鬼畜提督与作   作:コングK

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雪風「あれ、しれえ。どうして今回は二話もあるんでしょう」
与作「前から言ってるだろ。この作者シリアスノリが嫌なんだよ。話が進まねえから書いているんだが暗い話が続くと反動で明るい話が書きたくなるらしいぜ。ノリノリで書いてたら前話とほぼ一緒の字数でびっくらこいたらしい」
雪風「そう言えば、知ってました、しれえ。この小説って実は丸二年続いているみたいですよ!」
与作「そうなんだよなあ。なんだかわからねえけど続いているよなあ。途中何度も終わるかと思ったが。ごきぶりみてえなしぶとさだぜ」
雪風「ごきぶりを師匠と言っていたしれえに言われたくありません! 二年間どうもありがとうございます」
与作「度々止まるだろうが、まあ気長に付き合ってやってくれ。そろそろ終わるつもりらしいから」



番外編Ⅶ  「鬼畜提督の夏休み」

江ノ島鎮守府にある会議室に集まったのは駆逐艦ズの面々。

ご丁寧に会議室の扉には駆逐艦以外お断りと書かれた張り紙がされている。

 

会議を仕切る気満々のグレカーレが開口一番机を叩く。

「テートクが海に連れてってくれな~い!」

「はあ!? いや、あんた。海なら近くにあるじゃない」

常識人のジョンストンが返すもグレカーレはふるふると首を振る。

「あたしが言っているのは、せっかくの夏休みなんだからどこかに連れてってことなの」

「それは難しい問題だよ。与作は基本単独行動を好むからね。この間も僕と雪風が探し廻って大変だったんだ」

「はい! 時雨ちゃんとあちこち追いかけてようやくしれえを捕まえました!」

「そうなのよねえ。テートク、あたしが何か頼もうとすると絶対逃げるの」

「普段の行いが悪いからでしょ」

「これ、ジョンストン! 言い過ぎよ」

 姉であるフレッチャーが窘める。

 

「あたしは普通に接しているだけなんだけどなあ。大体テートク、露骨に差別するんだもん。フレッチャーとあたし達に対する態度が違い過ぎ!」

「え!? そ、そうでしょうか。私はあまり気づきませんが」

「それは雪風も思います! 二言目にはがきんちょ呼ばわりされますが、フレッチャーさんが言われているのを見たことがありません!」

「ああ、うん。多分それは普段のフレッチャーの勤務態度にあるんじゃないかな。僕が見る限り、ジョンストンだって言われていないし」

「あら、私はダーリンから色々言われているわよ。口から先に生まれたとか、英国産全自動がきんちょスピーカーとか、壊れたジュークボックスとかもう散々よ!」

「それはあんたがいけないんでしょうが。いつになったらミュート機能が実装されるのよ」

「そんな予定はないわね」

「それじゃあ、ヨサクが嫌がるのも無理ないんじゃない?」

「駄目駄目! 敗北の歴史に終止符を打つのよ!!」

再度だんと机を叩いたグレカーレが、後ろのホワイトボードにおもむろに書き出す。

「ここまで話して気づいたことがあるの。私達駆逐艦の中でも比較的テートクが話を聞いてくれそうな子とのっけっから駄目な子といる訳よ」

OK→フレッチャー ジョンストン

NG→あたし 雪風 ジャーヴィス

「あれ、僕は?」

「時雨はどっちかって言うとNGなんだけど、その時々で変わっているみたいなのよねえ」

「なんだい、それ。いや、間違っていないけど」

「ジャパニーズ腐れ縁ってやつか。ジャーヴィスと私みたいね」

「あら。私達は名コンビじゃない」

「どの口が言うのよ、全く。それで、そのOKとNGがどうかしたの?」

 

「これに駆逐艦以外の艦娘を入れるとこうなるわ」

 

OK→フレッチャー ジョンストン 北上 二式大艇 

NG→あたし 雪風 ジャーヴィス 

微妙→時雨  秋津洲 アトランタ

 

『異議あり!』

「あれ、どうして秋津洲さんと二式大艇ちゃんが別枠なんですか」

「どう考えてもそうでしょうよ」

「そうだね。異論があるとすれば、僕が微妙枠なくらいかな」

『違います! そこじゃありません!!』

「あら、でもおひとり足りなくありませんか」

『そうです。なんで、私の名前がないんですか!!』

「そうよ。神鷹がいないじゃない」

『ちょっと、ジョンストンさん! というか皆さん、どうして私を無視するんですか!』

机の上で地団太を踏む某妖精女王にグレカーレがため息をつく。

「あのねえ、もんぷち。扉の張り紙を無視して入ってきた奴の話を聞くわけないでしょうが!」

『何を言っているんです、グレカーレさん。この鎮守府最古参の私に行ってはいけない場所などありません! あんたっちゃぶるふぇありーです』

「アンタッチャブルって、あんたねえ」

 傍若無人な理屈を振りかざす妖精女王に付き合いの短いジョンストンも呆れ顔になる。

「あのさあ、もんぷち。うちの鎮守府の信頼度ランキングがあったら君はぶっちぎりだよ」

『そんな、時雨さん。元ペア艦の時雨さんを差し置いて私が一番などと恥ずかしいですよ。まあ当然のことですが』

「「「え?」」」

『え? ぶっちぎり一位ってことですよね』

「はあああ!? どこをどう考えたらそうなるのよ。最下位に決まっているでしょ!」

『あり得ません。この鎮守府の役に立つ憎い奴ランキング一位のこの私が!』

「僕は初めて聞くんだけど。誰が考えたのさ、そのランキング」

『もちろん私調べです』

「ええと、ご自分でランキングを作ったのですか……」

「面白いわ! 艤装妖精脅迫事件や金平糖盗難事件犯人がこうも堂々としているなんて!」

『何をまたバカなことを! 任せなさい!! 数々の手柄を立てた私がお願いすれば単純な提督なんぞイチコロです!』

憤慨しながらふよふよと出ていくもんぷちに不安を隠せない面々。

 

「ま、まあいいわ。もんぷちは放っておきましょう。どうせテートクに逆さづりにされるだろうから」

 そこはかとなく酷い事を言いながらもとにかく仕切り直しとばかりにグレカーレは先ほど発言のあった神鷹の名前をホワイトボードに付け加える。

 

確実→神鷹

「確実!? 絶対ってことですか?」

 雪風の反応にくっくっくっくと己の提督ばりの笑みを浮かべるグレカーレ。

「ええ。神鷹こそ今回の作戦の要よ。あたしがこの鎮守府で一番テートクが甘いと見ている神鷹に頼んでテートクをバカンスに誘ってもらうわ!」

「ええっ!? あの神鷹さんに?」

「厳しいんじゃないかな。彼女、そういうの苦手そうだよ」

「あら、貴方達はいいの? けっとか、ふんとか言われて邪険にされたまま過ごす夏休み。休日になるとメモが残されてひっそりとした執務室。あたしは嫌よ!」

「それはそうですが……。でも、神鷹さんに御迷惑をおかけしては……」

 神鷹に負担をかけてはと眉を顰める聖母フレッチャーにグレカーレはそっと耳打ちする。

「思い浮かべて御覧なさい。青い空、白い海。浜辺でくつろぐ提督に、ジュースを手渡し、その隣に座る。そっと距離を縮める貴方」

「そ、それは……素敵です……」

 ほうと小さく息を吐くフレッチャー。

「ちょ、ちょっと姉さん!?」

「ジョンストンだってそうよ。貴方、アイスクリームが大好きって言ってたじゃない。この作戦が成功したらイタリアのあたしの姉妹艦に頼んで最高級のジェラートを送ってもらうわよ!」

「そ、そこまで言うなら仕方ないわね。私もヨサクとバカンスを過ごしてみたいし」

「決まりね。早速神鷹に依頼し、テートクをバカンスに誘う手筈を整えましょう! 名付けてオペレーションてばさき始動よ!」

「なんだい、その妙なネーミング」

「てはテートク、ばはバカンス、さは誘う、きは今日よ!」

「成程。この間提督に教えていただいたどどいつみたいですね!」

「いやいやいや。姉さん。感心するようなものじゃないから」

がやがやわーわーと騒ぎながら、駆逐艦ズは神鷹を探しに行くのだった。

 

                

                ⚓

ばっどさま~ばけ~しょ~ん。

 

いい休みを送れているかあ。休みは大事だぜ。日本人は働き過ぎだからな。

働きアリだってたまには休息が必要よ。

 

巷では夏季兵装がどうのと言ってやがるみてえだが、がきんちょばっかりのうちには何の関係もねえ。一度グレカーレの馬鹿が海に行こうと誘ってきやがったが、お前に目の前にあるのは何だ、ただの水たまりかと返してやったぜ。大体それぞれ交代で夏休みをとっていいと言ってやったのに、どうしてどいつもこいつもまとわりついてきやがるんだ。夏休みくらい俺様の保父さん業も休みに決まっているだろうが。

 

え? 休みに何をやるんだって? そんなもんお気に入りのエロゲーや積んであるゲームの消化に決まってんだろうがよ。減らさねえとまた溜まるからな。何年も待ち望んでいた大作ゲームなんだが、最終作と聞いて寝かせてるんだよなあ。分かる奴には分かるかもしれねえが、そいつをやっちまったらもう終わりかと思うと出来ねえ訳よ。そんでもって寝かせたまんまでワインみたいになっちまってる奴を開けるわけさ。時々メーカーそのものが解散していたりして、サポートが終了しているなんてこともざらにあるがな。

 

 いずれ劣らぬ名作ばかり。さて、どいつをやろうかとパッケージを見比べていたら、もんぷちの野郎が来やがった。

 

『提督、海と山どっちがいいですか』

「何だ、そりゃ。性格診断か? そんなもんどっちも嫌だに決まってんだろうが」

海なんぞ見飽きているし、山にしたって俺様からすりゃキャンプとかハイキングするところじゃなくて、野宿するところだ。

 

『そんなあ。どっちかに決めてくださいよ』

「強いて言うなら旅行しねえ、だな。何を好き好んで暑い中わざわざ汚い海に行ったり、山を歩いたりしなきゃならねんだ。ただのもの好きじゃねえか」

 そんなことするよりも冷房ががんがんにきいた部屋で寝転がりながらゲームやっている方がよほどいいぜ。

『そんなこと言っているとあっという間に老けますよ。ただでさえ悪人顔なのに目も当てられなくなったらどうするんです!』

「やかましい! そんなに言うならお前だけ海に放りこんでやってもいいんだぞ!」

 ふよふよと飛ぶもんぷちを捕まえ、吊るし上げる。

『ちょ、ちょっと、提督!! 愛情表現が過剰すぎますよ!』

 お前なあ。これのどこが愛情なんだよ。ぽじてぃぶ過ぎんだろ。どちらかというと罰だ。

『はて、罰になるようなことをした覚えがありませんが……』

「てめえの脳みそはどうなってやがんだ。まさか上書きばかりで保存できねえとか言わねえよな。大湊からついてきやがった彩雲の妖精連中をだまくらかして優雅に空の散歩にしけこんでやがったのを俺様が知らねえと思っているのか!」

『ぎくっ。あ、あれはあいつらが悪いんですよ! 『女王、俺たちこの辺がよく分からないんで

地図とか貸してもらえますか』などとぬかすので、『地図なんかよりも私の方が正確です!』と案内を買って出てやっただけなんです!』

「その割にはぺらぺらとてめえの武勇伝を話して聞かせて、何をしに行ったか分からないから地図が欲しいとの陳情が上がってるんだがなあ。ええ、おい」

『見解の相違です。私のトークの中に散りばめられた貴重な情報を聞き取れない奴らが悪いのですよ!』

「なにがトークだ、ぼけが。与太話ばかりしているんじゃねえ。俺様の貴重な休みを消費させるな」

 ぽんと窓の外に放り投げてやる。あいつのことだ、平気だろう。この間金太郎の熊と死合ったことがあるとかほざいてやがったからな。

 

 ぶつくさと文句を言っていると、何やら控えめなノックの音が聞こえる。

 見るとやってきたのは神鷹の奴だ。

「あ、あの提督。Guten Morgen、おはようございます」

「ああ。もうとっくに昼だけどな」

「ご、ごめんなさい。Guten Tag、こんにちはでしたね」

恐縮しながら話す神鷹。

おはようでもこんにちはでもどうでもいいんだがよ。お前のその相変わらずおどおどしているのはどうにかならねえのかよ、全く。

「あの、これはその。別な緊張といいますか、はい」

「緊張だあ!? 何だ、何か言いたいことでもあるのか?」

 

                  ⚓

 

オペレーションてばさきと書かれた張り紙がしてある会議室。

こっそり提督室の窓から様子を伺う零式水上観測機(妖精撮影班付き)から送られてきた映像に、にんまりと笑みを浮かべるグレカーレ。

『何か言いたいことでもあるのか?』

「ほれ、見て見なさいよ! テートクが聞いてくるなんてあたしにはぜ~ったいないわ!」

「しっ、静かに。与作の反応は悪くないね」

『あ、あの提督、その』

もじもじとする神鷹にため息をつく与作。

「あら、ダーリンを前に随分と緊張しているわね。私が行ってほぐしてあげようかしら」

「よしなさいよ。あんたが行くとろくでもないことにしかならないから」

「ちょっと、ジョンストン。どういうことよ」

「そのままの意味なんだけど……」

「ちょっと、お二人さん黙って!」

「しれえに神鷹さんが話しかけるみたいです!」

 

『い、いい天気ですね』

『ああん? 少しくらい雨が降ってくれねえと花壇の水やりが大変でしょうがないだろうよ。二式大艇の野郎が率先してやってくれているが甘える訳にもいかねえ』

『そ、そうですね。私もお手伝いします。あ、そう言えば提督がこの間言われていたスイカとメロンがなっていました』

『ほお! そいつはいい情報だ。スイカとメロンは自然に実がなるのが難しいからな。人工授粉させようと思ってたんだが忙しくて忘れちまってよお』

 

「いい流れよ、神鷹! そこでスイカ割りでもしよう。そのために海に行こうとなるのね!」

『スイカと言えば、スイカ『スイカ割りなんぞしねえぞ、せっかく育てた奴だからな』あ、そ、そうですよね。大切に育てたものを棒で叩くのはよくありません。すいません……』

「駄目じゃない! 神鷹さん委縮しちゃってるわよ」

「妙な所で常識人な所があるのよねえ、ダーリンって」

 

『それで、なんだ。スイカやメロンが食べてえならもう少し待ってろ。それでいいか? 俺様はこれから重大な任務があるんだ。特になければ昼休みはもうおしまいだろ。戻って仕事しろ』

「これは流れが不味いね。早くゲームがしたくて仕方がないんだよ」

「そうですね。こういう状態のしれえは雪風達ならしっしと追い払ってます。神鷹さんだからこの程度で済んでますが」

 

 すうはあと呼吸を整え、決意の眼差しを向ける神鷹。

『いえ、スイカが食べたいのではなくて。提督、夏のご予定は何かありますか?』

「キターーーーッ! Grazie、神鷹!!」

「落ち着いて。与作の反応を見ないと」

 

『予定だあ? 俺様の夏の予定なんぞ聞いてどうすんだ』

『あの、よろしければみんなでプールにでも行ってはどうかと思いまして……』

 震えながらも言いたいことを伝える神鷹に会議室の一同は感激する。

『プールだあ? そんなとこ行ってどうするんだ』

『皆さん水着を買ったそうで。あ、あの私も』

「そうよ。テートクに見せつけるつもりで際どいの買ったんだから!」

「そういや姉さんも随分と張り切ってた気がする」

「ジョ、ジョンストン! あれはその、提督が好みかなと……」

 

『水着だと? がきんちょどもが背伸びしやがって。この世で最も優れた水着はスクール水着って言葉を知らねえのか』

『え!? そ、そうなんですか』

『俺様愛読の漫画で言ってたぜ。ある種の連中には刺さるだろうよ』

「え!? 何それ。せっかく新しいの買ったのに!」

「ジョンストン。スクール水着ってどこで買えるのかしら。艦娘養成学校?」

「いやいやいや。そうすぐに行動しようとしないで、姉さん」

がやがやとうるさい会議室の面々を尻目に話が進む提督室の二人。

 

『海が駄目ならどこかお出かけしませんか、皆さんで』

『ああん? お前にしては粘りやがるな。出かけるって言ったってお前。遊園地なんぞ混むだけだし、観光地なんざ行きたくもねえ。おうそうだ。そんなに出かけたいならラーメン屋か公園になら連れてってやってもいいぜ』

「どっちも別にみんなで行く必要ないじゃん! 駄目だ、こりゃ。オペレーションてばさきは失敗よ~!!」

「待ってください! 神鷹さんはまだあきらめていません。雪風には分かります!」

 どれどれとモニターの前に集まる一同。

 

『あ、あの提督。お祭り、なんかはいかがでしょう』

『祭り? ああそういや提督になる前は時々行ったな』

『実はその、鳳翔さんから良かったらみんなの分の浴衣を用意したからと送りたいとお電話がありまして……』

『はあ!? 何でばばあがお前らの浴衣を用意するんだよ。あのばばあ、お前らを体のいい孫扱いしてねえか』

『せっかくいただくのに着る機会がないと申し訳ないと、その、思いまして……』

『そんなもんいらねえと突っ返しゃいいじゃねえか。ってか無理か。あのばばあ、ああ見えてえらい強引だからな。俺様の話も聞かねえのにお前じゃ無理だろう』

はあとため息をつく与作。さすがに鳳翔には頭が上がらぬらしい。

『仕方ねえ。それじゃあ許可してやろう。面倒くせえがそうしないとばばあがうるさくてかなわねえ』

『本当ですか! 提督、Danke! ありがとうございます!』

 

「奇跡が起きたわ!! 完全勝利Sよ!」

「雪風もびっくりです! 本当にしれえは神鷹さんには甘いんですね!」

「まさかヨサクがいいというとはね……。驚きだよ」

「Japanese traditional clothesね。楽しみ!」

 

沸き立つ会議室の面々。だが、次の瞬間。

『おい、がきんちょども! てめえら見ているな!』

 

「「「え!?」」」

「う、嘘。何で分かるのよ」

「ジョンストンちゃん。その気持ちは分かりますが、しれえはそういう人なんです」

「いや、ごめん雪風。全然分からない。姉さんは理解できるの?」

「提督がすごい方だということよ、ジョンストン」

「いや、その理解はどうかと思うわよ!

 

『ふん。ぬかったな。俺様の円の範囲は一km四方よ。逃れられると思ってんのか。変なもん飛ばしやがって、どうせグレカーレのあほの差し金だろうよ!』

「な、なんであたしがやったって分かるのよ」

『今お前は何で分かるかって面をしてやがるな。教えてやろう、大魔王からは逃れられねえのよ!』

「また与作は漫画の台詞を適当に……」

『いいか、がきんちょども。ばばあに免じて夏祭りには連れてってやろう。だが、俺様は一人で廻るからな! 後グレカーレ。お前は後でぐり五の刑に処す』

「なんであたしばっかり!」

「ええっ!? そんなのしれえのいつものお買い物の時と変わらないじゃないですか!」

 

「あ、あの提督。お祭り、ありがとうございます。嬉しいです」

うるさい零式水上観測機を追っ払う俺様に礼を述べる神鷹。

お前なあ。いい加減人が良すぎるのもどうにかしろよ。あいつらが図に乗るから。

「すいません……。提督のご迷惑とは思ったのですが、みんなでその、どこかへお出かけしたくて」

「夏のお出かけってえと俺様別の祭りしか思い浮かばねえからな」

「別? 他でやっているお祭りのことですか?」

「ああ。夏と冬で開催される奴でな。世界中から一騎当千の猛者が一堂に会する集いよ」

「面白そうですね……」

 

あっ。何だ、こいつ。じっと俺様の方を興味ありますなんて目で見やがって。

お前いつの間にそんなスキル覚えたんだよ。

 

「勘弁しろ。お前等が行ったら確実に大騒ぎになるぞ」

「そうですか……」

そう言いながら無言で行きたそうなオーラを出す神鷹。お前、全然諦めてないじゃねえか。

織田にでも連れてってもらえ、全く。戦場に女子供は足手まといなんだよ。

第一あんな所にお前が行ったら、飢えた野獣の群れにステーキ肉を放り込むようなもんだぞ。

 

「残念です」

しょんぼりとうなだれる神鷹。こいつのこれなんだよなあ、俺様が苦手なの。

グレカーレや雪風と違って何にも言わねえからやり辛いったらありゃしねえ。

少しでも生意気なことを言って来たらびしりと返すんだが。

 

『提督、私の分の浴衣もお願いします!』

追っ払った零式水上観測機が戻って来たと思ったらもんぷちの野郎が乗ってやがった。

お前の分の浴衣だあ? 知るか! 里香ちゃん人形のでも着てろ!!

               

 




登場用語紹介

円…………………おやぢの有効範囲は一km。某漫画のキメラアントには負ける。
ランキング………役に立つ憎い奴ランキング一位はもんぷち、二位は二式大艇とのこと。
某漫画……………鎮守府に置かれた目安箱が主人公の漫画。
スクール水着……選ばれし潜水艦しか身に着けることを許されぬ決戦兵器ともっぱらの噂。
一騎当千の猛者…一部の隙もない所作、訓練を受けずとも整然と列に並ぶ歴戦の勇士たち。
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