鬼畜提督与作   作:コングK

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あれ?この物語って全然深海棲艦と戦ってないな・・。

深海棲艦とは裏で戦ってます。今は1-6まで踏破したようですよ(震え)
アトランタさんがめちゃくちゃ活躍したようです、はい。

※お読みになる前に
ご指摘を受け追記いたします。今回だけでなく、今後のエピソードでは、話の構成上、艦娘達の性格や言葉遣いなどを変えることがあります。これは演出として意図的に行っておりますが、違和感を感じられた場合には、ブラウザバックをお願いいたします。また、話の都合上、第一部のジョンストンのように酷い扱われ方をする艦娘も今後出てきます。ご不快に思われる方も同じくブラウザバックをお願いいたします。


第三十六話「そしておやぢは舞い降りた(前)」

横須賀鎮守府。国内最大を誇る国防の要は、元海上自衛隊の横須賀基地に、規模を縮小するため日本に返還された米軍の横須賀基地の半分を合わせ、それに加えて、対深海棲艦対策に周辺の土地を買い上げてできた一大軍事拠点である。

当然、所属する提督・艦娘の数も他とは桁違いであり、「横須賀は艦娘に占領された。」などと、艦娘反対派が心なく揶揄するくらいには、市内に艦娘の姿があふれている。

彼女たちのほとんどは、それぞれの提督ごとにあてがわれた官舎を住まい兼仕事場としており、そこからドックへと向かい、出撃するという形がとられていた。

「もう少しなんとかならないんですか。」

阿賀野型軽巡三番艦の矢矧は、手にした書類を目の前にいる男に見せたが、返ってきたのは短いため息だった。

「何度も言っているが、君たちの福利厚生は十分だろう?この横須賀鎮守府では、甘味処間宮や居酒屋鳳翔など施設が充実している。そのどこが不満なんだ。」

男・・・、横須賀鎮守府第十九艦隊を預かる瀬故卓は、横須賀きっての締まり屋と言われていた。横須賀鎮守府の官舎は提督の指揮する艦隊ごとにあてがわれているが、それぞれ建てられた年次がばらばらであり、場所によっては隙間風が吹くようなものもあった。

第十九艦隊の官舎もそうした外れのうちの一つで、上に散々陳情しているものの、予算がつけられぬの一点張りで、中々補修には至らない。

(それは致し方ない。)

矢矧も何も、全面的に建て替えろと言っている訳ではない。せめて、艦娘達の部屋がある四階の蛍光灯が切れているのを交換するぐらいはできるだろう。しかし、その程度のことでさえも、瀬故から言わせると無駄の一言で片づけられてしまう。

「どうせ、夜になれば寝るのだし、そのままでも平気じゃないか。無理してつける必要はない。」

「夜間に遠征から帰って来るものもいるんだぞ?それぐらい取替えても罰は当たらん。」

「懐中電灯でも使えばいいじゃないか。あ、それと。こちらの申請は却下。」

「はあ?」

矢矧の声が一段と高くなる。彼女の提督が却下したのは、艦娘の制服を整えるためのアイロンを増やして欲しいという要望だ。この第十九官舎にはアイロンが2台しかなく、それを使おうとする艦娘はその10倍以上いる。小遣い制で、私服にお金を掛けられないという事情から、所属艦娘の多くがせめて制服だけはきれいに見られたいと思うのは、女心として当然のことであろう。

「そんなに必要なものかねえ。僕は一向に気にしないが。」

「貴方はそれで平気でしょうけど、私たちは違うのよ!」

矢矧の抗議を瀬古は柳に風と受け流し、第十九艦隊所属の艦娘の士気が一段と下がることになる。

 

一体何でそんなにお金を使っているのか。

秘書艦仕事をしながら、矢矧は己の提督を盗み見た。

横須賀鎮守府に勤務をするぐらいだから、艦隊指揮・作戦立案・隊の運営については無難にこなしている。

欠点は大変な締まり屋であることであり、作戦の成功の度に艦娘達と祝勝会を開くという第十艦隊の丸宮提督の所の艦娘からはえらく評判が悪い。

 

趣味もこれといってなく、かといって艦娘達に還元する訳でもない。

唯一の楽しみと言えば、秘書艦から手渡される会計報告書と自室にある金庫の中を見ることくらいだ。

「先月に比べて光熱費が大分安くなったねえ。」

などと相好を崩しながら悦に入る瀬古の姿に、矢矧は眉をひそめた。

 

「秋津洲、昨日もまだ戻っていませんが、どうするおつもりです?」

3週間前から行方不明の同僚については、第十九艦隊の艦娘の間では意見が割れていた。

「戦闘も出来ないんだから、せめて二式大艇ぐらい貸してくれたっていいじゃない。減るもんじゃないんだし。それを嫌がって逃げるなんてふざけるなって。」

「役に立ってなくて腐る気持ちは分かるから、少し頭を冷やして戻ってくるのを待てばいいんじゃない?」

秘書艦として、両者の意見を調整していた矢矧だが、肯定派も否定派も共通して、秋津洲は使えない、という認識を持っていることに驚いた。

艦娘なのだから、戦って当然・・・。そういう考え方は矢矧も分からぬでもないが、補給や兵站・各種事務処理に工廠仕事など、それ以外の仕事は山ほどある。そうした事への適性も見ずに使えないとはどういうことなのか。矢矧自身は2か月前に着任したばかりであり、周囲のそうした態度が非常に気になった。

 

「費用対効果ってやつだよ、矢矧。あの子、資材を使った分だけ働きはしないだろう?空母や戦艦が大食いなのは分かる。雷巡もね。でも、何もできないのに、あの大食いは酷いじゃないか。」

そういうことか、っと矢矧は納得した。事あるごとに所属艦娘達に秋津洲は役立たずではない、っと話し続けてきた彼女だったが、まさか己の提督自身がここまではっきりとそう考えているとは思ってもみなかった。

「全く、駆逐イ級に大破させられるなんて、本当に無様だね。食べた分活躍できないのかい?」

申し訳なさそうにしょげ返る秋津洲に対し、そう言い放った瀬故の口元は笑みを浮かべていたが、今思えばその目は冷たいものだった。

「現状放っておけばいい。どうにもならなくなったら戻ってくるだろう。その間出費がないというのは素晴らしいじゃないか。戻ってきたら、職務怠慢で減給すればいい。」

「そんな!」

「働いていないんだから当たり前だろう。探しに行くのだって、金も時間も人も使うんだよ?もったいないじゃないか。」

「・・・・。」

何かにつけてもったないを口走る彼に、これ以上何を話しても無駄だと、矢矧は己の仕事に没頭することにした。

 

秘書艦の仕事として、瀬古の昼食を用意した矢矧は、昼食休憩を申し出て許可された。本来であれば提督と共に食べるのが普通なのだが、先ほどの秋津洲の件や予算の件でどうにも胸の中がもやもやしており、今は瀬故と一緒の空間にいたくなかった。

各艦隊所属の艦娘が使える食堂に向かうと、入り口近くの席から声を掛けられた。

「聞いた、矢矧?OYZ怪盗団の話を?」

話しかけてきたのは第十艦隊の阿賀野。同型艦ということもあり、横須賀に着任した当初からなにかれとなく面倒をみてくれている彼女に、矢矧は聞き返した。

「OYZ怪盗団?何それ阿賀野姉。」

「うん。阿賀野がネットサーフィンしていたら見付けたんだけど、『アナタのオタカラ頂戴します』と書かれた予告状が届くんだって。」

阿賀野は得意げにネットで得た知識を披露する。すでに呉や単冠湾などの鎮守府などで被害が出ているらしく、横須賀鎮守府内の艦娘達の間でも噂になっているという。

「矢矧のところなんて危ないんじゃないの~?瀬故提督さん、がっぽり持ってそうだもんね~。」

「第十艦隊だってそうでしょうよ。いつもいつも景気よくパーティーしてるじゃない?」

「丸宮提督の考えだからねー。宵越しの金は持たないって。だから、うちなんか逆に平気だよ。書類以外金庫に入ってないし、鍵もかけないってこの間自慢していたもの。」

さすがにそれはどうかと思ったが、自慢気に話す阿賀野の様子に、矢矧は黙ることにした。

(OYZ怪盗団か・・。)

深海棲艦の出現以来、世界各国では暴徒やストライキが頻発し、為政者達を悩ませていた。ここ日本でも以前よりも犯罪が増え、かつての安全神話は完全に崩壊したというのが皆の共通認識であり、そうした中で、犯罪者の集団が現れるのは当然だろう。

どことなく対岸の火事として呑気に構えていた彼女が慌てだすのは、昼休憩を終えて、官舎に戻ってからである。

 

 

その日、横須賀鎮守府第十九官舎に、一枚の黒いカードが届けられた。

『アナタのオタカラ頂戴します       OYZ怪盗団』

官舎の入り口にご丁寧に貼られたそれは、だれがいつ貼ったのかまるで分からない。だが、この警戒厳重な横須賀鎮守府に白昼堂々とそうしたカードを残しておくことに、賊の並々ならぬ手際のよさが伺える。

カードを発見した朝潮が瀬故にそのことを伝えたとき、彼は誰かの悪戯だろうと流していたが、昼食より戻った矢矧が阿賀野から聞いた噂を伝えると、一転して大騒ぎとなった。

今後の対策を考えるために召集された伊勢と大淀と矢矧は、瀬故より賊への対策を別室にて話し合うように命じられた。

「聞いたこともないけど、そんな連中。でも、呉に単冠湾でも被害が出ているって?」

筆頭秘書艦の伊勢が訝し気に腕を組む

「ネットの掲示板の書き込みだから怪しいものですが。」

大淀が手元のノートPCの画面を二人に見せる。

「ふん。事実だとしたらとんでもない問題だ。両方の鎮守府とも内部調査をしている段階だろう。警戒厳重な鎮守府に忍び込んでくる賊だぞ?手練れに違いない。」

矢矧は阿賀野の話を聞いたこともあり、賊は存在することを前提で話を進める。

「ただ、気になるのは数ある横須賀鎮守府の艦隊で、なぜうちを狙い撃ちにするかということだが。二人は何か心当たりはあるか?」

矢矧の問いに、二人はさっと目を伏せた。

「ん?あるのか、心当りが・・。」

「うん、まあ・・。」

「ええ・・。これは、うちの艦隊だけの問題だと思いますが・・。」

「問題だと?何だ、それは。私は知らないぞ。」

「来たばかりの矢矧には分からないよ。これはあたしたち全体の問題。まあ、あたしなんかの至らなさ、なんだけどね。」

勢いよく詰めよる矢矧に、力なく伊勢はつぶやいた。

「大体さ、おかしいと思わないかい?怪盗が出るから対策を考えとけっていうのに、提督自身がこの場にいないの。あたし達に別室で考えておけって。」

「それは・・。」

「伊勢さん!」

青い顔で大淀が叫ぶ。それ以上はいけない。どこで聞いているか分からない提督の懲罰対象になってしまう。だが、伊勢は構わず言葉を続けた。

「あの提督はさ、艦娘を全く信じていないんだよ。」

                  

               ⚓

深夜。

横須賀駅近くにあるコンビニエンスストアに停められた、フィアット500が静かに鎮守府の方へ向けて走り出した。

「今回に限って、なんでこんな狭い車にしたんだい?ぎゅうぎゅう詰めじゃないか。」

「ふん。グレカーレの奴なら分かるんだがなあ。怪盗っていったら、この車がぴったりなんだよ。」

「ゆき、じゃなかった、スノーウインドは知ってますよ!ルパン三世カリオストロの城で、ルパン達が乗っていた車ですよ!」

「さすがはスノーウインド。俺様の初期艦だぜ。」

「妙な所凝るよね、提督は。あたしはもうちょい工廠仕事したかったんだけどねー。」

「俺様だって、一日も早くお前にはすりぬけくんのお披露目をしてもらいたいが、今回は仕方ねえ。小数精鋭って奴だ。頼むぜ。」

「はいはい。ノースアップ様が頼まれましたよー。」

「さっきから気になってるんだけど、その妙な呼び方は何なんだい。」

「なんだあ、タイムレイン。いかにも怪盗という感じで、俺様が決めたコードネームにご不満かあ?」

「ただ僕たちの名前を直訳しただけじゃないか!」

「はあっ。タイムレインはもう少し、頭を柔らかくしてもいいんじゃないかなー。あたし、こういうの結構好きだけど?」

「さすがはノースアップ。話が合うな。」

「ふふん。この車もいい趣味してるよねー。きちんと黄色だし。」

「ええっ!?ノースアップさんもルパンを観ているんですか?」

「当然。国民の義務でしょ。」

「ぼ、僕は見てないけど・・・。」

「タイムレイン、そういう所だよ。真面目過ぎ!」

「そ、そうかな・・。」

「しれえの名前は何なんですか?」

「お前、妙にノリノリだな。ふふん。聞いて驚け!俺様の名前はファントム・アドミラルだ!」

「何だい、それ!!自分だけ直訳じゃないじゃないか。デーモンヘッドでいいだろう!?」

「ウケる。アドミラルって名乗っちゃってるし。しかも、絶妙に厨二病くさい。」

「おいこら、ノースアップ。げらげら笑ってんじゃねえ。もうすぐ目的地に着くぞ。」

「そういや、アキツシマンはどうしたの?」

「あいつは電車だ。二式大艇がでかくて、入れると全員乗れねえ。」

「車を替えればよかったじゃないか!」

 

やがて、目的地近くになると、暗闇の中にぽつんと佇む銀髪サイドテールの艦娘の姿が浮かび上がった。

「おお、アキツシマン。待たせたな。」

声を掛けられた方は唇を尖らせてみせた。

「うう~っ。なんであたしだけアキツシマンかも?もっといい名前が欲しいかも!」

「仕方がねえだろうが、俺様のブーブル翻訳だと、オータムツースーって出やがって、呼びにくくて仕方がねえんだから。いやならかもだから、ダックにしておくか?」

「それは嫌かも!」

「ほんじゃあ、ぜかまし理論で、マシツキアで行こう。決定。」

「うう~。何か加湿器の親戚みたいな名前かも・・。」

 

やがて、それぞれの支度が済むと、ファントム・アドミラルこと与作はにやりと呟いた。

「いっつ、しょ~たいむ、だぜえ!!」

 




登場人物紹介

矢矧・・・・・・・・・・最近第十九艦隊の所属になった。若干周囲から浮きがち。
スノーウインド・・・・・ルパン一味のようになれるとご機嫌。留守番の某イタリア駆逐艦からは大変羨ましがられる。
タイムレイン・・・・・・皆が普通にコードネームを使っている様子に驚き、どうやったらそのノリについていけるか模索中。
ノースアップ・・・・・・徹夜明けもなんのその。提督からのご指名ににこにこ。ついでに米国軽巡から散々羨ましがられる。
マシツキア・・・・・・・お供の大艇ちゃんが大きすぎ、一人電車移動。かなり目立っていたが、本人はいたって気にせず。
ファントム・アドミラル・意外に車道楽。鎮守府の駐車場には、私物として、赤いミニクーパーとデロリアンが停めてある。今回フィアットがお披露目できてご満悦。
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