鬼畜提督与作   作:コングK

28 / 124
ちょっと長くなりそうなので区切りました。当初はそんなに長くするつもりはなかったのですが。なぜだろう・・。


第二十二話「ママ大いに怒る(前)」

フレッチャー誘拐未遂事件の翌日。朝早くから執務室へと詰めていた俺様は、織田からの驚愕の報告を受けていた。

「なあにい?アメリカにいるフレッチャーは偽物の可能性が高いだあ。そんなことがあるのかよ。」

「はい。アメリカにいるフレッチャーの歓迎式典の様子を見まして、おそらくその可能性が高いかと思われます。拙者以外の出席者の賛同は得られませんでしたが。昨晩映像を送りましたので、ご確認ください。」

 

出席者だあ?何の会議をしてやがるんだ、こいつは。お、これかな。

 

『わーーーーーーー!!』

『ママ―――!!』

『マザー!!!』

 

こりゃまたすごい歓声だな。アメリカ中のロリコンとマザコンが集まっちまったみたいだぜ。んで、ホワイトハウスのバルコニーからフレッチャーが手を振ってやがる。ふん、偉そうに。アイドルじゃあるまいし。・・っておい。こいつ、確かにフレッチャーに似ているがよ・・。

 

「揺れてねえ・・。」

 

そう、そうだ。あいつの駆逐艦とも思えねえとんでもねえバスト。ありゃ、俺様の測定ではHカップはある筈だ。動画に映るフレッチャーもどきも胸こそあるように見せているが、俺様の神眼で測ったところによるとよくてせいぜいCカップだ。それにじっとよく見ると、全体的に雰囲気が若干違う・・。

 

「確かに、お前さんの言う通り、こいつは偽物だな。くそが。偽乳でもってごまかそうってもそうはいかねえぞ。」

一体どれだけの女の乳を視姦してきたと思ってんだ。ド○ホルンリンクルの検査員も真っ青になるぐらいだぜ。

「やはり、鬼頭氏もそう思われますか!いやあ、さすがは神の子!」

 

はあ?何だ、そりゃ。妙なあだ名をつけるんじゃねえ。

 

「いえ、あの。拙者たちの組織で昨日集まった結果、レア駆逐艦ばかり引き当てる鬼頭氏を名誉職とし、『神の子』の尊称を与えるべきだと全会一致しまして。」

 

「はあ?お前のいる組織って例のロリコン友の会だろう!?却下だ、却下。」

 

俺様は鬼畜モンだ。くだらない称号なんぞに興味はねえ。

 

「ええーっ、そんなあ。鬼頭氏はロリコン友の会と仰いますが、結構な規模の組織なんですよ。」

「そんなものは知らん。しかし、偽物とはなあ。確かお前さんの話では相当な予算をつぎこんで、フレッチャーを探してたんだろ。」

 

確か提督ラインの話じゃ、国家予算を使っただの言っていた筈だ。そこまでして探したのに、お目当てが見つからなかった?くっくっくっく。愉快でならねえじゃねか。

 

「成程なあ。それで、どうやったか知らんがうちでフレッチャーが建造されたと聞いて、攫いに来たわけか。」

「おそらくそれで間違いないかと。それでどうしますか、鬼頭氏。殴り込みますか?」

 

おいおい。こいつもあの駆逐大好き戦艦みたいなことを言ってやがるな。まあ、普通に殴りこんで暴れてやってもいいんだがよ。

 

「とにかくだ。こっちも色々と仕返ししてやらねえとよ。大本営の大淀に軽挙妄動は慎めと言われちまったが、どの辺りを慎めばいいかってのは聞いてないんでね。」

「分かりました。お手伝いできることがあれば、何なりとお申し付けください。」

だだだだだだだだ!!!ん?、なんだあ、朝から物騒な音が鳴ってねえか?

「あ、いや。お気にせず。うちのバカ空母が朝っぱらから艦載機を飛ばしていたようでしたので、昨日のうちに抱き込んだ機銃妖精に対空砲火をしてもらっているんです。ふん。バカが!!落ちろ蚊トンボ!!」

 

おいおい。鎮守府内で対空戦闘をやらかすなよ。まったくどうもこいつの鎮守府は過激でいけねえ。

 

「提督、朝早くからご迷惑をおかけして申し訳ありません。」

 

織田との電話が終わるや、突然声を掛けてきたのは当のフレッチャー。自然な流れで俺様の前にコーヒーが差し出される。

 

「ふん。何度もしつこい奴だな。俺様は迷惑と思ってねえよ。」

熱いコーヒーを流し込むと、目がしゃっきりしてくるねえ。しかし、このほんわかしたのが、騒動の原因とは世の中わからんもんよ。

 

「あ、あの・・。提督。どうかされましたか?」

 

じっとフレッチャーを観察する。うん、確かに再度確認しても奴の乳力はHに間違い

ない。そうすると、あの映像の奴は偽物ってことになるんだが、一体なにもンなんだ。

 

「まあいい、問題はこっちに粉掛けてきている連中をどうするかってことだな。こうおちおちとあちこちで動かれたんじゃ手淫もできねえ。」

 

あいつらフレッチャーがいるうちが羨ましくてならねえんだろうなあ。うかうかしてると血迷って極端に走りそうだぜエ。だったら、仕方がねえから見せびらかして欲求不満を解消してやるしかないよな!

 

 

 

ITウォッチャー ブルーリーフ氏の日記より

その日、全世界のあらゆる動画投稿サイトにOYADIを名乗るアカウントから一つの動画が投稿された。アップされ数分で消されたり、アカウント停止処分を受けたりしたものもあるが、いくつかの動画はそのまま生き残り、人々の目にさらされることとなった。その内容とは以下の通りである。

 

「おやぢとフレッチャーで踊ってみた。」

「フレッチャーがひたすらぷんぷん言う動画」

「応援するよ!フレッチャーがあなたを励まします!」

などこれまで極端に米国がその情報を秘匿してきた駆逐艦娘フレッチャーに焦点を当てたものばかりだった。これに対するネットの反応は様々で、

「上手いコスプレだが、本物を見た俺からすると似ていないな。」

「うん。胸部装甲が厚すぎるよね。本物はもう少し小さいや。」

という意見が大半だったが、中には

 

「でも、何かこの子見てるとすごい癒されるんだけど・・。」

「これぞ。マザー。」

と肯定的に見る向きも多かった。

 

特筆すべきはこの動画が上げられてから、一時間もしないうちに米国の大統領補佐官が緊急の会見を開き、動画のフレッチャーは偽物だと断じたことである。

 

「これは先の大規模作戦での我が国の輝かしい戦果に対し、泥を塗るような行為である。断じて許す訳にはいかない。」

 

語気を強め、動画投稿者を許さぬと息巻く補佐官だったが、ネットの反応を見る限り、それは悪手であった。多くのネット民は投稿されたフレッチャーはまたどうせ日本人が大好きなコスプレであり、よくやるな程度でしか思っていなかった。だが、こうもムキになって反論されると一つの疑問が首をもたげてくる。もしかして、このフレッチャー、本当のフレッチャーなんじゃないかと。米国の艦娘達が不気味に沈黙を守る中、さらにセンセーショナルなニュースが飛び込んできた。

 

 

 

「おう、どうだ。こんなもんでいいかあ?」

姿見の前で前髪を整える時雨に声を掛ける。くるくる回りやがって。コマかっての。

 

「うん。いいんじゃないかな。与作も制服きちんと着られたかい?」

「式典の時しか着ねえからなあ。ちょいとかび臭いがしかたねえだろ。」

「普通は作業服とその服をよく着るんだけどね・・。」

「ふん。俺様の制服はあのジャージよ。ちくしょう、ネクタイがうまく結べねえ・・」

 

てんでやらねえからな。首にタオルはいつも巻いているんだが・・・て、おい。誰だ。後ろからネクタイを引っ張ってやがるのは・・。

 

「うふふ。与作君、シャツの上にネクタイがきてしまってますよ。気をつけないと!」

そう言って前に回りネクタイを結んでくれたのは鹿島教官だ。相変わらず俺様を与作君呼びなのは気になるが、なんでまたここにいるんだ?

 

「なんでまたって。本気で言ってます?今朝いきなり時雨さん着任の記者会見をしたいから、学校の講堂を貸せといきなり電話してきたのは、あなたでしょう!日向校長がとりなしてくれたからよかったものの、あの後香取姉が大変だったんですから!」

「そいつは申し訳ありませんねえ。可及的速やかに行動しねえと色々と面倒くさいことが起きちまうもんで。手土産だって持ってきたでしょう。」

 

香取教官には教鞭セット、日向校長には胃薬セット。ぱーふぇくとだ。って、鹿島教官?ネクタイをぎゅっとひっぱり過ぎですぜ!

 

「わたしにはなんでお土産をくれないんですか。わたしだって、時雨さんの書類づくりを手伝ったのに!」

唇を尖らせて怒る鹿島教官。江ノ電最中を上げたのに、何がそうご不満なんだ。

 

「ほいほい。それじゃあ、鎮守府に戻ったらなんか送りますよ。仕方がねえ。」

「本当ですか!約束ですよ!!」

 

まあ世話になったからな。俺様ちょいすの送られても微妙な土産を送るしかあるめえ。しらすと書かれたマグカップなんかよさそうだな。って、おい時雨。お前さっきまでにこにこしていたのに急に不機嫌になるのを止めろ。これから記者会見なんだから、もっとにこやかにしてやがれ。

 

「はいはい。せいぜい外用の笑顔を振りまきますよーだ。与作は本当に女心がわからないよね・・」

「うるせえ。知りたくもないね、そんなもの。おら、とっとと行くぞ。」

 

用意された講堂に向かうと、いるわいるわダニみたいなマスコミ共が。俺様と時雨が着席するのに合わせて、司会者である香取教官が口火を切る。

 

「本日はお集まりいただきありがとうございます。それでは、お時間になりましたので、艦娘時雨の復帰会見の方を始めさせていただきます。」

お定まりのように、以前長門や大淀と打ち合わせた流れをそのままに、時雨が復帰までの経緯を説明する。おいおい。たまたま寄った江ノ島鎮守府の提督が俺様で運命を感じただあ?随分とオーバーに言いすぎるな、こいつ。

 

「以上になります。それでは。質疑応答に移りたいと思います。」

 

香取教官の言葉を合図に上がるわ上がるわ。セリやオークションじゃねえんだからさ。もう少し自重しないのかね。

 

「読買新聞の北島です。鬼頭提督にお伺いします。偉大なる7隻の提督となったご感想は。」

「特にありません。養成学校時代からの付き合いなので、やりやすいかなとは思いますがね。」

「時雨さんはいががですか。これまでの提督候補生たちと比べて、鬼頭提督の何が違っていたのでしょう。」

おっ。いい質問するじゃねえか。一番イケメンと言っておけ!

「違いですか・・・。みんなそれぞれ違いますから一概に言えませんが、一番ケンカしましたね。ダントツです。それまで僕はもめごとが嫌いだったんだけれども。」

 

何だそりゃ。お茶の間に俺様のマイナスイメージを振りまいてるんじゃねえ。

 

「朝目新聞の鵜飼です。率直に伺いますが、偉大なる7隻の提督になられるということは大きな責任が伴うと思われますが、それについてはいかがお考えですか?」

持って回った嫌な言い方しやがるな。何がいかがお考えですか、だよ。

「これは妙なことを言われるものです。我々提督達はそれぞれ職務に対して大きな責任感をもって臨んでいます。それは偉大なる7隻の提督だろうが、そうじゃなかろうが関係はありません。」

「提督個人の御見解はそうかもしれませんが、周りの方はそうは思われないのでは。巷間言われている噂では、一隻で連合艦隊に匹敵する戦力を手に入れたという形になり、一鎮守府で管理するのは荷が重すぎるのでは。」

 

ああ、こいつ。艦娘反対派だな。いちいち言うことが腹が立つ。司会の香取教官も眉をぴくぴくさせているじゃねえか。

「まず周りがどう思おうと昔なじみでやりやすいので来てもらったんで、他意はありません。確かに江ノ島鎮守府は小さな鎮守府ですが、横須賀が近く、相互に連携はとれています、私個人で時雨を所有しているかのごときご質問でしたが、見当はずれです。そもそもの話、艦娘達を管理だのとおっしゃっていますが、彼女達は自分たちの意志で我々に力を貸してくれているのであり、昔の船の名前と記憶を持つからと言って、それをそのまま道具扱いするのもどうかと思いますね。」

 

ようはムラムラするかどうかだろ。うちの鎮守府にいるがきんちょどもは守備範囲外だがね。

 

「成程。鬼頭提督は艦娘擁護派ということですな。ですが、外見は可憐な見た目をしていても兵器は兵器です。運用には慎重にいくべきでは?」

「私が艦娘擁護派?しょっちゅう揉めていますよ。擁護派ならもっと従順に話を聞いてあげていると思いますがね。朝目新聞さんは物事をYESかNOの二極でしか考えられないようですな。確かに彼女たちは兵器です。それは疑いようもありません。」

 

と、水水。ああ、時雨すまんな。って、なんだお前のその表情。悲しそうな顔してんじゃねえ。

 

「だが、その前に意志を持っているって前提を忘れてはいけませんな。道具だって大事にしてなきゃすぐダメになるでしょう。それと同じように艦娘達だって大事にするべきです。」

なんたって、俺様の目的は艦娘ハーレムを作るところだからな。今その初めの段階で躓いているが、その程度で俺様はくじけたりしない。

 

「まあ、朝目新聞さんにはお分かりいただけないと思います。そういう方々もいるのは分かっていますから。ただ、私はそのような人たちには無知・恩知らずと言いたいと思います。」

「どういうことですか!」

 

おうおう。頭から湯気を出して怒ってやんの。こいつら他人のことは平気でバカにするくせに自分たちがされると怒るのな。なんでだろうね。バカだから分からないのかよ。

 

「説明しないとお分かりいただけないですかね。無知と言うのは平和と言うのが自然発生的に生まれると思われているから。恩知らずというのはすでに艦娘達の犠牲の上で平和を甘受しているのに、いまだに彼女たちの権利を認めずこのような場で無礼な発言を繰り返されるからです。」

「よ、与作・・。」

 

今度は時雨の野郎、潤んだ目でこちらを見てやがんの。どうでもいいけど、マイクがあるんだから与作呼びは止めろ。

 

 

「ふふっ。鬼頭提督、言ってくれるではないか。久々に胸がすく心地だな。」

大本営元帥補佐官の長門は、そう言って傍らの元帥に目を向ける。

 

「朝目新聞には長門が散々デマを流されたからな。いい気味さ。」

元帥である高杉耕作は55歳。始まりの提督の一年後輩に当たり、共に同じ釜の飯を食った仲だ。それだけに親艦娘の気持ちが強く、常日頃から反艦娘派の言動に反発する気持ちが強かった。

 

与作に散々罵られた記者はまだ何か言おうとしていたが、司会の香取が時間を理由に次の質問者を指名するとおとなしく席に着いた。その後幾つか質問が続いたが、与作も時雨も無難に答えていく。

 

「とりあえず、問題はないようですね。事前に聞いた時はどうなるかと思いましたが、香取もいるし、何とかなるでしょう。」

大淀がほっと一息をつき、さあ元帥のお茶でも入れかえようかと思った時。それは起こった。

 

「それでは会見を終了する前に、うちの鎮守府の仲間を紹介します。」

与作が言うや、ぞろぞろと会見場に入ってきたのは雪風達。

「まず駆逐艦雪風」

「陽炎型駆逐艦八番艦の雪風です!江ノ島鎮守府の初期艦になります!」

「次に駆逐艦グレカーレ」

「マエストラーレ級駆逐艦、2番艦のグレカーレよ。よろしくねー。」

「そして、駆逐艦フレッチャー。」

「フレッチャー級ネームシップのフレッチャーです。よろしくお願いいたします。」

 

ぶううううううう。高杉元帥はお茶を吹き出し。がちゃーん。大淀は急須を落とした。

「何やってんだ、あいつはああああああああ!」

 




登場人物紹介

与作・・・・・・キレキレのダンスを披露し、おやぢダンサーの名を世に知らしめる。
フレッチャー・・揺れ揺れのダンスを披露し、世の男たちの救世主となるが、本人は全く自覚していない。
時雨・・・・・・その後ネクタイの結び方を練習する。
香取・・・・・・与作からの土産にしかめっ面をしつつまんざらでもない。
鹿島・・・・・・後日教官室でしらすと書かれたマグカップを使っている所を目撃される。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。