テザリングを使ってやってみましたが、安定しません。
ネット回線の工事って時間がかかるんですね・・。
様子を見ながら投稿していきます。
第二十八話「アトランタの江ノ島鎮守府観察記」
Hi。あたしは防空巡洋艦アトランタ。最近この江ノ島鎮守府に着任した新顔だよ。駆逐艦以外がよく着任できたって?そんなの知らないよ。あたしの場合は事情が特殊だからね。そんじゃ、その辺の話でもしようかな。
在日米軍横須賀基地にいたあたしなんだけどさ。基地司令のくそ野郎にとんでもないイカレたモードを使わされて、体がガタガタだったんだよ。入渠ドックに入れてくれたはいいものの、基本的に米国人は艦娘に冷たいからさ。修復剤なんてケチって使ってくれない。痛みでイライラしていたら、なぜだかコーネルのおっさんがあたしをかついで、ここの提督さんの車に乗せてくれた。鎮守府に着いたら速攻で修復剤を使ってくれて元通り、世話になったから一緒に食ってけって言ってくれて一緒にバーベキューしたんだ。楽しかったし、嬉しかったけど、同時に悲しかったな。だってそうじゃん?あたし達今までこんな食事なんかしたことないんだよ。よくて簡単な軽食。ほとんどがレーション。補給すればいいだろって何にも出されなかったこともあるんだから。
「楽しいdinner、thanks。でも、あたしはそろそろ行かないと。ごめん、電話貸して。」
思いを振り切って電話をかけた。夕食の時に色々聞いたんだけど、ここの提督さん、大統領にケンカを売ったんだって。冗談でしょ?って思ったけどどうもそうみたい。あのクソモードのあたしをぶちのめしたことといい、本当に人間なの!?って思いたくなる。
「ああ、コーネルのおっさんか。お蔭で治ったよ。それでいつ戻ればいいの?」
「お前が戻るところはない。そのままその鎮守府にいろ。」
「はあ?意味が分からないんだけど・・。他の基地に行けってこと?」
「そのままの意味だ。もう戻って来るな。後日書類は届ける。・・・元気でやれ。」
ガチャンとそのまま電話が切られ、あたしは提督さんに今の会話をそのまま伝える。
「はあ?戻るところがないだあ。知るか。他の米軍基地に行けばいいじゃないか。」
「横須賀以上に艦娘対応がマシなとこないからさ。いきなり行っても門前払いなんだよ。数日したら書類が届くみたいだから、それまでここにいさせてよ。」
「猫の子じゃあるめえし。だが、まあいい。お前には借りもあるしな。本当に数日なんだな。」
「うん。そう言ってた。よろしく。・・・にゃーん。」
「なんだそりゃ。猫や犬は食うもんって鬼畜道で決まってるのを知っててやってんのかあ?」
「ペットのつもりだった・・・。にゃーん。」
「・・・お前中々面白い奴だな。」
犬や猫を食うって冗談をいう提督さんもかなり面白いけどね。
せっかくだから、書類が届くまでの間、この鎮守府を観察してみることにした。米国の艦娘とどう違うのか。首輪のあるなしじゃない。この間の時に見えた、艦娘と提督の絆みたいなものに気付けるかもしれない。
江ノ島鎮守府の朝は早い。総員起こしとなる前に提督さんは起きていて、何やらトレーニング?を積んでいた。なぜ疑問符かと言えば、室内でひとりでに倒れたり、壁に叩きつけられたりしているからで、目に見えない何かと闘っているようにしか見えないのだけど、確実にその場にいるのは提督さんだけなのだ。
「ああ?こいつはイメージトレーニングだよ。今ちょうど突進力がトリケラトプス並みの最強の喧嘩師と死合ってたとこだ。」
「見ててもいい?」
「ふん。好きにしな。邪魔はするな。」
じっと目を凝らす。確かに提督さんは何かと闘っている。2mはあるだろうか。人の形に見える何かと確かに闘っている。あ、また壁に叩きつけられた。口元から出る血をぬぐい、立ち上がる提督さんは、
「真剣勝負の最中によそ見をしてたらそりゃ怒るわな。すまねえ。集中するぜ。」
そう言ったきり、黙々とトレーニングに励む。なんかイメージと全然違うんだけど、さすがに気が引けて、あたしはグラウンドから食堂へと向かった。
「あら、アトランタ。Good Morning!調子はどう?」
食堂に入ると、朝食の用意をしていたフレッチャーに出くわす。あんた、強いね。昨日色々あって普通なら疲れて寝込んでるところじゃないの。
「ふふ。昨日一番お疲れの提督がいつも通りなんですもの。寝てなんかいられないわ。」
「あの提督さん、いつもあんな感じなの?」
びっくり。あんなのを毎日って信じられない。そりゃあたしがかなわなかったわけだ。
「この鎮守府変わってるね。あんたが食事を作ってるなんてさ」
「他はどこも専門の給糧艦がいるみたいなんだけど、うちの鎮守府には配属されてなくて。大体私と時雨と提督が交代で作っているわ。」
びっくり。米国本土の基地では、工廠担当の艦娘、食堂担当の艦娘と仕事がきっちりと割り振られていた。まあ、食堂担当の艦娘に関しては、その基地の提督が艦娘派かそうじゃないかでいるいないが分かれていたけど。
あ、いい匂い。Coffee?
「提督に持っていって差し上げるので、そのついでといってはなんだけれど・・。ミルクはどうしますか?」
「Thanks、ありがたくいただくよ。随分とあの提督さんと仲がいいんだね。そりゃあ、あんだけのこと言われたらハートにきちゃうよね。」
「ええっ!?」
あたしの一言に目に見えて動揺するフレッチャー。ちょ、ちょっと。ミルク入れすぎじゃない?それほとんどミルクじゃ・・・。
「ああっ、ご、ごめんなさい・・・。私としたことが・・。」
「Ok。平気。」
微笑みながらコーヒー入りミルクに口をつける。あたしたちがずっと探していたフレッチャー。マザーだのなんのと言われてたけど、普通の女の子じゃない。そりゃ変に祭り上げられるより、こっちの方がずっといいよね。あたしのあの時の勘、間違いなかったな。あんたはここにいた方がいいよ。その方が絶対幸せ。
朝食後、演習をするというので見学に行く。教官はあのナイトメア夕立の姉時雨。それだけでも嫌な予感がしていたけれど、現実は予想よりも遥かにきつかった。艤装をつけての砲撃・雷撃練習の後、模擬弾を使っての実戦形式の演習。それがとにかくえぐい。雪風、グレカーレ、フレッチャーの3隻相手なのに時雨にはかすりもしない。
「ちょ、速いって!!雪風そっち!」
「くっ!そこっ!」
「だ、ダメです。当たりません・・。」
「射撃も雷撃も、敵の行動予測が重要だ。やみくもに撃ってもただ弾を無駄にするだけさ。」
そういった後に的確に相手の艤装に模擬弾を当てていく。本当の戦闘なら、攻撃手段を潰されて丸裸にされていくようなもんだ。
「え、えげつない・・。」
「そうかな?僕はそうは思わないけれど。」
あたしが思わずつぶやいた一言に、時雨は涼しい顔で反論する。
「深海棲艦はもっとえげつないよ。いきなりピンポイントで機関部を狙い撃ちにして、動けなくなった状態でなぶり殺しにすることだってあるからね。」
「・・・・」
あたしは自分がいた世界がどれだけ甘かったのかを理解した。
どうにもいたたまれなくなって工廠に行くと、提督さんと工廠の妖精達が集まって何やら相談をしていた。
「だからよお、親方。どうしたらすりぬけくんの機嫌は直るんだ?」
『そう言われても、前回フレッチャーさんを建造してから、また調子が悪くなっちゃったんですよ。内部に入って見てもさっぱりで。』
「マジか!こいつは本格的な工作艦の着任が必要かもしれねえなあ。」
「え!?工作艦・・・いないの?」
思わず声に出したあたしの方に皆の視線が集中する。ちょっと嫌だな・・。恥ずかしい。
でも、さっき給糧艦もいないって言ってなかったっけ。そんなことってあるの?
「あるのかって、今まさにてめえがいる鎮守府がそうじゃねえか。ついでに言うと、通称任務娘って言われてる提督の秘書をする大淀もうちにはいないぜ。」
「・・・提督さん、ひょっとして嫌われてる?あ、ちょ、い、いひゃい・・。」
「くそが!ふざけたことを言う口はこれか!あああん?」
ぐいぐいとあたしのほっぺたを引っ張る提督さん。ちょっと、痛いってば!ごめんって。
「ふん。一応てめえは預かりもンだからなあ。この程度で許してやろう。俺様もうすうすと感じていたことをはっきり言いやがって!」
『普通は着任初日に気が付きますよ!あのボロボロの状態ですもん。私が直したからこんなに立派になったんですよ!』
あ、この妖精。あたしの機銃の妖精にやたら偉そうにしていた奴だ。妖精女王?これが?本当に~?
「ああ。もんぷちの最初で最後の活躍だな。覚えているぞ。」
『何言っているんです!!グレカーレさんの建造に始まり、駆逐ナ級との戦いのサポート、フレッチャーさんの建造、横須賀基地での映像サポートと私の活躍を挙げれば枚挙に暇がないじゃないですかって、痛い痛い!!』
ぷっ。今度は妖精が提督さんにほっぺた引っ張られてやんの。ざまあ。
「何度も言うが、建造に関しては俺様の好みじゃないからな。認めていねえ。サポートはでかしたといいたいところなんだが、お前は普段の素行が悪すぎるからなあ。」
『少しぐらいの盗み食いは手当の一環だと思っていただければ!って痛いですよ!』
「あれを少しと表現するお前の図太さにはさすがの俺様もびっくりだな。」
「提督さんの好みはどんな艦娘なの?」
ちょっと気になって聞いてみる。だって、あのフレッチャーが好みじゃないって言うんでしょ。
「そんなの決まってる。巨乳人妻系だ。」
笑っちゃった。普通こういう時って、芸能人の名前出したり、清楚系だの話しやすい人が好みだのと言ったりしない?ドストレート。やっぱり面白いよね、この人。
「あたしはどう?自慢じゃないけど胸部装甲はいい線いっていると思うよ。基地にいたときやたらじろじろ見られたしね。」
わざとらしく胸をそらしてみる。じっとあたしを見てくる提督さん。なんだろうね。やたら緊張するんですけど。
「ふん。お前は巨乳系ではあるが、もう一歩だな。大人の色気が足りねえ。俺様をときめかせるのにはまだがきんちょだな。」
「う、嘘・・。あ、あたしそこそこ自信あったんだけど・・。」
ひねくれてるとか言われたことはあるけど、がきんちょって初めてだよ。言われたの。
「精進するといいさ。基地に戻っても何かの折に会うこともあるだろう。その時は俺様をびっくりさせてみな。」
「うん、そうする。」
深く頷いて決意した約束だけど、それから二日後にまさかそれを破ることになるとは思わなかった。
「ご、ごめん。よ、与作。お。落ち着いて、も、もう一回言ってくれないかい?」
「時雨。あんたが落ち着きなさいよ。テートク、悪いけどもう一回お願い。」
突然執務室に呼ばれたあたしを迎えたのは、なぜか動揺する駆逐艦ズと提督さん。
「だからよお。アトランタをうちにくれるんだとさ。」
ひらひらと書類をふりながら、ため息をつく提督さん。
「え?は?ど、どういうことなの・・・。」
事態がよく読み込めないあたしに、提督さんに代わってフレッチャーが説明してくれる。どうでもいけど、すごい嬉しそうだね。
「はい。アトランタさんをこの江ノ島鎮守府に譲渡するとの書類が来たんです!コーネル基地司令から!アトランタさん、この鎮守府にずっといれますよ!」
「う、うそでしょ・・・。あ、まさか・・。」
電話の時の元気でやれって、このことなの?
「すごいですね、しれえ!!」
喜びぴょんぴょんと跳ねるビーバー&フレッチャーとは裏腹にあたしは気持ちが追い付いてない。そこに微妙な表情を浮かべる提督さんの顔が目に入る。ごめん。迷惑だったかな。あたし、いない方がいい?そう言うと、いきなりでこぴんされた。あ痛っ!
「ふん。そういう後ろ向きの考え方をする奴は嫌いだね。俺様が考えていたのは別なことだ。ようやく、俺様にかけられた呪いが解ける時がやってきたんだってな。」
「呪い?」
「ああ。世にも恐ろしい呪いだ。」
そう言って提督さんが話し始めたのは、この鎮守府にまつわる奇怪な現象。通称「春の駆逐艦祭り」
「俺様がまあっっったく望んでいないのに、なぜか駆逐艦ばかり寄り付くわけよ。しかも、うざい、うるさい、じゃんけんに強いと面倒くさいやつばかり。」
提督さんの言葉に反発する駆逐艦ズ。
「ちょ!テートク何それ。」
「うるさいってのは酷いね。アドバイスを聞き入れない与作が悪いんじゃないか。」
「じゃんけんをやろうと言ってきたのはしれえですよ!雪風のせいにしないでください!!」
「提督。ご期待に沿えず申し訳ございません・・・。」
フレッチャー、あんたは何も言われてないじゃん。というか、揃いも揃って、ここまで提督に言い返すって普通ありえなくない?
「だからよぉ。お前が着任するってことは長きに渡る呪いが解けるってことだ。工作艦も給糧艦もいないおんぼろ鎮守府で、色々と面倒くさいこともあると思うからな。おすすめはしねえが、どうする?うちに来るか?」
「・・・うそ・・・・。」
「うそじゃねえよ。嫌なら、大本営の長門補佐官に頼んで適当な鎮守府へ・・、っておい。」
自分でも驚くくらいの勢いで、提督さんの腕をつかんでしまったあたし。でも、でもさ・・。
「いい。ここが。」
そう言うので精いっぱい。本当はもっと別な台詞を言いたかったのにね。
「お前も物好きな野郎だな。分かった分かった。うちに来るんだな。」
こくりと頷く。ああ、ダメだ。言えそうにないや。時雨の記者会見の時から提督さんが気になってた、なんてさ。嬉しくて嬉しくて今はどうにかなっちゃいそうなんだもの。素っ気なく、うつむいてこう返すので精一杯。
「うん。よろしく。」
駆逐艦ズがわあっと喜び、あたしを取り囲む。うん、今なら提督さんの気持ち、少し分かるかも。
登場人物紹介
アトランタ・・・基地司令コーネルへの好感度が3上がる。(現在3)
与作・・・・・・ついに訪れた春の駆逐艦祭りの終了に歓喜するも、すりぬけくんの機嫌が直らず不貞腐れ気味。
時雨・・・・・・え!?軽巡?艦種詐欺じゃない?とアトランタに問いただすもそうだと言われて米国艦の脅威に震える。
フレッチャー・・・同国艦が着任してくれてにっこにこ。(いまだにキラがとれず)
グレカーレ・・・・この鎮守府海外艦多すぎない?と禁句を言い、与作の拳骨を喰らう。
雪風・・・・・・・じゃんけんに負けた与作に連れてってもらう宗谷詣でに着る服に悩み中。