季節ものということで書いてみました。
本編の続きはもう少しかかります。
いやー。E4ー3沼りました。くそですね。本当にくそ。
友軍来ても基地航空隊や決戦支援が仕事しないととにかくナ級+ボスの開幕雷撃が
痛すぎる。一回出撃してはすぐ航空機の熟練度付け直し。何がさせたいのだ、運営は。
その1「普通の鎮守府のクリスマス」
「うわあ、きれいですね。司令官。どこから出してきたんですか?」
呉鎮守府第11艦隊所属の吹雪は、己の提督の用意してきたクリスマスツリーに顔を綻ばせた。
「ああ。この間実家からサツマイモと一緒に送ってもらったんだよ。まだ使えると思ってね」
「あら。気が利いているじゃない。でも飾り付けの電球が切れてるわよ」
ひょっこりと顔を見せた五十鈴が苦笑する。
「あちゃあ、母ちゃん。しまいっぱなしで確認してなかったな。仕方ない、買いに行ってくるよ」
「おっ。提督外出するの?衣笠さんもついて行っていい?プレゼントで欲しいものがあるんだよねえ」
「ちょっと。ずるいわよ、衣笠。そうね。だったら提督、みんなで買い物に出かけましょう?」
飛鷹の提案に異議を唱えたのは、那珂だけだった。
「ええっ。那珂さん、どうして行かないんですか?」
「那珂ちゃんはクリスマスライブの用意で忙しいの!ファンを喜ばせるためには不断の努力が必要なんだから!」
「放っておきましょう、吹雪。那珂、貴方の分は私が適当に見繕っておくからね」
「五十鈴じゃなくて、提督に選んで欲しい!」
「おいおい、責任重大だな」
田所はとんだ無理難題に頭を痛めつつも、わいわいと楽しそうな艦娘達の様子に目を細めた。
⚓
その2 「オタク提督のクリスマス」
「ねえ」
「・・・」
「ねえったら!」
「・・・・・・・・」
「いい加減にしなさいよ、あんた!!」
先ほどから何度話しかけても、仕事中だと、パソコンに向かったまま返事をしない己の提督に痺れを切らし、瑞鶴はそのヘッドフォンを奪い取った。
「あっ!この野郎、何するんだ!!」
中から聞こえてきたのは激しい楽曲と、荒れ狂うファンの歓声。
「何これ。何かのライブ?」
じっと織田を見ながら、最小化された画面をクリックすると、出てきたのはイタリア駆逐艦達がふりふりのドレスを着ながらステージで踊る姿だった。
「あんた、鎮守府の会計を計算しながらこれを聞いてるなんて器用なことするじゃない」
「別に問題はないだろうが!画面は見ていないし、仕事はしている」
「だからってもう少し聞くものを考えなさいよ!!」
「お前はバカか?クラシックを聴いていたら賢いのか?アイドルの歌を聞いている人間が愚かなのか?これだから大人の女は駄目なんだ。とかく男の趣味嗜好に文句をつけすぎる。俺の知っている知り合いなんか幼少時からの貯め込んだプラモを嫁さんに捨てられて、この間離婚したばかりだぞ!!」
提督の剣幕に瑞鶴が一瞬怯む。
「え・・そ、そんなことあるの?」
「あるとも。よくある話だ。いいか。養成学校からの腐れ縁だから話してやるが、それは男が一番嫌がることだぞ。女は平気でやるけどな」
「成程・・・」
ふいと振り返り、瑞鶴は懐から出したメモに今の提督の言葉をメモする。
この瑞鶴は意外にマメなのだ。
「そんなことより、大事な話よ。うちの鎮守府でクリスマスパーティーを企画したのよ」
「ふん。そんなもの、お前たちだけで勝手にやっていればいいだろう。マエストラーレシスターズのクリスマスライブより大事なものはない。聞くところによると、鬼頭氏は幸運の風を直に受け取ったらしい。羨ましくてしかたがない」
「何よ、その幸運の風って」
「気になるか?まあ気になるな。よし、特別に見せてやろう」
織田がライブの最後に場面にすると、ステージ上のマエストラーレ級の4姉妹がそれぞれポーズをとりながら、
『幸運の風が、貴方に届きますように!』
と決めポーズをしていた。それを食い入るように見つめていた織田は新鮮なワインを口にしたように、ふうと満足そうなため息を吐いた。
「これこれ。これを見なければ年が越せない。これがクリスマスなら、『幸運の風で、素敵なクリスマスが送れますように』と多少のアレンジが入るのがみそなんだ」
織田のうっとりとした表情が癪に障った瑞鶴は、こんなのあたしだってできるわよと見様見真似でポーズをとった。
「幸運の鶴が貴方の側に!!」
「・・・・・・・・・・・」
アレンジも加え、自分としては会心の出来だったが、提督の表情を見る限り残念ながら滑ったようだ。
「さて、執務の続きをするとするか」
「何か言いなさいよ!せめて批判コメントぐらいして!無視は一番心に来るからあ!」
ぎゃあぎゃあと大騒ぎをする執務室の様子を眺めていた神通がこほんと咳払いをしながら入ってくる。
「失礼します、提督。先ほど瑞鶴さんが言われたクリスマスパーティーは鎮守府の艦娘を対象として行うものではありません」
「というと?」
さして興味もなさそうに織田は尋ねる。彼からすれば己の鎮守府にいる者たちは皆対象外。マエストラーレシスターズのクリスマスライブが無ければ、江ノ島鎮守府のクリスマス会にオンラインで参加しようと画策していたくらいだった。
「はい。近くの子ども会の皆さんが、クリスマス会ができないと嘆いていたのを天龍さんが聞きまして。それならうちの鎮守府で企画してやるよと答えたようなのです。なんでも、公民館がこの間の台風で被害を受けて復旧のめどが立っていないとか」
「なん・・・だと・・・・」
「すまねえ、提督。ガキどもがしょんぼりしてたからよ。つい・・な」
「ごめんねえ、提督。天龍ちゃんって小さい子に好かれるから。どうしてもだめって言うなら、私達だけで準備をするから許可だけしてもらえないかしら」
「天龍でかしたああああ!!」
織田は天龍の手を固く握りしめた。世界水準を超えただのなんのと大口を叩いてばかりで弱い軽巡だったが、最近はめきめきと力をつけてきた矢先のことだ。
織田の中の天龍株が爆上がりする。
「龍田よ。何を言っている。子どもの笑顔は何もまして代えがたいものだ。この俺が全面的にバックアップしよう。神通は子ども会への連絡を担当、天龍は町内を廻り、参加者を募ってくれ。龍田は保護者向けの案内と予算関係を頼む。瑞鶴と摩耶は俺と一緒に今から外に出て子どもたちが喜びそうなプレゼントを探しに行くぞ」
「おう分かったぜ。任せときなっ・・・て・・・」
摩耶はじっと己を見る瑞鶴の背後から凄まじいオーラを感じ、怯む。
その口元はく・う・き・を・よ・めと言っている。
「ああっと。悪い、提督。あたしセンスがないからさ。瑞鶴の姉御と一緒に行ってくるといいぜ」
「どうした、急に。まあ、そこまで言うならお前は飾り付けを作るのを担当してくれ」
急に態度が変わった摩耶を不審がりながらも、織田は瑞鶴と街に繰り出す。
「あのなあ。仕事で行くんだぞ。着替えがしたいだなんて我儘を言うな。どうせ皆艦娘だと分かってるんだ」
「そんなこと言ったって。一年ぶりなんだからいいじゃない!」
瑞鶴がほれほれと耳元のイヤリングを見せる。
「せっかくもらったイヤリングだもん。使わないとね!」
嬉しそうにはしゃぐ瑞鶴。
それも当然だろう。彼女の身に付けているイヤリングは養成学校時代に織田からもらった物なのだ。普段は箪笥の奥に保管してあるため、佐渡ヶ島鎮守府でイヤリングの存在を知っているのは提督だけで、滅多に使用することはない。
そんな宝物に対し。
「そうだな。鬼頭氏に感謝しろよ」
織田は全てを台無しにする一言を呟いた。
「え!?なんで、鬼頭提督に?どういうこと!?」
「お前は付き合いを止めろと言うが、鬼頭氏は人格者なんだぞ。『うちのがきんちょにプレゼントを買ってやったんだから、お前も渡してやらねえと可哀想だろうが。どうせ用意なんざしてねえんだろう』と言って、始まる前に渡してくれたんだ」
「は、はあああ?意味分からないんだけど。それよりも何よりも、そうだとしても普通それを言う?心の中に仕舞っておくもんじゃないの!?」
「それは相手に対して好感度を意識する場合においてだ。俺の中でのお前の好感度は小うるさい腐れ縁以上には変わらない!!」
「あんたねえ!もう~分かったわ。オタクだ何だと言うんなら、あたしがあんたが行きそうにない所に連れて行くわよ!ああ、お礼はいらないわ。あんたが何かプレゼントをしてくれればいいから!」
「おい、バカ。ぐいぐい引っ張るんじゃない!!世間の皆様にいらぬ誤解を与えるだろうが!おまけに何をさらっと自分の希望を通そうとしてやがる。これだから年増は!!」
「素のあんたを知ったらドン引きよ!!これぐらいでちょうといいわよ!」
ずんずんと進んでいく瑞鶴に、織田は抵抗するも引きずられるように連れて行かれるのだった。
⚓
その3「おやぢ提督のクリスマス」
全く面倒くさい日が近づいて来やがった。多神教で何でも取り入れるのが日本の良い所らしいがよお、よりにもよってお祭りごとばかり取り入れてるんじゃねえぞ。ハロウィンだの、クリスマスだのと、その度にがきんちょどもが我儘放題。予算がかさむかさむ。ならやらなければいいじゃねえかって?
そりゃ俺様だけならやらねえよ。養成学校時代、それでえらい失敗をしたことがあるからな。友達がいない時雨の野郎をボランティア気分で誘ってやったら、あの野郎何を勘違いしたのか、次の日に俺様からもらったという髪飾りを周りに披露しやがった。とんでもねえ、裏切りだぜ。がきが喜ぶものなんか分からねえから、昔ばばあが喜んでたって代物を渡しただけなのによう。
「鬼頭提督って実はいい人だったっぽい!」
なんてあのぽいぬに言われた時の俺様の嘆きときたらねえぜ。いい人なんて鬼畜モンを目指す俺様にとって最悪の褒め言葉じゃねえか。
どうも最近牙の抜け落ち具合が半端ねえと、意を決して冬ごもりでもしようかと思ったが、そういう時に限って、あほの初期艦とうざい元ペア艦が本気を出して追跡してきやがる。
「大湊ではやらなかったから、ここでもそうかと思っていたけど、そうじゃなくて嬉しいかも!」
「あたしもこっち来てやったことないな。横須賀基地じゃ、みんなそんな雰囲気じゃなかったしね」
どうも楽しんでいるのは、がきんちょばかりじゃないようだな。どうしてうちの鎮守府にはこんな奴らしか集まらないんだ。もっと色気がボインの峰不二子は来ないのかよ。
「しれえがまた雪風達をがきんちょ扱いしていますね」
「すごいわね、雪風!さすがのあたしもそこまでは分からないわよ!」
うるせえ、初期艦。お前は黙ってそこの小うるさい英国艦と一緒にツリーの飾り付けでもしてろ。そうでもしないとぴーちくぱーちくとにかくうるさいからな。
「おしゃべりは人間関係を円滑にするためのスパイスよ、ダーリン!」
「スパイスってのは適度に効かせるもんだ。お前のは激辛担々麺クラスだぞ」
「相変わらずしれえの例えはよく分かりませんね」
やかましい。人数が増えて本当なら初めからいるお前が指揮をとってもいいんだぞ。それを何だ。雪風は飾りを作りたいです、とイの一番に自分の要望を通しやがって。
「とりあえず、時雨とフレッチャーと秋津洲は料理を、北上は会場の用意を頼む」
「あれ、テートク。あたし達は?」
「お前とジョンストンと、アトランタは買い出しだ。横須賀の方に行くからな」
「OK、任せて!と言いたいけど、藤沢じゃないのね」
「横須賀の方が艦娘が多いからな。色々な割引があるんだよ」
「了解。それじゃあ、あたしは車を回してくるね」
さっと動くアトランタ。そこへどうしていいのかとおろおろしながらこちらを見ている神鷹と目があった。いけねえ。こいつを忘れていた。うちの連中はどうにも自己主張が強すぎる奴が多いから、神鷹みたいな大人しい系の奴は埋もれて分からなくなるんだよな。
「神鷹、お前も買い出しに付き合え」
「ヤー。了解です!」
元気よく答える神鷹だが、余程構って欲しかったんだろうな。いそいそと用意を始めやがった。
ツリーは二週間前に憲兵の爺からもらったのがあるし、ケーキも買った。
「それじゃ帰るぞ」
俺様が言うと、途端にグレカーレの奴が文句を言い始めた。
というか、お前。しょっちゅう文句垂れてねえか?
「いや、だって、テートク。プレゼント忘れてるわよ、プ・レ・ゼ・ン・ト!!」
「うるせえ野郎だな。その辺にある雑草でも引っこ抜いて持って帰ればいいだろう」
「なんでよー!養成学校時代に、時雨がもらったって自慢してたんだもん!」
げ。あの野郎。俺様に対する嫌がらせか?ねちねちといつまで経ってもしつこい野郎だ。
あの後、同じ班の奴に聞いたら身に着ける物を送るってのはNGなんだってな。相手の趣味もあるし、重いからと。だが、仕方がないじゃねえか。よく分からなかったんだからよ。特に時雨の馬鹿の場合には何が地雷になるか分からないし、なんとなくそういうもんを着けそうかなと思っちまったんだよなあ。若気の至りってやつだ。
「それにお前たちへのプレゼントとやらはもう決まっている。今日の夕食を楽しみに待つがいい!」
「え?いつの間に用意してたの、提督さん」
アトランタの野郎、俺様の余りの手際のよさにぽかんとしてやがる。
くっくっく。何がクリスマスだ。普通のプレゼントを渡してえらく後悔したんでな。今年は忘年会も含めて、お前らに特別なプレゼントをやるつもりよ
「提督が何をくれるのか、楽しみです」
純真そのものという感じの神鷹。お前には悪いが、期待通りのものなんか出ねえからな。
そしてその日の夜。
いつもよりは大分豪華な夕食が済み、ケーキにシャンパンと並んだところで、俺様がクリスマスのプレゼントについて説明する。
「すでに何名かの奴からクリスマスプレゼントはどうなっているかも?とか、僕はなんでも構わないよ、とかリクエストなのか脅迫なのか分からん問い合わせが来ているが、今年一年の締めくくりということで俺様が特別なプレゼントを用意してやった」
「お~。提督、すごいじゃん。あたしてっきり無しだと思ってたよ」
おいおい、北上。お仲間の時雨の野郎から聞いてねえのか。ペア艦で一応付き合いがあったってことでプレゼントを贈ってやるぐらい心が広い人間だぞ。
「ダーリンがプレゼントくれるの?ラッキー!とても楽しみね!」
無邪気に微笑むジャーヴィス。ふん。お前のその笑顔。どこまで崩さずにいられるかな。
ホワイトボードを持ってきた俺様が、そこに貼られた模造紙を指差す。
「第一回!江ノ島鎮守府クリスマス会プレゼント争奪戦!!」
『そ、争奪戦って何です、提督。取り放題ってことですか!それなら負けませんよ』
「あれ、もんぷち。親方達は妖精だけでクリスマス会やるって言ってたぞ。お前何でここにいるんだ?」
『ぎくっ!』
ははあ。普段の素行の悪さからハブられたな。とんだ女王があったもんだ。
「まあ、プレゼントの予備はあるし、お前とも何気に最初からの付き合いだから入れてやるか」
『て、提督…』
感涙に咽び泣く妖精女王を放っておいて、ルール説明に入ろうとする俺様に勢いよく手を挙げたのが、意外にもフレッチャー。
「て、提督。質問があります。争奪戦とはどんなことをするのでしょうか。じゃんけんなどのゲームですとそのう・・」
ほお。意外にもフレッチャーの野郎、物欲があるらしいな。まあ、言わんとすることは分かる。雪風とジャーヴィスの二人が強すぎだからな。
「じゃんけんだと特定の奴に有利過ぎる。今回はクイズだ。しかも三択じゃねえ。一問一答式だぞ」
「ええっ。そんなの難しすぎますよ、しれえ!」
雪風がぶうと頬を膨らませる。これこれこれこれ!こうじゃなくちゃな。思えば今年の俺様はサービスし過ぎた。こういうのがないと面白くねえ。毎回お前の独走を許すと思うなよ、初期艦め。
「お次にプレゼントの発表だ!」
だららーとドラムロールを口ずさみながら、一個一個紙を剥がしていく度に歓声が湧く。
1位高級バッグ
2位高級財布
3位高級腕時計
4位高級万年筆
5位有名テーマパークペア券
6位横山光輝三国志全巻
7位高級焼肉食べ放題(長門付き)
8位ゲームボーイアドバンス ソフト付き(マリオ)
9位ファミコン ソフトはファミスタ89のみ
「何だい、これ!」
まだ発表の途中だというのに、時雨の野郎が騒ぎ出す。
「1位から5位まではいいよ。でも、下の方のはプレゼントじゃなくて、まるで不用品の在庫整理じゃないか!おまけに7位の長門付きってどういうことなのさ!!」
「うるさい野郎だな。ファミコンもゲームボーイもきちんと探して買ったもんだぞ。ちゃんとアダプタはついてるから安心して使えるぜ。7位に関しては今日どうしても来れないからと頼まれたもんでな」
「いや、何気に欲しくなってくるチョイスじゃない?あたしは8位がいいなあ」
「さすがに北上は話が分かる。どこかの元ペア艦とは大違いだ」
「与作は本当によく分からない。去年のあれは何だったんだい?」
ぶつくさと文句を言うんじゃない。聞こえているぞ!
「でもでも、提督。あたし達はもんぷちも含めて11人いるよ。もらえない人がいるかも?」
秋津洲が心配そうな顔をする。ああ、お前運悪いもんなあ。この面子だとお前と神鷹とアトランタが負けそうなのは誰でも分かるぜ。
「大丈夫だ。全員に回る分はある。ただ、これはげえむなんでな。もちろんプレゼントに差はついてるぜ」
10位 藤沢駅近くのラーメン屋で大盛り(俺様付き)
「そして、どべはこれだ!!」
びりっと勢いよく紙をめくると、テープが強すぎたのか、模造紙に穴が開いちまった。やれやれ。俺様としたことが興奮してやがるぜ。このプレゼントは嫌だろうなあ。くっくっく。どんな反応をするか楽しみだ。
「11位は、新年一発目から一週間の秘書艦任務だ!!新年早々お気の毒だが、頑張ってもらうからなあ!!」
「えええええええ!!」
あり得ない、信じられないという悲鳴が食堂にこだまする。なんとも言えねえ。いい年末の風物詩じゃねえか。るんるん気分でプレゼントがもらえると思ったら大間違いなんだよぉ!
にやりと笑いながら、がきんちょどもの様子を見ると、どうやら余りの衝撃に戸惑っているらしい。
そりゃあ、そうだ。一位をとれば万々歳だが、後になればなるほどプレゼントはみすぼらしくなってくる。おまけに、最下位は新年早々の秘書艦だ。面倒くさいぜ、これは。
「ダーリン。5位のテーマパークペア券のペアは誰と行くの?ダーリンと?」
ジャーヴィスが興味津々とばかりに聞いてくるが、そんなことある訳ないだろう。
何が悲しくて俺様ががきんちょの保護者よろしく夢の国なぞ行かなけりゃならないんだ。寒イボが出てくるわ。
「あほか。夢の国なんざ行きたくもねえ。誰か誘って行けってことだな」
「10位のラーメン屋の俺様付きって、提督が一緒に行ってくれるってことかも?」
「そうだ。俺様も久しぶりにあそこのラーメンが食いたいからな。お前らがきちんと大盛りを食ってるかどうか、ずるをしてないかどうかを観察してやるぜ」
「えっ!それってデートってことじゃん!」
妙な事を口走るグレカーレ。何を言っているんだ、こいつは。ただラーメンを食いに行くだけだなのに、それをイベントにするんじゃねえ。
「どうしようかしら、ジョンストン。上の方の商品よりも下の商品が気になるわ」
「平気よ、姉さん。あたしもだから」
「ファミコン狙いか?俺様はファミスタも強いからな。時々相手をしてやるぜ」
「へえ~。それならファミコンの方がいいかな」
ほお。北上は一人でやるよりもみんなとわいわいしたいと見えるな。
「よしよし。盛り上がって来たな。それじゃあ、クイズを出していくぞ。一問10点。ボーナス問題もあるからな。この一年間のことから出題をする。答えは手元に配ったスケッチブックにマジックで大きく書けよ。他の奴の解答を見るんじゃねえぞ。その場合は失格だからな!!」
「あんのう、しれえ」
ノリノリで出題しようとする俺様の所にやってきて耳打ちをする初期艦。
なんだ、お前。わざわざ。答えは教えねえぞ。
「違いますよ!しれえ。多分、みんなきちんと答えないと思いますよ・・」
「はあ?そんなことあるか。一位になって高級バックが欲しいだろうが」
「やっぱりしれえは何もわかってません・・・」
はあとため息をつきながら席に戻っていく雪風。
お前たちがじゃんけんその他に強すぎるから一問一答クイズなんだぞ。考えた俺様の苦労を分かりやがれ。
「まあいい。一応、どいつにも有利になるようにそれぞれにちなんだ問題で出すからな。それじゃあ、行くぞ。第一問。江ノ島鎮守府のマッサージチェアに最初に座ったのは誰?」
ぱっと答えが書き終わったみたいだな。
提督、提督、ダーリン・・・。
俺様と言う意見が多いな。これは俺様と雪風ともんぷちしか知らねえからな。あいつらは簡単だろうって、おい。
「なんだ、雪風。このメーカーの人ってのは。というか、お前が一番最初に座ったんじゃねえか。もう忘れたのか」
「失礼な!忘れてはいませんよ!!ですが、仕方がないんです!」
「意味が分からねえことを言いやがって。そして、もんぷち。お前もだ。私って、なんだよ。私って。あっ。さては、お前。俺様達が来る前にあれで遊んでやがったな!!俺様が来てからだ。却下だ却下。」
「ええっ。そんなあ!!」
まさかの全員不正解。波乱の幕開けって奴だ。これは面白くなってきやがったぜ。
さて、誰がどべになるかな。そいつを新年早々からかいまくってやろう。
楽しみで仕方がないな。
登場人物紹介
織田提督・・・・・・・天龍は前々からやる奴と信じていたと語る。
瑞鶴・・・・・・・・・自らの財布から金を出し、イヤリングを提督に買ってもらう。
与作・・・・・・・・・なぜか不正解者が続出し、クイズのネタが尽きそうになりおかんむり。もう少し真面目にやれと叫ぶ。
時雨・・・・・・・・・いや、これ。真面目にやっているからだよね、と話す。
雪風・・・・・・・・・地味に最初が自分が関係する問題だったので嬉しい。
ジャーヴィス・・・・・これはすごい心理戦ね、あはっ!と上機嫌。
神鷹・・・・・・・・・提督はとても楽しそうでした、と館林の母に報告。