鬼畜提督与作   作:コングK

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某竜球で言うと、悟空が蛇の道からようやく降りそうかという感じ。
また、次話投稿まで少し間隔が空くと思います。

雪風改二が来て嬉しい限り。
二隻目がやっと80超えたけど、最終的にはまあ足りないよねって感じがする。
陽炎型は大体改二が80までだけど、油断できない。
コンバートのある朝潮とか丁にすると85とかだし。
なんとなく、幸運艦だからって改二はLV77。コンバートは8番艦だし、語呂がいいからと88ぐらいに設定しそうで怖いです。

運営さん、夕立は55で改二でしたよ。昔を思い出してハードル下げてください。


第四十八話 「本物」

東京羽田空港。

ジョンストンとジャーヴィスは飛行機から降り立つと、しばらくぶりの大地を踏みしめると共に、初来日の感慨にふけった。

「ここが、あの明智小五郎や金田一耕助の故郷、日本ね!きっと怪盗からの予告状や、怪しげな一族にまつわる呪いや言い伝えがてんこ盛りの筈よ!」

「どうも、あんたは情報が偏っているのよねえ。さっさと江ノ島に行きましょう」

出口へ向かおうとするジョンストンに、

「ううん、違うわ、ジョンストン。こっちよ」

ジャーヴィスが指差したのは国内線への乗り継ぎと書かれた看板だった。

 

「え?乗り継ぎ!?なんでよ」

「キトウ提督は、今大湊に演習に行っているってさっき電話したとき長門が言っていたわ。だから、じゃあそっちに移動するねって伝えたの」

「いつの間にそんな連絡を・・・。それより座席はどうすんのよ!」

「事情を話してカウンターできいたら、ちょうど二席余ってるから融通できるって言われたわ!」

「いやいやおかしいでしょ。そんな都合よく・・・」

言いかけてジョンストンは飛行機でのポーカー勝負を思い出した。

(都合よくいくかもなあ。この子なら・・・。)

 

「さあ、こっちよ。行きましょう!」

また空の旅に逆戻りかとため息をつくジョンストンを尻目に、ジャーヴィスはずんずんと先に進んでいく。

「あ、こら。待ちなさいよ、ジャーヴィス!」

 

                     ⚓

 

大湊警備府第四艦隊。

艦娘に対して過酷な訓練を課すと言われ、恐れられている大湊の中でも、つとに彼女たちはその名が知られている。

訓練の厳しさ。

司令官の苛烈な性格。

そして、演習での絶対的な勝率。

ただでさえ、他の鎮守府よりも強いとされる大湊の中でも、第四は別格・・・と言われるくらいで、腕試しに演習を申し込んで来る者も多い。

 

「ば、バカな!!なんだ、あの摩耶は。どうして、こちらの攻撃がわかる?」

 

モニター越しに聞こえる相手の提督の絶叫に、倉田はあくびをした。

「そんなもん、攻撃するタイミングが丸分かりだからじゃろうが。おい、摩耶。適当なところで終いにせえ。わしは飽きた」

『了解』

程なくして出た勝利の判定にも相手の提督からの呼びかけにも答えず、倉田は席を立った。

 

「ちょっと、司令官。相手の提督に失礼でしょ。挨拶ぐらいなさいな」

「ふん。始めにお前を出そうとした時の向こうの態度が気に食わん。ウォーミングアップにもならんかったの」

「ああ、もう。私が代わりにやっておくから、あんたは執務室で大人しくしてなさいよ」

 

ぷらぷらと手を振って消えた司令官の代わりに神風が挨拶に向かうと、単冠湾の提督だと言う男は、未だ驚愕の表情を浮かべたまま呆然としていた。

 

「お疲れさまでした。すみません、司令官がどうも調子が悪いとのことで、よろしく伝えて欲しいと言付かっています」

「・・・どうして。どうして、戦艦が4隻もいるうちの艦隊が、こうも一方的にやられるんだ・・・。あの摩耶や、叢雲たちは何物なんだ・・・」

「かなり訓練をしていますから。後は事務方の方に連絡していただいたら、帰りの手続きがとれると思いますので」

 

失礼しますと頭を下げて去っていった神風の姿を見送った後、単冠湾の提督は、通信機ごしに摩耶に自分の艦隊へ来ないかと呼びかけた。禁止されている引き抜き行為ではあるが、あれほどの強さを誇る艦娘だ。みすみすそのままで帰る訳には行かない。

 

「はあ?バカか、行くわけないだろ」

 

摩耶の返答に、彼は驚いた。過酷と言われている大湊は艦娘達から敬遠されている筈だ。自分が手を伸ばせば、すぐその手を握り返してくると思っていたのだが。

 

「あんた、気づいていないんだな。いい事を教えてやろうか。あんたが強いって言ってるあたしはあくまでもNo.4でさ。さっきまであんたの目の前にいた艦娘が、うちのNo.1なんだぜ?」

「はあ!?そ、そんな馬鹿な!!」

「見る目がねえ奴のとこに誰が行くかっての。その様子じゃ神風の姉さんを馬鹿にするから、あたしたちが怒ってたってことも気付いてねえみたいだな。悪いこと言わねえから早いとこ帰らないと、うちの連中にぼこぼこにされるかもしれねえぞ?」

「う・・・」

ねっとりと自らに絡みつくあちこちからの視線を感じ、単冠湾の提督は急ぎ事務室へと直行した。

                    

                    ⚓

「ねえねえ、矢矧。鬼頭提督、阿賀野と矢矧のおにぎり、見分けがつくかなあ」

横須賀鎮守府の一角にある食堂では、阿賀野と矢矧が遅めの昼食をとっていた。

 

「え?そ、そうね。どうだろうね・・」

姉思いの矢矧は口を濁したが、内心では握ったおにぎりの形を見て、与作には気づいて欲しいという気持ちで一杯だった。

 

「あ~~~~。眠――――い」

そこへふらふらしながらやってきたのは第二艦隊所属の川内である。彼女は二人に頼まれて、こっそり鎮守府を抜け出し、江ノ島へと行ってきたのだが、本来それは彼女が寝始める時間であり、眠そうにあくびを連発すると、テーブルの上に顔を伏せた。

 

「届け物をしてくれたのはありがとうだけど、ここで寝るのはまずいわ、川内。阿賀野がコーヒーを奢ってあげる」

「ありがとう・・・。助かる・・・」

 

阿賀野がいなくなると、矢矧は川内に向かって礼を言った。

 

「ごめんなさい、阿賀野姉が無理を言ったみたいね」

ぷらぷらと手を振って川内は気にするなとアピールする。

「ありがとう。うちから軍用艇で行くって聞いていたのが変更になったから二人で慌ててたの」

「普通思わないよ、陸路で行くなんてさ。でも、相手が大湊でしょ。大丈夫かな・・・」

「艤装のこと?車で大丈夫だってことだし、追加の分はさっき運んでたみたいだけど・・・」

「いんや。相手の話。大湊はどこが相手でも強いんだけどさ、相手が第四艦隊ならまずい」

 

顔を上げた川内を覗き込むように、矢矧は見た。

「まずいって、どういうこと?江ノ島は十分強いじゃない」

「うん。江ノ島も強いと思う。時雨さん達もいるし。でも、あそこの神風は普通じゃない」

悔しそうに川内は唇を噛みしめ、言った。

 

「だって、このあたしが夜戦で攻撃を当てられなかったんだから」

 

                  ⚓

 

演習当日の朝。

第四艦隊で誰よりも早く起きる神風はいつも通り早朝トレーニングに励んでいた。

この時間に合流するのは朝方の艦娘で、朝風がその中心だ。

「今日は演習があるんだから、ほどほどにしておきなさいよ」

 

神風は告げると、シャワーを浴び、身支度を整えてから、次いで執務室に向かい室内を換気する。

 

トレーニングバカの倉田はしょっちゅう室内を締め切って各種トレーニングをするので、こうでもしないと臭いがこもって仕方がない。

「おう。もうそんな時間か」

 

それをよい合図と汗を拭き始める倉田に、神風は今日のスケジュールを告げた。

 

「十時より演習。準備は滞りなくできているわ」

「ほいじゃ、朝飯でも食いに行くかの」

「それじゃ、みんなに声を掛けるわね」

 

大湊警備府内には3つの艦娘用の食堂があるが、そのうちの第3食堂はほぼ第四艦隊の専用と言ってもよく、時間がなく食いっぱぐれた艦娘が使う以外は、いざこざを避けて他艦隊の者が姿をみせることはない。

 

「どいつが今日の演習に出るかはまだ確定で決めちょらん。しっかり食っとけ」

 

倉田が告げると、皆黙々と食事を始めた。

他の艦隊と違い、第四艦隊はきっちりと食事の時間を決めている。その時間に一緒にミーティングも行い、無駄な時間を省いてトレーニング等の時間に充てるためで、これは倉田が提督になってからずっと変わらぬ習慣となっている。

 

「朝食後各自トレーニング。本日の遠征はなしじゃ。その分身体をいじめてろ」

「「「了解」」」

 

(今日、あの江ノ島鎮守府と演習があるって聞いていたのに、違うのかしら)

第3食堂の主である間宮は、普段と変わらぬ彼らの姿に首を傾げた。

 

                  ⚓

「ようこそ、大湊警備府へ。今をときめく鬼頭提督との演習を心待ちにしていたよ」

「はあ。どうも」

榊原の社交辞令の歓迎の言葉に、与作はとりあえず礼を言った。

とても地方の弱小鎮守府の出迎えとは思えぬ、多くの提督や艦娘達の姿に、江ノ島鎮守府の艦娘達は面食らい、きょろきょろと辺りを見回した。

 

「なんか、すごく人が多くない?」

「ええ。大丈夫ですかね、私たちは3人だけで」

「しれえは全然気にしていないみたいですが・・」

「おい、こっちみたいだ。ついてこい」

 

案内された港では、すでに準備が万端整えられているようだった。

先頭に立ち、指示を出していた黒髪長髪の男は、与作達の姿を見ると、目を細めた。

「おう。江ノ島のおっさんか。わしがあんたの艦隊と今日やる第四艦隊の倉田じゃ。よろしゅうな」

提督らしからぬ倉田の挨拶に驚いた面々に、横にいた艦娘が頭を下げる。

 

「ちょっと、司令官!仮にも出向いてくれた相手にとって失礼でしょ!すいません、うちの司令官はこんな感じでして。第四艦隊筆頭秘書艦の神風です。本日はよろしくお願いします」

笑顔を見せ、神風が差し出した手を握ると、与作は一瞬驚いた後ニヤリと笑った。

 

「随分といい手をしてるじゃねえか。その手に触れされてもらえたこと、光栄だぜ」

「それはありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです」

神風は微笑み、会釈をして倉田と共にその場を離れた。

 

瞬間、後ろに待機していた三人が信じられないものを見たというように、呻いた。

「あ、あの、司令・・・。雪風の間違いじゃなければ・・・」

「うん、テートク。あの神風さん・・・。駆逐ナ級よりも遥かに強いよ・・・」

「はい、私も感じました・・。まるで、その、時雨さんたちのような・・・」

 

ぶるぶると震える3人からは、昨日までの気楽な様子は瞬く間に消し飛んでいる。

 

「成長したじゃねえか、お前たち。よく感じ取れたもんだぜ。まあ、がちんこでやったら時雨たちとどっちが上か分からんが、一つだけは言える」

 

与作は嬉しそうに呟いた。

「あの神風は本物だぜ。あいつが出てきたら、精々気張れよ」

 

一方、第四艦隊の控室では。

 

「おまんの手をいい手と言いおったのう」

倉田が嬉しそうに、神風の方を見て言った。

「ええ。びっくりしたわ」

「あのおっさんとその艦娘どもは強い。おっさんの方は言わずもがなじゃが、初見でおまんの強さを見抜くなどなまなかの艦娘ではできん」

 

これまで戦った鎮守府の提督や艦娘達の中には、旧式艦だとあからさまに神風を馬鹿にする連中が少なからずおり、一つの例外もなく、そうした連中はぼこぼこにして帰している。

偉大なる七隻が来ないと下がっていたモチベーションが一気に回復した思いだ。

 

「それじゃあ、出るやつを言うぞ」

整列した艦娘達を見回すと、倉田は演習の参加メンバーを告げた。

 

「向こうさんが三隻と言っているんじゃ。こちらも三隻でええ。神風、朝風、春風。おまん等が相手をしちゃれ」

「「「了解」」」

 

さらりと返事をしてその気になった当人たちと違って、周囲の第四艦隊の艦娘達は息を呑んだ。

よりにもよって彼女たちが出ることになるとは。

神風、朝風、春風の、神風型の三隻だなんて、それは。

 

「うちのベスト3じゃねえか!!ちょ、ちょっと待ってくれ、提督!!」

 

堪りかねて摩耶が口を挟んだ。

「神風の姉さん達が出るまでもないじゃねえか。相手には偉大なる七隻がいなくて、おまけが来てるんだろう?あたしが行くよ。姉さん達の手間はとらせねえ」

 

神風が出るのは分かるが、何も三隻ともが出る必要はない。摩耶としては気を遣ったつもりだったが、その相手が悪かった。

「ちょっと、摩耶!!」

朝風が割って入る間もなく、倉田はあっという間に摩耶の胸倉をつかんだ。

 

「おう、摩耶。わしがそうせえっちゅうとるんじゃ。なして、おまんのいうことを聞かないかんがじゃ?おまんは司令官か?」

「ぐ・・、す、すまねえ提督・・・。そんなつもりじゃなかったんだ・・」

「ふん、気をつけえ。わしは今昂っとるきに」

 

急に手を放され、床に倒れ伏した摩耶はその場で咳き込んだ。見かねて、神風が間に入る。

「司令官、そこまでにしておきなさい。摩耶も悪気があってのことじゃないわ」

「そうそう。でも、まさかご指名が入るとは思わなかったわ。早起きは三文の徳って本当ね」

朝風の言葉に、春風が嬉しそうに微笑んだ。

「神風お姉さまと朝風さんとご一緒に演習だなんて、本当に久しぶりですね」

「まあ、大抵神風姉が出て終わりだったからねえ。偉大なる七隻と闘えないのは残念だけどね」

「はいはい。行くわよ、貴方達。残念なのは私が一番なんだからね」

「ぺちゃくちゃしゃべっとらんで、行くぞ。浦波、例の手筈をしとけ。念のためじゃ」

「了解です・・」

 

(さあて、おっさんよ。わしを楽しませてくれよ。こっちの歓迎の準備は十分じゃからのう。)

期待以上の反応を見せてくれた江ノ島鎮守府の提督に対し、倉田は期待に胸を躍らせた。

 




登場人物紹介

倉田・・・・・・趣味も特技も訓練と語る生粋のトレーニングマニア
神風・・・・・・おやぢの一言に微妙に戦意高揚状態。
朝風・・・・・・まだ微妙に朝なのでやる気。
春風・・・・・・3人揃って演習は久しぶりなので喜んでいる。
榊原司令長官・・とりあえず演習はしてくれそうなので胸をなでおろす。



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