斬魄刀を極めたらTSしたんだが?   作:MKeepr

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短めです


お茶

「いやぁ……同期でお茶会なんて久しぶりだねぇ」

「……そうだな」

「いやぁ……同期の三人とも百年以上元気にやってた訳だけど今年は激動だねぇ」

「ああ、先生の薦めとはいえ茶会なんて久方ぶりだ」

 

 伺うような様子で話題を出そうと苦心する二人に、鹿取は苦笑した。百年以上友人をしているのに、いやしているからこその余所余所しさなのかもしれないが。

 三人が三人後ろ手に髪の毛を縛っていて謎の統一感があった。

 

「やめてくれ。変に気を使わないでもらえると嬉しい。某がなんだか惨めな気分になってくる」

「……ああ、そうだな! すまなかった鹿取」

 

 十三番隊隊舎に存在する雨乾堂にてそこの主とも言える浮竹十四郎隊長、京楽春水隊長、鹿取佐々乃三席の三人が茶菓子を囲んで茶を飲んでいた。副隊長の志波海燕が裏に控えているが、それ以外の者は近寄らないよう人払いがされている。

 この雨乾堂に尸魂界史上三人しかいない二刀一対の斬魄刀の使い手が集まっていた。当時真央霊術院の三羽鳩と呼ばれていたのは懐かしい思い出である。

 

「酒を用意すればよかったのだが、海燕に止められてな」

「やめておけ。院の頃、無理に酒を飲んでゲロと吐血を同時に某の袴にぶち撒けたの忘れとらんぞ」

「あったねぇ、音頭を取って飲んでるうちに限界が来て次の日医者に一同死ぬほど怒られたよ」

「それは言わない約束だぞ!」

「おっいつもの調子が戻ってきたねぇ」

 

 隊長である二人は敢えてその証たる羽織を着ていない。人払いの訳はそれである。他隊の席官と隊長格が無礼講で談笑して茶を飲んでいる等山本総隊長から一目置かれていると自負している彼らからすれば大っぴらにできることではないのだ。尚いつもの事なのでこっそり忍び込んで外に隠れている七番隊副隊長の存在は皆が無視した。

 

「それでどうだい? 体の調子は」

「今日はいいぞ、でなければ茶会なんて許してもらえないからな!」

「浮竹のことじゃないよ〜」

「浮竹は常に調子悪い方だろう。某の方は絶好調だ。総隊長にも良くしてもらっている」

 

 煎餅を手で割りながら胸を張った。なるほど血色もよく艶々とした髪やしっとりとした唇はとても健康的な生活を送っているように見える。というか手入れをしっかりしているのが伺えた。以前の鹿取は総髪で誤魔化して見かけの体裁は整えていたが、髪は荒れ放題であった。

 

「いやあ不思議なものだねぇ背は僕たちの中で一番低かったのに一番山みたいって形容するのが似合ってたんだけど。座布団にすっぽりおさまって座れちゃうんだから」

 

 二人の前に居る鹿取は今までも使っていた専用の座布団に座っているのだが、明らかにサイズが大きい。それでも姿違えど、所作からはこれは鹿取であるという確信が二人は得られてうんうんと無言で頷いた。

 

「これだから伊達男と病弱はもっと鍛えろ。華奢となったとは言え某、お前らに腕相撲で負ける気がしないな」

「いや華奢ではないぞ! 今の鹿取はないすばでぃと言う奴だ!」

 

 京楽と鹿取がお茶を吹き出した。浮竹の口から予想外の言葉が飛んできた為だ。

 

「え、そこ触れちゃうの? ボクその辺りはスルーしようかと思ってたんだけれど」

「京楽からそう言う発言されるとは思ってたが浮竹から言われるとは思わなかったぞ」

「いや二人とも。俺も自分で驚いている。枯れているものだと思っていたが、何故だか鹿取の胸を揉んでみたい」

 

 なぜか胸を叩いて清々しいいい顔表情をしている浮竹。京楽と鹿取は顎を落としていた。

 

「いやぶっちゃけすぎだ浮竹どうした⁉︎ いやまあ、昔から世話になってるし減るもんでもないから構わないが……」

 

 修練中に鎌風に触られすぎて感覚が麻痺している。そんな鹿取の肩を掴んで真剣な顔で浮竹が口を開く。

 

「ダメだ、体は大事にしなさい」

「どっちだよ‼︎」

「ちょっとこのお茶お酒でも入ってるのかい?」

 

 京楽が腹を抱えて蹲ってしまった。笑死にしそうになっているのだ。

 しばらくして収まったのかフーと涙目をこすりながらお茶をすすった。

 

「ボクもリサちゃんから"隊長の知り合いの三席の姪に会った"なんて胡散臭い話と聞いてはいたけど本人とは思わなかったなあ。どうしてそうなっちゃったの?」

「それは言えん。四十六室から直々に機密指定だ。知りたくば総隊長に直訴してくれ」

「それは恐ろしいなぁ。聞くに聞けないじゃないか」

 

 それからしばらくの間和気藹々と茶会を続け、時間もいい頃合いとなった。

 

「鹿取、君の目標は変わっていないのかい?」

「ああ、某の目標は変わらず。総隊長を超え隠居させてやる事だ」

「遠い目標だ。でも鹿取ならきっと為せると俺は信じている。先生もそれを心待ちにしているはずだ」

 

 三人が立ち上がり、二人が羽織を纏う。もうここからは同期ではなく、隊長と三席の関係だ。

 

「京楽隊長、浮竹隊長、本日はありがとうございました」

「またやろうよ。まあボク達みんな忙しいから年がら年中と言う訳にはいかないけど」

「ああそうだな、またやろう」

 

 海燕が風呂敷を二つ携えて京楽と鹿取に渡す。

 

「お土産だ。是非隊の人達で食べてくれ」

「リサちゃん喜ぶかな?」

「ありがとうございます。浮竹隊長」

 

 京楽は微笑んで、鹿取は深々と礼をし、雨乾堂を後にする。浮竹は去っていく二人を名残惜しそうに海燕と共に隊舎の出入り口まで見送った。

 今後この場にいた者たちで茶会が行われる事は、二度となかった。

 

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