鬼畜提督与作   作:コングK

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前回がシリアスでしたので、今回はいつもの回となります。相変わらず駆逐を出すと、勝手にしゃべり始めて困ります。


第二十話 「矜持」

べーりーばっどいぶにんぐ。

 

フレッチャー誘拐未遂事件の後、まず俺様が考えたのは大本営の大淀への報告と、ロリコン織田からの情報収集だ。

 

「はあ?在日米軍がフレッチャーを誘拐しようとした?」

「そうでさあ。証拠の拳銃も抑えてありますぜ。仮にも鎮守府に所属している駆逐艦を勝手に連れ去ろうとするの、こいつぁ、かなりまずいんじゃないですかねえ。」

「いやいや、普通にまずいですよ。って、な、長門補佐官、ちょっと!」

「鬼頭提督、話はわかった。どうする?いつ殴り込むんだ?すぐ殴り込むなら、ちょっと変装が必要なので30分程時間が欲しいのだが。」

 

おいおい。なんだ、こいつ。仮にも海軍の要職にいる奴がいきなり戦闘モードだぞ!駆逐艦大好きゴリラに用はねえ。

 

「ちょっと!!落ち着いてください!みょ、妙高さん、すいませんが補佐官をどうにかしてくれませんか。」

がたんごとん!!おいおい。なんだよ、すごい物音が受話器越しに聴こえやがるが、大丈夫なのか?

 

「問題ありません。興奮気味の補佐官に少々落ち着いていただいているだけです。それで、話を戻しますが、在日米軍の方にはこちらの方からも色々と事実関係の確認をしていきます。鬼頭提督はどうか軽挙妄動を慎んでください。」

 

うわっ。この大淀鋭いねえ。その辺のおやぢを装ってちょいと乗り込もうかと思っていたんだが、ばれちまったか。

 

「重ねてお願いします。以前お話ししたように、海軍も一枚岩ではありません。江ノ島鎮守府にフレッチャーが着任したことについて、なぜこんなにも早く伝わっているのかも確認する必要がありますので。」

「確かにねえ。まだあいつが着任してから一週間経ってねえんだぜ。動きが早すぎるだろうよ。」

 

フレッチャー着任の情報は大本営にも上げているから、そこから話が漏れたとしてもおかしなことはない。やはり大本営の大淀に相談して正解だな。時雨の薦めってのが気に入らないがよ。

 

「それじゃあ、よろしくお願いします。こっちはマスコミ対策ってのを考えておきますんで。」

「分かりました。反対派お抱えのマスコミが身辺をうろつくと思いますが、くれぐれも発言に気を付けてください。」

「はいはい。善処いたします。それでは。」

 

ちっ。発言に気をつけろだあ?NGワードが何かもよく分からないのに、気を付けろもあったもんじゃねえ。全く、いらいらするぜ。がしがしと頭を掻く俺様の前にすっと出されるいい香りのコーヒー。まあありがたくいただくぜ。さっき食ったハンバーグといい、どうしてこいつはこう色々とそつがないかね、

 

「すいません、提督・・。私のことでお手間を。」

申し訳なさそうに頭を下げるフレッチャー。

「ふん、べつにお前のせいじゃねえ。俺様はああいうちんけな追い込みが気に入らねえだけだ。」

「ふふ。ありがとうございます。」

「・・・・。」

 

だからよお。何なんだ、お前。その眼つき。昼間から何か変じゃねえか、こいつ。時雨もなんだかソワソワしてやがるし。グレカーレもやたらふくれっ面だしよ。雪風だけは食後にトランプをしようなどと平常運転だったが。

 

続けてロリコン織田の携帯に電話する。奴はまだこの時間だったら起きているからな。

ぷる。

 

「あっ!鬼頭氏お久しぶりです!!!雪風ちゃんのジャムありがとうございました!!」

「おう。ってえか、随分と出るのが早いな。あっちの方も早出しだと色々と困ると思うが。今日はちと聞きたいことがあってよお。」

「拙者にですか?鬼頭氏が?恐悦至極!!なんでもお申し付けください!!」

おいおい。こいつ、ロリコンからホモにジョブチェンジしたのか?養成学校の時もここまでじゃなかった筈だがなあ。

「鬼頭氏は我々ロリコン界のレジェンドですから!」

「あほ!俺様はロリコンじゃねえ!!」

 

いつ俺様がロリコンになったんだ。いい加減軽巡でいいから来てほしいんだよ。他の連中の所には軽空母も出てきてるってのに、なぜうちばっかり。

 

「よ、与作・・・。話がずれてるよ・・。」

 

側で声を掛けてくる元ペア艦の指摘に、話を元に戻し、昼間あったことを織田に話すや、受話器の向こうの空気が変わったのが声の調子でよく分かった。

 

「はあ?よりにもよってフレッチャーちゃんを在日米軍のくそが誘拐しようとしたあ?」

ばっきい!おい。何か壊れる音がしたぞ。何を破壊しやがった。

「お気にせず。それで拙者は何をすればよろしいでござるか。」

 

おうおう。久しぶりのオタク口調だな。ってか、お前ラインだと普通に会話してるんだから、そのままでいいんじゃねえか。キャラ付けも大事だがよ。

 

「ああ。どうも。以前お前さんがラインで書いてたフレッチャー捜索隊ってのが気になっててな。見つかってるって知らずに勝手に行動しているとかありうるんじゃねえか?」

「成程。その辺を探ればよろしいのですね。お任せください。我らロリ魂を持つ者、ロリとは遠きにあって慈愛の目でもって愛でるもの。野に咲く可憐なたんぽぽを摘み取ろうとする外道な輩は許せませぬ。」

 

こいつは頼もしい。この野郎はただのロリコンじゃない。一流の腕を持つハッカーでもあるからな。香取教官のお宝映像を俺様が預けているってだけでも相当のスキル持ちの証拠だしよ。ロリコン道を踏みにじられ、怒りに燃える織田に、俺様は更なる燃料を投下する。

 

一旦保留にしてっと。

 

「おい、雪風とグレカーレも来い。時雨とフレッチャーはそこにいろ。」

 

後はビデオ通話にする。

 

「鬼頭氏どうされました?ビデオ通話などと」

「いや。面倒を頼むんでな。お前に更なる力を授けよう!」

「ど、どういうこと・・・・て、ほああああああああああああ!!」

 

携帯のカメラを駆逐艦達に向ける。

 

「織田提督!雪風のジャム、美味しかったですか!また作りますね!」

「お誘い断っちゃってごめんねー。フレッチャーさんの件、お・ね・が・い!」

「お久しぶり。元気そうだね。瑞鶴によろしく。面倒をかけるけどいいかな?」

「すいません。お手間をかけまして。よろしくお願いいたします・・・。」

 

おいおい。あいつ口パクパクさせてやがるぞ。どうだ、俺様からの洋上補給は。

「まさに!幼女補給でございます!!あでぃがどうございまず・・・あでぃがどうございまず~。」

 

なんだ、こいつ。泣いてるぞ。そんなにつらかったのか、お前。それに何だ、お前。その体から湧き上がる闘気は。

 

「さっきまでの拙者がナッパだとすると、今の拙者はフリーザ第3形体。この溢れる力・・・止められぬ・・・・」

 

おい。後ろに瑞鶴が来やがったぞ。気をつけろ!

 

「何をしにきやがった。今の俺は誰にも止められぬ。ましてや、貴様程度ではな。」

「はあっ。概要は偵察機から情報を受け取っているから分かってるわよ。鬼頭提督、危ない橋になりそうならこちらでブレーキかけるからね!」

 

おいおい。あいつ、偵察機を飛ばしてやがるのかよ。とんでもねえ野郎だな。

 

「ああ、頼む。それじゃあ、織田。切るからな。」

「お任せください。この織田。鬼頭氏と駆逐艦たちの期待を裏切ることはしませぬ!」

「ちょっと、あんた大丈夫なの?ホモじゃないわよね!」

「黙れ!この貧乳空母・・」

 

がちゃ・・・つー・・つーー・・。

 

「ふう、いつも通りだが難儀な奴だな。」

「あはは。久しぶりだけど、何と言うか瑞鶴はどんどん織田提督と所帯じみてきているね。」

 

時雨と顔を見合わせて苦笑する。養成学校時代、何度織田が爆撃されるところを見てきたことか。

 

「後は明日までにどの程度情報が集まるかだな。とりあえず、憲兵の爺にもことのあらましを伝えてやる気になってるみたいだし、今日は解散でいいだろう。」

俺様がそう告げたのに、まるで戻らない駆逐艦ズ。おい、どうしてお前らはそう人の話を聞かないんだよ。

 

「ええーっ。だって、食後にみんなでせっかく集まったんですから、トランプぐらいしたいじゃないですかあ。」

 

雪風。お前はずっと時雨とトランプしてやがれ。UNOもごめんだ。

 

「じゃあ、なんだったらいいんですか!」

「何もしなくて解散でいいだろうよ。」

「えーーっ。つまんない!テートク、昼間はフレッチャーさんとデートしてきたんだから、あたし達もかまってよぉ!」

 

おい、バカグレカーレ。お前の日本語の使い方が間違ってるぞ。買い物に付き合ってやっただけなのが、どこがデートなんだよ。

 

「手をつないでいたじゃないか・・。随分と仲がよさそうだったよね・・」

すっと目を細める時雨。逃げるときに手をつないで、こいつが怖いからってそのまま

だっただけだぞ。って、何で俺様がいちいち言い訳をせねばならん。

 

「うふふ。大切な艦娘と言っていただいて、本当に嬉しかったです・・。」

胸に手を当ててほうとため息をつくフレッチャー。こいつ天然か?大切な人手と言わなかったか?

 

「しれえ!どういうことです!?」

「テートク、あたしの時と態度が違いすぎ!!」

「与作、今度本屋さんに行って、僕と女性心理についての本を探そう・・。」

「みんなでワイワイするなら、何か摘まめるものがあった方がいいですよね。私作ってきますね!」

 

すっといなくなるフレッチャー。残されたのはぎゃあぎゃあ騒ぐがきんちょ三人と可哀想な俺様。まったくうるせえ野郎どもだな。わかったよ。じゃあ、カードゲーム以外で楽しめそうな奴を用意してやる。人生ゲーム、ダメだ・・。嫌な予感がする。そうすると、ジェンガなんかどうだろう。

 

「ジェンガ?楽しそうな響きですね!!」

やる気満々の雪風と、それとは逆にお互いを見合う雪風被害者の会の俺とグレカーレ。

「テートク、今度は大丈夫?」

「知るか。だが、トランプよりはましだろ。」

単純に棒を抜いてくだけだし、危険性はないだろう。

 

しかし、この目論見が甘かったことを、この後俺たちは知ることになる。

 




登場人物紹介

グレカーレ・・どう考えても落ちる筈の棒が落ちぬ場面を目撃し、己の浅慮を悔いる。
雪風・・・・・ジェンガにはまり、暇さえあれば皆を誘うが、与作はのってくれずしょんぼり。
フレッチャー・雪風のジェンガに付き合ってあげている。しょんぼりしている雪風のために、与作とペアになってジェンガをやることを提案し、成功。
時雨・・・・・雪風のジェンガに付き合ってあげていたが、フレッチャーと与作がペアになってジェンガをしていることに衝撃を受け、自分も同じように一緒にやろうと提案する。
与作・・・・・雪風がジェンガをやりたがると付き合う羽目になるため、一時ジェンガを隠すも、すぐ見つけられる。

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