鬼畜提督与作   作:コングK

122 / 129
相方が夏コミ出ると聞き、こちらも奮起。あいつすげえなあ。やる気があって。久しぶりの投稿なので、色々あると思います。

もんぷち『全宇宙三兆人の私のファンの皆さん! お待たせしました! サボってばかりの作者に命じてようやく書かせましたよ。私のファンクラブは随時募集してますから、入会したい方は言ってください。会員証を送りますから!』
艤装妖精『ちょっと、女王。なんです、これ。受け取り拒否で山ほど郵便が返ってきているんですけどって、崩れる! うわあああ!』
もんぷち『何と! 私のありがたい会員証を何だと思っているんですか! 根負けして受け取るまで送りつけてやりましょう!』
与作「お前はマルチ商法のやり手か! 少しは自重しろ!」


第八十話  「眠る妖精」

ジョンストンの回想

 

「もんぷちが鍵!? 嘘でしょ」

大口を開けてテーブルの上ですやすやと眠るだらしない顔の妖精を見ながら、思わず私はそうつぶやかずにはいられなかった。

 妖精仲間にマウントをとったり、盗み食いを発見され逆さ吊りにされたり。

 常に我が鎮守府内でなにがしかのもめ事を引き起こす、トラブル製造機。

 大湊での出会いも衝撃的だった、江ノ島鎮守府最古参の自称妖精女王に対する私の印象は、それが全てだった。

 

「その妖精が鍵? 馬鹿も休み休み言うデース」

「どうしてかしら?」

「建造ドックを扱えるのは工廠妖精の筈ネ。その子はとてもそうは見えないヨ」

 金剛の言葉に我が意を得たりと、にっこりとジャーヴィスは微笑んだ。

「あら、そう。それならこの子は何の妖精に見える?」

「何の、ですか……」

 榛名が眉根を寄せた。

「見た目だけでは判断できかねますね。恰好的には羅針盤妖精に見えますが、このようなタイプはこの霧島も見たことがありません」

「工廠妖精でも羅針盤妖精でもない。ましてや、艤装の妖精でもない。何の妖精と言われると困る正体不明の存在。それが、この子、もんぷちよ!」

「本人は妖精女王だと言い張っているがな」

「妖精女王!? その子が?」

「その存在を耳にしたことはありますが、まさか本当にいたとは……」

「それで、その妖精女王が何だと言うんです」

 焦った様子を見せる比叡に対し、ジャーヴィスは顎に手をあて答えた。。

「そうねえ、色で例えましょうか」

「色!? なんでよ」

 突然妙なことを言い出す英国駆逐艦に、私は思い切りツッコミを入れた。どうしてこう名探偵という奴は話を変な方向にもっていこうとするのだろう。

「ええ、色。私達が赤だとして深海棲艦は青。そうすると、私達が使っている建造ドックは赤の妖精でなければ使えない。その反対も同じことよね」

「成程。色とは適性のことですか。確かにそれはそうです。我々艦娘が深海棲艦の艤装を扱えないのと同じこと。似て非なるものですから」

 

 艦娘と深海棲艦の体組成はほぼ同じ。それなのに互いの艤装を使うことはできない。人間たちも頭を悩ませたに違いない。様々な意見がある中で合衆国の艦娘学校では属性が違うという意見を採用していた。元来艤装の基となる資材には属性は存在せず、艤装を形作る際にそれぞれの使用するドックによって正負どちらかの属性に定められる。正の属性である艦娘と、負の属性である深海棲艦では属性が違うため、互いの艤装を扱うことはできないのだと。

 

「そうね、霧島の言う通りよ。もちろん、赤の中にも色々な種類がある。この国の色で言えば、紅、朱色、茜色。赤系統でもその色味はそれぞれ違う。少しでも色味が違ったら適性がないということでその仕事はできない」

「そんなものは当たり前です。艦娘という大きなくくりがあっても私達戦艦と貴方達駆逐艦では違う。同じものとして考えることはナンセンスでしょう」

「でも、そうじゃない存在がいるとしたら?」

 ジャーヴィスが指差す先に皆の視線が集まる。そこには相も変わらず呑気に眠りこけるもんぷちの姿。

「彼女こそ、その例外。最初からとんでもないspecialな妖精だと思っていたわ。だってこの子、大湊の時に何をしたと思う? 偵察機に乗って現れたかと思えば、艤装の中に入り、あげくに艦娘の応急修理までしてのけたのよ!」

 ジャーヴィスの言葉に金剛型の4姉妹は皆一様に息を呑んだ。

 驚いていなかったのは、私達江ノ島鎮守府の面々だけだ。

「え? しれえ、どうして皆さんそんなに驚いているんですかね」

 呑気にヨサクを見る雪風。そんな彼女に対し、あり得ないといった風に霧島は首を振った。

「先ほどの話を聞いていなかったのですか? 通常妖精はその適性のある仕事しかできないのです。それなのに異なる仕事をしてのけたということはその妖精が様々な仕事の適性を持っているということに他なりません。そんな妖精は世界のどこにもいませんよ!」

「ええっ!?」

 今更ながらに驚く雪風。

 声を出さずとも私も内心大いに混乱していた。普段の素行からとんでもない妖精という印象しかなかったもんぷちだが、確かに霧島の言うように常軌を逸した行動をしている。そこも含めて彼女だと思っていたが、改めて冷静にその存在について考えると、明らかに特別な妖精なことは間違いない事実だろう。どうにも認めるのは釈然としないものがあるのだが。

「そうなんだよなあ。こいつ、実は案外使えるんだけどよぉ。普段のやらかしが多すぎて全く気付かなかったんだよ」

 ヨサクの言葉は私や雪風の気持ちを代弁するものだった。黙って何もしなければ皆の尊敬を勝ち得るような存在であるのに、言うこと為すことひたすら残念な存在であることに、当人だけが気づいていないのだから。

 

「紅色も朱色も茜色も赤系統の色。同じ赤というくくりで扱えるのか。彼女の特性に気が付いた時に私は閃いたわ。この子、本当に赤の属性だけしか使えないのかって」

「あんた何言っているのよ……」

 私は思わず言葉を洩らした。艦娘側の妖精である以上、赤系統のものしか使えないに決まっている。

「すりぬけくんは深海棲艦のパーツを使っている。赤の建造ドックに青のパーツを混ぜたら、その色はどうなるかしら。赤? 青? いいえ、紫になる筈よ。紫の属性の建造ドックなんて普通の妖精は使えない。それこそ様々な色になれるワイルドカードのような妖精でもいない限り!」

「まさかそんな……。この妖精は深海妖精の属性まであると言うのですか。それゆえに成功したと」

 すやすやと眠るもんぷちに信じられないと言った顔を見せる榛名。

「信じられないのも無理はないわ。私もこの結論に至った時にあまりにも飛躍した考えだと思ったもの。でも、事実から推察するにそれしか考えられない。正も負も含めてあらゆる属性をその身に宿している彼女がいたからこそ、すりぬけくんは動き、ダーリンは建造に成功したの」

「嘘でしょ……」

 思わず私は呟いた。確かに妙な妖精だと思っていたが、まさか全ての属性を持っている規格外の妖精であるとは思い至らなかった。

 

「私は最初から彼女が怪しいと思っていたわ」

 ジャーヴィスは帽子の中から取り出したメモをぺらぺらとめくる。

「今回の一件には彼女は最初から関わっているのだもの。金剛にとって不俱戴天の仇であるあのドックを直したのは、そこにいる彼女ですもの」

「な……」

榛名と霧島が思わず言葉を失い、比叡はごくりと唾を呑み込んだ。

「何デスって!!」

 片手で首元を抑えながら、金剛は荒々しくテーブルを叩く。ティーカップが横倒しになり、その手に紅茶がかかるのも構わず、彼女は続けた。

「そこにいる、そいつが、そいつが全ての元凶なのデスか!」

「お姉さま!」

 さっと席を立った比叡が取り出したハンカチでその手を拭うも、金剛は止まらない。

「余計なことを!」

 ここまで怒りに染まった目があっただろうか。彼女にとって、今やジャーヴィスよりももんぷちは憎い相手であったろう。

「お姉さま、お気を静めてください」

 比叡は金剛の背中に手を置き、優しく撫でる。

「まだ、全てを聞き終えてはいません」

 ぐっと拳を握り、金剛は息を荒げた。

「全て? これ以上何を知れと!」

「そう、先ほどお約束されました」

 静かにそう告げた比叡の顔を金剛は意外そうに見つめると、深いため息をついた。

「OK。貴方の言う通りネ、比叡。続けるといいよ。真実を聞く約束だったヨ」

 その様子を見て、榛名と霧島が安堵の表情を浮かべる。

「Thank you」

 ジャーヴィスが片手を挙げて礼を述べるが、

「貴方のためではありません」

 比叡はそっぽを向いてそれに応えようとはしなかった。

 

「長い間破壊され放置されたままだったすりぬけくん。そして、能瀬提督を庇うために敢えて深海棲艦の攻撃に見せかけて破壊され、放置されたままの江ノ島鎮守府。隙間風だらけの鎮守府に嫌気が差して新米提督が苦情でも入れようものならいくらでも代わりの場所に送り、江ノ島鎮守府自体を使えないという名目で閉鎖する。万が一ドックが復活したとしても使えない建造ドックであることは明白。交換の要請が出た段階でそれに応じれば、自然にすりぬけくんを手中に収め、闇に葬ることができる。恐らく金剛はそう考えていたのでしょう。そして、それは順調に進んでいた筈だった。ダーリンが江ノ島鎮守府に着任するまでは」

 

「おいおい。まるで俺様が悪者みたいじゃねえか!」

 ヨサクからの抗議にジャーヴィスは肩をすくめてみせた。

「あら、金剛にとってはそうよ。だってダーリンたら着任して文句を言うのかと思ったら、鎮守府自体を再生しちゃってそのまま居座るんですもの。おまけに頭痛の種である建造ドックまで再生して普通に使ってあり得ない艦娘を建造して話題になっちゃうし。すりぬけくんの存在を隠しておきたかった金剛にとってはさぞ憎たらしかったことでしょうね」

「ふん。それで俺様の鎮守府にはがきんちょばっかりだったのか」

「どういうこと?」

 私の問いにヨサクはふんと鼻を鳴らした。

「いくら要請しても明石も間宮も伊良湖も夕張さえ来ねえ。けっ。嫌がらせをしてりゃそのうち俺様が泣きを入れるとでも思ってたんだろ」

「まさか、秋津洲や北上を代わりに使うなんて思ってもみなかったヨ。あてが外れたネ」

「江ノ島鎮守府がすりぬけくんを稼働させ、謎のドックに注目が集まっている以上、いつかは自分や能瀬提督との関係を知られてしまうかもしれない。焦った金剛はダーリン達を鎮守府から引き離しその間にすりぬけくんを奪おうと考えた」

「成程! そのために大湊に演習に行かせたんですね!」

 雪風がびっとジャーヴィスを指差すと、名探偵は満足そうに頷いた。

「あれ、でもそうだとおかしいですよ。確かあの時時雨ちゃんと北上さんは来るなって書かれていましたよね、しれえ」

「ああ、そうだな。戦力を分散させるならあいつらを引き離す方が面倒がなくていい筈だぜ、名探偵」

「理屈ではそうね。でもね、ダーリン。人間と同じように私達艦娘も理屈で動いているんじゃないわ。感情で動いているの。偉大なる七隻、原初の艦娘の生き残り。金剛にとっては目の敵だった相手を残したのは嫌がらせでしょうね」

「嫌がらせ?」

「ええ。人質をとり、抵抗できなくして思うさま自分の怒りをぶつける。世間で偉大だともてはやされる彼女達に対して、見向きもされなかった彼女からのささやかな仕返しよ」

 あの襲撃事件のどこがささやかなのかと言いかけて私は口を噤んだ。先程から再三感じている始まりの提督と原初の艦娘に対する金剛の憎しみの程度からすれば、確かにそれは些細なものなのかもしれない。

 

 室内を移動していたジャーヴィスはすたすたと金剛の前に来ると、スカートの端をつまみ、優雅に頭を下げた。

「ご清聴ありがとう。これが今回起きた事件の真実。そして、すりぬけくんという謎のドックの真実に対する私の推理よ。採点をお願いするわ、金剛。いかがかしら」

 

 

 




登場人物紹介

ジャーヴィス……探偵
ジョンストン……その助手
雪風………………その同僚
与作………………その提督
もんぷち…………ZZZZZZZZ

登場用語紹介
もんぷちファンクラブ会員証
「どこかから謎に届けられる誰のだかよく分からない会員証。大きさは小指の爪くらいでみみずがのたくったような字で何か書かれている。誰かの悪ふざけかと受け取りを拒否するとどんどんと届くため、呪いの手紙よりも始末が悪いと言われている。届いた瞬間に自動的に会員となったとカウントされるため、マルチ商法よりあくどいともっぱらの噂。現在、自ら了承して会員になったのは正式には二名。(フレッチャーと二式大艇)」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。