鬼畜提督与作   作:コングK

38 / 129
いつもに比べて短めです。北上さんが出てくると会話が長くなる・・・。
すりぬけくんの建造予想について皆さんのコメントで楽しませていただいておりますが、
今のところ海防艦と書かれる方が多く、驚きです。



第三十話  「いろいろおかしい北上さん」

「緊急放送緊急放送。鎮守府所属の全職員は執務室まで来られたし。繰り返す鎮守府所属の全職員は執務室まで来られたし。」

 

与作の館内放送に何事かと急いでやってくる駆逐艦達は入室するや北上の姿を見かけると、それぞれ異なった反応を見せた。びっくりする雪風やグレカーレはもちろんのこと、時雨に至っては目を大きく見開いたまま口をぱくぱくさせている。唯一面識のないフレッチャーがいつも通りのほんわかした様子で手を差し出すと、北上もそれを握り返した。

 

「あ、あの新しく着任された方でしょうか。私フレッチャー級駆逐艦のフレッチャーと申します。よろしくお願いいたします。」

「よろしくー。あたしは重雷装巡洋艦兼工作艦北上。気軽にグレイト北上様と呼んでくれたまえ。」

 

「「「えっ!!!」」」

一呼吸あって驚く残り3名。

 

「テートク、この人この間公園であった人でしょ?艦娘だったの?」

「き、北上さん!雪風が知っている北上さんは確か重雷装巡洋艦でした。工作艦ってどういうことなんですか?」

「き、北上・・・なんで君がここに・・・。」

 

昔馴染みの北上がいることに激しく動揺する時雨。それに更に拍車をかけたのは、与作と北上のやりとりである。

 

「なんだ?北上。時雨と知り合いなのか。」

「うん。実は提督の知らないところで時雨とあたしは繋がっているのさ。乙女の秘密ってやつ。知りたい?」

「何が、乙女の秘密なもんか。まあ、気にはなるがな。」

「ええっ!?」

 

思わず時雨は声を上げる。自分が最初に会った時、何でも質問していいと言った時には一切何もきかなかったあの与作が、北上には興味を示している・・。

 

(ど、どういうことだい・・情報が少なすぎる。明らかに二人は親しい感じじゃないか・・)

「あ、あの二人はどういう関係なんだい?さっき、グレカーレは公園で会ったと言ってたけど。」

「あ、ごめんね。時雨っちは気になるよね。うん、提督は北上さんの人生相談に乗ってくれたのさ。」

と、北上は以前起きた藤沢の公園での一件を説明する。もっとも、空気を読む彼女は、胸を揉まれた一件については敢えて口にしなかったが。

 

「そ、そうなんだ・・。二人が知り合いのような感じだったから突然で僕、びっくりしたよ・・。」

「安心した?全く時雨っちは昔から心配性だねえ。もう少し、落ち着かないと提督に愛想をつかされるよ。」

「昔から?え、時雨ちゃんと北上さんは知り合いなんですか?」

「う、うん。そのう、ここにいる北上は僕と一緒でね。偉大なる七隻のうちの一人だよ。」

「「「「ええええええええええええっ!!!!」」」」

 

先ほどにもまして大きな驚きの声が室内を包んだ。特に実際に時雨の戦闘を目撃しているグレカーレと雪風は猶更である。自分達が二隻でも返り討ちに遭った駆逐ナ級を、苦も無く沈めた時雨と同じ偉大なる七隻。しかも艦種的には北上の方が上だ。フレッチャーやアトランタもまた然り。実際の深海棲艦相手の戦いは見ていないが、偉大なる七隻の名は米国にも知れ渡っている。一隻で連合艦隊に匹敵すると言われるその戦闘力を恐れて、アトランタに搭載されたモードナイトメアが開発されたと言われるぐらいである。

 

「あ、貴方がかの有名な偉大なる七隻、北上。すみません、先ほどはその、気軽に話しかけてしまいまして。」

恐縮するフレッチャーにいやいやと手を振る北上。

 

「うんにゃ、気にしないで。返って敬語使われるとやりづらいしねー。」

「あたしの直感、間違ってなかった…。北上はやばい奴・・」

「ちょい、アトランタん。人を危険人物みたいに言わんでおくれ。」

「でも、北上。君、軍籍復帰書を出さないとだめだろう?」

「ああ、それ。さっき提督に書いてもらったよ。」

「はあっ!?」

 

時雨の不機嫌メーターがMAXまで上がる。自分の時には散々書いてくれず、逃げ回っていたというのに、なぜ、北上の時にはこうも簡単に書くのか。これは元ペア艦として一言申さねばなるまい。

 

「与作、どういうことだい。ちょっと大事な話をしたいんだけど・・・。」

「うるせえ奴だな。北上は工作艦でもあるから仕方がねえだろ。今のうちの状況わかってんだろうが。工作艦も給糧艦も任務娘の大淀もいないんだぞ。」

「だからって相談ぐらいしてくれてもいいと思うけど・・・。」

「ほいほい。ケンカしないの。ねえ、時雨っち。あたしが来たのは大本営の長門さんから頼まれたのもあるんだよ。色々事情があって工作艦を派遣できないから頼めないか、ってね。ま、元々あたしの方からも軍籍復帰書寄こせとは言ってたんだけどさ。」

「そ、そうなんだ・・・。」

 

もはや残り少なくなった戦友である北上の言葉に、時雨も冷静さを取り戻す。言われてみれば、前々から大本営には工作艦の要請をしていたことだし、先方に都合があるのなら今回の着任も納得ができるものと言えるかもしれない。

 

「いや、おかしい。おかしいわよ、テートク。だってそうでしょう?時雨が来るってだけでもあんだけ記者会見したのよ。またもう一回記者会見するの?」

「いや、いらないんじゃない?」

 

グレカーレの問いにしれっと北上は答える。

 

「時雨っちの場合は養成学校所属だからねー。人目につきやすかったけど、あたしの場合あっちふらふらこっちふらふらしてたからねー。気付いてないんじゃないの。」

「で、でもさ、北上。書類を出したら上は気付くでしょう?それはどうすんの。」

 

アトランタは自分も上司との折り合いが悪かっただけに、北上のことを心配する。

 

「別にやれって言われたらやればいいんじゃない?こっちからするとか言う必要ないよ。」

「北上の言う通りだな。時雨の時だって、マスコミ対策とフレッチャー対策でたまたま記者会見しただけだしなあ。大淀とかから何か言われたら考えよう。それより北上よ。そろそろ俺様にお前の力を披露する時じゃねえか?」

 

与作がワクワクを隠し切れぬ表情でそう言うと、北上はにんまりと笑った。

 

「それじゃ、提督の御要望とあれば仕方ない。みんなちょっと下がっててね。まず、これが通常の北上改二。」

 

ごうっと爆風と共に北上の姿が変わる。クリーム色のセーラー服に身を包んだ姿は歴戦の勇士の風格を感じさせる。夜戦の際にはかの大和型すら凌駕するといわれる夜戦火力を誇り、そのため、ついたあだ名がハイパー北上様。ところが、北上曰くこの上があるという。

 

「通常の北上はここが限界。でも、あたしは艦であった時の記憶を元にIF改装を取り入れることに成功したんだ。」

 

北上が再度気合を入れると、白い光と共に、黒い色のセーラー服へと変貌する。

 

「これこそが、艦隊決戦用最終ヴァージョン。北上改二(雷)。重雷装巡洋艦としての本来のあたしのコンセプトを極限まで極めた仕様。」

「か、かっこいい・・。」

 

アトランタのつぶやきを耳聡く聞いた北上が調子に乗ってピースサインして見せると、与作がすかさずおさげを引っ張る。

 

「ドヤ顔しとらんで、肝心の工作艦ヴァージョンを早く見せろ!!」

「ちょっ。少しくらいいいじゃん。提督そういう所だよー、時雨っちがイライラするのは。」

 

うんうんと頷く時雨。北上が来たのは予想外だが、自分の理解者が増えてくれるのは歓迎である。

「うるせえ。とにかく頼むぜ!俺ぁ待たせられるのが嫌いなんだよ。」

「ほいほい。了解。それじゃあ、北上改二(工)!!」

 

白い光に包まれた北上が来ていたのは紺色のツナギ。手にはスパナを持ち、艤装にはクレーンが見える。

「これが工作艦仕様のあたし。北上改二(工)。なんとこいつのすごいところは、艦艇修理施設を5つ詰めるだけじゃなく、あたしの速度は損なわれないってことさ。」

「そんな!工作艦と言ったら通常は低速なのでは。」

 

フレッチャーの疑問にうんうんと満足そうに頷く北上。

 

「うん。それねー。史実的に遅くなったんだけどさ、他の工作艦が艦隊全員で動く時の様子を見てたら、どうしても缶とタービン載せないと足並みが揃わないからすごい大変そうだったんだよね。だから、あたしは速力を落とさないようにできないかに挑戦してね。成功したってわけ。といっても、大本営の夕張の艤装を真似して増設スロットに缶積んで高速化してるんだけどねー。ほいじゃ、提督。仕事場に案内してよ。」

 

 

北上の言葉に俺様は満足そうに頷く。いいぜえ、やはりこいつは分かってやがる。自分のやることをよお。そういう仕事熱心なところは俺様的にはポイントが高いぜ!

「ようし、ついてこい。これからお前に頼むのはこの鎮守府一の気まぐれレディの相手よ。」

「気まぐれレディ?工廠に面倒くさい妖精でもいるの?」

 

一名それに該当しそうな奴がいるが、あいつは工廠だけじゃなくて、あちこちに顔を出しやがるからな。この間台所で捕獲された時にはさすがに腹を抱えて笑ってやったもんだ。

 

「妖精じゃない。すりぬけくんと言ってな。さすがの俺様も手を焼いている。」

「レディなのに、すりぬけくん?謎は深まるばかりだね・・・。」

「しれえの微妙なネーミングで分かりづらいんですが、建造ドックのことですよ、北上さん。」

「あたしとフレッチャーもそこから建造されたの。ありえないことだって一回みんなで話し合ったんだけど、原因が分からなかったのよね。」

「うん。そのあり得ないニュース。あたし達からしたらドン引きだったよ。あの大規模作戦は何だったんだって。」

「ま、まあまあ。お蔭で私の妹のジョンストンが見つかった訳ですから!」

 

遠くを見るアトランタをフレッチャーが励ましてやがる。そりゃあアメリカさんからすればふざけんなって言いたくもなるよな。

 

やってきた工廠に鎮座するすりぬけくん。ここで幾たびのバトルが行われたことか。この間のフレッチャーの一件以来再び眠りについたすりぬけくんをどうにか起こさなきゃならねえ。

 

「着いたぜエ。ここが工廠。そして、あれがすりぬけくんさ。どうだい、北上。」

『あっ!!新しい工作艦の方が着任されたぞ!敬礼!!』

 

集まった工廠妖精が親方の一声で一糸乱れぬ敬礼を行う。どうでもいいけど、お前ら女王に対する時より遥かに丁寧だね。

 

『あの女王は羅針盤上がりですからねー。』

『そうそう。いつも偉そうだし。』

 

こらこら。もんぷちもそうだが、お前らも露骨に派閥争いみたいな感じを出すんじゃない!それにしても、あいつも普段の行いが悪いのか全然人望がないんだな。

 

「これがすりぬけくんかあ・・。」

 

すりぬけくんをじっくりと見た北上はニヤリと笑って右手に持ったスパナをぎゅっと握りしめる。いいねえ、この強敵を前にした緊張感。そうさ、すりぬけくんを舐めてかかると痛い目見るぜ。

 

「こいつはどえらい案件だよ。すりぬけくん・・・・。あんたの力、見せてもらおうじゃないか。」

 

工作艦北上とすりぬけくんの今後連綿と続く戦いの火ぶたが切って落とされた。

 




登場用語紹介

北上改二(雷)・・・ただでさえ尖った性能の北上改二をさらに極限まで尖らせたらどうなるかと、大本営の夕張・明石と共に考えられたIF改装 スロットは夕張改二同様主兵装5に増設が3 内訳  61㎝六連装(酸素)魚雷後期型☆10×4 甲標的丁型改二(蛟龍型改二)二×1 補強増設に新型高温高圧艦☆10×2 改良型タービン×1

北上改二(工)・・・戦後工作艦として活躍した北上の史実から、考え出されたIF改装。高速の手さばきで傷ついた艦娘を癒す。
艦艇修理施設×5 補強増設に新型高温高圧艦☆10×2 改良型タービン×1

※もちろんIFを改装です。
与作・・・・・・すりぬけくんと北上のバトルの始まりにわくわくを隠せない。
雪風&グレ・・・与作の交友関係のやばさに驚いている。
時雨・・・・・・北上のあまりの与作との仲のよさげな様子に内心不安でいっぱい。
アトランタ・・・アトランタんのあだ名はどうにかならないかと内心思うも、相手が偉大なる七隻のため、若干気おくれしている。
フレッチャー・・気さくな北上の態度に、良い方が着任してくれたと喜んでいる。
すりぬけくん・・新たなる強敵の出現に喜びに打ち震えている。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。