡だ。その中でも特に目についたのが、虚の仮面をつけた青年の姿。
「浦原の奴、こないな大事な情報ぼかし入れるんやないで、まあどうせ聞いても答えてはくれへんやろうけど」
「ちょっと待てなんか俺たちの冒険は続くってなんかくぐってったけどどこ行ったんだよ」
「あ、浦原の家に行ったとき某みたなコレ。ひよ理これ何かわかる?」
「普通に考えれば穿界門やろ。ここまで太い代物でもないはずやし何かハゲが装置を後付けしてるんとちゃうかというかいい加減離さんか!!」
穿界門で行く先なんて一つである。尸魂界だ。全員が飯を食い終わって目線を合わせる。何も語ることは無く沈黙が状況を支配している。
「「……」」
全員が浦原の秘密主義に沈黙するが、まあもう慣れたモノである。決まって浦原はやること全部終えてこちらが許せば円満な状態に持って行ってそのうえで「いやぁみなさん。秘密にしてて申し訳ありませんでした」と言うのである。
「……このガキ、ウチらの力が必要になるかもしれへんな」
「どう見ても内在闘争もしてないだろうしな。こりゃいずれ虚に食われるぜ?」
「某としても、死神の力を得たとは言え現世の人間に重荷を背負わせるのは御免だな」
「じゃ、こっちに帰ってきたらいっそ仲間にしちゃおうよ!」
「ウチは嫌やでこんな乳離れもできてないガキ」
「まあまあ」
「乳ない奴がなに言うとるん」
「現世の奴ならジャンプの良さもわかってくれそうだしな」
「ワタシは反対する理由はないデスネ」
「ああ、彼も我々の同胞に……これも運命」
「誰じゃ乳ないとか言った奴は!! ぶち転がすぞボケがァ!!?」
このオレンジ髪に何かあったら助けになろうというのがおおよその仮面の軍勢の意見として固まった。
なおこの後浦原から連絡があったのは藍染関連ではなく別件であった。